49.コンテスト(地方予選)4
前回、今回分をあっぷしちゃいました。
すぐに修正しております。今回の話ダブってる?って思ったら、1つ戻って読み直してもらえれば。
遠目からモニターを見ると、どうやら予選と比べ指示が細かい。りんご5個、みかん5個、柿5個……複数の果実を規定個数集めるようだ。
指示を解析したゴーレムがカゴを背負い、中央の樹木が立ち並ぶ場所に向かって小走りに向かう。
周りのチームのゴーレムも次々に中央へ向かう。林の向こう側の2チームはよく見えないが、準決勝でも第3世代のゴーレムが半分くらいをしめているようで、動き的にはそれらには負ける気はしない。だが準決勝の勝ち上がりは予選までの4チームではなく2チームだ。他の第4世代を召喚したチームより早く無ければならない。
「いい感じじゃないか?」
りんごを5つ収穫すると、次の木に移る。スピード的には十分トップ争いをしている。このまま行けば……。
そんな事を考えていると、キーラも「がんばって!」と呟いている。キーラだって同じ様に皆で勝ちたいんだろう。今回の失敗を活かすには、次に進めないと駄目だ。
「あっ!」
最後の柿を高枝切り鋏ユニットで掴んで収穫しようとした時、隣りにいたゴーレムのアームと接触をする。カゴに入れようとした柿はそのまま下に落ちてしまう。感情のないゴーレムはすぐに次の柿に手をのばすが、これは痛いタイムロスだ。
ドキドキしながら見守る中、収穫を終えたゴーレムがこっちに向かって帰ってくる。他のゴーレムもほぼ同じタイミングで収穫を完了しゴールに向かっているのが1体いる。しかし距離的にギリギリだ……。
木々の向こうで見えないチームの動きがわからない。どうなんだ? まだ掲示板にミッションクリアした学院のタイムは出ていない。
……。
気がつくと班員皆、声を上げてゴーレムを応援している。周りのチームの声も重なり、会場中が応援の声で湧き上がる。俺はチラチラと上空のモニタを見ながら他の学院のタイムが表示されていないのを伺う。
モニターにタイムが表示されないまま、ゴーレムが帰ってきてカゴを召喚台の上に置いた。同時に、高台の審判が手を挙げる。
『ニクソン学院 1着 4:06』
モニターに1着のタイムが表示される。これは……見える範囲の学院なのか? ドキドキしながらモニターを見つめると、2着のタイムが出た。
『ショパール学院 2着 4:18』
!!!
「よっしゃ!」
「助かった~~!!」
やばい、心臓に悪い。皆それぞれに歓声を上げ決勝進出を喜び合う。キーラなんて目に涙を浮かべていた。
競技が終わり、退場のアナウンスに促されフィールドの外に出ると再びお互いに健闘を称え合う。何にしろこれで決勝だ。あと一つ。だが全国大会へとすすめるチームは1チームだけ。次は2位とかでは駄目なんだ。それにはキーラのアンドリュー次式が是が非でも成功して欲しい。
ケーニヒが、キーラに近づいていく。
「うん。大丈夫だったじゃないか」
「え? でもあたし……全然ちゃんと構築出来て――」
「何言ってるんだよ、ちゃんと稼働してたよ。じゃなければ強豪校の立ちはだかる準決勝で2位なんて順位無理だよ。なあ? リュート」
いやいや、キーラのアンドリュー次式は完全に死んでいた。だが……どういう事だ? 自信を持たせるって話か? 俺はよくわからないまま「は、はい。大丈夫でした」と機械的に答える。
「ほ、ほんとう?」
「ああ、次も頼むよ。今のキーラは伸び盛りだからね。大会の召喚だけでも召喚レベルがどんどん上っているんだろうね」
「は、はい。がんばります」
釈然としない顔だがキーラはなんとなく納得したようだ。するとホイスがキーラに近づく。
「はっはっはっ。なんや。珍しいやん。キーラ」
「な、何が?」
「笑えるくらいド緊張しておったなあ。見てておもろかったわ」
「ちょっ! ホイス君。酷いじゃない!」
「うんうん。そのくらいのほうがええよ。キーラらしいやん。俺があれだけ教えこんだんや、もっと自信もってええと思うで」
「……うん。そうだね」
……ん? あれ? なんかケーニヒよりホイスのフォローの方が効果が出てる? ようやくキーラも顔の強ばりも取れ、自然な笑顔を見せる。
ん~。
まあ、いつも2人で練習してたもんな。師弟関係ってやつだろう。
決勝は1時間半後に行われる。
場所は、決勝用の今まで使われていなかったフィールドで行われる。完全に決勝の為のフィールドらしく、前情報は全然ない。
俺たちは芝生でダラダラしながら、決勝の打ち合わせをする。ヴィルは例によって施設の売店に行き、おやつを買ってきていたが、その後はちゃんと話し合いにも参加していた。皆、決勝進出という事でテンションは高い。
やがて決勝の受付開始のアナウンスがされ、決勝用のフィールドに向かう。
受付前には、ケーニヒの中等院時代の仲間というミュラーの学院も居た。流石に試合前で声を掛けてくることはなかったが、ケーニヒの顔を見てウンウンと軽く挨拶をしていた。
他の学院の情報などは殆ど無かったが、あそこは確実に強いだろう。あとは、準決勝で俺たちが負けたニクソン学院か。だが、アンドリュー次式さえきっちり稼働すれば負けはしない。
受付を終わらせると、俺たちはフィールド内に入っていった。
決勝フィールドは、今までと同じ広さだったが、中心に向けて4方向に各チームが配置される形だ。俺たちは入り口から遠い場所のようで、ぐるっと試合場を回るように歩いていく。
場所に着くと、今度は自主的にケーニヒが円陣を組むように促す。ケーニヒが伸ばした手の甲に皆順に手を重ねていく。
「元々はさ、あまり結果は考えないで、それぞれがゴーコンを楽しんでもらえたら俺は良いと思っていた。……だけど、せっかくここまで来たんだ。全国行っちゃおうじゃないか」
気合を入れると思ったが、ケーニヒは静かに皆に語った。エンジンを組む皆の目も真剣にケーニヒを見つめる。そして。
「優勝して飛行班見返すぞ。いいな?」
ひ、飛行班???
「行くぞ!」
「おお!」
一瞬皆、今それ? って顔になったが。ケーニヒの気合のこもった掛け声に皆声を揃えて応えた。
とっとと完結させてブースト期待しよう。・。。。