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魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~  作者: 岡本剛也
第2章

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第63話 才能なし


 ストラス、シトリー、アモンをサブリーダーに据えてから約二週間が経過した。

 この間は引っ越しの作業と、サブリーダーの強化に費やしており、ホブゴブリンのストラスとゴブリン希少種のシトリーはメキメキと力をつけている。


 特にシトリーは物覚えが良く、新たに知ったのだが回復魔法も使えるということで即戦力。

 ストラスもシトリー程ではないが、イチとタイマンで戦えるくらいには成長してくれている。


 問題なのがアモンであり、やる気は誰よりもあるのだが強くなれない。

 言葉がたどたどしかったことからも分かるように、他のゴブリンよりも知能より本能の部分が大きく、俺が瀕死にさせた魔物のトドメを刺すことが出来ないのだ。


 覚悟を決めている姿も見ているだけに、アモンが苦しんでいる姿を見るのはかなり心苦しいものがある。

 サブリーダー三匹の中では一番気に入ってしまっているということもあって、どうにか強くなってほしいんだけどな。


 そんなことを考えながら、俺は新しく移り住んだ集落を出て、木々の密集した人目につかない場所に来た。

 音を立てないように近づくと、素振りをする風斬り音が徐々に聞こえてくる。


 除いてみると、そこにはアモンが必死に素振りをしている姿が見え、その近くにはアモンの部下であるゴブリンビレッジャー達も素振りをしていた。

 戦闘の才能もニコはもちろん、バエルやイチと比べても足らなく、その差を少しでも埋めるために毎朝こうして素振りをしている。


 こういった姿にも俺は弱く、オーガへの下剋上を最短で果たすなら、ストラスとシトリーに狙いを絞り、二匹を重点的に強化していくのが正しいことは分かっているのだが……。

 俺はアモンを強くしたいという気持ちが大きい。


 こうしてゴブリンビレッジャー達にも慕われているところを見ても、いずれその力が役に立ってくれる――と根拠はないが確信しているんだよな。

 俺は大きく深呼吸をしたあと、必死に剣を振っているアモンに声をかけに行った。


「アモン、今日も剣を振っているんだな」

「あっ、シるヴァ! ……ずっとメイワクをカケているかラ、スコシでもツヨクなろうとオモって」

「その心意気は買いたいが、やっぱりゴブリンが強くなるには魔物を食べることだ。こうして剣をするよりも弱い魔物でいいから捕食することを考えたほうがいい」

「うぅ……ワカってはイルんだが」


 体がついてこないと言いたげに、自分の胸をペチペチと叩き始めたアモン。

 ここがゴブリンにとっての一番の壁だろう。

 その壁を越えさせるためにも、今日も手伝ってあげよう。


「とりあえず今日も魔物狩りに行くか? 俺が付き合ってやる」

「シるヴァ、ほんとうにアリがとう。イカセてほしい!」

「……キョウはボクたちもツイテいってイイですか? チカクでオウエンしたイです」


 いつものように俺とアモンだけで魔物狩りに行こうと考えていた中、ゴブリンビレッジャーがそんな提案をしてきた。

 これまでは二匹の方が動きやすいし、ゴブリンビレッジャー達について来られても困ると思っていたのだが、意外と一緒に来させるのはありかもしれない。

 見知った仲間からの応援が力になることもあるしな。


「いいかもしれないな。その代わり、ゴブリンビレッジャーの四匹は俺の後ろに留まっていてくれ」

「「アリがとうゴザいます! シズカにツイテいきまス!」」


 こうしていつもとは趣向を変え、ゴブリンビレッジャー達に同行させる形で魔物狩りを行うことに決めた。

 向かう先は最近の狩り場のトレンドである、オーガの広場と集落の中間地点に生えている大樹前。


 この大樹が影響を及ぼしているのか分からないが、この大樹付近にはよく魔物が集まってくる。

 多種多様な魔物がやって来るため、狩り場としてはかなり最適の場所。


 近寄ってくる魔物を適当に追い払いながら、アモンに丁度いい魔物が来るのを待つ。

 大樹にたどり着いてから約三十分。


 思っていたよりも早く、丁度良さそうな魔物が姿を表した。

 ニコに食べさせた魔物である、フォレストウルフ。


 【縮地】という使い勝手な能力を得られる上に、魔物自体の強さもそこまででもない。

 この魔物ならトドメを刺せると信じ、俺はフォレストウルフの前に飛び出して、反応する前に首元に蹴りを叩き込んだ。


 俺も日々強くなっていることもあり、この蹴り一発でフォレストウルフは痙攣しながら動かなくなった。

 後はアモンがフォレストウルフを倒すだけなのだが……昨日までと変わらずに剣を握ったまま固まってしまっている。


「アモンさン! ガンバッてくだサイ!」

「アモんさんならタオせます!」


 ゴブリンビレッジャー達の声援が飛ぶが、どう足掻いても体が動かない様子。

 これは長期戦になるかもしれない――そう思った瞬間、木々の間から別のフォレストウルフが姿を現し、襲い掛かってきた。


 どうやらペアで動いていたようで、倒されたフォレストウルフを助けに来たのだろう。

 完全に不意を突かれ、前にいるアモンを狙ってきたが……まぁ余裕で対応できる。


 俺が襲ってきたフォレストウルフの対応をしようとした瞬間、後方にいたゴブリンビレッジャーの内の一匹が飛び出した。

 アモンを助けようという行動だろうが、あれだけ前に出るなと言ったのに。


 フォレストウルフは、アモンから飛び出したゴブリンビレッジャーに標的を変えた。

 絶対に外さないように狙いを定め、【毒針】を撃ち込む。


 完璧に突き刺さったことを確認し、後はゆっくりと仕留めようとした時。

 先程まで動けずにいたアモンは素早く動き出し、【毒針】の刺さって動きが鈍くなっているフォレストウルフを一刀両断。


 頭の理解が追いついておらず、少しの間呆然としてしまったが……どうやらアモンは仲間のためなら本能に縛られずに体を動かすことができるらしい。

 そんな性格だということを、俺は少し間をおいてから理解することができた。



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