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第1話


「日本で会議?」

「ええ。今回は日本の…ええっとなんと言ったかなー? ああ、そうそう」

 そこで担当者はバサバサと資料をめくって言う。

「★市という街が会場になっています。でも、日本で会議するなら、トーキョーとかオーサカとか、もっと大きな街で開催されても良いのに。こんな名前も知らないような街で」

 担当の彼は「何ででしょうね?」とか不思議げに言っている。


 それにしても…

 ★市と言えば、シュウたちが住んでいる所じゃないか。

 よくまあ、そんな偶然があったもんだ。オレはちょっと可笑しくなって思わず「ハハ」と笑い声を立ててしまう。

「どうしました?」

「いや。そこの市には、知り合いが何人か住んでるんでね」

「ええっ!そうなんですか? でも、さすがに世界を飛び回るハルヒトだけのことはある。知り合いも大都市ばかりではないんだ。あ、じゃあ行き方もわかってますよね?」

「ところが、違うんだよ」

「?」

「じつは一度も行ったことがないんだ、★市には」




 そんなわけで、オレは今シュウに連絡を取っている。

 少し前に、思いがけないところで由利香の両親と再会して、そのあと由利香から連絡があって。そこにシュウや夏樹や冬里がいて。驚いたことに由利香が「春夏秋冬を知る百年人」だとわかり…。

 実はオレは、これまでにも何人か春夏秋冬を知るヤツには巡り会っている。けれどそのたびに、なぜかちょっと違うんじゃないか?、と感じてきた。


 だが今回は少し感覚が違っている。


 けれどそれでもまだまだ駄目だ、と、頭のどこかが言っている。

 だから5人が会ってしまわないよう、細心の注意を払わなけりゃならない。というのも、近々、冬里が料亭を13代目に譲ってシュウの喫茶店を手伝う話があるというのを聞いていたからだ。

 オレが連絡もなく『はるぶすと』とやらへ行って、そこにシュウたち4人がいたら大変な事になる。



「新人研修を担当する教官の会議?ですか」

 電話の向こうで俺の言葉を繰り返すシュウ。

「ああそうだ、何年かに一度、研修の質向上と教官どうしの交流のために。それがたまたま今年は★市であるって訳だ」

 シュウは少し黙ってから、フフッと可笑しそうに笑って言う。

「なにも、こんな小さな街で会議をしなくても、と思いますが…」

「ああ、オレもそこが不思議だったんで、主催者に聞いてみたんだ。そしたらな、×市と共同出資して建てた国際会議ホールがあるだろ。あの建築が世界的にも有名なんだとよ。それで見学したいって声がいっぱいあったんだそうだ」

「ああ…でもそれなら、位置的にはほとんど×市ですね」

「そうなんだが、せっかくだからお前たちの店にも顔を出しに行くよ。で、確認しておきたいのは、冬里のことだ」

「はい」

「あいつはもう京都を引き払ったのか?」

「いいえ、まだですね。先日13代目を伴ってやって来て、帰ったばかりです」

 それならかち合うことはなさそうだ。オレは少しばかり安心する。


「ならいい。由利香とオレたち4人が会うにはまだ時期が早いと、オレの中の何かが言っている」

「はい」

「だから…」

 オレはちょっとシュウをからかってやろうと、低く抑えた声で言う。

「冬里には何があってもばれないようにしろよ。最高機密事項だ」

「…はい」

 シュウもオレのきまじめな声を聞いて、緊張しているような様子だったが、しばらくすると可笑しそうに笑い出した。

「?なんだ」

「いえ…ハル、人が悪いですよ。本当は機密事項だなんて思ってもいないのに」

「お前…」

 オレはちょっと驚いて言葉を切り、それからおもむろに言いだした。

「シュウ、変わったな。以前のお前なら、今の言葉だって真に受けて、ガチガチに守り抜いてただろう?」

「そう…ですかね」

 シュウは自分の事なので、良くわからないと言うふうに答える。

「冬里が幕末に、とんでもない輩の中に放り込んでくれたりしたのが良かったのでしょうか? それに今回の日本でも由利香さんがいますし」

「おいおい、由利香はとんでもない人か?」

「それ以上です」

「! ……アッハハ、お前も言うようになった。やっぱり変わったぜ~シュウ~」

 オレはものすごく嬉しくなって、そのあと「もう恥ずかしいのでやめてください」とシュウが言うまで褒めちぎってやったのだった。





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