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騒動19 メイドのマリー登場!!

 初めまして、皆様――私、メイドのマリーと申します。

 

 え?ミタリーは首になったのか――ですか?

 いいえ。ミタリーさんも大変頑張ってらっしゃいます。

 ただ、ちょっと行き過ぎ?のところがあるとかで、一部だけ、私、マリーが代わってお伝えすることとなりました。



 ですが――これ。ミタリーさんには内緒でお願いいたします。

 ミタリーさんって、お城の中でもメイド次長の地位の方なんです。

 「次長」というのは、メイド長の次に偉い方なんですよ――。

 


 って、え――っ!?信じられない――ですか?

 本当なんですよぉ。ですので、知られてしまうと私が――そう、お城に居づらくなってしまいますので――「しー」でお願いいたします。



 で、私は今日、リデル皇子様のお部屋に、ユアナ様の話し相手として初めて来ております。

 少し緊張していまして――うまく皆様にお伝え出来るとよいのですが――。



◆◆◆



「マリーはコーヒーを入れるのは美味いんだね。すごく美味しいよ」

「そうですかっ!?良かった――っ!!」

 


 私の歳は16歳。ユアナ様と同じ歳ということで、リデル皇子様に直々に話し相手ということで選んでいただきました。



 ですがここに来る前は、ミタリーさんの視線がすごく怖かったです。

 ミタリーさんの目って、なんかビームが出る――いえ。すごく鋭いというか。

「あとでわたくしに全て報告しなさい」とか言われてまして。

 どう誤魔化そうか、今から少し頭が痛いです――。



「どうかしたの、マリー?」

「いいえ、何でもないです。それよりユアナさんは、その…リデル皇子のことを…お好きなんですか?」

「うんっ。大好き」



 なんて素直で屈託のないお可愛らしい方なんでしょう――。

 


 なんか――この2人の回りをコソコソ嗅ぎ回るような真似はしたくないです。

 え?ミタリーは毎度やっている?――あーまぁ…ミタリーさんは――ね。

 って感じでしょうか。



「今日、リデルはどこに行ってるの?」

「はい。何でもアキュリス様とご一緒に、街へ用事があるとお出かけになられました」

「ふうん」

 ちょっとアキュリス様にヤキモチ――でしょうか?

 本当に可愛いユアナ様です。

 


 そう言えば、私――ユアナ様を直接お呼びするときは「様」と呼ばないようにとキツくユアナ様に申し付けられているので、「さん」つけにしています。

 でも皆様にお伝えするときは、本来の呼び方になっていますので――。

 え?ミタリーはどうして「リデル皇子」と普段は呼んでいるのに、ここでは「リデル様」と呼んでいるのか、ですか――?

 それは私にもわかりません――すみません。聞くことも出来ないので。

 いつかミタリーさんから説明があるかもしれませんね。



◆◆◆



〈リデルサイド〉

 街中まちなかに出没した『悪霊デナモス』は退治出来たんだが――どうしていつの間に『綺晶魔導騎士』が5人も増えている?



 こいつらは1人雇うと、傭兵の30人分の給金を払わなければならない。

 『綺晶魔導戦士』というやつらでも、こいつら『魔導騎士』の3分の一の給金で済む。

 それが5人も一気に増えてんだぞっ!!



 えっ!?一国の皇子がセコイこと言うなっ!?

 皇子だから言うんだよっ!!

 仕方ないだろっ!!うちは国土は広いが、貧乏なんだからっ!!



「やはり『魔導騎士』が5人もいると、「皇子いらず」ですね」

「アキュリス…俺が無能のように言うな……」

「違いますよ…皇子に頼らないで済むということです。

 これなら皇子も、ユアナ殿に無理させないで済むでしょうし……」

「…まぁな」

 それだけは評価出来る点ではあるが――。



「ご苦労だったな」

「いいえ。本当に、こんな街中に『ブルゾス』が出てきているんですね。

 もっと早くに来るべきでした」

 騎士の1人、ヨハネスが俺にそう言ってきた。



「ところで、君たちはまったくのフリーの『魔導騎士』だったのか?」

「私たちは協会の専属の『魔導騎士』です。普段はエリュシオン王国の専属騎士として働いています。皆、『第3級 (トゥリトス)』ランクの者ばかりですから、リデル皇子にご負担が掛からないよう頑張りますよ」

 爽やかな笑顔が眩しい好青年だ。



 が――これは一体どういうことなのか?



◆◆◆



「陛下っ!!」

 俺は城に帰るなり、父親の元に向かう。 

 絶対なんか知っているはずだ。



「あぁ。協会からの要請でな。勇者殿をうちで預かる代わりに、勇者殿をお守りする騎士を協会から派遣してもらうという条件で受け入れたんだ。

 それならお前も納得がいくだろうからな」

 ここは皇帝の自室。

 専用の革張りの椅子に座り、紅茶を片手に俺とテーブルを向かい合っている。



「……で。ユアナのランクはどれほどなんですか?俺はガロ殿から聞いていないので」

 というか――質問しても、「今はわからない」とはぐらかされた。

 勇者を護るとかいう名目で『第3級 (トゥリトス)』レベルが5人も派遣されてきてるんだぞ。ありえないだろ!!



「『第2級 (ゼフテロス)』だそうだ。ついでにお前も、ランクが上がっている可能性があるらしくてな。近々専門家を連れて調べに来ると言っていた」



 俺は頭を抱えた。



 あまり高いランクの『アトスポロス』が居ると、その高い『霊力マナ』を目当てに、それを餌としている『ブルゾス』が集まりやすくなってしまう。

 協会の処置は正しいと言える。

 『ブルゾス』に対してほとんど無防備と言っていいこの国へ、能力の高い『アトスポロス』たちを派遣してきた。

 当然余計に『ブルゾス』が集まりやすくなってくるのだが――協会のことだ。

 他になにか手を打ってくるに違いないってやつだろうな。



 それに俺のランクも上がってるって――なんだそれ?



 陛下の部屋から出ると――ミタリーがこっちを見ていた。



 なんか虫の居所が悪くて――ちょっと普段やっていないことをやってみた。



◆◆◆



 お久しぶりです、ミタリーですっ!!



 って、きゃ――っ!!リデル様がぁっ!!



「ミタリー…仕事はどうした?」

「え!?はい…部屋にはマリーがおりますので……」

「違う。お前の仕事だ…」

「へっ!?全部済ませてここにおります。リデル皇子が私に何か御用はないかと……」



 今日のリデル様は――とても怖いですぅっ!!



「俺からの用事はない。あるとすれば…お前がいますぐ自室に戻ることを言いつけるだけだ」

「そ…そんなっ!!」

「俺が5を数える内に部屋に戻れ…いーち。にー……」



 み、皆様っ!!次にお会いいたしましょうっ!!



◆◆◆



 あー。すっきりした――。

 えっ!?可哀想?知るかっ!!



 俺はユアナの顔が見たくて、自分の部屋へと急ぐことにした。


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