転生直後のトラブルは筋肉が原因でした
第2話です。
カイトがいよいよ異世界で最初の一歩を踏み出します。
ラミア(モフモフ)との再会からスタートです。
まぶしい光が一瞬、視界を白く染めた。
次に目を開けたとき、魁人は一面に広がる草原の中央に立っていた。
どこまでも続く風の音。
「……ここが、異世界……?」
転生の時とは違い、体はしっかりと地面に立っている。しかし胸の奥には、不安が重く沈んでいた。
自分は戦えるのか。本当に、この世界でやっていけるのか。
ギュッ──。
気合を入れるように拳を握った瞬間、魁人はわずかな違和感に眉をひそめた。
(なんだ……?力の入り方が、微妙に噛み合ってない感じがする……?)
考える暇もなく、“それ”はやってきた。
ふわり。
白くて丸くて、マタタビ……いや、猫のぬいぐるみのような生き物が、草原の向こうからふわふわ浮かんでくるのが見えた。
「……なんだあれ?」
次の瞬間──
『魁人さんっ! 無事ですか!?』
頭の中に直接声が響き、魁人は飛び上がった。
『わ、私です! ラミアです!』
「はっ!? ラミア!? 女神さま!?……いや、その姿は何!?」
白いモフモフは目の前でぴたっと停止し、ちょこんと傾きながら震えていた。
『すみません! 転生の途中で、魁人さんの筋肉密度が想定より高くて……その……途中で反応が乱れたので、不安になって……!変なことになっていないか確認しに来ました!』
「……俺の体、大丈夫なのか?」
『いま詳しく確認中です……!でも命に関わる異常はありません!ただ“想定外の事態”だっただけでして……!』
「逆に心配になる言い方なんだよな……。で、その姿は?」
『はい。この世界の住人に私が“女神”だと知られるわけにはいかないので、しばらくはこのマタタビ形態です。会話は全部、念話で行います!』
「そっか。じゃあ、これからはずっと一緒に?」
『もちろんです!魁人さんがこの世界でちゃんと生きて、そして……世界を救えるよう、女神として全力でサポートします!あ、あと、私のクビのためにも……!』
「最後の理由がオチみたいになってるぞ……」
『大事なんです……! 本当に!』
ラミアとのやり取りをひとまず終えると、白いモフモフは小さく咳払い……いや、咳払いっぽい動きをした。
『では魁人さん、とりあえず今は“冒険の準備”をしないといけません! まずは町を探しましょう!』
「町? ……どっちにあるんだ?」
『えっ……』
ラミアはふわりと上下に揺れた。たぶん、気まずいという感情表現だ。
『その……私、まだ“新米女神”でして……。世界の情報を勝手に読み取る力とか……ないんです……』
「え、女神なのに?」
『はい……。でも、この世界に“危機”が迫っているのは確かです!それに対応できる勇者――つまり魁人さん――を送り込むことだけは、ちゃんと分かっています!』
「なるほど……最低限のミッションだけ共有されてる感じか」
『そんな……ニュアンスです……』
ラミアはしゅんとしながらも、真剣な声色で続けた。
『それに……人々が勇者さんに抱く“感謝の気持ち”を通じて、女神である私は力を得ることができます。
だから……魁人さんが頑張れば、私も強くなれるんです!』
「人を助けることで、お前も強くなるってことか?」
『はいっ! 完全にその通りです!』
「よし、ならやってやるさ。」
『魁人さん……!』
小さなモフモフが光でも出しそうなくらい嬉しそうに震えた、そのとき――
──きゃああああああっ!!!
遠くから、甲高い悲鳴が草原を突き抜けて届いた。
「女の悲鳴だ!」
『魁人さん! 初仕事ですよ! 行きましょう!』
ラミアが警告するより早く、魁人は地面を蹴って駆けだしていた。
風を切り、草を踏みしめ、悲鳴の元へ一直線に向かう。
視界の先に見えたのは――
粗末なローブを身にまとい、杖を握りしめて必死に応戦する少女。そして、その周囲を取り囲む三匹のゴブリン。
「っ……く、来ないでっ……!」
少女はなんとか杖から魔力を放とうとするが、震えのせいでうまくいっていない。
『魁人さん、あの子危険です!』
「分かってる!!」
魁人は拳を握りしめ、少女へ向かって走り込む――。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
カイトとラミアのコンビが、ここからどんな冒険をしていくのか……ぜひ続きも楽しみにしていてください。
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今後ともよろしくお願いします!




