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ゴーコン!   作者: 逆霧@ファンタジア文庫よりデビューしました。
第2章 ゴーレムコンテスト(地方予選)

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47.コンテスト(地方予選)2

 不可視カーテンが消えた向こうはおそらく正方形のステージだろう。真ん中が林のようになっていて、様々な果実が入り乱れていた。そしてその上には浮遊魔法で浮かべているのだろう、各学院名の書かれた巨大なモニターが漂っていた。


「社長、高枝タイプだ」

「了解っ!」


 事前に収穫系の課題が予測されるステージの場合、トマトやナス等のゴーレムの高さで取れる物と、樹になる果実など高い場所に成る果実が分かれる事を予想して、普通のハサミユニットと、少し術式が複雑な長く伸ばす事の出来る高枝切り鋏ユニットで術式を使い分ける予定でいた。ケーニヒの指示で担当の社長が術式を選ぶ。ちなみに、予想のつかない場合は社長が2行分の術式を構築する予定で居たのだが、見る限り樹木しか見当たらない。


 先輩たちの話を聞くと、一回戦は強そうな学院が2つほどだということで、4位以内を目指す予定の俺たちは、キーラのアンドリュー次式も封印する。キーラの魔力量から4戦でのアンドリュー次式はギリギリだろうということで、魔力の温存というわけだ。そこかわりに、ゴーレムの駆動を滑らかにする定番術式を使ってもらう。


 ケーニヒが召喚台に召喚石を起き、俺に合図する。


 よし。


 俺は手のひらを召喚石に向け、術式の構築を始める。召喚石を媒介して可視化した魔法陣に班員が次々に術式を刻んでいく。それを見ながら問題なく書き込めたのを確認し、ゴーレムを召喚する。


 ふぁああああ。


 仄かな光とともにエンジのゴーレムが魔法陣から現れる。そう。オレたちのユニフォームの色に合わせたイケてるやつだ。頭にはカッコいい角も付いて、肩にも鋲の様な飾りもついている。戦闘だってこなせそうなとっておきのイメージを載せた。



「よし。行けっ!」


 班員の期待とともにゴーレムが起動した。それと同時に脇の小さいモニターにミッションの指示が出される。



「……」

「……」

「……ん?」

「……あれ?」


 だが起動したゴーレムはそのまま動きを止めたまま動かない。


 ――え? なんだ?


 予想外の事態に、皆慌て始める。ふと周りを見ると、他のチームのゴーレムも止まったままのが多い。その中で数機のゴーレムが木々の集まる所に歩いているのが見えた。


「おい、どうしたっ! 動けっ!」


 ――起動に失敗した? いや。そんなはずは無い。


 慌てふためく中、ヴィルが「あ!」と声を上げる。ケーニヒが「どうした?」と聞くとヴィルが早口で叫んだ。


「こいつ、指示のモニターじゃなくて、上の巨大モニター見ていない???」

「え?」


 ゴーレムの視線は分かり難いが、確かに、中央に浮かぶモニターの方を見ている気もする。そうか。周りのチームも動かないゴーレムに慌てたように、しきりに声を掛けたりしているが、これだけのゴーレムが動かないんだ。その方向で間違いないかも。……きっとこのまま待っていても多分だめだ。


「先輩。一度ゴーレムを解除しますっ! 指示を出す小さいモニターを見るように調整してもう一度起動し直しましょう」

「……そうだな。しょうがない。急ぐぞっ」


 俺がゴーレムを散らしている間に、ケーニヒがスタッフにやり直しを申請し、新しい召喚石を受け取ってくる。

 次は……眼の前の小さいモニターを見るイメージをちゃんと入れて……。



 再び召喚したゴーレムは今度は、すぐに指示を読み取りモニター横のカゴを背負い、木々が集まる方に走り出した。そして高枝切り鋏を伸ばし、順にりんごを刈り取って背中のカゴに入れていく。


 周りも順に召喚し直したゴーレムが収穫を始めるが。大丈夫だ。後発組の中では動きのスムーズさがぜんぜん違う。上空の巨大モニターではミッションをクリアした学院のタイムが表示される。先に動き出したチームのうち作業の早いゴーレムが今完了をし計測タイムが表示される。

 くっそ。止まらずに一発で動いたゴーレムは何機いたのだろう……。


 ――それでも4位までに入れば……。


 歓声とともに、2着の学院のタイムが表示される。あと2枠。

 召喚やり直しというアクシデントに見舞われた俺たちは、ただ祈ることしか出来ない。皆固唾をのみ、自分たちのゴーレムを見つめていた。やがて指示のりんご10個を収穫終えて、俺達のゴーレムがこちらに向かってくるのを確認する。


「よし! 急げ!」


 皆思わず叫び始める。反対側でも同じ様に「走れっ!」という声が聞こえる中、上空のモニターに3着のタイムが出る。思わず俺は両手をギュッと握りしめ息を呑む。


 横目で帰ってくる他のゴーレムの姿も見える。


 がんばれっ! 負けるなっ!


 ようやく帰ってきたゴーレムがカゴを、召喚台の上にドンと乗せる。


 ――どうだ。間に合ったか?


 思わず皆で斜め後ろ高台に居る審判を見る。審判の手があがる。


『4着 ショパール学院 7:34 』


「よっしゃあ!!!」

「きゃー! やったー!」

「うっし!」


 ギリギリ行けた。その直後に5着の表示が出る。俺たちは優勝したかのように飛び跳ね喜びを分かち合った。



 モニターの問題は他の会場でも起こっていたようだ。話によると、それなりの強豪校も一回戦で敗退してしまった所があるらしい。おそらく俺たちと同じ様にゴーレムのモニターの間違いによる出遅れだろう。

 マルクは「これは後でクレームとかが出そうだよな」なんて言っているが。確かにそうだ。俺たちはなんとか成ったが、一発で動き出したゴーレムが4つ以上あれば、出遅れは相当響く。出場チームのゴーレムが第3世代が多かったのも助かった要因だろうけど。



 俺たちは不可視フィールドの外の芝生で休憩を取りながら、会場から泣きながら出てくる他の学院の生徒などを微妙な気持ちで眺めていた。


 これは悔やんでも悔やみきれないだろうな。


 だが、そのお陰で、二回戦の順組も先輩たちに言わせると「多分問題ない」チームの顔合わせになった。キーラのアンドリュー次式もここでは温存できるという判断に成る。


  会場整備の為、一回戦終了後から、約一時間後に二回戦が行わる。

 モニター問題で強豪校が減ったのもあり、畑の畝を五本作るという課題で、俺たちは比較的楽に準決勝へ駒を進めることが出来た。


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