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ゴーコン!   作者: 逆霧@ファンタジア文庫よりデビューしました。
第1章 ゴーレム班

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21.第3世代トライ

「なあ、リュート」


 昼休みに弁当を食べていると、シュウが話しかけてくる。


「ん? なに?」

「リュートは、ゴーレム初心者じゃ無いのか?」

「え? なんで?」

「いやさ……」


 実は昨日の飛行班のレポート発表の後、パメラがこっそりと鳥ゴーレムコンテストでは浮遊魔法を使わないという話を、俺から聞いたと言ってきたらしい。俺とシュウが友達だから言っても大丈夫なのだろうという感じだったらしいが、他の人には内緒にして欲しいとの事だったようだ。


 そういえば、シュウにも俺のゴーレムオタクの事は伝えていない。この学院に入って出来た数少ない友達だ。あまり内緒にするのも嫌だなあとは思っていたんだ。ゴレ班に入った今、あまりゴーレム好きを隠す意味もないしな。


「ああ……何ていうか恥ずかしくて言えなかったんだけどさ」

「うん」

「俺、実は結構なゴーレムマニアではあるんだよ……」

「……やっぱりな。なんとなくゴーレムに対して反応が強い感じはしていたんだよな」


 そっか。隠しきれて無かったわけか……。


「うち、両親が離婚しててさ。離婚した父親がゴーレム関係の仕事していたんだよ。……だからさ。なんとなくゴーレムやってるの母親に知られたくなくて」

「ああ、そうだったんだ。でも、今は良いの?」

「うん、むしろやれって言われてね。だからもう吹っ切れた」

「そっか……あ。もしかして適性も?」

「うん。ある。なんかゴレ班の人たちにはちゃんとまだ言ってないんだけどね。タイミングがなあ……」

「ははは。まあ。上手くやれよ」


 まあ、こんな話、パーティーピーポーのPJもなんて言っていいかわからないんだろうな。ひたすらウンウンとうなずいていた。

 ただ、言っちゃえばスッキリだ。



 



 それから一週間ほど経った。

 あれ以来パメラと合うこともなく、次第に俺の期待感は薄れていっていた。登院時、帰宅時、なんとなく歩きながらパメラの影を探す自分に気がついていたが、前回に失敗した気分もあったため、自分から。というのはどうしても行きづらいんだ。


 そして今日はいよいよキーラが第3世代の起動に挑戦するということで。俺とホイスとキーラの3人は第2体育館で召喚の準備をしていた。


「よし、ええか? ほな行ってみようか」


 ホイスもあれからみっちりキーラに教え込み、術式の理解度に関しては太鼓判を押している。それでも、スキルレベルの成長具合の不安もあり、さらに初めての第3世代ということでキーラの表情は硬かった。



 召喚石に向けた手から魔力が放出され、召喚石が触媒となり可視化が始まる。出てきた魔法陣に向け、俺とホイスが補助式を転写を開始を始める。


 ん?……あれ?


 しかし、術式を転写しようとするが、なぜか魔法陣から拒絶されるような感触がある。どういう事だ? 横目でホイスの方を見ると、ホイスも同じような感じらしく険しい顔に成っている。


「あ、ごめん。なんか壊れそう!」


 キーラが叫んだ瞬間、可視化していた魔法陣が突然かき消えた。


「……潰れてしもうたか」

「潰れるって、ああなるの? なんか補助式が拒絶される感じだったんだけど」

「なんや? お前そんなのも知らんのか?」


 ここらへんは、中等院時代にゴレ班に所属しなかった自分の経験不足だろう。いつもは簡易補助式の魔道具を使って自分が枕をやるだけなので、失敗したときの補助側の感覚というのは初めてだった。


 補助式の転写感覚などは、子供の頃に父親に教わったりして知ってはいたが、父親が術式を潰してしまう事なんてなかったし、なんとなく成功するのが普通という感覚があった。確かにゴーコンの会場では、緊張だったり、試合に勝つために少し背伸びした世代の起動式で挑戦するなどで、召喚式が潰れてしまうシーンなどは見たことが有ったが……。


 なるほど。面白いな。


 どうやら、初めて自分が補助式で参加しての召喚で、こういった失敗したという感覚が、新しい経験であり、興味深い現象のように感じてしまったようだ。


 ……ちょっと嬉しそうな顔をしてしまったらしい。


「お前、失敗してなに嬉しそうな顔をしてるねん」

「え? あ。ごめん。術式が潰れる感覚が初めてだったから……つい」

「初めてって……ゴーレムやっててそれはありえへんやろ」

「あ……俺、今まで父親としか召喚やったこと無かったから……」

「は? なんやそれ。中等院時代に班活に入ったこと無いって言うし、お前相当なコミュ障やな」


 う……コミュ障とか言うなよ。どっちかと言うと。単に人見知りなだけなんだ。俺は。


「ちょっと。私のことを放置しないでよ。失敗したんだから慰めないの?」

「ああ、悪い悪い。まあしゃあないわ。始めは誰だってそんなもんやで」

「うっわ。超テキトーだし」


 しかし、術式が潰れる原因はなんだろう。よく言われるのが魔力不足、集中切れ、理解不足、構築ミスあたりか。

 高等院の年齢だと魔力に関しては第3世代ならそこまで問題にならない気はする。程度の差はあるが人間の魔力量や濃度は体の成長に比例して増え続ける。その他魔力を使用する事で少しづつ増えていくのだが。

 現代の生活の中では様々な魔道具が使われるようになり、その起動時などに常に魔力を使用するため、魔道具が一般的に広まっていないような数百年前の人たちと比べて現代人の魔力量は自然と多くなるという話もある。


 集中力や理解力に関してもキーラにそこまで問題あるように思えない。ただ、そう言った条件もスキルレベルが上がるごとにハードルが下がっていく事を考えると、やはりもう少し経験を積ませてスキルレベルを上げることが優先されるのかもしれない。


 おそらくホイスも同じことを考えたのだろう。今日はあと2回第2世代の召喚をして、召喚練習は終わりにすることにした。



 


「そうだねえ。きっとまだ召喚始めたばかりだからさ、魔力の通すタイミングとかって結局経験で感覚を覚えていくものだからね。キーラがお父さんに買ってもらった召喚石で、どこまでスキルレベルが上がるか分からないけど、まずはそこからじゃないかな」


 班室に戻りホイスがケーニヒに相談すると、同じような答えをされる。


「せやかて、第2世代より第3世代を召喚したほうがスキルレベルの上がりは良いやないすか。召喚石が限られてるならなるべく効率のいい訓練をしたほうがええやないすか?」

「そこは申し訳ないね。ただ。明日生徒会室で班費の交渉があるからさ、なるべく頑張って班費を増やせないか交渉してみるよ」

「おお、それは大イベントやないすか! ケーニヒ先輩が行くんですかい?」

「一応2人だからね、僕とマルクで行ってくるよ」

「よろしゅうたのみまっせ」


 すると、漫画を読んでいたマルクがこっちを向いてニヤリと笑う。


「ふふふ。任せておけ。俺はこの交渉をするためにゴレ班に在籍し続けたようなものなんだ。毎年先輩たちが生徒会室からうなだれて帰ってくるのを見るたびに、俺だったらって考え続けていたんだぜ。我に班費アップの秘策あり! どどっと俺が増やしてやるさ」

「お、おおお。頼もしいですわ。頼みまっせ!」


 なんか、マルクのモチベーションの方向が気になるが……班費が増えて召喚石をたくさん購入できるように成ったらそれはそれで嬉しいしな。


 

 でもまあ、他の班でもMボードとか自前で競技用のボードを買ったりしているのが普通だ。俺も少し自分で召喚石を買って班活で使うってのもおかしい話じゃ無いよな。


 今度の週末でも街で安いのがあるか見てみるか……。


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