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第10話 自作の罠


 パンパンな腹に大量の荷物。

 ゴブリンになってから初めての戦闘を行ったこともあり、行きよりも重い足取りでなんとかバエルの下まで戻ってこれた。


 バエルはというと、俺が指示してからずっと穴を掘り続けていたようでかなり深い穴ができていた。

 ワイヤーが取れた以上、この穴を使うことがなくなったのがちょっとだけ申し訳ない。


「戻ってきたぞ。バエルも作業を止めていい」


 言葉は発しつつ身振り手振りでも伝えながら、バエルの作業を止める。

 この後は巣に戻り、くくり罠作りに没頭する。


 バエルには朽ち木集めを行ってもらい、自分の分の飯の調達をしてもらうつもりだ。

 腹の感じからして、俺は二日ぐらいは何も食べずに過ごすことができるだろうからな。

 どのタイミングで強くなるのか分からないが、体の変化には逐一気をつけつつ生活を行っていく。


 バエルと共に巣に戻ってきた俺は、これからの予定を簡単に説明した。

 地面に絵として描くことで、バエルにも大まかにだが伝わるはずだ。


「まずは今日から二日かけてくくり罠の制作に入る。それから一日は罠を試すのに費やし、残りの三日でイノシシを捕まえる」

「うが!」

「バエルには朽ち木集めと、この石を集めてきてほしい」


 俺は道中で拾った石をバエルに渡し、石集めを行ってもらうことを伝えた。

 この森の小川には硬度の高い石が稀に落ちており、複数個に入れば武器にすることができる。


 バエルが石の判別ができるのであれば、並行して戦力強化も行えるって寸法。

 本当は砥石も手に入れたいところだが、森の中に砥石なんて落ちていないからな。


 そもそも砥石の判別は難しいし、川に行って自分で探してくるのがベスト。

 とりあえずバエルには硬度の高い石を拾ってもらい、その間に俺はくくり罠を作る。


「うが? うがが!」

「ああ、そうだ。朽ち木を集めて自分の食材を確保しつつ、その石を大量に集めてきてくれ」


 俺の言っていることを理解できたようで、バエルは首を何度も縦に振ってから急いで巣から出て行った。

 巣に一人残った俺は、早速くくり罠制作に入る。


 この材料だけで作成できるか怪しいところではあるが、実際に見たことがあるし頭の中でイメージはできている。

 頬を思い切り叩いて気合いを入れてから、俺は集めてきた材料を使っての罠制作を開始した。



 罠を作り始め、あっという間に一日が経過。

 作業に没頭していたこともあって、気が付いたら一日が経っていたような感じ。


 ただ目はシパシパとするし、脳も疲労していて睡魔が半端ではない。

 肩や腰、指の先まで気がつけば痛くなっているが、丸一日という時間を費やしたお陰でくくり罠が完成した。


 自作した丸い板の上を踏み抜いた瞬間に、ワイヤーが足を締め付けるという簡単な仕組みで、威力は肉に食い込み骨をガッシリと捕らえられるぐらいの強さ。

 ワイヤーを使っただけあり、自ら足を切断しない限りは抜け出ることができないと断言できる。


 この罠があればイノシシだけでなく他の獣や、板のサイズに収まる足の魔物なら捕まえることができる。

 捕らえた後は遠くから石などで攻撃することで、安全に狩ることができるという便利な罠。


 今の俺に作れる最高の罠な訳だが、材料や時間的に罠は一つしか作成することができなかったのが非常に痛い。

 予定では五つくらい制作し、様々な場所に設置したかったがそう上手くはいかなかった。


 ちゃんと作動するまでの調整にかなり時間がかかったし、材料にも限りがある。

 材料があったとしても後一個作れるかどうかって感じなため、とりあえずはこの一個のくくり罠に頼るしかない状態。


 狩り勝負は余裕で勝てると思っていたが、中々厳しい戦いになりそうになってきた。

 結局、初日にバエルに掘らせていた穴も使うことにし、落とし穴とくくり罠の二つのトラップを仕掛けつつ、明日からは俺達も足で獲物を狩ることにしよう。


 一日目は材料集め。

 二日目はくくり罠の制作に全てを捧げてしまったため、残る期間は五日。

 

 三日目の動きとしては、作った罠を仕掛けに行ってから睡眠を取る。

 睡眠を少しでも削りたいところではあるが、残り五日間ということを考えると不眠で動くことは返って効率が悪くなるからな。


 爆睡だけはしないように気をつけ、少しでも多くの獲物を取れるように動けるようにする。

 ここからの大まかな予定を決めた俺は、目星をつけていた場所に罠を仕掛けに向かうことにした。


 巣からも比較的近い場所にあり、イノシシの糞や足跡を複数確認できた場所。

 ここにくくり罠を設置し、毎日一回だけ見に来ることにする。


 まずは絶対に逃げられないよう、太い木にワイヤーが外れないようにくくりつける。

 それから罠を踏みやすい位置に設置し、軽く土と木の葉を被せて完成だ。

 罠自体もコンパクトなため、落とし穴と違って違和感をほとんど覚えないはず。


 獣が罠にかかるよう、両手を合わせてお祈りしてから巣へと戻る。

 あとは軽く睡眠を取ってから、罠に獣がかかるまで作業をしながら時間を潰すだけだ。


 ゴブリンの生活は何もかも手探り状態で本当に大変だが、目的がはっきりとしているからか楽しさを感じ始めている。

 まずはこの最底辺の生活から抜け出し、絶対に強くなって勇者を殺してやる。



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