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魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~  作者: 岡本剛也
第1章

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第35話 本性


「ありゃ完全に油断したぜ。こんな森の入口で出てきたゴブリンが毒針を持ってるなんて思わねぇからよ。にしても……無視して追いかけて死にやがった使えねぇカス共、マジで許せねぇ!」


 おっさん兵士の怒りの矛先は俺ではなく、二人の駆け出し冒険者に向けられている。

 てっきり師匠と弟子のような関係だと思っていたが、三人とこのおっさん戦士の関係が未だに掴めない。


「仲間じゃないのか? 皆殺しにしようと考えていた俺でも、お前の態度には引いている」

「このカス共と仲間な訳ねぇだろ。それと、ゴブリン風情が俺様に舐めた口を聞くんじゃねぇ。毒針を刺したことを死なない程度に後悔させてやるからな」


 鋼の大剣をゆっくりと引き抜くと、一歩一歩近づいてきたおっさん戦士。

 圧が半端ではなく、リーダーを務めていたオーガよりも強烈な威圧感がある。


 【毒針】が刺さっていなければ、今頃両断されているだろうし、あの盗んだ一瞬で【毒針】をおっさん戦士に向けて撃ったのは完璧な判断だった。

 さて、ここからだが、俺はまともにこのおっさん戦士と戦う気は更々ない。


 バエルにも使わせていた自作のパチンコを取り出し、石を装填する。

 そしてその石に【毒液】を付着させ、近づいてくるおっさん戦士に向けて撃ち込んだ。


 遠距離からじわじわとダメージを与える――そのつもりだったのだが、パチンコで発射させた石は簡単に避けられてしまった。

 【毒針】で動きが鈍くなっているとはいえ、動体視力は衰えていないのか?

 目に何も異常をきたしていないのだとすると、大分話が変わってくる。


「そんな手作りのおもちゃで俺に攻撃できると思ったのか? 毒針が刺さったのもただ俺が油断しただけ。ゴブリンごときには、一生俺に攻撃与えることなんてできねぇよ」


 ニヤニヤしながら距離を縮めてくる姿は化け物そのもの。

 シルバーランク以上と評していたが、確実にゴールドランク以上はある。


 こんな奴相手に勝てるのか、逃げた方が得策なんじゃないか。

 弱気な思考がぐるぐると頭の中を巡るが、ここで逃げたら一生逃げ回る人生を歩むことになる。

 

 俺はパチンコを投げ捨て、折れた剣を改良して作った短剣に持ち替える。

 控えさせているバエルには手出し無用と伝え、瀕死状態の三人目の冒険者のトドメを刺すことを命じた。


「俺がお前を直接殺す。クズと分かっているから躊躇なく殺せるよ」

「ゴブリンに負けたとなったら笑いものになるだろうなぁ! レア種なのだろうが、ゴブリンは所詮ゴブリンだ」


 短剣を向けてもなお、余裕の笑みを見せているおっさん戦士に向かって、俺は一気に斬りかかっていった。

 とにかく気をつけるのは攻撃を一度も受けずに、このおっさん戦士の体力を削ること。


「間合いに入ってきたの――馬鹿だろ」


 俺が間合いに踏み込んだ瞬間に、狙っていたように大剣をぶん回してきたところを【跳躍力強化】で上に回避。

 最初に言っていたように俺を殺す意思はないようで、足を狙ってきたため躱せたが剣の振りが恐ろしく速い。


 毒が回っていてこれってことは、正常ならどんな速度なのか考えたくないな。

 背中から滝のように汗が噴き出たのが分かったが、俺は足を止めずに何度も斬りかかっていく。


 戦闘の才能はお世辞にもあった方とは言えないが、冒険者だった時から考えて戦うことは嫌いじゃなかった。

 相手の癖を読みながら、力の入り具合を見て攻撃を予測。


 自分なりの型に相手をハメつつ、徐々に攻略していく。

 攻撃するフリを見せておっさん戦士の攻撃を誘い、俺はギリギリの回避を繰り返しながら攻撃に慣れていった。


 向こうが致命傷を避けて攻撃してくれていたというのもあるが、十分ほど攻撃を仕掛けては攻撃を避けるを繰り返したことで、ようやく俺はおっさん戦士の動きの隙を見つけた。


 右手の力が左手以上に入らないこと。そのせいで大剣を握り直す際は重心が右に傾くこと。

 右に傾いた時に近づくと、距離を取らせるために振り下ろしの攻撃を行ってくること。

 そして――振り下ろした後は次の行動に移るまでの時間を要すること。


 順序立てて見極めていったお陰で、おっさん戦士の明確な隙を見つけた。

 隙を見つけてからは、クレバーに左から近づくことで右手での攻撃を増やさせ、重心を右にズラしていく。


 そして重心が右に寄ったところを狙って近づき、振り下ろしの攻撃を誘う。

 俺の動きにまんまと誘われ、大剣が振り下ろされて動きが完全に止まったところに飛び込み――【毒液】を塗りたくった短剣でフルプレートの隙間に突き刺した。


 感触としては刃先を軽く刺せただけ。

 短剣だから近距離まで詰めなければ攻撃が当たらない上に、フルプレートの隙間を狙わないといけないため大振りの攻撃なんてそもそもできない。


 ただ、これで十分。

 初めて攻撃を受けたことで、さっきまで余裕を見せていたおっさん戦士の表情が強張っていくのが分かる。


 完璧に動きを合わせられたことで変化を加えてくるだろうが、急に右手の力が戻る訳もなければ、振り下ろしの後の隙がなくなることはない。

 ここからは長期戦。

 俺が攻略している間にトドメを刺し終えたバエルにも、時折パチンコでおっさん戦士撃つように告げ、俺はじりじりと体力を削って殺しにかかることを決めた。



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