騒動9 メイドど根性!!&勇者登場!!
こんばんは。眠いですね…皆様、夜がお強いようで…。
メイドのミタリーでございます。
私…前回、「チェック、チェック」というセリフを「チャック、チャック」と…。
なんて卑猥な…なんて如何わしい…えっ?何がって!?
知らなければ、幸せということもございます。ただし私、欲求不満じゃありません。それはこれを書い…うぉほんっ。
訂正させていただきました。本当に申し訳ございません。
えっ?これだけじゃない…?
9回目ですね。嬉しゅうございます。では、どうぞっ!!
いつもの倍量っ!!お詫び更新…ってこれは独り言ということで。
こちら――南門前のメイドのミタリーでございます!!
只今、城南門前はすでに化け物が――おおっ!!数十体もっ!!
騎士たちはおろか、『綺晶魔導師』たちでさえ苦戦している模様です!!
私只今、頭を保護するためにお鍋を被り、右手には倒れた騎士から奪った盾を頼り
命懸けの実況をいたしております!!
と、ここでリデル様とユアナ様――そしてぇ――リデル様の護衛役アキュリス様の登場だぞっ!!この方は城のメイド仲間たちでも大人気の、5本の指に入る美形で有名な方なんですっ。
「ミタリー…鍋なんか被って…なんでお前はここにいるっ、ミタリーっ!!邪魔だっ!!城の中へ入っていろっ!!でないと、今ここで首にしてやるっ!!」
なんてことをリデル様っ!!それではパワハラですっ!!
「早くしろっ!!首になりたいかぁっ!!」
「は…はいぃっ!!」
皆様っ大変申し訳ございませんっ!!
詳しい実況は城の中から行いますっ!!メイドを首になっては、このお話が終わってしまいますのでっ!!あしからず――っで、ございます!!
◆◆◆
ミタリー――信じられん――。どこまで覗き根性丸出しなんだ。命も惜しくないとは。
「ほっときましょう…あの者は……」
アキュリスの言葉。こいつも被害に合っている口らしい。どこまで出没するんだ、あいつは――。
「あいつらは?」
ユアナの質問で我に返る。
「…人間の屍に、『ブルゾス』という…「死霊」の一種が憑依した化け物だ。それを「悪霊」と呼んでいる。
今日は一段を多いな…その上…四足の「ディアボロス」まで。野犬でも食らったか…」
どうして街中に――いくら人が集まる場所に出没しやすいと言っても、この出現間隔では『不浄地』と然程変わらんぞ。
「あいつらをやっつければいいの?」
そう――ユアナは俺に再度聞いてきた。どちらかというと「確認」のような問い方だ。
「お前は見てろ。あいつらとの戦い方もわからないだろう。腕に覚えがあるようだが、あれは普通の化け物とは意味が違う」
ユアナは俺をまっすぐに見つめる。
「大丈夫……なんだかわからないけど、ボクはあいつらと戦える気がするんだ」
ユアナの話を聞いて俺は、まさか――と思う。
「お前…今「水晶」を持っているか?」
「?どうしてそんなことを今訊くの?」
ユアナが首を傾げた。
「いいから…持っているか?お守り、アクセサリー…とにかくなんでもいい」
「…持ってないよ、そんなの」
「そうか…ならいい。お前では太刀打ちできない…我慢して見てろ」
「やだよっ!!」
ユアナはすがる様に俺の右手を両手で掴んだ。
本当に小さい手だ。16歳の少女というのが嘘なぐらいに。
「見てろ…すぐ終わる」
俺は――どうしてそうしたのか。ユアナの額に軽いキスをする。
「皇子っ!!」
「今行くっ!!」
アキュリスに促され、俺はすぐに返事をした。
「ここでいい子で待ってろ。いいな?」
笑顔で――呆然としているユアナに言い聞かせると、化け物の方へ向き直った。
俺は特殊な能力を持つ。
この世界には、今俺たちの前にいる――このような化け物が溢れている。
それはお祈りや何かの呪文で退治出来る連中じゃない。
その化け物――『ブルゾス(青銅の民)』を退治出来る唯一無二の存在。それが俺のようなこの『ブルゾス』を『浄化』出来る能力を持つ『アトスポロス(使者)』という存在だ。
『綺晶魔導師』は――「メイスン」もしくは「石使い」などと呼ばれる。
それはこの世界――魔導術を行使するために、『神杯』という特殊な力を持つ「水晶」が必要となる。
それを自分の能力の源として使う。それが『綺晶魔導師』だが、本来の目的はこの『ブルゾス』退治のための能力であって、『綺晶魔導師』の中でも、強力な能力を保有する者たちが『アトスポロス』と呼ばれる。
そして各『アトスポロス』の能力は皆それぞれに違う。
特に俺のように持っている『神杯』の力が強力だと、その能力を表す『名前』がつく。それが『名持ち神杯』と呼ばれる。
俺の『神杯』の名前は『クリオネ(祝福)』。
どういう能力かって?まぁ、見てろ。
◆◆◆
「騎士団、一時下がれっ!!皇子がお力を振るわれるっ!!」
アキュリスの叫びに応じ、騎士連中が「悪霊」との戦闘から一時離脱する。
俺の能力――『クリオネ(祝福)』は、俺の望みに応じて、様々な能力を具現化する。
そして今は――敵の「腐食」を念じた。
「消滅」など、あまり直接な攻撃の能力はない。それが俺の悩みではあるのだが――。
騎士団の連中の腕を信じて、『浄化能力』を持たない連中でも、『ブルゾス』を倒せるレベルまでやつらを弱らせる。
序々にやつらの動きが弱まり、アキュリスの号令のもと、騎士たちが一斉に「悪霊」に攻撃を仕掛けた。
だが俺のもうひとつの弱点は、広範囲、長時間ということになると、能力の効き目が極端に落ちるということ。
その代わり、一点、短時間ならばどんな強力な『ブルゾス』――生き物でさえ、絶大な効力を発揮出来る。
今は広範囲――しかも量が多い。
でもそんなことを言っていられない。騎士たちの命に関わることなのだから――。
が、「悪霊」に効果は現れたが――。一番厄介な「魔獣」への効き目が薄いっ!!
「魔獣」とは、「悪霊」が力をつけ、人や動物の屍――もしくは生きたまま――食らってその能力を奪い取った化け物のこと。
生きたまま食らったやつらの能力は――俺がそいつに集中しない限り『浄化』は無理だ。
これだけの数の「悪霊」を相手にしたまま、この四足の化け物の動きすら止められるのか?
案の定、騎士たちの数名がその毒牙にかかる。
「くそぉぉっ!!」
「皇子っ!!無理はされないでくださいっ!!あの「ディアボロス」は我々でなんとかっ!!」
アキュリスが俺を心配して声をかけるが、そんなことを言っていられる状況ではないっ。
そのときだ。
幾筋かの閃光が「魔獣」の体に走ったかと思うと、断末魔を上げ、突如消滅した。
相手になっていた騎士たちも、刹那の出来事に、ただ呆然としている。
それは純白の光。その光が動きを止めたとき――俺の目にその正体が飛び込んだ。
ユアナだ。
神々しい光に包まれ、鞘から抜いた「ビャッコ」を手にしている。
俺の視線に気がつくと、嬉しそうに手を振った。
「……あいつも『アトスポロス』なの…か?」
「魔獣」を倒したあいつは、再び高速の移動を開始し、その軌跡は光の線となって、何十体という「悪霊」たちの間をすり抜けていく。否。斬りさき次々に消滅させていく。
ユアナを包む光が消え――。その姿が俺の前に現れた。
それはここ2日間で見慣れたユアナの笑顔で――。
「どう。だからボク強いでしょ?」
と宣い――笑顔のまま、俺に手を差し伸べ――前かがみに倒れていく。
「ユアナっ!!」
よく見たら、体中傷だらけじゃないかっ!!
「馬鹿かっ!!こんなに傷をつくってっ!!」
「でも…騎士の人たちは助かるでしょ?」
痛みを我慢し、笑顔を無理やりつくって強がる。どこまで馬鹿なんだ――。
だが気がつくと、騎士たちが歓声を上げている。
「皇子っ!!そのお方は…やはり正真正銘の「勇者」様なのですねっ!?」
アキュリスが嬉しそうに駆け寄ってくる。
「アキュリス。申し訳ないがあとを頼む。その勇者様が怪我をされたのでな。
治療をしてくる」
「はい、そうですね。勇者様、本当にありがとうございますっ!!」
頭を下げるアキュリスに――ユアナはにっこりと微笑んで
「ボクの名前は千歳優愛菜だよ。優愛菜って呼んでね」
「はい、ユアナ様っ」
そう答えたアキュリスの瞳が――歓喜で輝いていた。
俺はユアナを抱き上げ、急いで部屋へと運んでいく。
「ボク、歩けるよ」
「うるさい…言いつけを破りやがって……」
「化け物全部やっつけたのに…」
不貞腐れた様子のユアナに、俺は苦笑いを浮かべた。
「とにかく今は黙ってろ。部屋まで運んでやるから」
「うん…わかった」
素直に応じるこいつが――今、一番可愛いと思う。
どうかしてるな、俺は――困ったものだ。
◆◆◆
なんか知らない間に――終わってしまいました。
一体何だったのでしょう?ユアナ様が活躍された――のでしょうか?!
はっ!!気がつくとリデル様とユアナ様のお姿がありませんっ!!
まさかお部屋に戻られたのかも――ちょっと確認してまいりますっ!!
またまた移動のお時間をくださいませっ!!しばしお待ちをっ!!