5話『おもしれーデート③』
綺麗なオレンジ色の空が、この世界を覆い隠す頃。女物の衣類を片手に、俺達はカラオケに来ていた。
「ちょっと疲れたねぇ~」
カランカランと、コップに入ってる氷が音を鳴らす。
ソファーにへたり込む様に座る真奈が、冷たいドリンクを喉奥に流し込み、そう呟いた。
まぁ、それもその筈だろう。今日は水族館に行ったり、服屋でショッピングしたりと、色々あったのだから。
それ相応の疲労も身体に溜まり、まるで実家に居るかの様に脱力してしまうのも無理はない。
無理はないのだが……
(ちょっと寛ぎ過ぎじゃないか?! まるで実家のような安心感ですかぁっ!?)
心の中でツッコミを入れていると、オレンジジュースを飲んでいた誠が、子どもの様な悪戯な笑みを浮かべた。
「なぁなぁ……みんなでさ、勝負をしないか?」
「「「ほう……?」」」
勝負と言う甘美な響きに、裏で音量設定をしてくれていた茜すらも反応を示し、三人の声が重なり合った。
その事実に、誠はますます気色の悪い笑みを浮かべる。
「笑顔キモすぎかよWWW」
「キモい言うなし!WWW」
「いやいやいや、さっきのはキモかったよ(マジ)」
「……えっ?WWW まっさかぁ~、言い過ぎWWW」
「真奈に同意」
「・・・・・・みっ……」
「し……死んだ……っ!?」
くっ、誠が死ぬなんて……。
美味しい奴を亡くしたよ……色んな意味で……。
「それはそうとさ、何で勝負すんの?」
「あー、それはねぇ……」
「「復活はや……」」
生き返った誠は、まるで何も無かったかの様な態度で、カラオケ用のパッドを操作し曲を予約する。
「何予約したんだ?」
「ふっふっふぅ……勝負の内容は……」
「「「勝負の内容は?」」」
バシッ!と、誠がテレビ画面を指差した。俺達はその動きに釣られる様にして、視線を向ける。
抑えきれぬ高揚に、バクバクと胸が高鳴りを魅せる。
やがて・・・それが高潮に達したとき、誠のモノとは思えない大声と共に、その勝負内容が明らかになった。
その明らかになった勝負内容とは・・・
「君○代で国民バトルだぁああああっ!!」
「「「………………………………」」」
俺達は一瞬、訳も分からず固まった。しかし、それも刹那とも言える瞬間だけで、すぐさま理解する。
何故ならカラオケの画面に、ドンッ!と『君○代』という曲名が映し出されたからだ。
「「「うぉおおおおおおおお!!!」」」
天高くまで手を掲げ、三人で大盛り上がりした。
まぁ……何で君○代なのかぁ?とか、そもそも国民バトルって何だよぉ?とか、気にならんでも無いが……。
そんなのはどうだって良い……。ただ、今という青春の一捲りが楽しければ、何も問題は無いのだ。
「よっしゃあ! 今日は歌うどー!」
「「「おー!!」」」
「それじゃあ、国民バトルの開始だぁっ!」
それぞれが国歌斉唱をした。
その結果、非国民に選ばれたのは誠でした。
「ちっくしょーーーーっ!!!!」
◆◆◆
【番外編ダイジェスト】
「(紡)よし、これから誠の渾名は非国民だな」
「「(茜・真奈)さんせー!」」
「(誠)そんなー! 渾名がそれは酷いよー!」
「「「(紡・茜・真奈)非国民に人権ねーから!」」」
「(誠)嘘だドンドコドン!!」
その後・・・
「(茜)とっとこ~、走るよハ〇太郎♫ だーいすきなのはー!」
「「「(他三人)はい、せーのっ!」」」
「(茜)ひーまわりのたねー!」
「「「(他三人)俺もー!」」」
「(誠)水の様に優しく 花の様に劇しく♫」
誠によるガチダンス
「(紡)バ〇リスクタイムダンスガチ勢でホント草」
「(茜)キレッキレで草」
「(真奈)しかもこれだけ歌上手いの草」
「(真奈)もっとドラマチック・恋ハレルヤ♫ 二人だけの」
「「(紡・誠)☆YA☆RA☆NA☆I☆KA☆」」
「(茜)ハッ!!」
「(紡)悪〇退散!悪〇退散! 怨霊、ものの怪、困った時は」
「(茜)ド〇マン!セーマン!」
「(誠)ドーマン!セ〇マン!」
「(真奈)直ぐに呼びましょ陰〇師」
「「「「(全員)徹子!!!」」」」
こうして俺達ニ〇ニコ同窓会(仮)のカラオケが幕を閉じたのであった。
◆◆◆
※国民バトルとは
:『君○代』を全員で国歌斉唱をして、一番点数の高かった人が優勝し、第一国民として持て囃される。逆に一番点数の低かった人は、非国民としてカラオケ代を奢らさせられる(財布の)デスゲーム。