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ゴーコン!   作者: 逆霧@ファンタジア文庫よりデビューしました。
第三章 ゴーレムコンテスト(全国大会)
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57.全国大会へ向けて 2

 その日から、毎日家で二重詠唱の訓練をしながら、事前詠唱の練習も同時進行で行っていた。


 と言っても、時間があまり無いためやるのは授業中だ。目の前で召喚石があるつもりで脳内で術式を構築していき、それを留めるイメージで行う。授業のノートはゴーコンが終わったらシュウにでも写させてもらえば良いかなと。


「良いわけないだろ。夏休み明けのテストに間に合うのか???」


昼飯を食べながら、事前詠唱が出来ないかトライをしている話をすると呆れ顔でシュウがツッコミを入れてくる。


 うちの学院は二学期制だ。前期のテストは夏休み開けにある。来週いっぱいで夏休みに入るのだが、全国大会に出場を決めた班は大会が終わってから勉強を始めるのは普通だと思うんだよな。真面目なシュウには理解できないようだ。


「でもなあ、ノート取っていたとしてもテストに向けて勉強するのは一週間くらい前からかなって思うんだよ」

「おーい。この学校の夏休みはほぼ、前期テストの為にあるって先生も言ってたでしょ? なあ、PJだってもう始めてるだろ?」

「え? いや。俺も一夜漬けで行くつもりだったから……」

「お前ら……」


 まあ、こういうタイプだからこそ中等院時代も成績トップクラスの秀才として有名だったんだろうけど。夏休みは遊びたいのが学生だと思うんだ。


「で、事前詠唱は出来そうなの?」

「う~ん。まだ何も掴めてないってのが実情だなあ。詠唱まるまるストックってのはイメージすら出来ないよ」

「構築した術式を自分の魔力で囲うんだっけ?」

「うん、テレスペースの情報だとそんな感じなんだけどなあ。構築って言ってもイメージだし。どうも上手くない」


 まだ始めたばかりなのですぐに出来るとは思っていないが。シュウは誰か周りに詳しい人いないのかと聞いてくる。

 詳しい人か……魔術言語の先生なら魔法のプロではあるんだろうな。ちょっと聞いてみても良いかもしれない。



 授業が終わると、班室に行く前に職員室を訪れる。


「お、珍しいなリュート。なんか用か?」

「あ、いや。先生じゃなくてフェリーニ先生居るかなって」

「魔術言語の? ほう、質問か?」

「ゴーコンで、事前詠唱を使えたらって思いまして……」

「お、そう言えば全国大会決めたんだもんな、がんばれよっ!」


 職員室に行くと担任のクロイツ先生が俺を見つけ話しかけてくる。ゴーコン用の魔術技術を聞きたい事を言うと、奥の方の席を指差して場所を教えてくれる。



「う~ん。事前詠唱かあ。それなら実技の方の先生に聞いたほうが早いんじゃないか?」


 フェリーニ先生は俺達の魔術言語の授業を担当している先生だが、話によると理論の方で実技に関しては3年時に選択科目で教えている先生に聞いたほうが早いと言われる。まだ俺は1年だ。実技は受けていないのでその先生を知らないと言うと、紹介してくれた。


 紹介された先生は予想外に若い女性の先生だった。「まだ若いが技術は確かな先生だよ」ということだ。ボリューミーな青髪を無造作に頭の上で団子のように結い上げ、まん丸い眼鏡を付けていた。


 ……それにしてもデカイ……。


 服のサイズをもう少し大きめにしたほうが良いんじゃ? なんて思うくらい胸の両極が主張している。俺は必死に、ソッチのほうを見ないように心がける。


 フェリーニ先生に俺の用事を聞くと「へえ、来年に向けて今から頑張っちゃうんだ」と勉強に勤しむ生徒を見るような目を俺に向ける。


「何言ってるんだ。ゴレ班は今年全国大会出場決めてるじゃないか」

「え? だってそんな垂れ幕出てませんよ?」

「こないだ職員会議で校長が言ってただろ。ていうか、お前引率じゃなかったのか?」

「あー。公費で旅行できるって言うから手を上げたんだけど……。そっかゴレ班か。すごいねえ!」

「は、はあ……」


 なんだ? この先生。


「よろしくね。ジジ・フォーゲルよ。えっと貴方は?」

「リュートです」

「うん、1年生ね。で、なんだっけ?」

「え? あ。事前詠唱のやり方を教えてもらおうかと思いまして……」

「ふぅん。そっかあ。ゴーコンで使えれば有効だもんね。でも、結構難しいわよ?」

「はい、今回のゴーコンに間に合わなくても無駄な技術じゃないと思うので」

「そうね、うん。いいんじゃない。じゃあ、ちょっと見せてもらって良いかな?」


 ん? 見せるって何を? と思っているとマジマジと俺の方を見つめる。まさか、鑑定??? 少し狼狽えていると、ジジは目を大きく見開く。


「わーお。大したものね。もしかしたら州大会くらいなら優勝できちゃうんじゃないの?」

「え? いや。だから……優勝したんですけど」


 何を言ってるんだこの人。でもやっぱり鑑定か。どうなんだろう、貴方には無理ねとか言われないかな。なんか天然なのか?


「うんうん。ケーニヒくんもかなりの物だったけど、それ以上かもね。楽しみだわ」

「あ、ありがとうございます。先輩のも見たことが?」

「うん、大学卒業して新任でここに来た時に彼も入学してきてね、天才だって言うから見せて貰いに行ったのよ。まあ、病気ばっかりはしょうがないわよね。残念だけど」

「は、はあ」


 まあ、そんな事より今は事前詠唱だ。本当はもう班活にいかなくちゃいけない時間なんだ。ジジ先生に時間がないからと、促す。教えを請いに来てどうなんだという感じだが、この先生なら良い気がしてしまう。


「そうね。本当は魔力視が出来ると割と簡単なんだけどね。出来る?」

「いや、出来ないです」

「ん~。じゃあしょうが無いか。ちょっとまってて」


 そう言うと先生は壁際の備品棚をゴソゴソと漁り、眼鏡のような物を取り出してきた。


「これは、魔力視を代用する魔道具なんだけどね。ちょっと付けてみて」


 差し出されるままにつけると、先生は人差し指を一本立ててそれを見るように言う。指を見ているとモワモワっと指からモヤの様なものが見え始める……これが魔力か? それを確認すると先生は話を進める。


「んとね、ゴーレムの召喚は頭で構築した術式を、構築しながら召喚石に移していく感じ……で良いよね?」

「はい」

「事前詠唱は、まずその術式を空に書き込む感じなのよ」

「空……ですか?」

「そうそう、ちょっとやってみるよ。見ててね」


 そう言うと、先生は目の前に魔力のモヤを出し始める。眼鏡の性能なのかあまりはっきりは解らないが確かに魔術言語のようにもみえる。


「じゃあ、ここに魔力をぶつけてみて」


 指示されるまま、魔術言語のあたりに手を伸ばし魔力を出してみると、風に吹き消されるように漂う魔術言語も散っていく。


「ね? わかる? それでこれを魔力でコーティングすると……もう一回やってみて」


 再び現れた魔術言語のモヤに向かって魔力を出してみるが、今度は何事もなく言語が固定されている。


「あ、散りませんね」

「うん。そういう事。こうやって固定した魔術をそのまま召喚石に入れれば、事前詠唱は完成。まあ、コーティング魔力がコツが必要だけど。高等院だと、第3か第4世代かな? ちょっと長いけどなんとかなると思うよ。出来るように成ればだけど」

「使おうと思っているのは第5世代なんですよ」

「え? 本当に? ああ、確かに君のステータスなら行けるか……じゃあ、来年こそは全国大会も夢じゃないわね!」

「いや……だから、今年もう全国出れるんですよ……」

「そう言えばそんな事言ってたわね」


 ううむ。すごい人なのか、ダメな人なのかイマイチ判別付かない人だよなあ。



 ただ、結局の所、魔道具などの持ち込みの禁止されているゴーコンでは魔力視を覚えないと目をつむったまま文字を書くようなものなので、まずは魔力視を覚えることからやるように言われる。


 魔力視は、3年の授業で覚えさせるらしく、出来る生徒だと一ヶ月もかからずに使えるようになるよと言われた。やり方としては、目から視神経を通して大脳のあたりまでのルートで微弱魔力を通していくと言うのが基本で、その魔力波長等を調節しながら魔力が見える使い方を覚えていけば良いらしい。


「とりあえず頑張ってみなよ。ただあまり一気に過剰な魔力を脳に入れると沸騰しちゃうからね。あくまでも微弱よ」

「え? まじっすか?」

「まあその前に頭痛で魔力を通せなくなるから、そんな事故はなかなかないけどね。ふふふ」

「はぁ……」


 魔力視が出来るようになったら続きを教えるからやってみてと言われ、とりあえず礼を言って職員室から出ていく。夏休みも出勤しないといけないんだ。とうんざりした顔で言う先生を見てると、とても優秀な先生なのか不安になる。


「やべ、班活遅刻だ」


 俺はダッシュで班室に向かった。


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