騒動6 意外な真実!?
んまぁ、んまぁ、んまぁ――赤ちゃんが泣いているわけではござません。
失礼いたしました。メイドのミタリーでございます。
んまぁ――やっと出てきたと思ったらリデル様ってば、「朝食は部屋で取る。2人分頼む」ですって。
本当にラブラブですわねぇ――これからどうしちゃうおつもりなんでしょ?
あら。2人してお出かけ――ですね。
もちろんついて行くに決まっています。私はメイドのミタリーでございます!!
ストーリーの進行はお任せあれっ!!――ですわ。
◆◆◆
〈リデルサイド〉
あの女――ミタリーのやつ。また付いてきやがってる。
俺が気がついていないとでも思っているのか――。まぁ、無視するに限る。
「あのジイさん。地下が好きだねぇ」
「…そうだねぇ」
ユアナを案内しながら、城の地下へと向かう。
昨日もこいつに会ったのは地下だったからな。
確か、『馬鹿は高いところが好き』とか言わなかったっけ?
あいつの場合は『馬鹿は地下が好き』――だな。
到着。そして扉を――ノックしようとしたら開いている。
中を覗くとマリーンは――大量の本に埋もれて――寝ていやがった。
「いった――っ!!な…なにをするっ!!……でっ…皇子っ!!?」
思いっきりど突き――本当は蹴りを食らわしてやりたがったが――マリーンを起こす。
怒気を垂れ流す俺に気がつき、慌ててよだれを拭いて――立ち上がった。
「誰が寝ていいと言った?」
「い…いやぁ…私も歳ですなぁ…あっはっは……」
「貴様…永遠の眠りに付きたいらしいな……」
俺が自分の剣の柄に手をかけたので、笑いを止め、突然真剣な表情を俺に向けてきた。
「実は……なんですが」
「あ――っ!!これ「刀」じゃんっ!!」
マリーンの机の上に――確かにひと振りの反りのある片刃の剣――「カタナ」と呼ばれる代物が置いてあった。
ってこれ――アスィミ皇国の国宝だろう?!
瞳を輝かせ「それ」を手に取るユアナを気にしながら、俺は更なる怒気を上乗せし、マリーンを見据えた。
「どうして「国宝」が貴様の部屋にある?」
「い…いや、その。実は……このアスィミ皇国「国宝『白の虎』には…ひとつの伝説がございまして……その伝説を元に…実は…えっと、「勇者召喚」を……でございまして……」
伝説――確かにそれはある。
それははるかなる過去――数千年の昔に滅んだという「銀の種族」の時代から受け継がれたモノがこの「白の虎」だ。
この「カタナ」はただの一度も主を選ばず――しかし主を必要とするときは、時空を超えた世界からでも主を呼び寄せ、偉大なその力を振るう。そしてその者はこの皇国の救世主となる――という伝説。
「どうして貴様がそれを――今だと判断した?」
とうとう俺は剣を抜き放ち、マリーンの喉元に突きつけた。
「お…お…皇子?!これは…皇子としていけない……」
「いいから言えっ!!」
「この「カタナ」が…「宝物庫」を漁っているときに光ったのでございますっ!!」
このクソジジィ。そんな大事なことを黙って嫌がったのか――。
「そんなに自分の手柄にしたかったのか?」
「そ…それは……」
俺は切っ先をマリーンの喉に更に押し付けた。
「そ…そうでございますぅ!!」
間違いなく――こいつは首にしてやるっ!!
「リデル、可哀想なジイさんいじめるのはそれぐらいでいいよ。
これ『白虎』っていう刀なんだ」
「…ビャッコ?!」
やけに詳しいユアナを、俺は呆然と見つめるしかない。
「うん。ボクが剣術を教わった道場の家宝だったんだよ。いつの間にかなくなってたって、加奈さん言ってたけど…加奈さんって、ボクの剣術の師匠ね」
嬉しそうに話すユアナを――こいつ本当にこの「ビャッコ」とかいう「カタナ」に呼ばれて来たのか?
そう考えると――何故か急に悲しさと寂しさが込み上げた。
こいつはまだこんな子供で――『大地母神』は一体何をお考えなのかと――。
◆◆◆
い…一大事でございますっ。
ユアナ様の意外な真実が――実は――実は――あの変わった形をした剣がお好きだったのかと――。
リデル様もぼうっとされてます。
女性でも変わった方でございますねぇ。
昨日見たときから――変わった方だとは思っておりましたが――ここまでとは。
それにしてもモウロクジイさん――いえいえ。マリーン様にも困ったものです。
黙って「宝物庫」から、あの「国宝」を勝手に持ち出されるとは――。
このあと一体どうなるんでございましょう?
剣マニアのユアナ様の一面を垣間見てしまったリデル様――大変気になりますっ!!
マリーン様の今後の身の振り方?――そんなことはどうでも良いことでございまして。
それにしても――確かあらすじに「リデル様とユアナ様は犬猿の仲と申しましょうか」と私、口走ってしまったのですが――どう見ても犬猿の仲ではございませんよね?
もう一線を越えてしまわれてますし――(越えてないしっ)。早速「嘘」ついたと――。
それは私の責任ではございません。はい。
それでは「次回を待てっ!!」でございます!!はいっ!!