騒動5 切ない朝?
お久ぶりでございます――皆様。メイドのミタリーでございます。
もう5回目でございますね。嬉しゅうございます。
そう言えば、私前々回で、茶葉がないと取り乱しておりましたのに、前回、リデル様とユアナ様のツーショットを見たとたん、嘘のように落ち着いてしまいました。
今回は、どうなるんでございましょうか?
では、第5回目でございます。
〈リデルサイド〉
朝の日差しが眩しい――今日もミタリーの顔を一番に見なければならないのか――。
なんて憂鬱に浸りながら目を開けた――。
「……ぅっ…!!!」
思わず声を上げそうになる。
そうだぁ――ユアナと――何もしてないぞっ!!
一緒のベッドに寝ただけだっ!!
幸せそうに寝やがって――。
おかげで俺が寝付いたのは朝方だぞ――そうだ。段々思い出してきた――。
「う…ん」
ユアナが俺にしがみつき、ますます体が密着して――くはぁぁぁっ。
ピンク色の艷やかな唇――たまんねぇ――じゃなくっ!!
とにかくこうしてても――俺の息子が可哀想――じゃなくっ!!!
仕方ないので、ユアナが起きないように俺の首に絡みついた両腕をそっと剥がし、上半身をベッドから起こした。
「…なんだ。起きちゃうの?」
と、ユアナ。起きてたんかいっ!!
「お前なぁ。起きてたのなら、そう言えよ」
「だって…もう少し寝てたかったんだもん。リデル暖かいから気持ちいいし」
無邪気な顔しやがって――本気で押し倒してやろうか――。
そう言えば、昨日の晩。ユアナの服と寝巻きをミタリーに用意させたときのあいつの
「あらあら。もう夜はご一緒ですか?」的な笑みが――思い出されて無性にムカついてきた。あいつも本気で排除したい――。
そして今も扉の前で――待ってるに違いない。なんなんだっ、あいつはっ!!
◆◆◆
なかなか起きていらっしゃいません――リデル様とユアナ様。
まぁ、お若い2人。今は――激しい夜の疲れでゆっくり寝てらっしゃるのでございましょう。もう少し、扉の前でお持ちいたしましょう。
皆様も――もう少しお待ちくださいませ。
◆◆◆
「おはよ、リデル」
そう言えば――朝の挨拶をしていなかった。
ユアナに先を越されるとはな――。
「そうだな、おは……」
ユアナに向きかけ――俺の唇に、ユアナの唇がそっと重なって――。
「……っ!!?!」
俺が呆然として――口をぱくぱくさせてると、ユアナは頬を赤く染め、はにかんだ感じで――可愛いなぁっ!!くそぉっ!!
「一緒に寝かせてもらって悪いから、これぐらいしないとね」
こいつの思考回路はどうなってるんだっ!!
これじゃ「襲ってください」と言わんばかりだろうっ!!?
「ボクね。朝は一緒に寝てる「シュウ」に、いつもこうしておはようのチューをしてるんだ」
「……一緒に寝てる…「シュウ」?」
誰だそれ。どこの男なんだ?いや――そうじゃなくて。
「うん。くまさんのぬいぐるみだよ」
――俺は「くまさんのぬいぐるみ」代わりか?!腹立つ。
「でもね。「シュウ」って名前は、ボクの幼馴染の男の子の名前なんだよ。すっごく喧嘩が強かったんだ」
楽しそうに話してるんじゃない――男の子?幼馴染?聞いてないだろう――。
俺が呆れて――無表情だったのを、ユアナはじっと眺めてこう言った。
「えへへ。リデル、ヤキモチ?」
「……あのな…」
知るかっ!!
「あっ…でもね。喧嘩はボクの方が強かったよ」
突然思い出したようにユアナが――そう付け加えた。
それも聞いてない――あっ。そう言えば、こいつは「勇者」として召喚されてきたんだった。
「そうだった。お前の帰還方法をマリーンに調べさせているんだった。
あとであいつのところへ行こう。朝ごはんのあとでいいだろう?」
「…そうだね。でも…リデル抱き心地いいんだよなぁ。ちょっと勿体無いな」
「何がだっ。俺はぬいぐるみか?ふざけるな…」
「でも「シュウ」は自分じゃ暖かくならないよ。リデルは暖かいもん」
どこまでガキなんだこいつは――。
俺は呆れてモノが言えない。
でも少し――嬉しいような――切ないような。何なんだ、これは。まぁ――関係ない。
マリーンのやつ。ちゃんとやっているんだろうな――。
◆◆◆
リデル様たち――本当に遅うございます。
本当に「やんなっちゃう」でございまして――でも、私はメイドのミタリー。
こんなところでヘコたれませんっ!!
皆様のためにも、もうちょい――頑張りますっ!!
ですので――しばしお待ちくださりませ。