青瞬
最後のチャイムが鳴った。
それは三年前始まりを告げた音で、僕らの視界を青く染めた音だった。
教室の黒板は見たことないくらいに言葉で埋め尽くされていて、それぞれの思いが今にも溢れそうだった。僕はそれを見つめながらふと振り返る。
思えば、三年間僕らはここで過ごしたんだ。
長いと思っていた一日の長さは、振り返ってみるとそうでもなくて、あっという間だったななんて思う。課題が終わってなくて焦った朝も、皆と笑いながら過ごした昼休みも、自転車を押しながら帰った放課後も、もう戻ってこない。
全部が嘘だったようで、あの時の眩しさに眩暈がするようだった。
終わったんだ高校生活。
なんだか釈然としないその感想は、僕の胸に深く滲んでいく。
「おーい! 篠田! 皆で写真撮るってー!」
「わかった」
廊下側の窓から声をかけられ、僕は教室から出ようと扉に手を掛けて、止まった。
ここを出たら、本当に終わりなんだ。
深く滲んでいた言葉が段々と形になって溢れそうになる。
面倒だな。学校って本当に面倒なんだ。朝早く起きなきゃいけないし、登校したら良く分かんない授業を延々と聞かされるし、一日の半分以上を学校に奪われるんだ。面倒だったよ。それに、ほら、今だって。
頬を伝う雫は僕の視界を青く滲ませた。
面倒なことこのうえないな。
青かった日々は一瞬で、きっとそれはかけがいのないものだった。
僕は扉を開ける。
眩暈のするようなあの日々に――
「さよなら」
そう呟きながら。
「篠田! こっち…って泣いてんの! 可愛いかよ!」
「頭撫でんな! あと泣いてねぇから!」