もし、私が死ななければならないなら(If I must die, let it be a tale)
きょう(12月8日)、感銘を受けた詩の翻訳です。
原文は、昨日の爆撃で死去したレファアト・アラリール(Refaat Alareer)さんのX(旧Twitter)11月1日付けポストより。R.I.P.
https://twitter.com/itranslate123/status/1719701312990830934
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もし、私が死ななければならないなら
あなたはどうしても生きなければならない
私の物語を語るために
私の遺品を売って
一切れの布といくつかの糸を買うために
(色は白で、長いしっぽをつけてくれ)
そうすれば、ガザのどこかにいる子供が
天をまっすぐに見つめ返しながら
すでに炎の中に消えてしまったが——
肉体にも、自分自身(魂)にさえ
一言も別れを告げなかった父親を待ちながら——
その凧が、あなたが作った私の凧が
空高く舞い上がるのを見てくれるから
そうすれば、束の間、天使がそこに現れて
愛をよみがえらせてくれるから
もし私が死ななければならないなら
それが希望をもたらしますように
それが物語になりますように
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亡き詩人の背景だけでなく、詩そのものにも注目してほしいので、原文の英語詩も併記します。
story、tailの使い分けが秀逸。上記の訳詞ではルビで対応しています。
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If I must die,
you must live
to tell my story
to sell my things
to buy a piece of cloth
and some strings,
(make it white with a long tail)
so that a child, somewhere in Gaza
while looking heaven in the eye
awaiting his dad who left in a blaze--
and bid no one farewell
not even to his flesh
not even to himself--
sees the kite, my kite you made,
flying up above
and thinks for a moment an angel is there
bringing back love
If I must die
Let it bring hope
let it be a tale
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今回の詩は、承認欲求とは別の意味で「多くの人に見てほしい」と思ったので、小説家になろう、カクヨム、noteなど、各所に重複投稿しています。
(2024年10月11日追記)
10月7日放送のNHKスペシャルで取り上げるらしい。
▼If I must die ガザ 絶望から生まれた詩 - NHKスペシャル - NHK
https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/episode/te/61QVMNJ2MN/
------(引用ここから)------
絶望的な状況が続くパレスチナ・ガザ。そこで生まれた一編の詩が、いま50以上の言語に翻訳され、世界を駆け巡っている。この詩を書いたのは”言葉による抵抗”を掲げてきたガザの詩人リフアト・アライール。「私の物語を伝えてください」と語るその詩は、詩人の死と共に世界に拡散した。“戦争”という暴力を前に、言葉は抵抗の力となりうるのか。詩人が言葉に託した思いとそれを受け取った人々の姿をドキュメントする。
------(引用ここまで)------
番組の制作には関わってませんが、感無量です……!
詩の作者レファアト・アラリール(Refaat Alareer)氏について、少し補足。
ガザ・イスラム大学の教授で詩人。避難先の学校にイスラエル軍から電話があり、居場所を特定したことと殺害を予告されたため、周りに被害がおよぶことを避けるために避難所を離れ、妹の自宅に移動。そこが爆撃されて、妹の家族もろとも亡くなった。
これらの経緯から、この詩はやっぱり遺言の意図があったのではないかと。
昨年12月8日、死去の翌日にこの詩を見つけて、突き動かされるように翻訳・公開してからちょうど10カ月。その間に50以上の言語に翻訳されたとか。
亡き詩人の遺志を伝える一助になれたなら光栄です。
(2024年10月14日追記)
10月17日(木)午前0時35分からNHKスペシャルの再放送あり。
20日まで見逃し配信でも見れるようです。