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変態的にかわいい借り物競争 ~あなたが拾った紙に書かれた指令を知った時、あまりにもヤバい内容で戦慄した。これはもしかしたら、神が与えた試練、あるいは与えてくれた幸運なのかもしれない~

作者: 栗野庫舞

これはやばい!

 あなたは、窮地(きゅうち)に立たされていた。


 青組に属する男子のあなたは、高校体育祭の借り物競争に出場中だ。


 すでにあなたは、コース途中の折り畳み式テーブルに置かれていた紙を取っている。


 現時点で、あなたは一位だ。


 このまま一位を維持すれば、青組の優勝に貢献(こうけん)出来る。


 それなのに――。


「なんだよこれ……」


 二つ折りの紙を広げた時、あなたは唖然(あぜん)とした。


 紙には、『女子のかわいくて白いパンツ』と書かれていたからだ。


 あなたはとにかく(あせ)る。そんな中、後から到着した男子達も紙を取る。借り物の内容を確認した途端、喜んだり、青ざめたりしていた。


 行動が遅れてしまう。ここで立ち止まる選手は、あなたともう一人しか残っていない。他の二人はすでに指定のものを探しに行ってしまった。


 あなたは自分のクラスの応援席のほうへと走り出す。該当しそうな女子を探さなければならない。


「どうすればいい?」


 つぶやくあなた。


 かわいい女子、ではない。


 女子の、かわいくて、白い、パンツ。


 かわいいなんて個人の主観が入るので、判断は難しい。ただ、かわいい女子なら、かわいいパンツを身に着けているはず。


 よって、白いパンツを身に着けていそうで、なおかつかわいい感じの女子を見つけるのが正解だと、あなたは考えた。


 ピンクでも黒でもない可能性に()けて――、あなたは選んだ。


 この女子を。


 白い半袖の裾を紺色ハーフパンツの内側に入れている、おとなしそうなこの女子を。


 もう恥なんて捨てることにした。


「白いパンツを穿()いてるか?」


 あなたは紙を見せながら、同じクラスの女子に早口で聞いた。


「はい……。でも、かわいくはないと思います……」

「急いでくれ! 時間がないんだ!」

 あなたは世界を存亡から救うぐらいの勢いで喋った。有無を言わせずに女子の細い腕をつかみ、ゴールに向かって走る。


 あなたと同じ青い鉢巻(はちまき)をしているこの女子は、地味な印象ではあるが、容姿は整っている。長い黒髪は二本の三つ編みにして後ろで垂らしており、走ると大きく揺れていた。胸部は揺れてはいないが、今回の件では無縁だろう。


 彼女は走るのが苦手だった。あなたは彼女に速度を合わせ、どうにかゴールまで、たどり着く。


 ゴールには体育祭の進行係の女子がいた。赤組の生徒だ。


「紙を見せて下さい」

「ああ」


 あなたが応じ、赤組の女子に紙を渡す。


「じゃあ確認するので、場所を変えますね」

「えっ? 移動するのか?」

「はい、もちろんですよ。こんなところで確認なんて出来ませんよね?」

「まぁ……」

 確かに、見られたくはない。


 今度はこの赤組のポニーテール女子が、三つ編み女子を引っ張って走り始める。あなたは二人を追った。


 観客席のテントの間を通り抜け、校舎の前を通過し、横へと回る。ひと気のないこの場所まで走った距離のほうが、グラウンドのコースよりも長かったんじゃないかと、あなたには思えた。


「さっそく確認します」

「きゃあッ!」


 恐ろしい。赤組女子は三つ編み女子のハーフパンツを一気に脱がした。白い靴下の辺りで止める。


 真っ赤な三つ編み女子を全く気にせず、赤組女子は彼女の体操着の裾をめくった。下着の前後を見て、検証する。


「あ~、これじゃダメですね。ただの白い下着でかわいくありません。見て下さい、ちっちゃいリボンがついてるだけですよ。高校生にもなってこんなお子ちゃまパンツだなんて、(なげ)かわしいですね」


 赤組女子は言いたい放題だった。


 あなたはこの女子を選んでしまった罪悪感に苦しむ。それとともに、この敵クラスの女子に腹が立った。


「じゃあお前はどうなんだよ!」


「私は、オレンジのすっごくかわいいのを穿()いていますよ。もちろんお見せしませんが。……ということで、今から別のかわいいパンツを連れて来て下さい」

「パンツを連れて来るとか言うなよ! ってか、また探しに行ってたらビリ確定だろ! 別にそれでもいいじゃねーか! 青組を負けさせるための赤組の策略かッ?」


 あなたは三つ編み女子の下半身を見ないようにして、敵クラスの女子に抗議した。


「じゃあ、この子のパンツがかわいいということを証明して下さい。下着に顔をくっつけながら、このパンツ超かわいいって叫んだら、認定してさしあげます」


「……は?」


「で、どーするんですか? やるんですか、やらないんですか?」


 あなたは岐路(きろ)に立たされた。


 この赤組女子の言葉に従えば、間違いなく変態に認定されてしまう。だからと言って、今から別の女子を見つけに行っていたら、最下位は決まりだろう。青組にとっては、かなり不利になる。借り物競争の勝者の加点は、なぜか高く設定されているのだから。


 どうしようかと考えるあなたは、三つ編み女子のほうを見た。ハーフパンツは、まだ下げたままでいる。


 真っ赤な顔のままだった彼女は覚悟を決めたのか、体操着の裾を両手で上げた。あなたが行動に出やすいようにしたのだろうか。


「どうぞ……」


 そう言われても、あなたは困るしかなかった。


 あなたの目の前で大きく(さら)されるのは、お(なか)まですっぽりと覆った、白一色の下着。上のほうに小さな白いリボンがついているだけで、かわいいと断言出来るのかは疑問だ。


 けれども、恥ずかしさを我慢して下着を(さら)している彼女はかわいい。このかわいい女子が見せている白い下着は、子供っぽくて、むしろかわいい。あなたはそう思い込むことにした。


「……すまん」


 あなたは小声で謝り、(かが)んで顔を近づける。


「このパンツ超かわいいっ!」


 密着した下着に向かって、とんでもないことを叫んでしまった。周りに人がいないのが救いだった。


「これでいいんだろ!」

 顔をすぐに下着から遠ざけて、あなたは敵クラスの女子に怒鳴った。


「……マジでキモいです。まさかホントにやるとは思わなかったんですけど」

「それならやれなんて言うなよ!」

 あなたは冷たい視線を送っていた女子に反論する。


「……まあ、認めてあげましょーかね」

「上から目線なのがムカつくな! じゃあ急いで戻るぞッ!」

「はっ、はいっ!」


 三つ編み女子はハーフパンツを穿()き直していた。あなたは彼女を引っ張って走り出す。彼女はまだ恥ずかしそうだし、あまり早くは走れない。


 後ろから進行係の敵女子も追いかけて来て、途中からほとんど並走状態になる。この借り物競争は、進行係が一緒に居過(いす)ぎじゃないかと、あなたは思った。


 そうして、ようやくあなた達はゴールに到着する。結果は三位だった。


「体育祭の伝説って知ってます? 代々、借り物競争の一位だったカップルは結ばれるって言い伝えがあるらしいですよ」

「三位の俺らに言うなよ!」


 あなたは正面に寄って来たポニーテールの赤組女子を(にら)んだ。彼女は、すごく楽しげだった。


 次にあなたは、おとなしく横で立っていた三つ編み二本の女子へと顔を向けた。


「……さっきはヒドいことをして、ごめん」


 済まなげにあなたは三つ編み女子に謝る。


 彼女は恥ずかしそうだったけれども、しっかりとこちらを向いている。


「三位でも……、結ばれてくれますか?」


「……えっ?」


 まさかの発言に、あなたは気が動転した。


「嘘だろ、あんなことしたのになんで?」


「……私、クラスの勝利のために、私を犠牲にしてでも真剣に勝とうとしてくれたあなたのことが、好きになってしまいました。かわいいなんて、男子に言われたの、初めてです……っ!」


 三つ編み女子のかわいい顔での告白を受けて、あなたは戸惑う。


「いや、冷静になってほしい。かわいいって、言わされたんだけど。それもパン……じゃなくて、下着のことだし」


「それでも、ドキドキしている私の気持ちは、本物です」


 彼女の言葉に、あなたの心は動かされる。


「本当にいいのか? 俺なんかで――」

「いーえ、良くありませんっ!」


 ポニーテールの赤組女子に口を挟まれた。


 彼女は、眉毛を上げた怒り顔をあなたに向けている。


「一位のカップルが結ばれるんですよ! ()ーてませんでしたかっ! それに、あんなお子ちゃまパンツにオレンジのかわいい私が負けるなんて、あっちゃいけないことです! 私のことのほうが好きですよねぇ、私の(いと)しい彼氏君?」

 赤組女子はあなたの右腕を両手で抱き、色目を使う。それと、胸部がぶつかっている。


「勝手に俺を彼氏だなんて呼ぶなよ」

「別にいいじゃないですかぁ~。私もですね、さっきはすごい変態にしか見えなかったんですけど、思い返してみると、男気があったような気もして、なんか一緒にいたら楽しそうな気がしてきました」

「そんな気がしただけで彼氏にするなって!」


「今度、私とデートしてみません? いい感じで過ごせたら、本当に彼氏になって下さいっ!」

「順序が逆なような気もするけど……」


 ポニーテールの赤組女子も、よく見たらけっこうな美少女に見える。あなたは彼女のほうも、気になってしまった。


 あなたが赤組女子にばかり視線を注いでいると、三つ編み女子もあなたの左腕を負けじと押さえ始めた。かなり小さな胸部がぶつかる。


 両腕を取られて身動きが取れなくなっているけれども、決してあなたは悪い気分ではなかった。


 明るそうで、少しオレンジ色が透けているように見える子と、純情そうでかわいい、白の子。


 あなたは選べる贅沢(ぜいたく)を手に入れた。しかし、悲しい現実も無視出来ない。これが、恥ずかしい変態行為をした結果であるということが。


 ともあれ、一位が結ばれるという言い伝えがあるにしても、一位以外が結ばれない言い伝えはない。


 あなたはこの幸せを(ひそ)かに感じながら、残りの体育祭を過ごすことになった。


   □


 体育祭で優勝したのは赤組で、あなたの所属する青組は二位だった。


 閉会式が終わった後、あのポニーテールの赤組女子がやって来る。


「ちょっといいですか?」

「なんだ?」

「ついて来て下さい」


 あなた達は人の少ないほうに行った。


「赤組に負けちゃって、残念でしたねぇ。かわいそうなので、かわいいオレンジを見せてあげます」


 彼女は体操着を両手でたくし上げて、ブラジャーを(さら)した。


 あなたは彼女の大胆な行動に驚きながら、再び女子の下着を見ることになった。


 白い肌を覆う、オレンジのブラ。


 オレンジ色は、鮮やかというよりは、パステル調に近い。胸部を覆う上のほうには同色の花の模様と白のレースがついている。パステルオレンジのリボンが、中央にあった。三つ編み女子の下着と比べると、格段に装飾が多い。


「どうです?」

 彼女は強気の表情だ。


「……まぁ、自分で言うだけあって、かわいくはあるな」

「でしょ~う!」


 笑顔になっていたポニテ女子を眺めていたら、黒髪三つ編みの女子もこちらに来た。


「……見て下さい」


 真剣な顔の三つ編み女子も、自身の体操着の裾を引っ張って、大胆に持ち上げた。


 ちょっとだけ、白一色の地味な下着が見えた。彼女はすぐに裾を下げる。


 恥ずかしそうに顔をあなたから()らす。念入りに裾をハーフパンツの内側にしまう。


 白い下着を見られたのは、ほんの一瞬程度だった。けれども、一連の動作がかわいらしく映った。あなたは三つ編み女子に、見とれてしまっていた。


「あのっ! こっちを向いて下さい!」


 赤組女子の声掛けで、あなたは我を取り戻す。


「ん? どうした?」


「ほらっ! かわいいオレンジのブラですよ! こんなにステキなのがこっちにあるのに、なんで目を離しているんですかっ!」

 どうやら彼女は、あなたの視線が奪われたことが不満だったらしい。


「……ずっと見せてると、下品じゃないか?」


「えーっ! サービス精神旺盛(おうせい)って言ってもらいたいですねぇっ!」

 ようやく裾を下げた。

「あーっ、もうマジでデートで落とさないと気が済まないッ! いいですよねッ! 私のかわいらしさを脳内にまですり込ませてやりますよ!」


「私も……デート、したいです」


「じゃー、デートで決着をつけましょうかッ! 私とこの子、どっちがいいのか、アナタにはデートで決めてもらいます! いいですねッ!」


 赤組女子の強要により、いわゆるダブルデートが確約された。


                    (閉幕)


他の男子が拾っていた紙には、どんなことが書いてあったのか……。ご想像にお任せします。


最後まで読んで下さり、ありがとうございました。他にも色々と変態作品がありますので、良かったら作者の別の作品も読んでみて下さい。

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