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ゴーコン!   作者: 逆霧@ファンタジア文庫よりデビューしました。
第三章 ゴーレムコンテスト(全国大会)
56/76

56.全国大会へ向けて 1

 その日から、ゴレ班を2チームに分ける。俺と社長とケーニヒの3人で白補助器に刻む術式の構築を。そして、ホイス、マルク、ヴィルが、キーラに補助式を教え込む。


 途中俺が、ホイス達に合流して実際の召喚に術式を刻む練習も混ぜる。元々第4世代対応の召喚石が余ってしまうので、練習がてらホイスとキーラのスキルレベルを上げれたらと言う目論見もある。本当はマルクとヴィルもスキルが生えればより万全にはなるのだが、そんな運任せな勝負は出来ないので、もし生えたらラッキーくらいの感覚だ。


 実際社長もケーニヒも術式理論の造詣が深い為、俺が居なくてもどんどん進んでいっている。俺は少しさみしい気分もあるが。班としてはそれが良い流れなのは確かだ。



「ホイスは2行の構築もなんとかなるな」

「せやな、もっと簡単な召喚だと2行の補助式の経験はあるからな。ただ、第5世代の抵抗に負けない圧でとなるとかなりしんどいで」

「補助器に魔力を流した時、その感覚は俺も感じたよ。第4世代のときと全然違うね」



 第5世代で行くということで、マルクとヴィルが腐らないかが少しだけ心配だったがやっていてそれが杞憂だと分かる。マルクは「飛行班が全国出てしまったら、俺達は全国制覇してその上をマウントしなくてはいけないんだ」と力説する。一方ヴィルの方は、そこまで飛行班を意識している感じでは無かったが「補助式失敗したらどうしようっていつも死ぬほど緊張もするし、やらないならやらないで助かるんだ」と言うスタンスだ。



 そして俺は、自分が出来ることとして何が出来るかを考えていた。もっと他に貢献できないかと。


 まず始めたのは、召喚術式を構築しながら補助式を構築すると言う、いわゆる「二重詠唱」と呼ばれる技術だ。歴史上二重詠唱を使う魔法師は伝説の魔術師として時代を彩っていた。だがその技術もかつての秘伝的な物から一般的なものへと変わってきている。ちゃんとした訓練をすれば割と誰でも出来る技術ではある。


 ただ、二重詠唱で並行作業をするとどうしても術式構築の質は落ちてしまうということで、ゴーコンなどの場で比較的高難度の術式の構築を並行処理していくレベルまで行けるかは未知数だ。



 それと同時に変えて行きたいのは術式の構築スピードだ。「高速詠唱」のようなものはスキルとして存在しているためこの短期間になんとかなるかは不明だが出来る限り召喚スピードを上げることが競技では重要にはなる。自分では十分構築が早いとは思っているが、第5世代召喚式の欠点の一つとして術式構築の時間がある。術式の量が第4世代のそれと比べてもかなり増えるため、それだけ召喚には時間がかかるというものだ。

 おそらくだが、第5世代で地方予選を勝ち上がってきた賢者は高速詠唱が出来るのかもしれないと推測する。もし実際高速詠唱をされたら、どうあがいても勝てない。なんとか対策を考えなければ。


 必死で対策を講じる中、大学院の部ではたまに見かける「事前詠唱」をやってみることが一番の近道ではないかと思い当たる。

 事前詠唱は召喚の前に事前にある程度の術式を構築しておいて、それを一気に召喚石に送り込むと言うやり方だ。


 事前詠唱が高等院の部で殆ど見られないのは、事前に構築した術式をストックすることの難しさがあるのだが、それと共にそれを維持する時に使われる魔力量の問題があるためだ。

 人間の魔力量は体の成長とともに増えるため、大学院生くらいになると成人量とほぼ変わらないマックスの魔力量になってくる。それと日々の生活魔道具等の利用による訓練による魔力量の増加分も年を取れば取るほど増える。それを考えても高等院でそれをこなせる召喚師がなかなか居ない。


 ただ。俺はおそらく魔力量は問題ないと思う。後は技術だ。全国大会の日まで出来る限りのことをしていこう。




「うーん。二重詠唱か。僕もそれを少し考えていたんだけどね……時間が足りるかな」


 班活始まる前に、なんとなくケーニヒに聞いてみると、ケーニヒもそれはありかもしれないと言う反応を見せる。ホイスと社長も呼びちょっとトライしてみようと言う話になった。


「まずは、脳の処理を並行して出来るように。んと……社長ちょっとマジコン借りていい?」


 そう言い、社長にマジコンの操作を指示する。何をするかと見ているとウィンドウを2つ開き、その両方のウィンドウで動画スペースを開く。全く別の音楽動画だ。音が混じり合って何が何だか分からない。


「これは家でやってほしいんだけどね、こうやって2つの動画を同時に再生させる。まずは音楽がいいと思う。視覚ではきついと思うからまずは目を閉じて2つの音楽を聞くようにしても良いから。何日か続けていれば2つの音楽がちゃんと聞き取れるように成ってくると思うから。そしたら次のステップに進もう」


 自分のマジコンが無ければ、音声端末と普通の端末を2つ使ってとか工夫してやるように言われる。ケーニヒが言うにはこういった並行処理は女性の方が向いているらしく、俺とホイスはキツイかもしれないが頑張ってくれと言われた。


 それから、事前詠唱に関してはケーニヒもノウハウは知らないらしい。大会までの一ヶ月であれもこれもとやっても、中途半端に成ってしまうかもしれないから無茶するなとも言われた。


「それでもリュートの構築スピードはかなり早いと思うよ。あまり自分を追い込まないようにな」


 そんな事を言われ。俺もとりあえず二重詠唱をメインに頑張っていこうと決めた。





 その夜、動画を2つ必死に眺めているとパメラからの着信が入る。


 >>どう? ゴーレム班も頑張っている? 1年の私達は全国大会について行けないけど、飛行班も最後の追い込みで必死にやっているわ。


 >>うん。まだ色々と詰めていかないとって事が多くてバタバタになっちゃってるけどね。出来る限りのことはしたいからね。


 >>そうだよね。全国大会まではリュート君と遊びに行くのは我慢しますよ!


 >>ははは。ゴーコン終わっても夏休みはまだ終わらないし。その後どこかに行こうよ。


 >>そうね。楽しみにしているわ。



 パメラとも会いたいが今は我慢だ。LINKでのやり取りを出来るだけでも俺は幸せだ。応援しかできない飛行班の1年と、実際にレギュラーとして出場するゴレ班の1年じゃ、忙しさが違うのもあり、パメラも気を使ってくれている。


 そして少しづつ、ゴレ班の準備も整い始めていく。


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