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発狂博士


「不採用」

そんなはんこが通知の真ん中にどでかく押してあった。ただ、それは残酷なことに逆向きに押してある。

つまり、全く読んでないということだ。


「これでは、どうなっていたら採用なのか分からないではないか!」

「でも、このホビーメーカーもアイデアなんか募集してませんけどね~。」

怒りで燃える博士に風月は油を注いでいた。


「風月!だからお前はだめだというのだ。募集なんか待っていたら意味がない。募集もしてないのに思わず採用してしまったりするのが面白いんだ。それが実力というものなのだよ、わかるかい?」

突如理論を述べ始める博士は正直うっとうしい。


「だから俺は募集などという生ぬるいものにはすがらず自分の力で勝利を勝ち取るのだ!」

博士はなぜか涙目だ。自分で言っていることに感動している。そこに居合わせた風月と空美は相変わらずのこの男に嫌気がさしていた。


「24回も不採用食らったのにまだやるの?あんたも暇だねー。」

「そうですよ。ぼくはたまたま博士と同じ寮だったからここにいるだけなんですからね。そろそろこりごりですよ。」

その通りだった。博士と同じ寮になった風月は当時二年だった博士に無理やりこの部に入れられてしまっていた。


「わかったわかった。もうやめだ。」

「え、やめるの?」

「本当ですか?」

突然の意外な言葉に二人は喜べばいいのかよくわからなくなっていた。


「今日からは、味や色つきシャボン玉やミニミニけん玉などなど子供っっっぽいものはつくらない。もっとエキサイティングなゲームを作るぞ。」

「「えっ?」」

先ほどの嬉しいような戸惑いは今の瞬間絶望に乗っ取られた。


「年齢層が低すぎたんだ。今度は小中学生対象のものを作るんだ。ここはもともと新ゲーム開発部なんだ。ゲームを作らなくてどうする?ゲームを!」

一人でまたまた熱くなっている博士の目の前で、その他2名は棒立ち中だった。


(空美さん、今のうちに外に行っちゃいましょう。)

(そのほうがいいみたいね。)

発狂している博士をほっといて、忍び足で部屋から出ようとする二人だったが……


「おっと、お前ら二人には今日は徹夜でアイデアを考えてもらうぞ。だから……逃がさん!!」

「げっ!見つかった。フウ君、走るよ。」

「は、はい!」

必死に走る二人だったがわずか5メートルの逃走劇は博士がドアの前に立つことによって終結した。


「あんた、根暗なくせにすばしっこいのよ!」

「根暗で悪かったな。だが、秘めたるパワーというものは誰にでもあるものだ。」

二人は感じた。やばい、また発狂すると…


「はいはい。もうお話はいいわよ~。」

「あ、まだ話は終わってないぞ。まて!あーーーー」

空美は博士を無理やり部屋の奥へ戻していった。


「ま、まぁいい。君たちが手伝ってくれるなら百人力だ!今日は大いにアイデアを出しあおうではないか。ハハハハっ」


その夜、二人は博士とともに長~~い夜を過ごすことになった。


「ここの部分がここに繋がるんだ。でもここがなかなか難しいんだよな。風月はどう思う?風月?」

(なんだ…はぁ、寝てしまってるではないか。仕方ない、もう3時だもんな。俺も寝よう)

今日はいつもよりまぶたが重い。博士はあっという間に眠りに落ちた。


その夢の中で……

「あぁ、またこの夢か。最近この夢しか見ていない。」

とても心地よく覚めてほしくないような夢。

(あなたに…らがあ…マス…の予言…子であ…さいの…)

いつも途切れ途切れしか聞こえないこの声が今日も響いていた。


「何を言っているんだ。もっとはっきり聞こえろ!」

(あな…選択によって…運命…託され…)

「選択?運命?何を言ってるんだ。クッ…ぼやけてい…く。」


「はーーーかーーーせーーーーー!7時ですよ!起きてください!」

「ううん…ふにゃふにゃ、わさびをそんなに入れたらいくらなんでも危険だろ!」

「またその寝言ですか?素ですか?ボケですか?」

「起きろーーーーー。風クン、ちょっとどいて。」

「は、はい」


ベシベシベシベシ……!!

(うわーーー。時野さんのビンタは強烈なんだよなー。ってかあのビンタ食らってへいきなはかせもすごいよな~)

頬を真っ赤にした博士がノサノサと起きあがった。


「なんだ。空美か、というかバイトはどうしたんだ?あと学校も。」

空美はすっかり忘れていた。一日博士の話に付き合って、バイトの途中だということも忘れていた。


「あーーーーーー。もう!気づいてたなら教えてよ~。電話するからちょっと外行くね。」

『はい。すいません。連絡が遅れてしまって、今からそちらへ戻ります。』

玄関の外から空美の声が聞こえてきた。


「風月!将棋をしたら片づけておけよ!」

「えっ?僕は将棋なんかいじってませんよ。」

「じゃあ、空美か?」

そんな話をしていると、空美の電話が終わったらしく中に入ってきた。


「おい、この将棋使ったのおまえか?」

「いやいやそんなの私が使うわけないじゃん。」

「じゃ、じゃあだれが……」

誰も使ってない将棋盤。一体何を表わすのか?


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