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ゴーコン!   作者: 逆霧@ファンタジア文庫よりデビューしました。
第2章 ゴーレムコンテスト(地方予選)

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40.ゴーコン準備 3

 課題が出てからは毎日、ゴーレム班らしい活動が出来、充実した毎日を過ごしている。

 

 日にちが進み、キーラは第3世代のゴーレムの召喚はほぼ問題ない状態まで来ているようだが、アンドリュー次式についてはなかなか苦戦をしていた。特に他の班員が術式の構築等をしていたためなかなか召喚練習での実践訓練が出来ないのもあるのだが。



「じゃあ、文字の判別の術式はほぼ固まった感じかな?」


 この日、各グループの進捗状況を把握するためにミーティングを開いていた。社長が俺たちが白補助器に刻む予定の術式を清書してケーニヒがそれをチェックしている。


「資料にある型式の白補助器に書き込める限界まで詰め込んでみたんだけど。……ただ、これをきっちり描けるかというとちょっと不安もあるんだよね」

「ふむ……やっぱ班費で1つ白補助器を買わないと駄目か……」

「キーラの練習用の召喚石は、キーラが召喚陣を描けるからそこらへんは節約できてるとおもうんだけど、足りないかな?」

「いや、キーラの召喚陣はかなり助かってるからね。ただ第3世代までしか描けないから、第4世代の練習用は別途召喚石を使わないといけないんだ。それでも大掃除に出てきた召喚石もあるからなんとかなると思うんだよ」


 結局補助器は買うことに決まる。今日の班活終了後に俺が駅前のゴーレムショップに買いに行くことで話は決まった。


 ホイスとマルクが担当している農作業ゴーレムに関しては、使われる予定の単語の候補と照らし合わせて必要そうなのをピックアップしている。それをノートにホイスがきっちりとまとめていた。それを見ながらケーニヒとマルクが相談をする。


「うんうん、良いね。あとは業務用の精密な奴を人力で構築するのは限界があるから、必要なものとそうでないものをきっちり分けてシンプルにしていく感じかな?」

「そうだな。一緒にやっててわかったんだがホイスはかなり使えるぞ。遊び半分でやってる俺なんかよりずっと技術はあるぜ。結構重い術式任せても良いと思う」

「マルク先輩、何言うてんすか。そりゃあゴーレムしか脳のない男やけど、先輩だって伊達に3年間ゴレ班でやってるだけあるやないすか」

「ん? 俺もヴィルも高等院に入ってからゴーレム始めたんだぜ、初等院時代からやってるやつにはとてもじゃないが敵わねえよ」


 それでも、人の少ないゴレ班だ。去年卒業した学年は1人しか班員が居ないような状況だったりもあり、マルクもヴィルも補助士としてケーニヒがそれなりに教え込んだようだ。

 社長はやはり初等院の頃からゴーコンは経験していたようでケーニヒにとっても貴重な戦力ではあるようだ。ただ、本人曰く「高等院じゃあまりガツガツやってないから高等院レベルではそんな技術が高いわけじゃないよ」らしい。

 それでも適性無しで第2世代まで召喚できるんだ。十分だろう。



 ミーティングで先輩たちが今後の予定を話しているのを聞きながら、俺はふと第5世代の可能性について考えてみた。

 高等院で第5世代のゴーレムを召喚する話は殆ど聞かない。そもそも、業務用で使う第5世代の召喚式なんて、ほとんどが召喚ユニットで召喚するもので、人が覚えるものではないというのが実情だ。

 それの理由は第5世代の難易度が第4世代と比べてもかなり高くなるという点と、第5世代になると補助式を入れる補助士も召喚スキルが必要に成ってしまうという点がある。適性が無くてもスキルさえ有れば補助式を刻めるのだが、そのスキルを持った補助士をそこまで揃えられる学院が殆どないんだ。


 例えばうちの班で俺が第5世代を召喚したとして、補助師として就けるのは適正のあるケーニヒ、キーラ、スキルを持ってる社長とホイス。その四人しか居なく成る。それでも四人揃えられるのはそれなりに優秀な班の気がするが、必死に頑張ってるスキルを持たない先輩に「第5世代を使うのでアシストに回ってもらって良いですか?」なんて言えやしない。


 それに、第5世代対応の召喚石は高くてとてもじゃないがお小遣いで気軽に変えるものではない。それでも召喚できるようになりたいと勉強していた為、術式は頭の中にちゃんとあるし、スキルレベルも十分足りている。……のだが試したことも無いのが実情だ。



「リュート? どうしたんだ? ボーッとして」

「いえ。なんでも無いです」

「そうか、じゃあここからはリュートはキーラのアンドリュー次式の召喚練習をメインに詰めていってもらうが良いな?」

「はい、大丈夫です」

「それから、補助器へ刻むのはキーラにお願いしようと思うんだけどどうかな?」

「え? あたしですか?」

「うん。召喚陣を描いているのを見ても、キーラに頼むのが最善かなと思うんだ」


 ……な……に?


 キーラは確かに手先が器用かもしれないが……ちょっとやりたかったかも。俺だって自分で白補助器への刻印の経験もあるし、ダンシングゴーレムはちゃんと稼働しているんだぜ? ま、まあ。先輩が決めたのなら文句は言わないけど。


 しょうがない。他にも描きたい人だって居ただろうしな。


 しかし、周りを見てもみな、さも当然のように「良いんじゃないんすか」といった反応だ。ふむ……まあ。良いんじゃないかな。


「リュートもやりたかったかもしれないけど、良いだろ?」


 そんな俺の気持ちを知ってか知らないでか、ケーニヒが俺に聞いてくる。勿論返事は「良いと思います」だ。


 


 コンテスト前の缶詰の時から、公平を期すために術式のメモなどの持ち込みは禁止されている。ただ、白補助器に書き込む術式に関してだけは、運営から届いた用紙に描いて持ち込みすることが許された。そのため、ホイス達が集めた農作業ゴーレムに関する術式は班員で手分けして整理し、必死に頭に詰め込んでいく。


 そしてゴーコンまであと僅かということで、今週末は休みの2日とも学院に集合して召喚練習等をやることも決まる。


「じゃあ、そんな所かな? 今日は解散にしよう」



 俺は帰りにそのままゴーレムショップに向かう。少し興味があったのかホイスもついてきた。




 ゴーレムショップでコンテストの練習に使いたいからと、同じ規格の白補助器があるかとオヤジに聞くと、半分キレ気味のオヤジが答える。


「まったく。お前らいつ取りに来るかとヒヤヒヤしたぜ」


 なんでも、他の高等院のゴレ班はだいぶ前に買いに来ていたらしい。白補助器はそこまで売れる物ではないから元々在庫はあまりなかったらしいが、きっと他のゴレ班もこれを買いに来るだろうと何個か取り寄せてあったようだ。


「助かります。刻む術式を考えるのに時間食っちゃったんですよ」

「それで、術式はなんとかなりそうなのか?」

「はい。みんなで頑張ってますから」


 オヤジと話している間に、ホイスは興味があるのか店の中をウロウロと散策している。


「あの子も班員か?」

「ですね、同じ1年ですよ」

「そうか……ゴレ班に入って良かったじゃないか」


 結局オヤジは学割だと言って、儲けも殆どないような値段で売ってくれた。「可愛い後輩の為だ」と言っていたので聞いてみると、ショパール学院の卒業生だという。聞いたことなかったな。

 昔はもうちょっとゴレ班も強かったんだぜって語るオヤジは、俺に期待の目を向ける。気がつくと隣にやってきて話を聞いていたホイスが強気の発言をする。


「じゃあおっさん。俺たちが全国大会に出場したら召喚石とか寄付してくれや」

「お。デカく出るじゃねえか。良いぜ。OB会に声かけて金集めてやるわ」

「へへへ。楽しみにしてるで」


 俺たちはお礼を言って店を後にした。


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