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魔喰のゴブリン~最弱から始まる復讐譚~  作者: 岡本剛也
第1章

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第13話 主従関係


 俺は拾ってきた木で作った椅子に座り、一応兄である三匹のゴブリンには正座をさせている状態。

 ちなみにバエルは俺の後ろに立っていて、何やら少し誇らしげに胸を張っている。


「まずはこの五日間で取ってきた食材を出してもらおう。これからは俺の班の一員な訳だしな」


 もちろん言葉は通じないため身振り手振りを交えて伝えると、大人しくこの五日間でかき集めたであろう食材を渡してきた。

 量は思っていた以上に多く、俺とバエルに負けないように必死に集めていたのが窺い知れる。


「頑張って集めていたんだな。ただ重さは……全部で六キロくらいか」


 俺達が集めたイノシシを除いた食材が四キロほどなので、五日間で集めることができた量は合計で十キロ。

 獣を狩ることができないゴブリンにとっては、一ヶ月で百キロの食材を集めるというのは無理難題っていうのが分かる。


「やっぱり野草を摘むのは非効率だな。どうにかして獣を狩っていきたい」


 俺はそう呟いたが、三匹のゴブリンは少しもピンと来ていない様子。

 言葉の分からないゴブリンに指示をしなくてはいけないのは大変だが、完全に従ってくれるならいくらでもやりようはある。


 そのためにも……まずはこの三匹のゴブリンの心を掴まないといけない。

 武力での力は示せたため、ここからは心を掴むことを実行していく。


 まずは名前を付けたい。

 ゴブリンは容姿が本当に似ているため判別が難しいが、ゴミ山で拾ってきたものをアクセサリーとして身に着けさせれば差別化できる。


 バエルには既に腰巻を渡しているため、この三匹のゴブリンにも腰巻を作って渡す。

 その腰巻と腰巻につけるアクセサリーで、判別を簡単にできるようにしたい。


「お前達に名前を付ける。一番大きいお前はイチ。二番目に大きいお前はニコ。三番目に大きいお前はサブ。イチ、ニコ、サブだ。分かったな」

「……う、うガ?」


 バエル同様に一切ピンと来ていない様子だが、呼び続けることで自分の名前だと認識できるようになるはず。

 バエルは既に自分が“バエル”だということを認識できるようになっているからな。


「仕事については明日から詳しく教える。だから今日は……一緒に飯を食おう。お前らは俺とバエルに腐肉を分けてくれなかったが、俺達は分けてやるつもりだ。一緒の班になった訳だし、仲間として接するつもりでいる。ただ、俺がリーダーで副リーダーはバエル。俺達の命令には絶対に従ってもらうからな」


 必死に言葉とジェスチャーで伝えたが、半分も伝わっていないだろう。

 今話したことぐらいは全て理解させたいところだが、正直腹が減ってしょうがない。


 三匹のゴブリンにもついてくるよう指示をし、イノシシの焼肉パーティを行うことを決めた。

 すぐに駄目になってしまう内臓部分だけでも、五匹で分けても十分な量が食べられるだろう。


 俺はイノシシを解体再開し、解体した部分の処理を事細かに指示して三匹に行わせていく。

 バエルには火起こしをしてもらい、これから食べる内臓の処理は完璧に行えた。


 腐肉か野草しか食べたことのない三匹にとっては、今やっている作業が何なのかも分かっていない。

 火すらもまともに使ったことがないだろうし、焼肉を食ったらぶっ飛ぶだろう。


 俺についてくればこれだけ美味い飯にありつけるということも植え付けられるし、信頼度を深めるだけでなく上下関係をはっきりとさせるにも非常に有効。

 焼肉を食った三匹とバエルの顔を楽しみにしつつ、俺は処理した内臓の肉を熱々に熱した石の上で焼いていく。


 腹が鳴るような美味そうな匂いが周囲に漂い始め、イチに関しては覗き込むように焼かれている肉を見ている。

 目を逸らしたらつまみ食いしそうな勢いのため、手で制止しつつ全員の取り皿となる葉っぱの上に肉を分けた。


「食っていいぞ」


 俺が合図を出すや否や、イノシシの肉をがっつき始めたゴブリン達。

 味付けは一切されていないのだが、焼いた新鮮な肉を食うのは初めてのようで驚くほど貪り食べている。


 ここまでまともな食事もとらずに食材調達をしていたからか、イチ、ニコ、サブの三匹は涙を流しているほど。

 ここまで喜ぶとは思っていなかったが、これで身も心も俺に従う理由ができたはず。


 全員の食べっぷりを見てそう確信した俺も、自分のところに取り分けたイノシシ肉を口の中に放り込む。

 うん。生で食ったコボルトの肉よりは全然食べられるが、臭みも癖も強いしお世辞にも美味いとは言えない。


 血抜きも甘く、内臓を取り出すのも遅かったせいもあるだろうな。

 正直味だけで言うのであれば、俺は焼いた幼虫の方がクリーミーで味が濃いため好きだが、貴重な肉だし大事に頂こう。


 残してもしょうがないため俺達は大量の内臓の肉を焼いては食べていき、匂いに釣られて近くの巣のゴブリン達が見に来るほど、注目を集めながらイノシシ肉を平らげた。

 他のゴブリン達もいずれ仲間に引き入れたいとは考えているため、肉をお裾分けすることも考えたのだが……まずはこの四匹を完全にまとめ上げることが最優先事項。

 匂いに釣られて集まってきたゴブリン達には目も暮れず、俺達だけでイノシシの内臓を食べ尽くした。



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