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均衡の行方

 数日後。私のサロンに、田町から報告が入った。

 工藤常務との面談は無事に終わり、融資は予定通り実行されること。そして、彼女から「今後も定期的に、康子さんとして会いたい」という、不可解だが拒めない条件を突きつけられたこと。

 田町は、金融マンとしての冷静さを装いながらも、どこかその不条理な二重生活を楽しんでいるようだった。

 後日、私は彼の妻から連絡を受けた。

「最近、主人がすごく肌を気にするようになって。なんだか以前より穏やかな顔をしてるんです」

 私は微笑みながら、「きっと新しい仕事のロジックを見つけたんでしょう」と答えておいた。

 今でも、田町がサロンを訪れるたびに、私は彼に魔法をかける。

 鏡の中で「康子」へと変わっていく彼の瞳には、数字だけでは決して捉えられない、確かな自信と悦びが宿っている。

 彼の歩き方は、まだ少し危なっかしい。けれど、あの厚底ブーツで不安定な地面を捉えようとする時、彼はかつてないほど自由に、自分自身の人生を闊歩しているように見えるのだ。

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