ゴブリンよりヤバい変態扱いされました
第三話です!
今回はカイトが初めて“この世界の冒険者っぽい仕事”をします。……はずだったのですが、なぜかまた誤解されます。
魁人が駆け込んだ先では、異様な光景が広がっていた。
三匹のゴブリンと、ローブ姿の若い女性魔法使い。
互いに睨み合い、しかし──誰も動かない。
まるで地面に押し付けられたように、全員がギシギシ震えたまま静止していた。
「……どうなってるんだ?」
『あれ、重力魔法ですね。たぶん制御失敗して自分と敵ごと押しつぶしてます……!』
ラミアの念話にうなずきつつ、カイトは慎重に近づいた。
すると──
「っ……あ……!」
魔法使いの少女がカイトに気づいた。助けを求めようと表情が明るくなりかけた、が──
その顔は一瞬で、絶望へと変わった。
「(えっ…なんかすごく怖い顔になった…?)」
理由は当然ひとつ。
**海パン一枚のマッチョ男**が全力疾走で迫ってくれば、誰だって恐怖する。
「な、なにその格好……!? ゴブリンより危険人物きたあああっ!」
『魁人さん、第一印象、最悪です……!』
「わかってる! でも今それ言うな!」
少女はパニックのあまり、ゴブリンの方を振り向き叫んだ。
「た、倒すならそっちの変態男を先に倒してえええ!!」
「いやなんでゴブリンに指示出すんだよ!?」
ゴブリンたちは「え? どういう指示?」みたいにカイトをチラ見し、気まずそうに互いの顔を見合わせていた。
『魁人さん、ゴブリンですら困惑してます……』
「俺も困惑してるわ!!」
その時だった。
「ひっ……! も、もう無理ぃぃ!」
少女の声が震え、杖がカチリと鳴った瞬間──
重力が暴発した。
「うおっ!!」
『きゃっ!?』
ズンッ!!
地面全体が沈み込むような衝撃とともに、周囲一帯の重力が跳ね上がる。
ゴブリンは地面にめり込むように倒れ伏し、少女も完全に這いつくばって動けなくなっていた。
カイトも膝をつき、全身が鉛のように重くなる。
「お、おも……っ!? くそっ、体が沈む……!」
『魁人さん、落ち着いて! 今のあなたなら動けます!』
「いや無理だろこれ!!」
『できます!! 筋肉を使うのです!!』
「雑すぎるアドバイスだな!?」
しかし──
カイトは思い出した。
人生で何万回とやってきたスクワットの感覚を。
重力に逆らい、下半身の筋肉を一点に集中し、力を押し返す。
(大腿四頭筋、ハムストリング、臀筋群……全部まとめて爆発させる!!)
ギギギ……ッ!!
太ももの筋繊維がうなり、地面を踏み砕くように力が集まる。
筋肉が熱を帯び、血が騒ぎ、心臓が高鳴る。
「……いける……!!」
バンッ!!
カイトは重力を押し返し、立ち上がった。
『すごいです魁人さん!! 人間の動きじゃありません!!』
「褒めてんだよなそれ!?」
そのまま、倒れ込んだゴブリンたちへ向かってダッシュを開始。
ズドドドド……!!
重力と筋肉がぶつかり合い、走るごとに地面がへこむ。
ゴブリンたちは「なんだあいつ!?」と目をむき、しかし動けない。
(どう攻撃すればいい!? 魔法も武器もねぇし——)
『魁人さん!! とにかく筋肉をぶつけるのです!!』
「それ、戦術って言えるのか!?」
だが、今のカイトにできる攻撃はひとつだけ。
「おりゃあああああ!!ダブルバイセップス!!」
選択:ダブルバイセップス版ボディプレス。
空中に跳び、海パンマッチョが流星のように落下していく。
「「「ギャブ!?!?」」」
――ドガァァァァァァン!!
ゴブリン3匹は同時に、地面とカイトの大胸筋の間で一匹、各二頭筋に一匹がサンドイッチになった。
草原の土が盛大に舞い、衝撃が周囲へ円形に広がる。
完全に動きが止まったゴブリンが、ぴくりとも動かない。
苦しげな悲鳴もない。
「…………え、ちょ、これ……やりすぎた?」
『オーバーキルどころか……もはや“押し花”ならぬ、“押しゴブリン”ですね……』
ラミアが若干引き気味の声でつぶやいた。
と、そこへ――
バチッ!
暴走していた重力魔法がふっと途切れた。
「えっ……? と、止まっ……た……?」
ローブ姿の少女は、魔力を使い果たしたのかその場にへたり込み、肩で荒い息をしていた。
目を大きく見開き、青ざめた表情でカイトを見つめている。
「な、なに今の……!? え……え? ゴブリンが……ぺったんこ……?」
声は震え、どちらが脅威だったのか完全に分からなくなっている。
『魁人さん、自己紹介の前に……優しく笑ってあげてください! 第一印象が……死にかけています!』
「お、おう……」
カイトはつい癖で、ボディビルポーズの基本姿勢:リラックスに加え満面の笑みを作った。
「だ、大丈夫か? 助けに来たんだけど……」
「…………近づかないでください」
少女は涙目で杖を震わせた。
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