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あなたは優しい嘘を吐いた  作者: おのまとぺ
第二章 ウロボリア王立騎士団
17/65

17 第三班


 プリオール地方の遠征で共闘した第三班の皆は、変わらぬ姿で私を迎えてくれた。ダースがモジャモジャの口髭を蓄えて現れた時は驚いたけれど、どうやら別れの際に魔術師ラメールに掛けてもらった毛生えの魔法が消えていないらしい。


「俺はワイルドにしてくれって言ったんだけどよ、ラメールのやつ度合いを間違えてやがるな」

「ふふっ、結構似合ってるわよ」

「ほら!ローズもそう言うし、良いじゃない」

「ちくしょう……もうお嫁にいけねぇ…」


 ケラケラと笑い飛ばすクレアとは反対に、ダースは大きな身体を丸めて嘆く真似をする。


「そう言えばさ、ゴア隊長が貴女とフランのこと探してたけどもう会った?」

「いいえ。私たち今さっき来たところなの」

「待って、まさか付き合ってるとかじゃないわよね?」

「えっと………」

「二人は一緒に住んでるんですよ」


 背後からヌッと姿を見せたフィリップが告げた。

 目前に立つクレアの顔色が青くなる。


 ダースは三度ほど瞬きを繰り返して「それってつまり」と先を促すようにフィリップの顔を窺う。穏やかな紳士は説明役を買って出るつもりらしく、頷いた。


「ゴア隊長の困った癖ですよ。ローズさんにフランくんをマッチングさせて、何か面白いことが起きないか観察したいんでしょうね」

「そんな命令まかり通るの!?」

「まぁ、王立騎士団は変わり者の宝庫ですから」

「じゃあなに、二人は恋人ではないってこと?」

「断じて違います!」


 大きな声で否定した先でクレアが「あ、夫が来たわよ」と茶化すように私を突いた。私の頭の上に大きな手がポスンと載っかる。


「俺だって選ぶ権利があるからな」

「………っ!」


 失礼極まりない。

 無理矢理キスしてきたことをバラしてやろうか。


 というか、元はといえばフランが私の部屋に入ったところを隊長に目撃されたのが原因だ。でもでも、それを言い出すと久方ぶりのアルコールに潰れた私に非はある。


(悔しいけど……黙っておこう)


 歯を食いしばりながら黙っていたら、フィリップがコホンと咳払いをして口を開いた。



「先ほどゴア隊長から話を受けましたが、しばらく我々元第三班メンバーは一緒に行動することになりそうです。フランくんやクレアさんは先輩として新生第三班をリードしてください」

「お任せあれー!これで私がリーダーかしら?」

「リーダーは今回も私です」

「なんでっ!」


 地団駄を踏むクレアに笑っていたら、フィリップが「それと、もう一つ」と言って彼の背後に居た小柄な男の背中を押した。


「新しく仲間になったメナードくんです。彼は今日入隊した騎士で、採用試験で入った新人だそうです」


 赤毛にそばかすの男は、緊張した面持ちで私たちの顔を見回す。青い瞳がふるふると震えていたので、思わず私は前へ進み出た。


「メナード、初めまして。私はローズよ。王立騎士団に入ったのは今日からだから、一緒にがんばりましょうね」

「………! はいっ…!」


 差し出した右手をメナードが握り返す。

 まだ幼さの残った顔立ちに親しみを覚えた。


 ダースやクレアも続いて各々自己紹介を行う。最後にメナードはフランに向き直って、先ほどよりも緊張した面持ちで顔を上げた。長身のフランが彼を見下ろすと睨んでいるように見えるので、内心ヒヤヒヤする。


「あ…あの、僕、北部出身なんです」

「………あぁ」

「フランさんが一人で北部の山脈地帯の魔物を討伐した話、何度も聞きました。僕それで、騎士になりたいって思って…」

「メナードくんはフランくんが憧れなんですね」

「はい!よければ後で、その時の話を聞かせてもらえませんか…!?」


 フィリップの言葉添えを受けてキラキラした瞳を向けるメナードを一瞥すると、フランはふいっと視線を外した。


「悪いが、もう忘れた」

「え?」

「そんな昔の話憶えてない。楽しい話でもないし、お前が期待するような内容を伝えることは出来ない」

「………あ、すみません…」


 見るからに落ち込むメナードの背中を叩きながら、クレアが「経験踏んだら一個一個憶えてらんないのよ」と励ました。


 私は頭の中で、あの吹雪く雪山の景色を思い出す。

 北部の山脈地帯。私が討伐に失敗した場所。


 プラムを身籠った、あの黒い龍との夜を。



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