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魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~  作者: 岡本剛也
第2章

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第68話 士気


 大成功に終えた遠征から、あっという間に一ヶ月が経過した。

 この間も順調そのものであり、遠征の成功の勢いをそのままに今日まで来ることができたと思う。


 俺自身は新たな能力を手に入れてはないのだが、決めていた通りイチにトロールを捕食させることに成功しており、ついでにアモンもトロールを倒せている。

 相変わらず模擬戦では連戦連敗のアモンだが、日頃の鍛錬を続けているし、これから行われるオーガとの戦争ではやってくれるのではと密かに期待している。


 ストラスとシトリーに関しては、俺が何かしたわけではないのだが、勝手に強くなってくれている。

 シトリーはバエルと出会ったことで大きく影響されたらしく、二人で何やら魔法についての研究のようなものを毎日行っていた。

 前世でも魔法は一切使えなかったため、俺には話にすら入る余地がなかったのだが、期待していいはず。


 そしてストラスはというと、サブを気に入ったようで毎日の狩りに付き合っていた。

 さっきも凄い技術を身につけましたと自信あり気に言ってきたため、ストラスの身につけた技術も楽しみである。


 俺がゴブリンのリーダーに襲名してからの目標にしていた、サブリーダーの強化も十分に行うことができたし、もう気は熟したと言っていい。

 明日、いよいよオーガの集落を襲いに向かう。


 俺は最終確認を行うため、バエル、イチ、ニコ、サブ、ストラス、シトリー、アモンの七匹を呼び出した。

 既に明日襲撃を行うことは伝えてあるため、これまでにない緊張感が漂っている。


「集まってもらって悪かったな。これから明日に向けての最終確認を行う」

「悪いなんてことは一切ありません! 最終確認は絶対にやっておきたいと思っていましたので!」

「アモンさんと一緒に魔法の確認を行っていましたが……緊張で集中できていなかったのでありがたいぐらいです」

「オレもはじめてキンチョウしています。ボウケンシャをおそったときは、リカイじたいしていなかったのでナントモなかったですけど、コンカイはあのオーガをオソウとアタマでわかってますから」

「イチとおなじでボクもキンチョウしてます」


 イチとサブを見てみると、確かに体が震えているのが分かる。

 これは明確に知能が高くなった明確な弊害だな。


 緊張という経験も大事なんだが、大一番ではしないに越したことがないからな。

 逆にニコとアモンは全く緊張していない様子。


 ニコはいつも通りと言えるが、アモンは少し意外。

 この中では一番弱いし、遠征でも割りかしオドオドとしていたはずだからな。


「緊張は仕方ないだろう。絶対に負けられない戦いだし、相手は生まれた時からゴブリンを支配してきたオーガだからな。……逆にアモンは緊張していないようだが、何も感じていないのか?」

「バカだからヨクわかってないケド、オレはゼッタイにマケナイとカクシンしている。シルヴァだけじゃなく、ナカマたちがツヨイことをシッテいるからな」


 フラットな感情から出た、決して強がりで言った訳ではない言葉。

 この中で一番弱いアモンから出たということもあり、この言葉で緊張していた組の力がふっと抜けたのが分かった。

 俺は俺達のことを自然な口調で仲間と言ったアモンに嬉しくなったし、このタイミングで話を振って良かったと心の底から思う。


「確かにアモンの言うとおりだな。負けられない戦いだが、俺達は強いし負ける要素がない。目標は負傷者ゼロでの完封勝利。お前達ならやれると俺は信じている。明日はーー俺に力を貸してくれ」

「「「オオッー!!」」」


 アモンに乗っかった俺の言葉に、地響きがするほどの返事をしてくれたみんな。

 終始漂っていた緊張の空気から一転、士気が一気に高まった。


「この流れで担当について話す。まずはイチ、サブ、ストラス。この三匹で有象無象のオーガを殲滅してほしい」

「分かりました。私にお任せください!」

「オレがマモッテ、サブとストラスにじゆうにコウゲキさせる!」

「ボクがいころします!」


 頼もしい三匹からの返答。

 イチがいれば安定するし、この組はまぁまず心配ないだろう。


「次はバエルとシトリー。青いオーガがいるから二人で青いオーガを仕留めてくれ。トロールと似たタイプだから、バエル主導で戦えば苦戦はしないはず」

「なるほど。僕が前衛で攻撃を捌きながら戦います」

「私は魔法でサポート致しますね」


 この二人は連携面でも優れているし、特に心配もしていない。

 次が唯一心配であり、どう転ぶか俺にも分からない。


「最後はニコとアモン。二人には赤いオーガ。つまりオーガのボスを倒してもらう」

「キイテいたが、オレとニコがボスか。ーーウデがなる!」

「うがっ!」


 二人は自信満々なのだが、一番不安なのはこの組。

 基本的にニコと赤いオーガの一騎打ちを想定しており、アモンには何かあった場合の補助役のような立ち回りをしてもらうつもり。


 ニコが負けた時点で崩壊する策のため、不安要素は大きいのだが……。

 ニコならやってくれると俺は信じている。


「そして、俺はだが――ジルーガを倒す」


 赤いオーガよりも厄介だと判断しているジルーガは、俺一人で倒す予定。

 ネームドであり、高い知能を持つジルーガが弱いわけがなく、ここが今回の下剋上において一番の難関となるだろう。


「作戦については理解してくれたか? バエルとシトリーは青いオーガを倒し次第、アモン達のサポートに向かってくれ」

「分かりました! 時間をかけずに倒して、すぐにサポートに向かいます!」

「作戦はこんなところだな。改めて、明日はよろしく頼んだ」

「「「オオッー!!」」」


 再び地鳴りのような返事が起こり、高い士気を保ったまま作戦会議が終了した。

 明日は運命の一日。

 絶対に下剋上を果たし、俺達はこの森の覇権をオーガ達から奪い取って見せる。




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