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筋肉は裏切らない異世界転生  作者: カジラー


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1/3

筋肉は裏切らない…はずだ

「――フロント・ダブルバイセップス!」


眩しいライトに包まれ、会場がどよめく。 舞台の中央でポーズを決めているのは、行本魁人ゆきもと かいと28歳。


十年間の努力で鍛え上げた身体は、間違いなく人生最高の仕上がりだった。


(今日こそ優勝だ! 俺の筋肉は裏切らない!)


審査員たちの厳しい視線さえ、今の魁人には心地よい。


その瞬間――


ズンッッ!!


体育館全体が揺れた。 ライトが明滅し、観客のざわめきは悲鳴に変わる。


「地震か!?」「天井が――!」


魁人が振り返ろうとした瞬間、視界が真っ白に弾けた。


――そして。



---


「……え?」


気づくと、真っ白で果てのない空間に立っていた。


(俺……地震のがれきに巻き込まれた?) (いや、ケガも痛みもないし……夢?)


混乱する魁人の前で、ぽふっと白い煙が弾けた。


「……あわっ……あわわ……!?」


煙の中から現れたのは、小柄な少女だった。


ゆるい銀髪、頭上に淡く光る輪、小さな神官服。


どう見ても“神秘的な存在”――

だが、顔だけは真っ赤だった。


「な、なんで海パンなんですか!?

 転生召喚は“正装”って神界規則に……!」


「いや、俺ボディビルの大会中で……これが正装…」


「大会!? なんの大会でそんな……そんな肌色面積で……っ!」


少女はぶんぶん手を振りながら叫ぶ。


「わ、私は! 新米転生女神のアステリア•ルミアと申します!

 あなたを異世界に送り込むためにお迎えに……!」


(新米……だいぶテンパってるが、大丈夫か?)


ルミアは震える手で書類束をめくった。


「あなたを……世界を救う“勇者候補”として転生させる予定です!」


「俺、ボディビル大会の最中だったけど……」


「は、はい……す、すみません……予定の人選がゼロになってしまい……!」


「予定の人選?」


ルミアは涙声でゴニョゴニョと続ける。


「前に転生させた方々が……“自分たちは勇者だ”って調子に乗って……の最初のボスで全滅してしまい……」


「最初で?」


「……はい……」


ルミアは肩を落とした。


「だから……あなたが最後の希望なんです!」


ルミアは、海パン姿の魁人をじぃっと見て……


「で、でも! あなた……その……筋肉がすごいので……!

 魔法が使えなくても、体でなんとか――いえ、たぶん、きっと……!」


「ちょっと待て、俺、魔法が使えない世界に行くのか?」


「いえ、“魔法が使えない人が珍しい世界”に行きます!」


「おまえ今すごい情報さらっと言ったな」


(異世界に転生したら魔法世界で魔法使いたいよな…)


ルミアは両手を胸の前でぎゅっと握りしめ、今にも泣きそうに言った。


「どうか……異世界を救ってください……!

 あなたが失敗したら、わたし……本当にクビなので……!」


「そこなんだな、一番の理由」


ツッコミながらも――


必死に頭を下げる少女に、魁人の胸がぐっとなる。


(こんなに頼まれたら……断れないだろ)


「……わかった。やるよ。やってみる」


ルミアの目がぱぁっと輝いた。


「ほ、本当ですか!?

 筋肉の人、最高です!!」


「筋肉の人って呼び方よ」


「では! 転生準備を開始します!

 海パンのまま行くことだけは……もうどうにもできません!」


「いやせめて布を――」


言い終わる前に、白い光が魁人を包む。


光の向こうで、ルミアが穏やかに笑った。


「行ってらっしゃい……あなたが最後の希望です……!」


その瞬間だけは、本当に“女神”の顔だった。


(筋肉は裏切らない。

 なら……異世界でも、きっと戦える!)


魁人は拳を握った。


――次に目を開けたとき。


そこは海パン一丁で放り出される、魔法と危険が渦巻く世界だった。

第1話を読んでくださりありがとうございました。


魁人カイトの海パン姿と女神リュミナのテンパり具合で、少しでも笑ってもらえたら嬉しいです。

この後、異世界での生活が本格的に始まります。

筋肉と魔法のちょっと変わった組み合わせがどう展開するか、次回もお楽しみに!

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