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ゴーコン!   作者: 逆霧@ファンタジア文庫よりデビューしました。
第三章 ゴーレムコンテスト(全国大会)

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60.出発

 いよいよ出発の日。俺達は学院に集まる。


 いつもの先生的な服装と違い、まるで旅行にでも行くようなカジュアルな格好のジジ先生が正門前で点呼を取る。


「はい、放送班もゴレ班も全員居るわね。良い? 私に迷惑をかけないこと。それがこの旅行の一番大事なポイントですからね~」


「ははは、ジジちゃん相変わらずだね~」


 やけにテンションの高いマルクが嬉しそうにしている。駅までの道すがらもずっとジジ先生の隣で夢中に話しかけている。


 放送班の面々は面識が無いため良くわからない。キーラと同じクラスの子が居るらしく挨拶をしていたが、見た感じあまり親しい間柄でも無さそうだ。文系の真面目な生徒が多い班の様で、雰囲気的にもちょっと一緒に遊んだりする感じでは無いもんな。


 そのキーラは、今日のために制服のスカートの丈を短くしてきたんだとチラチラと俺達に見せつけるが……スラリと伸びたキーラの脚に視線を向けて良いのか分からずに困るんだ。「もう少し短くてもええんじゃないか?」なんて言いながらスカートを捲りあげようとするホイスをなんとも羨ましく感じる。


 飛行場は州都駅を超え、二駅ほど行ったところにある。俺は今まで飛行ゴーレムに乗ったことが無いため、今回の大会で結構楽しみにしていた。



「おお、スカイバスA318!」

「なんや、リュート。飛行ゴーレムも好きなんか?」

「そりゃあ、第7世代の超複雑ユニットで百人近いエリート召喚師達で召喚した高性能飛行ゴーレムだよっ? 好きとか嫌いとかじゃないんだよ! 一般人が触れられる第7世代なんて飛行ゴーレムくらいしか無いんだよ」

「はあ……まあ俺は普通の飛行艇でも良かったけどな」

「良くないよ! 全く良くないよ!」


 むう。想像以上にホイスの食いつきが悪い。


 元々飛行艇は、ゴーレム技術を使用することなかった。居住性能や維持などの問題で既存の機体を作り上げ、飛行術式を駆使して飛行させるのが一般的だった。古いゴーレム技術だとどうしても椅子などが硬かったりするんだ。それが近年複雑な起動ユニットを開発したスカイバス社が、今までの物と段違いの飛行ゴーレムを作り出した。その製造コストの差からこれからどんどんと飛行艇のゴーレム化が進むと言われている。


 召喚された飛行ゴーレムは魔力の補充術式の進化とともに半永久的にその姿を維持することが出来るようになっている。空間魔力や太陽から照射される魔力などの取り込み技術が進歩したのも大きい。


 実は俺は飛行ゴーレムに乗るのは始めてなんだ。盛り上がらずには居られない。


「ははは、リュートは通常運転だな」

「班長は分かりますよね。このロマンが」

「うーん……ちょっと飛ぶのは苦手だけどね」


 確かに飛行艇を苦手にする高所恐怖症の人たちも少なからず居るのだろうが。パーツごとに故障をしたりするかつての飛行艇と比べ、飛行ゴーレムはそういった問題がほぼ起こらない。そんな怖がらなくてもいいと思うんだ。



「すごいね。このシート見てみてよ、こんな複雑に素材が溶け合って、一つのゴーレムのパーツとは思えないよねっ!」


 機内に入っても俺の興奮は覚めやらない。この空間がゴーレムの中だなんて、それこそ夢のようだ。


「リュート君……ちょっと恥ずかしいから辞めてよ」

「何言っているんだキーラ。ゴーレムメイトとしてその反応こそ恥ずかしいんだぞ」

「うわあ、ドン引きなんですが~」

「しゃあない。キーラちょっと離れてようぜ、他人のふりや」

「なっ。ホイスまで……」


 こうして俺達の夢を載せて、飛行ゴーレムは飛び立った。



 シーグラス州の州都ラドウィック市の飛行場に降り立った俺達は、そのままチャーターしたMキャリッジに乗り、会場へと向かう予定だ。シーグラス州はハイランド州と比べかなり南に位置した州の為、気温もかなり高くなる。特にハイランド州は標高が高いため比較的涼しい。飛行ゴーレムから降り立った俺達はそのモワッとする熱気に驚く。


「やっぱ暑いなあ、それに湿度もたけえ」


 会場までは制服で行くと言われていたが、マルクはいつの間にかズボンが短パンに成っていた。おまけに変な麦わらのハットを被って、まるでリゾートに遊びに来た観光客の様になっている。


「先輩……それいつの間に」

「んん? せっかくの旅行なんだ。格好も変えたほうが気分が盛り上がるだろ?」

「いえ~い。マルク先輩珍しく良いこと言うじゃん! 施設も海沿いだと良いよね~」

「め、珍しくってなんだよっ」

「ひひひ」


 ……ま、まあ。マルクとキーラの2人は何処と無く同じ様な方向性の格好に見えるからな。



 Mキャリッジは先にゴーコン会場の施設に向かう。放送班は缶詰等が無いため俺達を下ろした後にそのまま宿泊するホテルに泊まるらしい。放送班の大会は聞いた所、地元PRの動画を制作して、その動画のコンテストを近くのシアターでするらしい。動画自体は出来上がっているため、動画終了後に舞台で審査員達の質問などを受けるだけという事で、かなり旅行気分は強いようだ。

 そして、ジジ先生はそちらの方に付き添いになる。缶詰中は教師など大人の付添が出来ないため当然なのだが……。先生はどこかに観光に行ってしまうような気がする。道中ずっと観光雑誌とにらめっこをしていたので間違いないだろう。


「リュート君。事前詠唱はもう大丈夫?」

「はい、おかげさまで何度か練習でも出来るのを確認したので問題ないと思います」

「そう、聞く所によると賢者君が出場するらしいじゃない? やっちまいな!」

「はい!」


 施設はかなり広い敷地を有しており、州大会の時と同じ様に不可視フィールドで囲まれた試合場の様なものが周りに設置されていた。


 Mキャリッジが放送班の面々を乗せて出発すると、いよいよ施設の中に入っていく。受付もしっかりすませ。州大会の時と同じ様に男子部屋と女子部屋に別れる。


 今回は夕食前に説明があるらしい。ちゃんとしたホールでするという。それまでは皆旅の疲れを取るために各々ゆっくりするようにケーニヒが言い。女子2人と別れ男子部屋に向かった。




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