表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~  作者: 岡本剛也
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/81

第47話 ニコの覚悟


 倒れたオークが起き上がれないことを確認してから、俺はニコの下に歩いて向かった。

 あとはトドメを刺すだけなのだが、魔物にとってはそれが一番難しいことだというのをよく知っている。


「ニコ。トドメを刺して、あのオークを食えば強くなれる。やるかやらないかはニコ自身が決めろ」

「…………う、うが」


 ニコから松明を受け取り、そっと背中を押して前に出させる。

 ここがニコの分岐点になると勝手に思っている。


 もちろんトドメを刺せなかったとしても、コボルト辺りを狩らせてあげるつもりだが……オークとコボルトでは得られる恩恵が違い過ぎるからな。

 是非とも、ニコにはオークを仕留めてほしいところだが、何度も言うが無理強いをするつもりはない。


「…………うが。ウガガ!」

「やれるのか?」

「ウガッ! ウガガ!!」


 どうやら覚悟が決まったのか、俯いていた顔を上げてオークに狙いを定めた様子のニコ。

 足がぷるぷると震えており、その振動が剣にも伝わって剣先が激しく揺れている。


 俺には一切分からない感覚だが、滲み出ている汗の量から考えても精神的な負荷が相当かかっているのだろう。

 一歩、また一歩とオークに近づいていき、とうとう剣を振り上げて構えたニコ。

 大きく息を吸い込み――そして、大きな雄叫びを上げた。


「ウガァァアア!!」


 振り下ろされた剣はオークの心臓を捉え、ニコの一撃によってオークは絶命した。

 ニコは完全に腰が抜けたようで、体を震わせながら座り込んでいる。


「よくトドメを刺したな。ただ、まだオークを食べるという作業が残っている。俺が捌くから洞窟の外で食べよう」

「……う、うが」


 動けない様子のニコを褒めてから、俺はオークの解体を始める。

 完全な魔物ではあるのだが、二足歩行でどこか人間っぽさがあるから捌くのも少し嫌な気分になる。


 まぁ人間を狩ってそのまま喰っているし、今更な感覚なんだけどな。

 気を紛らわせながら放血と解体を済ませ、肉の状態にすることができた。


「これで解体は終わりだ。焼くなりして、美味しく頂くとしよう。もう歩けるか?」

「……ウガ。うがが!」


 解体している間に大分良くなったようで、震えは治まり歩けるくらいには回復している。

 俺達はオーク肉を持って、洞窟の外を目指して歩を進めた。


 帰りも襲われることはなく、あっさりと泉の洞窟から抜け出すことに成功。

 自由に動き始めてから散々お世話になった泉の洞窟だが、今日で最奥まで辿り着いたし、もう来ることはないだろうな。


 色々な意味も込めて深々と頭を下げてから、俺とニコは泉の前で火を焚いた。

 ここでオークの肉を焼き、ニコには美味しく食べてもらうつもり。


「さっきも言ったが食べなきゃ強くならないからな。トドメを刺した時点で覚悟は決まっているだろうが、無理やり口の中に押し込んででも食べろ」

「ウガッ!」


 トドメを刺す前までの気弱な感じはもうなく、オーク肉を食材として捉えられているようにも見える。

 後は上手く調理して、食欲をそそるような料理に仕上げることができれば、ニコは躊躇なく食べることができそうだ。


 オーク肉を串に刺して焚火で直焼きしながら、バエルと一緒に作ったオリジナル調味料を振っていく。

 このオリジナル調味料は人間だった頃の記憶を頼りに、森の中で見つけた植物の葉や木の実なんかを潰して作ったもの。


 かなりスパイシーな味わいであり、肉には抜群に合う調味料だ。

 肉の焼けたジューシーな匂いに、オリジナル調味料のスパイシーな香りが足され、最高に美味しそうな匂いが辺り一帯に充満している。


「…………ごくっ」


 ニコも焼けたオーク肉を凝視しながら、生唾を呑み込んだ音が俺の耳にも聞こえた。

 正直、俺も食べたくて仕方がないくらいに美味そうであり、匂いからしてイノシシ以上の味なのではと予想している。

 今回はニコが全て食べさせるつもりだったが……一切れくらいなら食べてもいいだろう。


「こっちはニコの分だ。この一切れだけは俺も頂く」

「ウガッ! ウガガグ!」


 ペコペコと俺に頭を下げてから、焼いたオーク肉の串を手に取った。

 そして俺の食前の挨拶の後に――ニコは一切の躊躇もせずにかぶりついた。


 満面の笑みでオーク肉を頬張りながら、見たこともないような幸せそうな表情を見せている。

 味も最高なのに加え、食ったら強くなるのだからこの表情になるのも頷けるか。

 俺もニコがどんどん食べ進めているのを見てから、貰った一切れの肉を口の中に放り込んだ。


「――うっま。……いや、美味すぎるだろ」


 口の中に入れた瞬間に肉汁が弾け、強烈な旨味が口の中に広がる。

 肉はトロトロという表現が正しいぐらいに柔らかく、オリジナル調味料との相性もありえないくらい抜群。


 イノシシやシカから感じる独特の臭みもないし、下手したら人間だった頃に食べたどの肉よりも美味いかもしれない。

 見た目のせいでオークなんか誰も食わなかったからな。

 

 これは大発見かもしれない。

 一切れじゃ満足できないし、もっと食べたくなってきてしまったが……涙を浮かべながら食べているニコの幸せそうな顔を見て、もう少し寄越せとは口が裂けても言えないな。

 俺がオーク肉を食べるのは別の機会にし、今回ばかりはニコに全てを譲るとしよう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作はこちらから飛ぶことができます!
辺境の村の勇者、四十二歳にして初めて村を出る
お読み頂けたら嬉しい限りです!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ