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魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~  作者: 岡本剛也
第2章

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第73話 勝鬨


 ジルーガと戦った場所から戻っている道中、向こうから近づいてくる二匹のゴブリンが見えた。

 あの形状は間違いなくニコとアモンであり、こっちに向かって来たってことは無事にボスである赤いオーガを倒せたということだろう。


「ニコ、アモン! 無事に倒せたのか?」

「シルヴァ! ちゃんトたおしてキタぞ! こっちはカナリあぶなかったガ!」

「うが!」

「そうか。ボスを倒す大役を任せたから、ニコとアモンのところを一番心配していたが……倒すことができたなら良かった」


 ニコがいれば安定するとは思っていたが、赤いオーガもそれなりの力を持っていたため不安は強かった。

 ただ、ここが倒せたということはバエルの方も大丈夫だろう。

 移動しながらも、不安を抱えていた気持ちがグッと楽になった。


「ちなみに広場の方はどうなっている? イチ達が戦っているだろ?」

「それはミテいない! シルヴァの方がシンパイだったから、イソイでこっちにキタ!」

「そうか。通常種オーガならやられる心配はないと思うが、数的にまだ残っている可能性が高い。高台まで戻ってボスの首を切り、その首を掲げてオーガ達の心をへし折ろう」


 残っているオーガに力のある奴はいなかったと記憶しているため、心さえ折ることができれば終戦となるはず。

 まぁボスが殺られたことで逆に火が付いてしまう可能性もあるが、そうなったらそうなったで全てのオーガを殲滅すればいいだけだからな。

 俺はニコとアモンを連れ、高台へと全速力で戻った。

 


 高台が見えてきたと同時に、キョロキョロしている二匹の影が目に入ってきた。

 間違いなくバエルとシトリーであり、ここにいるということは、バエルとシトリーも青いオーガを倒して俺の下に駆けつけてきてくれたのだろう。


「バエルとシトリーも駆けつけてくれたのか」

「あっ、シルヴァさん! 心配はしてませんでしたが、万が一がありますので駆けつけました。とにかく無事な姿を見れて良かったです!」

「青いオーガはバエルさんが仕留めてくれました。赤いオーガも死んでいるということは……決着はついたということでしょうか?」

「そう思っていい。下の様子はどうなっている?」

「オーガ達は混乱を極めていて、まともに機能しておりません。攻め込まれたのが初なのでしょう」


 それはそうか。

 オーガの群れに喧嘩を売れるような魔物は、この森では限られている。


 シトリーの報告を受けてから下を見てみると、戸惑っているオーガ達を薙ぎ倒しているイチ達の姿が目についた。

 練度、強度共に通常種オーガとはレベルが違い、このまま見ていたらあっという間に全てのオーガを殲滅してしまうだろう。


「早いところ下に降りるとしよう。オーガもできることならば、手下に迎えたい」

「――ッ! シルヴァさんはそこまで考えていたんですね! 僕はてっきり倒すだけで終わりかと思っていました」

「俺達に従うならの前提だけどな。とりあえず赤いオーガの首を持って降りるぞ」


 綺麗に両断されている惨い赤いオーガの死体から、首を落として掲げる。

 ……それにしても、ニコは敵に回すと恐ろしいな。


 速度だけでなく、赤いオーガを両断できるぐらいのパワーも兼ね備え始めたか。

 両断された赤いオーガの体を見てそんな感想を抱きながら、鋼の剣に首を突き刺し上に掲げながら下の広場に降りた。


「オーガども!! キケええええええ!!」


 アモンに大声を上げさせ、オーガ達の視線をこちらに集めさせる。

 振り向いた時は好戦的な視線を向けてきたオーガ達だったが、俺の剣に突き刺さっている赤いオーガの生首を見た瞬間、一気に怯えたような表情へと変わった。

 

 魔物同士の戦いで敵に怯えたら終わりであり、心が負けを認めたら本能が攻撃をさせてくれなくなる。

 俺達は最弱のゴブリンであり、この厄介な本能には散々苦労させられてきた。

 今度はオーガ達に味わってもらう番であり、俺は怯えているオーガ達の真横を堂々と通り過ぎていく。


「よく聞け。お前達のボスである赤いオーガは死んだ。右腕だった青いオーガも、側近だったジルーガも死んでいる。まだ戦うというなら相手をするが――死にたくない者は武器を置け!」


 俺が力強くそう伝えると、次々にオーガ達は武器を地面に捨てて両手を上げだした。

 一匹くらいは自棄になって攻撃してくる奴も出てくると思っていたのだが、全員が武器を捨てて降伏の姿勢を見せてきた。

 ここからどうなるかは分からないが、ひとまず心を折ることはできたと見ていいだろう。


 生き残っているオーガの数はザッと三十匹前後。

 どうやって服従させるかが難しいところだろうが……今は先のことよりも、オーガに勝利したことを喜ぶとしよう。


 ハズレ役とも言える通常種オーガの討伐を担当してくれたイチ、サブ、ストラスとも合流し、互いに互いの健闘を称え合う。

 そして、全員で勝鬨を上げて勝利を喜んだ。


 これで正式に俺達を縛る者はいなくなり、本格的に強化だけを考えて動き出すことができる。

 このまま強くなっていけば、勇者への復讐も可能と思えるぐらいには希望が見えてきた。


 最弱の魔物によって殺された勇者。

 この屈辱的な汚名を着せるためにも、オーガへの下克上だけで満足せずにまだまだ上を目指す。

 声を上げて勝利を喜びながらも、俺は冷静に未来を見据えたのだった。


お読み頂きありがとうございます。

第73話 勝鬨 第二章が完結致しました!

ここまで少しでも面白いと思って頂けたのであれば、ブクマ、↓の☆☆☆☆☆による評価を頂けたら幸いです <(_ _)>ペコ

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辺境の村の勇者、四十二歳にして初めて村を出る
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