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ゴーコン!   作者: 逆霧@ファンタジア文庫よりデビューしました。
第2章 ゴーレムコンテスト(地方予選)
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46.コンテスト(地方予選)1

 当日の朝。朝食時に掲示されているブロック割を眺める。実際どこが強いか等は分からないのだが、先輩たちはそこそこ問題なさそうだと見ている。


 ふう、昨夜は眠るまで布団の中でだいぶウダウダしていたのだが、消灯時間自体が早かったせいかそれなりに寝れたと思う。体調は良い。これなら全力で召喚を出来る。

 食堂脇に設置されたステータスプレートで魔力量をチェックする。この時間帯なら、昨日の魔力が戻っていない選手などがマジックポーションで補充するのを許されているため、行列ができていた。


「うぉ! マジか!」


 俺がステータスプレートに手を載せて確認していると、こっそりと後ろから覗いたホイスが声を上げる。基本ステータスプレートの情報は個人情報として覗くのはマナー違反なのだが……。


「ちょっ。ホイス見るなよ!」

「いやいやいや。マジか。お前どんな育て方されたんや? 子供の頃からゴーコン養成ギプスとか付けられたんやないのか?」

「ちょっ。そんな事無いって。黙ってよ!」


 確かに、ステータスに表示されている魔力量。魔圧、スキルレベル。どれをとってもかなりの数値を出している。だが、見られて気持ちいいものではない。慌ててホイスに抗議するが「まあまあ、仲間なんだしええやないか」とはぐらかされる。


 ――これだからブローヴァ人は……。


「え? なになにどうしたの?」


 俺とホイスのやり取りをみて興味をそそられたキーラも覗こうとしてきたので、俺は急いでステータスプレートの表示を消し「なんでも無いよ」と答える。頬をぷ~と膨らませ抗議をするキーラをよそに俺はその場から逃げ出した。


 見られたものはしょうが無い。ホイスにプライバシーだからなと言いふくめ。食事を取りに並ぶ。



 大食堂の中はいつになく張り詰めたような空気になっていた。もう既にユニフォームを着て食事しているチームもあれば、パジャマ的な服のまま食事に来ているチームもあるが、ここ数日見てきた空気とは明らかに違う。この後2時間もすればコンテストの試合は始まっている。当然だろう。



 食後、いよいよ俺たちもユニフォームに着替える。やっぱり皆でお揃いのユニフォームに身を包むと気持ちも引き締まる気がする。施設のエントランスで社長とキーラの2人と合流すると、開会式の会場に向かった。



 開会式は、小ホールで行われるという事だ。前々日には召喚練習のために土などが持ち込まれていたはずだが、今は綺麗サッパリ撤去されていてその面影は残っていない。小ホールまでの通り道に大ホールの横を通ったが、そちらの方はまだ撤去が終わっていなかったのを見ると、開会式に合わせてこちらの方だけ突貫的に練習ステージを撤去したのだろう。


 小ホールと言っても、学院の体育館程の広さはある。ホールの正面にはステージも設置され、大会後の授賞式もここで行われるようだ。続々とチームが揃いはじめ、スタッフの案内の中、正面のステージに向かって一列に並ばせられた。


 すべてのチームが整列し終わると、正面のステージに数人の偉そうな人たちが壇上に上がり、椅子に座る。ザワザワした空気もそれに合わせピンと張り詰める。横の演台には先日ゴーコンの詳細を伝える仕事をしていた実行委員のジョジョが居た。どうやらあの人が司会のようだ。タイミングを見計らい「1、開会宣言」とマイクに向かって話し始め、開会式を始める。先日のような軽い感じは無い。


「これより、第87回ATA共催、ゴーレムコンテスト高等院の部。ハイランド州大会を行います」


 何のこともない単なる開会宣言だが、俺はゾワゾワっと鳥肌が立つ。

 そう。いよいよ始まるんだ。


 その後は、参加者全員で国家の斉唱を行い、前回優勝校の班長らしき人による選手宣誓が行われる。偉そうなおっさんの話は無駄に長く閉口するが、頭の中で術式構築をする事でなんとかシンドい時間を受け流す。


「少し押してしまいましたが、予定通り10時、今から20分後に第一会場から第四会場で同時に一回戦目を行いますので、学生は速やかに会場に向かって下さい」


 開会式が終了すると、ジョジョの一言で、ワッと生徒たちはホールから出ていく。俺たちも第2会場での一試合目だ、慌てて第2会場に向かった。




 会場の不可視フィールドの前で、チームごとに名簿と照らし合わせ中に入っていく。その時に会場地図を見せられ俺たちのポジションを指定される。中にはいると試合場の場所が見えないように不可視カーテンで隠れていてその周りをぐるっとそれぞれのチームが会場を囲むように配置されているようだ。


「流石に緊張してきたで」

「とちるなよ」

「お前もな」


 ホイスと緊張を誤魔化すように言葉を交える。召喚石を持ってきたスタッフの説明によると試合開始とともに不可視カーテンの術式が解かれ試合場に入る。中に作業を指示するモニターがあるので、そこで召喚を行うという流れだ。召喚石は失敗した場合の予備も含め2つ用意され、2つ目の召喚も失敗すれば失格と成る。まず失敗は無いと思うが、落ち着いて行くことが大事だ。


 ふと横を見ると、隣のチームは円陣を組み「行くぞー!」「オー!」などとやってる。俺たちもなにかするのかと思っていたが、ケーニヒを始め、社長たちもカーテンの方を向いてスタンバってる。


 ……無いのか?


 ホイスもちょっと気になっているようだ。ホイスだって中等院時代に散々ゴーコンをやってきた男だ。ゴーコンの作法的にもあるのが普通なのじゃ?


「先輩? 他みたいに円陣とかはせーへんのですか?」

「え? やったほうが良いかな?」

「いつもはやらないんすか?」

「ん~。少なくとも僕は見たこと無いなあ。でもなんかやってみようか?」

「やりましょうよ。気ぃはりますねん」


 ケーニヒが、少し悩んで「じゃあ、普通に手を重ねるやつでいいかな?」と皆を集めて丸い円陣を作らせる。そして円の中心に向かって手の平をしたにして伸ばす。マルクも「へっ」なんてちょっと恥ずかしそうにその上に手を載せ、皆で順に手をのせ――。


『それでは、準備は良いでしょうか。ブザーの音とともに不可視カーテンが消えますのでそれと同時に皆さん召喚を初めて下さい。さあ、がんばりましょう!』


 げっ。


 突然の試合開始前のアナウンスに俺たちは円陣を切って良いのか分からずお互いを見合う。ケーニヒも一瞬頭が真っ白になったように固まる。そこにマルクの怒声が飛ぶ。


「ケーニヒっ! 良いから掛け声を!」


 その声に反応しケーニヒが慌てて掛け声をかける。


「勝つぞっ!」


 ブーーーーーー!!!


「お、おう?」


 なんとも締まらない始まりの中、不可視カーテンが消え、試合上の姿が露わになった。


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