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魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~  作者: 岡本剛也
第1章

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第31話 人間狩り


 翌日。 

 昨日は無事に食料を納めることができた一方で、初めてオーガに真正面から怒鳴られた。


 というのも、ゴブリンソルジャーの代わりに食料を届けたのだが、その量が百キロに到達していなかったのだ。

 何度も自分は代理だということを告げたのに聞く耳を持たず、一時間近く怒鳴られてから帰ってきた。


 こんなことなら食料を放置しておいた方がマシだったと後悔もしたが、このことは次の集まりでしっかりとゴブリンソルジャーに伝えるとしよう。

 どういった反応を取ってくるか分からなくはあるが、流石にまたいきなり手を出してくるってことはないはず。


 と、昨日のことはここまでにしておいて、今日から何をするか考えていきたい。

 俺としては――そろそろ人間を狩りたいと思っている。


 昨日、ゴブリンソルジャーやゴブリンビレッジャーと絡んで思ったのだが、やはりイチ達を早いところ進化させたい。

 今の状態だと勇者に復讐なんて夢のまた夢だからな。


 一週間あれば獣が狩れることも分かったし、食料調達は後回しで人間を狩ることにするか。

 これでも元人間のため、人間を殺すことに少しの抵抗もないといえば嘘になるが、今の俺はゴブリンでありそれ以上もそれ以下でもない。


 強くなるためには殺して喰うしかないのだ。

 静かに覚悟を決めた俺は、一人で作戦を立てることにした。


 狙う人間は冒険者パーティでいいだろう。

 できれば数が少ない方が安全だが、別にアイアンランク以下の冒険者なら何でもいい。


 そしてどう襲うかだが、やはり個別で叩きたいところではある。

 そのためには分断させる必要があり、上手いこと森の中に誘いたいところ。


 俺がふらふらと目の前に現れ、攻撃されたところで逃げる――いや、その程度では追いかけてこない可能性の方が高い。

 そうなってくると、何かしらの物を盗んで逃走するとかの方がよさそうだな。


 それ相応のリスクもあるが、逃げるだけなら何とかなるはず。

 【毒針】を遠距離から撃ち込むことも考えたが、遠距離から狙うにはまだ精度が安定しないし、今回は俺が殺してしまってもいけない。


 あくまでもイチ、ニコ、サブに人間を捕食させることが大前提であり、既に言葉を扱うことができる俺とバエルは二の次。

 見つけた冒険者が五人パーティだったら、全員が一匹を食べることができるんだがな。


 かなり雑な作戦ではあるが、俺が物を盗んで森の奥に逃走。

 ここで分断させることができれば万々歳。


 分断することができなくとも、逃げ込んだ先に罠をいくつか仕掛けておけば、こっちが有利に立ち回ることができるはず。

 そうと決まれば、早速動くとしようか。


 まずは逃げ込む先の選定と、その場所に罠を仕掛けること。

 少し長めの雑草と雑草を結ぶだけで簡単な罠になるし、何匹もの獣を捕らえてきたくくり罠も仕掛けよう。


 後は落とし穴なんかも人間相手ならかかるだろうから、その落とし穴の制作をイチ達三匹に任せるか。

 この間の食事はジャーキーと事前に採取していた野草で凌ぐとして、全員で人間を捕まえるための準備に取り掛かる。

 バエルと共に、罠をいくつも仕掛けられそうないい場所がないかを探しに行こう。

 


 とりあえず俺とバエルでゴミ山までやってきた。

 大量のゴミが捨てられているということは、この付近は森の入口辺りである可能性が高い。


 まずは森の外を確認し、そこから逃走ルートを考えながら罠を仕掛ける場所を選ぶつもり。

 慎重にやらなければあっさりと狩られる側に回るため、一切の妥協はせずに場所選びを行う。


 ゴミ山を越え、更に数十分歩いたところで森の入口が見えた。

 予想していた通り、やはりこっちの方向が人里に近い森の入口だったか。


 いずれはこの森の地図を作りたいところだが、今はそんな余裕がないからな。

 頭の中に地形を叩き込みつつ、森の入口を沿うようにして歩を進めていく。


 ここからはいつ人間と出くわしてもおかしくない。

 どこから現れてもいいように集中しながら進んで行くと、若干ながらも舗装された道が見えた。

 

 森も人が通りやすい獣道のようになっていて、俺は知らなかったが人が入りやすいような場所があったらしい。

 冒険者達は舗装されている道を通ってこの森までやって来て、獣道を進んで森の中に入ってくるのだろう。


 つまりこの場所で待っていれば、冒険者と出くわす可能性が高い。

 俺達はその獣道に沿るように森の奥を目指して移動を開始し、下からでは見えにくくなっている木を発見。


 意図的に木の上を確認しなければ見つかることはにため、この木の上で狩る冒険者を選ぶのがよさそうだ。

 俺は忘れないよう木の根元に印をつけておき、あとはこの木からの逃走ルートを考えるだけ。


 逃げやすい且つ、背の低いゴブリンが通りやすい場所を選びながら、森の奥に向かって進んで行く。

 そしてその逃走ルートが広い場所に出たところで、罠に嵌める場所が決まった。


 広さとしては縦横十メートルくらいの円状の開けた場所。

 周囲の木も少なく、この場所だけ日差しがしっかりと照らされている。

 

 本音を言うのであればもう少し広い場所が良かったのだが、十分罠を仕掛けられるし、先ほどの木からこの場所まで歩いて二十分くらいと距離も丁度いい。

 冒険者を誘い込むようにし、誘い込んだ冒険者をここで殺す。


 まだ前段階もいいところだが、心の中でやると決めた瞬間に早くも緊張してきた。

 逸る気持ちをなんとか抑え、俺は忘れないように何度か先ほどの木からこの開けた場所までを往復した。


 下見を終えて巣に戻ってきた俺は、すぐにバエル、イチ、ニコ、サブの四匹と共に先ほどの開けた場所に向かう。

 今日から三日間かけて罠を仕掛けつつ、戦いやすいように色々な工夫も凝らすつもり。


 そして四日後には冒険者狩りを開始させたい。

 食料を納めないといけないという決まりがあるせいで時間が限られているため、丁寧にやりつつも急ピッチで仕上げないといけないのだ。


「イチとニコとサブはとにかく穴を掘ってくれ。バエルは道中に生えている雑草と雑草を結んで、ブービートラップを作っていってほしい」

「ウガッ!」

「ワカリました! クサとクサをムスぶだけでイイんですね!」

「ああ。走っていたら簡単に足に引っかかって転ぶはずだ」


 単純な作りだし心配になる部分があるだろうが、かなり効果的な罠。

 つまづいて転んだらそれだけではぐれる切っ掛けになるだろうし、バエルには道中に無数に作っておいてほしい。


 俺も引っかかるリスクは伴うが、俺の場合は背が低いこともあって地面から視線が近い上に、罠がある位置を把握しておけばまず引っかかることはない。

 とりあえず四匹には指示を出したし、俺が何をやるかだが……。


 ルートの確認を入念に行うか、くくり罠の制作と設置のどちらかだろう。

 正直、人間相手になら落とし穴の方が通用するだろうし、くくり罠を設置する意味があるのかどうか迷っている。


 獣と違って二足歩行だし、トラバサミならともかく紐で足を括ったところで簡単に逃げ出される可能性も高い。

 最初はくくり罠も仕掛ける気満々だったが、材料とかも鑑みていらないのではと思い始めている。


 そんな一方で、勿体ないってだけで万全を尽くさないのはどうかとも思ってしまうし、ここの判断は非常に難しいところ。

 ここの部分に関しては結構悩んだところではあったが……費用対効果が悪いと判断し、くくり罠の設置は止めることに決めた。


 そうと決めれば、見張るための木からこの開けた場所までルートを体に覚えさせる。

 一つの失敗が命取りとなるため、入念に何十回も往復してルートを体に叩き込んだ。

 ただ行ったり来たりしている俺に対してバエルは不思議そうに首を傾げていたが、俺は気にすることなく往復し続けたのだった。



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