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走馬灯

作者: 山宮孝一

いつからだろう

色が見えなくなったのは

昔は赤、白、茶、

いろんな色が見えていたのに

今ではもう……



昔から頭の中には一つの思いがある

理想というべきだろうか

「この世に生まれたものはみんなともだち」

このことだけは何年たっても忘れられない

忘れられるはずがない



小さい頃の思いで

その大部分を占めるのは

母親との思いで

決してマザコンというわけではない

ただそれ以外が思い出せないのだ



楽しいことばかりではなかった

むしろ苦しいことばかりだった

それでも今の暮らしに比べれば

だいぶマシだった

気づいた時にはもう遅いけど



人が倒れていた

僕の心は憎悪で満ちていく

自分でも嫌になるくらい

心がすさんでいるのが分かる

僕は人に襲い掛かる



思えばあの日も雪が降っていた


僕の母親が死んだ日

僕の家族がいなくなった日

あの日も僕は母と出かけていた

僕は母と出かけるのが好きだった

新しいことが発見できるし

そしてなにより

家族の温かさを感じれた



そんな母が死んだ

殺された

名前も知らない猟師に



気が付けば僕は

復讐しか頭にない殺戮機へと変わっていた

唯一の家族を失ったのだ

友達もいない

いるはずもない

みんな僕を怖がって逃げるんだ



だれも僕を止められない

人を見るたび襲い掛かる

いつからか

人に限らず襲い掛かるようになった

僕にはもう良心はない

あるのはただ

憎悪に満ちたどす黒い心



いつかまた母に会えたりしないだろうか

そんなことを夢に見る

かなうはずのない夢を

母はあの時死んだんだ

仮に天国や地獄があったとして

僕は母と違い地獄へ行くだろう



僕は人に覆いかぶさった

「ダメっ」

急に脳裏に響く

と同時に僕の心が引き戻されたみたいだ



「命を簡単に奪ってはいけません」

やめろ

「この世に生まれたものはみなともだちです」

そうやってあなたは殺されたんじゃないか

「あなたには優しく育ってほしい」

……



ふと思い出した

あの日母は人間を助けようとしていたのだ

そんな母を殺したのだ

許さない

僕は首にかみついた

血が噴き出る

何度やってもこればかりは慣れない



バァン



銃声が鳴る

音のなったほうを見ると

そこには母を殺した猟師がいた

僕は何も考えられなくなり

猟師に襲い掛かった



あと五歩

四歩

三歩

二歩



あれ……

体が動かない

もしかして撃たれていたのか

ハハッ

やっと仇を見つけたのに

はぁ


でも


これでやっと終わりにできる



見渡すと鮮やかな世界

何年も忘れていた“色のある世界”

なぜ懐かしいと感じたのだろうか

それは考えてもわからないが

とりあえず今は

この暖かさを感じていたい

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