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ゴーコン!   作者: 逆霧@ファンタジア文庫よりデビューしました。
第2章 ゴーレムコンテスト(地方予選)

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36.課題

 あのデートの日から、俺とパメラの距離はぐっと縮まった気がする。でもいまだにあの時にちゃんと交際を申し込まなかった自分が悔やまれる。距離は縮まったが、付き合っているとは言い難い微妙な関係性だ。


「だって、完全に一目惚れだったんだ」


 そこまで言ったんだぜ。何やってるんだ。

 でもまあ、それがあの時の俺の出来る最大限だったんだ。パメラだってああ見えて男慣れはしていない……と信じたい俺には、ゆっくりがきっと正解なんだと言い聞かせて自分をごまかしていた。



 PJとシュウは、色々聞きたがっていたが。話せないことも多いし。適当に良い感じでデートしてきた。そんな感じで答えておいた。特にPJはもっと色々聞きたそうで不満げだったが。まあ。許して欲しい。



 あれ以来。俺はだいぶ気持ちが楽になった気がする。父親のことなど。雑誌やニュースで騒がれでいるのを度々見かけるが、前と違って少し他人を見るように、ちょっと冷静になれるように成ってきたと思う。母親はああ言っていたが、まだいい人は居ないようで、夜や休日に出かけることもあまりなく、いつもどおりだった。




 それから一ヶ月程したある日の放課後。班室に行くといつもより顔をキリっとさせたケーニヒがミーティングを開くと言い始めた。


「せやけど、この人数なら班室でいいやないすか」

「ホイス。分かってないなあ。こういうのはウチの班の伝統というものがあるんだ」


 ミーティングは、視聴覚室を使うということでゾロゾロと先輩たちについていく。俺も何がなんだかわからないままついていった。部屋に入ると段々になった席に座らせられる。ケーニヒは視聴覚室の前の演台の所に立ってみんなを見渡している。


 ――なんだ?



 先輩たちは集まった理由は分かっているようだ。班の伝統と言うが、毎年の恒例行事なのだろうか。

 ケーニヒは妙にもったいぶったように間を開けてから演技じみた感じで話し始める。


「今日集まってもらったのは他でもない。本日、今年のゴーコンの課題が発表された」


 お。おおおお。マジか。いよいよゴーコンの準備が始まるのか。ホイスも「いよいよ始まるんか」と期待一杯の目でケーニヒを見つめている。


 ゴーコンは、毎年地方大会の始まる1ヶ月ほど前にその年の課題が各学校に通達される。そして、課題の詳細については大会の直前に発表される。大会当日の3日前に参加者は会場施設に集まり、そこで詳細な課題を聞いた学生が大会に向けての術式を仕上げていく。その間はプロの技師などから情報を得たりすることを防止するために、外との連絡などが完全に禁止され、自分たちの実力だけで術式を仕上げなくてはいけない。


 残りの1ヶ月の間に。ある程度術式について纏めていくのがこれからの1ヶ月になる。


「今年のゴーコン高等院の部の議題は……」


 うん。このノリ、まだ続けるのか。


「農作業ゴーレムだ!」


 へ? 農作業??? いや確かに昔そんなテーマの大会をやっていたのを見た記憶はあるが……。ここ数年見なかったテーマだ。しかし農作業と言っても、耕す、種を蒔く、選定をする、収穫をする、稲刈り脱穀……作業の内容はかなりある。そんなアバウトなテーマでどこまで煮詰めることが出来るんだ???


「先輩、農作業って実際どんな事をやるんですか?」

「ん? それは分からない。直前に公表されると思うんだ」

「結構厳しいテーマやで、これは……」


 ホイスも農作業のアバウトさが気になっているようだ。


「ただ、作業自体はそこまで複雑なものじゃない気がするんだ」

「え? どういうことです?」

「実はな、テーマの他に、今年は新たに課題があるんだ。会場でスタートすると同時にモニタにゴーレムの作業を指示するメッセージが出るらしい。それをゴーレム自体が読んで作業を始めるものにするらしい」

「な……そんな人工知能みたいな補助式この人数で出来るわけ無いやん。どういうこっちゃ」

「そこは白補助器が支給され、それに書き込み会場に持ち込めるらしい。その白補助器の作成も今回のコンテスとでは選定基準に成るというわけだ」

「去年までとだいぶ違うってことやな」


 それから、これからの1ヶ月の役割について詰めていく。今まであまりゴーレムをやっていなかった先輩たちも流石に準備は参加していくようだ。


「それから召喚師だが、リュート。君にお願いしたい」


 ……なんとなくそれは分かっていた。ケーニヒはウルリッヒ症候群を患っている。今年の1年で召喚師が入ってきたのならその役割を俺たちに回してくることは予想できた。だが、ホイスやキーラはなんでケーニヒがやらないのか分からずに困惑の表情をみせる。


「1年の君たちには言っていなかったが、実は俺はウルリッヒ症候群になってしまってね。一応抑制剤を飲むことで魔法防御をある程度抑えることが出来るんだが、他にも召喚の適性がある班員が入ってきたのなら、任せようとずっと考えていたんだ」

「うるりっひ?」


 ホイスはすぐにその病気が分かったようだ。険しい顔で話を聞いている。だがキーラはウルリッヒ症候群の事を知らないようだ。ケーニヒは丁寧にウルリッヒ症候群の症状についてキーラに説明をする。


「じゃあ。先輩はゴーレムの召喚がもう出来ないって事なんですか?」

「出来ないわけじゃないよ。魔防抑制剤を飲めばある程度の召喚は出来る。だが地方大会を勝ち抜くには間違いなく第4世代を使う必要がある。流石にそこまでの召喚だと厳しくてね」

「先輩……かわいそう……」

「ははは。今は医術がどんどん発達しているからね、僕が大人になる頃にはきっと治療法が確立しているだろう。それに僕は元々術式理論が得意なタイプだからね。ほら、ついこないだ第8世代が発表成っただろう? ああいう研究者になりたいんだ。それなら召喚出来なくても出来ることはいっぱいあるんだよ」


 なるほど。研究者として理論構築をやるなら別に適性も必須ではない。ケーニヒはケーニヒで自分で病気を受け入れているんだろう。


 

 この日からゴレ班の活動は本格的に成っていった。


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