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魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~  作者: 岡本剛也
第2章

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第54話 小躍り


 想像以上に悔しいな。

 完全にニコのことは頭に入っていなかったということもあって、油断してしまった。


 勝利の小躍りが絶妙に腹立つ動きなのもちょっとムカッとくる。

 深呼吸をしながら気持ちを落ち着かせ、横取りしてきたニコに声を掛ける。


「今回は完全にやられた。最初から狙っていたのか?」

「うがが! ウガッ!」


 身振り手振りで、狙っていた訳ではなくギリギリ間に合っただけということを伝えてきた。

 決して手こずった訳ではないのだが、先にメスコボルトの方から斬ったのが駄目だったのだろう。

 ニコには負けたくないと俺を送り出してくれたバエルには申し訳ないな。


「コボルトキングの死体をどうこうする前に、外にいるコボルトを倒すとしよう。ニコもバエルに任せて巣に入ってきたんだろ?」

「ウガ!」

「なら助けに戻らないと、流石のバエルでもあれだけの数を相手では厳しいはず」


 コボルトキングの死体を一度置いたままにして、巣の外で戦っているであろうバエルの下に戻る。

 気合いを入れ直して巣の外に出てみたのだが、俺の予想とは反して大量にいたコボルトは一匹残らず姿を消しており、バエル一匹だけが残っていた。


「バエル……だけ? 大量にいたコボルト達はどこに行ったんだ? 全てバエルが殺したって訳ではないよな?」

「あっ、シルヴァさん! みんなあっという間に逃げていきました! 魔法で蹴散らした瞬間に逃げ出し始めて、後ろに控えていたコボルト達は何か分からずに逃げた感じでしたね」

「なるほど。魔法を見た瞬間に勝てない相手だと判断したんだろうな。ただ、ボスを置いて逃げるのはちょっとどうかと思ってしまうが」

「シルヴァさんを置いて逃げるみたいな感じですもんね。僕には考えられません! それより奥にコボルトキングはいたんですか?」

「ああ、無事に狩ることはできた。……ニコがだが」

「え”っ!? ニコがコボルトキングを狩ったんですか?」


 今まで聞いたことない裏返った声を上げて驚いたバエル。

 まさか俺が先を越されるとは微塵も思っていなかったのかが、その声だけで分かる。


「送り出してくれたのに悪かったな。ギリギリのところで先を越された」

「別に謝らなくても大丈夫ですよ! 軽い勝負ってだけですので……でも、胸を張ってドヤ顔をしているニコは少しムカつきますね」

「全く同意見だ。小躍りはもっとムカつくぞ」


 俺の小躍りという単語を聞き、すぐに例の小躍りしてみせたニコ。

 なんとも言えない表情も相俟って、本当にイラッとくるダンスだ。


「確かに頭を引っ叩きたくなりますね。でも、シルヴァさんを出し抜いたんですから、ここは素直に負けを認めます」

「ここまでだとは俺も思っていなかった。今日のところはニコの勝ちだな」

「ウガガ!」


 本当に嬉しそうな笑顔を見せてきたニコ。

 能力の使い方も様になっていたし、オーガ戦では確実に戦力になるはず。


「それじゃ巣に戻ってコボルトキングの死体を持ち帰るか。狩ったのはニコだから、ニコが全て食うんだぞ」

「ウガ!」

「ちなみに……コボルトは美味くないからな」

「ええ、本当に質の臭い肉でしたね。イノシシ肉を食べ慣れたニコにはしんどいかもしれません」

「ッうが!?」


 多少の嫌がらせとして、コボルト肉の味をニコに伝える。

 思っていた通りのリアクションを取ってくれたため、俺とバエルの溜飲はかなり下がった。


 それからコボルトキングの死体から右耳を剥ぎ取り、死体を持ち運びやすいように解体してから帰路についた。

 道中は魔物に襲われることもなく、無傷の状態で巣に帰ってくることができた。


「巣に戻ってこれましたね! コボルトキングと聞いて色々と警戒していましたが、僕達強くなり過ぎたんですかね?」

「それはあるだろうな。特にバエル、ニコ、イチ、サブの成長は凄まじい。……ただ、気だけは抜かないでくれ。何度も言っているが近い内にオーガとやり合う。四匹には楽に蹴散らせるぐらいの力をつけてほしい」

「はい。絶対に油断なんかしません。少しでもシルヴァさんの力になるために、僕は全力で強くなるための努力をします」

「うがッ! ウガガ!!」


 バエルが意気込み、ニコも便乗するように声を上げた。

 そんな二匹の声が聞こえたのか、遠くからイチとサブが駆け寄ってきた。


「もどってキタんですね! どうシタんですか? こえをアゲてましたけど」

「まだまだ強くなるって気合いを入れていたんですよ。ですよね、ニコ」

「うが! ウガが」

「ボクたちもマケていれない! さいきんはニコにつきっきりダから、こんどはボクともかりにいってくだサイ!」

「いやいや、オレといっしょにイキましょう!」

「確かにニコを優遇し過ぎていたかもな。強くなったところは確認できたし、次からは順番に狩りを行ってもいいかもしれない」

「「やっター!!」」

 

 イチとサブは喜びの声を上げた。

 俺一人での狩りもそろそろ行いたいと思っているし、バエルとサブ、イチとニコのグループに分けて俺が入る形で狩りを行い、たまに俺一人で魔物狩りを行うってルーティンでいいかもな。


 待機組には巣の拡張をしててもらい、俺はとにかく強さだけを求めていく。

 オーガへの下克上も射程圏内に捉えることができているし、いつでも戦える準備を今の内からしておくとしよう。



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