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second・life  作者: 結音
2/4

春と焦りと…

…朝、いつも通り目を覚まし、自分が男に戻っているのではないか。


そう願ってみるが、残念ながら願いは叶わなかった。


しかも体調がよくない。

腹痛と頭痛がするのだ…。


俺はそんな体をベッドから起き上がらせる。するとすぐに、股間に違和感を感じた。


…濡れてる?

まさか!?漏らした…


恐る恐る自らの下半身を見ると、そこには朱色にそまるシーツと、寝間着が…


俺はすぐさま、姉の部屋へ向かった。


「姉ちゃん!!

なんか、ヤバいんだけど!」


姉の部屋にノックもせずに入ると、着替え中だったらしく下着だけの姉が目に入る。


「どうしたの?

朝から騒がしいみたいだけど…」


「ごめん。ってそんな場合じゃないって!!

なんか血が…」


姉の顔を見て、途中で言葉がつまる。何故なら、嬉しそうに笑っていたから…。


少しの間が空いたかと思うと、次に姉は目を輝かせて言った。


「はぁ…もうすっかり女の子なのね~夢じゃ、なかった。」


「姉ちゃん?」


「優希。それはきっと、女の子の日よ。」


…は?とでも言うような顔をしていただろうか。

俺は、姉の言葉を聞いて固まっていた。


「もしかして優希、授業中寝てる?」


「へ?…あぁ、まぁ興味とか全然無いし。」


姉の言う[授業]とは、保健のこと。

…実のところ、容姿や声が原因というわけではないが、俺は昔から女性という存在にあまり興味がない。


その為か、俺は保健の教科への意欲は、他の男子に比べ低かった。

今になって聞いておくべきだった。と、昔の俺が悔やまれる。


「とりあえず、下着は私のを使って…

それとこれ。」


そう言って、姉は過去の自分を悔やんでいる俺に手渡した。


一つは下着で…

もう一つが、なにやら四角く折り畳まれた柔らかい何かが二つ。


「これは?」


「ナプキン。」


「…は?」


ナプキンとはあれだろうか?食事の時につける…しかし、そんなものを何故下着と共に?


「それ、生理用品だから。

開ければ使い方くらいわかるよ。」


「え、けど、歩きずらいんじゃ…」


俺の言葉を聞かぬ内に、姉は着替えを済ませ、部屋を後にした。


使えって言われても、俺のプライドが磨り減るんだけど…


そんなことを考えつつも、遅刻へのタイムリミットが近づいていた為、俺は自室に戻り着替えることに…


ここで、ある問題が浮上した。制服である。


男子の制服を試しに昨日着てみたが、大きすぎてとてもではないが、無理だと感じた。


とりあえずクローゼットを開くと、そこには…


女子の制服がしっかりと、準備されていた。


…助かるような、そうじゃないような。複雑な気持ちになりながらも、それを着用することにした。


…着替えて、鞄を持ち玄関の扉を開けて家を出ようとしたとき、扉は向こう側にいる誰かの手によって開けられていた。


「優希。おっは……よ?

…誰?」


扉の前にいたのは、俺の親友の谷澤 信悟。

もちろん。俺が女になったことなど知らないため、目が点になっている。


が、ヤツは頬の筋肉を緩ませて言った。


「優希。ついにお前はそっちに目覚めたか…

けど、俺は嬉しいぞ!!

男とはいえ、こんなに可愛い友人と一緒に登校できるんだから…。」


俺は無言で、信悟に近くにあった靴べらを投げつける。


「うぉ!?ちょ、待て。」


「俺はそんな趣味、持ってねぇ!!」


声を出した時、信悟は更に驚いていた。


「優希。言葉使い。それと、遅刻するわよ~」


会話?を聞いていた母が俺に言う。


仕方なく、信悟を半分無視して家を出た。

…歩きずらい。


ちなみに俺は、血だらけで登校するわけにもいかない為、結局ナプキンをつけてしまっていた。


「…私は誰だ?」


登校中、そんな電波な質問を隣を歩く親友にしてみる。


「優希だろ?」


信悟は即答してみせた。


その後に聞いてみたのだが、俺が女になっていようがいまいが、違和感が無いらしい。

むしろ、これからは女子と登校ができると喜んでいる。



「しっかし、本当に女なの?

正直、優希がただただ女装してるだけにしか見えねーけど…」


声、身長、容姿。

信悟が言うには、これら全てに変化があるらしいが、[女装してるだけ]と言えば納得できてしまう程度の変化だそうだ。


考えながら歩いていた為、曲がり角から来る自転車に全く気づかず、衝突しそうになった俺を信悟が腕を引く。


「危ねぇぞ?」


「うわ!?っと…ありがとう。」


信悟の腕にしがみついてしまった。

…こいつ、こんなに筋肉質だったのか。


「優希…胸。

あたってるぞ?」


「あ、ごめん。」


…忘れていたが、こいつはふざけた態度をよくとるが、基本的には紳士的である。


まぁ、親友となるにいたったのがそこにあるわけだ。


中学校くらいから、俺の身長、肩幅、声の変化は、ほとんど停止していて、そんな俺をからかう奴らがそれなりにいた。


そのからかいが嫌で、けれど、それらを突き放す勇気のない自分も嫌で、全てが嫌になっていた時…

こいつが助けてくれた。


多分、信悟がいなかったら、俺は自殺をしていたかもしれない。


まぁ、そんな色んなことがあって、今では親友である。

ちなみに、武道は弓道と剣道を掛け持ち。

察しの通り、男らしくなりたいが為に何故か武道に走ってしまったのだ。



と、色々考えている内に学校に着いたらしい…。


俺が通う高校、九条学院高校。


正面玄関に着くと、信悟は言った。


「なぁ優希。

お前、先生のところに行くんだよな?」


「ん?あぁ、そうだな…。」


「俺、先に教室に行っていいか?」


俺は信悟の言葉に対して頷いた。


…さて、この学校の特徴を大雑把にも紹介しておこう。

この学校内は、とにかく広い。


まぁ、理由としては金持ちが通うような学校であるからである。


そんな訳で、職員室から教室まで移動するのに15分も費やしてしまった。


ちなみに職員室では一応、性が女になってしまったことを伝えた。


…教室に入ると、皆視線が俺に…という展開には至らず、普通に席に座る。

それと同時にチャイムが鳴り、先生が教室にやって来た。


担任の城川先生である。


「あー、おはよう。

今週からテスト一週間前期間に入るから、朝の20分はテスト学習になる。しっかり学習しとけよ。」


城川先生は、基本的にラフな先生だ。皆は放任しすぎだとか言うが、俺は自分の意見を通しやすいのでいいと思う。


ちなみに、朝伝えた先生でもある。


少し驚いてはいたが、簡単に受け入れ納得してくれた。


「一つ、連絡だ。

不審者の事なんだが、最近ここらで出没してるらしいから…そうだな」


そう言って、先生は対処方を伝える。


出会ってしまったら、とりあえず逃げろ。そんで近くに家があれば、大声で助けを求めろ。

無理だったら携帯で誰かに電話。

まぁ一番は、一人で帰らないことだな。


…春。それは頭の緩んだ連中が、跋扈し始める季節。


なんの伏線も無しにそれは、俺を襲った。

跋扈(ばっこ):集まる。沢山。

…まぁ、とりあえずいっぱい集まるみたいな意味のはずです。多分。

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