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ゴーコン!   作者: 逆霧@ファンタジア文庫よりデビューしました。
第1章 ゴーレム班

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19.魔力補充術式

「あれ? 早かったねえ。どうしたの?」


 班室に帰ると、今日も宿題をやっているケーニヒが聞いてくる。俺とホイスがなんとも言えない顔で顔を見合わす。


「ちょっと、飛行班の連中と揉めたんですわ」

「ふう……またか」


 少し困ったような顔をするケーニヒに、ホイスはちゃんと言い返したんやとフォローをしているが。キーラが切れて色々罵倒した話になると、更に困った顔が深まる。

 俺達としては今回のイザコザ、キーラの罵倒で言葉を失ったアイツの顔を思い出すと、割とスッキリした感じで終えたんだが。班の長としては、別の班の先輩に喧嘩をふっかけるような事はちょっと困るのだろう。


「まあ、でも先に仕掛けてきたのはあっちなんだね? ちょっと3年の飛行班の奴らに言っておくよ」

「ほんまムカつきますわ。班長さん、よろしゅうたのみます」



 その後いつものベンチに腰掛け、2人で第3世代の勉強を始める。


 が。


 なんとなく、ホイスの歯切れが悪い。見ていると、やがて変な空気感に耐えられなく成ったホイスが術式の本を置いてキーラを見つめる。キーラはキョトンとホイスを見つめ返す。


「な、なんや、その……」

「ん? どうしたの?」

「ああ……なんつうか……その……ゴーレムやってるのは、辛気臭いって話……ほんまか?」


 ぶっ。


 やはり、ホイスもそこが気になってしょうがなかったのか。いや俺も実際自分がどう見られているのかとか考えると、ちょっと気になっていたんだ。

 確かに中等院時代にゴレ班やってるタイプの人間と、ギャル系の遊んでいるようなタイプの女の子じゃ、クラスのカーストの立ち位置がちょっと違うってのは気がついていたが。俺は……完全にゴーレムオタクだしなあ。先日もやっちまったし、自覚はある。


「あ。あ~……あはははは」


 キーラもホイスの質問の意味に気がついたようだ。ちょっと困ったように笑って誤魔化そうとする素振りを見せる。だがその態度が余計ホイスには解らせてしまう。


「やっぱり……そうなんやな?」

「えっと……ほら。ん~と。ウチの中等院時代は結構そういう感じあったんだけどね。この学校だと、そこまでそんな感じはしてなかった……かな?」

「ほんまか?」

「う、うん」


 キーラは言い訳っぽい感じで話しては居たが。実際中等院時代のゴレ班はマジメくんとかばかりで一緒に遊ぶことも無いし、壁が有ったという。ただ、逆にこの学校ではキーラの中等院時代の遊び友達は1人も同じ学校に入らなかったりして、逆に自分が浮いているのを感じているようだ。

 ウチの高等院は、地元じゃ学力的には一番高い。キーラの家は勉強にはなかなか厳しいらしいが、成績さえ取れば何も言わない家だったので勉強はしていたらしい。そのまま成績上位でこの学院に合格し入学してきたという事だったが。


 確かに、キーラみたいなタイプはなかなか見かけないし。同級生で一緒に遊べそうな友達とか居ないんだろうなって感じる。



 それなりにホイスも納得したのだろう。まあええわ、と再び術式の教本を手に取りキーラに説明を始めた。俺は……まだ微妙に時間が早いしな。どうしようか。


 なんとなく、最近図書室に行くのに抵抗があったが、ちょっと調べたいことがあったのでやっぱり行ってみようと思う。


「先輩。ちょっと図書室に行ってきます」

「ん? ああ。行ってらっしゃい」

「時間が微妙なんで、今日はそのまま帰っちゃってもいいですか?」

「うん、構わないよ」


 俺はそのまま鞄も持って図書室へ向かった。




 調べたいことは、大気中に交じる空間魔力の取り込みの術式の事だ。

 なんとなく代表的な術式はうろ覚えではあるが頭に入っていたが、いきなり補助式として組み込めるかというと少し自信が無い。あとはその発展型で、第2世代向けの物などあるかもしれないと言う算段だ。しかし……。


 うーん……微妙だなあ。


 この学校は飛行班が優遇されてるというのもあるのかもしれない。鳥ゴーレムコンテストでは、こういった空間魔力を取り込んだりするような術式が禁止されている。それは純粋に少ない魔力での効率的な飛行を成り立たせるためでもあるのだが。そういった事が書籍の在庫の品揃えにも影響が出ているのかもしれない。


 それでも、単独の書籍じゃなく、なにかの書籍の中で触れられているのもあるだろうと、隅から探していく。個別に魔力補充術式だけの書籍は無かったが、大全的に幅広く扱っている書籍は多い。目ぼしいのを数冊本棚から引き抜くと、机に向かった。


 魔力を補充させる術式は工業用など、仕事に使う専門的なゴーレムにはほぼ全てのものに使われている物だ。特にダンジョンでの作業ゴーレムは、ダンジョン内の濃厚な魔素を利用することで単純な機構のものなら半永久的に稼働させられるという物だってある。現代のゴーレム術式ではかなり重要なものではあるので、無い事は無いだろうとは思うんだ。


 やがて、やはりチラホラとその記述があるものが見つかる。


 ……だけど、これかなり高度な術式ばかりだよな。


 かなりプロ向けの術式例が書かれているページを必死に眺める。しかもこの術式、タイプがちょっと古いよな。この本は……と、後ろを見ると改定はされているが初版は30年くらい前の本だ。ううむ。纏め方も上手だし、貴重な良い本だと思うんだけど。ちょっと違うのを探すか。


 別の本を開き、再び魔力補充の術式を探していく。そして気に成った術式を片っ端からノートにメモしていった。



 ……


 ……


「あの……そろそろ図書室を閉めたいのですが」

「へっ! あ。すいません!」

「いえ。大丈夫です。とても集中しているようでしたので」


 いかんいかん。つい熱中してしまった。予想以上に色んなアプローチがあって面白い。魔石をセットしてそのまま魔石から魔力を補充していくタイプの物もある。空間魔力を使用する機構とまた別の補充の理論が成り立っている。他にも太陽光に含まれる魔力を補充する機構を組み込んだゴーレム衛星技術は今回の件には全く関係がないが、楽しすぎて無駄に読み込んでしまう。


 図書班の女の子が「もし借りていかれるのなら手続きしますよ」と言ってくれるが。結構重い本ばかりだしな。カバンに入れていくのも厳しそうだ。


 また明日来ますとメモをしていたノートをカバンにしまい、本を棚に戻す。そして片付けをしている女の子にお礼を言って図書室を後にした。


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