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1 生まれたのは双子の忌み子1


赤く、紅く、あかく染まる空と大地の中で、私は咆哮を上げた。


何もこの手には残らないと知りながらも、それでも生きた証を残したいと願って。





1 生まれたのは双子の忌み子



オギャーとひときわ大きな声が屋敷に響き渡る。


「生まれたか!!これで、これでこの忌まわしき運命からも逃れられ……なんだ!?これは」


いきも絶え絶えな女を無視して、男はわめき散らした。


「双子じゃないか!? ああ、なんて忌まわしい。私の妻が畜生腹だったとは……」


「旦那様、その言葉は、現在帝国では禁句となっております」


「わかっておるわ……。 おい、ジェスその女を黙らせろ」


「ーー御子達はどういたしましょう?」


「ふん、そんな奴ら、わしの子ではないわ」


「お言葉ですが、旦那様。奥様は半分とはいえ、皇族の血筋。もし、ここで何かあれば、その咎は旦那様に降りかかりましょう」


「まったく、忌々しい。そういえば、あの地があったな。よし、そ奴らはあの地にて育てよ」


「かしこまりました」


男はそれから一瞥もせずにドタドタと部屋を出て行った。




「臭い、くさい、あーー、臭い!」


そういって、レリアを突き飛ばしたのは、本来ならば二人に仕えているはずの侍女の一人だった。


「レリア、大丈夫?」


「コリア、大丈夫。こんな事、何でもないわ」


レリアはコリアを背後にかばい、侍女をキッと睨みつけた。


「なんですか、その目は。畜生のくせに」


周りの侍女や執事も笑っている。


これが、二人の日常だった。


周囲の国と比べ、先進国と呼ばれるこの国でも、端に位置するこの辺境では双子などの子供は忌み子とされた。理由は一度に二人や三人を腹に宿す事は畜生がすることという迷信があるからだった。


生来気の強いレリアは侍女の瞳を真っすぐと見つめた。


真っすぐに強い瞳で見られた侍女はぐっと息を飲んだ。この瞳が気持ち悪いのだ。まだ六つの子供なのに、人を従え屈服させようとする意志を感じる瞳だ。


「その瞳で見るなっていってんだろ!!」


振り上げられたその手が振り下ろされるのを覚悟して、レリアはぎゅっと目を閉じた。


「やめてよ!!」


その時、後ろから弟のコリアが飛び出してきた。


「コリア!!」


止めようとしたが間に合わなかった。レリアよりもさらに小さいその体はあっけなく吹き飛ばされて近くにあった椅子の足にぶつかった。


「コリア、大丈夫!!コリア」


慌てて駆け寄って、頭を膝の上に乗せた時、手がぬるっとしたもので濡れた。


恐る恐る見やると、掌が真っ赤に染まっていた。


「……ふん、き、急に飛び出してくるから」


どこか焦ったように侍女が言い訳するもレリアの耳には入らなかった。


ただ目の前が真っ赤にそまって、染まって、染まった。



「いやーーーー!!」



発狂したレリアを見て流石にまずいと思ったのか、口を塞ごうと侍女が動いた時、レリアが焦点の合わない瞳でふりむいた。


「よくもコリアを!!」


「お、お嬢様?」


「私達があなたに何をした!? よくも……。壊れてしまえ、全部、全部、全部!!」


「な、なにがあった、ニーナ!!」


慌てた他の執事や侍女がその場に集まってきたが、もはやレリアには関係がなかった。


「壊れろ、壊れろ、壊れろーー!!」


「まずいっ、お嬢様を抑えろ!!」


周りの人がレリアを取り押さえる直前、強い地震が屋敷を襲った。


立っていられないほどの地震。なのにレリアだけは何事もないよう呪詛の言葉を紡いでいた。


「レ、レリアお嬢様、やめ、ああーーーー」


執事や侍女たちが次々と倒壊した瓦礫に押しつぶされていく。グシャ、ビシャっと人が、物がつぶれる音を聞きながら、レリアは狂気に飲まれていた。


そうして、その力がレリア自信を飲み込もうとした時、ぎゅっと足首を誰かに掴まれた。


「レリア、僕は大丈夫だから、ね」


這いずってきたと思われる血の跡。それでもなお、優しく自分を見つめるたった一つの信じられる人の声に、レリアの瞳からストンと狂気が消えた。


「ーーーーコリア、私」


そういってレリアはコリアの隣に倒れ伏した。




帝国歴1305年の春の事であった。

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