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18.キーラ。怒る

 週末を挟んで、班活に出ると。キーラが嬉しそうに召喚石の入った箱を見せてきた。

 ゴレ班に入ったことを喜んだキーラの父親が買ってくれたらしい。見ると俺が毎日のように使っている練習用の召喚石だった。箱の中に10個ほどが詰め込まれていた。

 と言っても俺が父親から貰った物は国産の上質のものなので、練習用と言ってもそこそこの魔力が入っていて普段俺が使うようにある程度遊ぶことは出来る。キーラが見せてくれたものは海外製の品質も保証されていないような、召喚回数を増やして、ただスキルレベルを上げるのに使うようなものでは有ったが。


「これは助かるなあ。ほな少し召喚練習に行こか」


 早速ホイスが召喚をしたいらしくキーラを誘う。ホイスは特に俺に声を掛けてこないため、ついて行って良いのか悩んでいると、キーラが声を掛けてきた。


「リュート君もおいでよ」

「は? せやけど、これは練習用やで。補助式決めて色々作業させるほど長く召喚できへんで?」

「だけどせっかく1年で3人も入ったんじゃない。補助式だって入れれば練習になるんでしょ?」

「そうやけど、……ああ。まあリュートも暇なら顔出せばええ」


 キーラの提案に流石にホイスも邪険に出来ないのか、特に俺が行くのも拒否することはなかったため、俺は2人について第2体育館へ向かった。




「今日も飛行班の連中がおるな。まあ、起動練習やから隅を使わせてもらおか」


 今日は飛行班は少人数で召喚の練習をしていた。見るといつかの嫌味な2年が真ん中で偉そうに指示を出したりしていた。


「ちょっと隅っこ使わせて貰いますわ」


 そう言うと、ホイスはズカズカと体育館の中に入っていく。それを見て例の男は「チッ」と舌打ちをする。


 その音にホイスが一瞬飛行班の方を向くが、特に何も言わずに体育館の隅まで歩いていった。


「あれやろ? お前が前にからかわれたのって」

「うん。そうだね」

「たく。仰々しく舌打ちなんてしやがって、ああいう輩は無視にかぎるな」



 まずはこないだと同じ様に第2世代のゴーレムを召喚してみよう準備をする。今日はボールが転がっていなかったためどうするのかと思ったが。ホイスが用具室を覗いて、掃除用のモップを取り出してきた。


 これでモップがけでもさせようという事だろうが……。そう言えばこの召喚石はどの程度持つのだろうか。魔力は人間が持つものと、大気中に自然に混じっている空間魔力がある。その空間魔力を取り込んで起動時間を増やすような補助式もあると言えばあるが。第2世代の拡張性だとあまり効果は出なそうな気がする。


 ――どうしようか。


 実際そんな複雑な術式、うろ覚えだし、そもそもあまりマニアックな補助入れるとホイスが気を悪くするかもしれない。少し悩んだが、ホイスの要求してくる補助式をそのまま補助式として構築する。前回と同じ様にホイスは地べたに座り、ノートを広げて式の構築をしていた。


 またもや筆記用具を何も持っていなかった俺は、頭の中で構築をしていたが、今回は特に何も言ってこなかった。



 ……


「で、なんでピンクやねん」

「えー。可愛いからでしょ?」


 前回と同じ様に、ピンク色のゴーレムが召喚される。やっぱりモップを持たせたが大して進まないうちに消えてしまった。それでも僕らの補助式もある程度問題なかったのを確認できたが。


「どないする? 第3世代トライしてみんか?」

「まだ2回しか召喚してないんでしょ? スキルレベルが足りないんじゃない?」

「理解さえしてればなんとかならへんか?」



 定説として、スキルレベルはゴーレム術式を使えば使うほど上がる。ただ、ゲームなどのように段階的に上がっていくものではなく、あくまでもファジーに成長していくものであるため、アバウトな感じではある。

 国や各魔術学会毎にいろいろなレベル規定が乱雑しているためレベル量の表現も種々様々なのだが。一般的にはルドルフ式測定と言われる計測方法の数値で0-9がレベル1、10-19がレベル2……という表現が使われることが多い。


 ちなみに、召喚師の適性がない人間でも、補助式などゴーレム術式をずっと使い続けることで召喚スキルが発生することはある。しかしその場合、適性がある人間と比べスキルレベルの上がりはかなり渋いらしくなかなか育つことは無い。その事から考えても班活オリエンテーションの時に社長が第2世代のゴーレムを召喚したということは、その背景にはかなりの努力が有ったんだと思う。


 だけど……班活を見てる限りそんな練習をしている感じはない。もしかしたら中等院時代に相当ハードな班でゴーレムをやっていたのかもしれない。


「まだ第3世代は自信ないかなあ」

「ん~。しゃあないな。今日はもう1回第2世代召喚して、その後班室で勉強やな」


 キーラは流石にまだ自信が無いようで今日はもう1回、先程と同じ様に第2世代を召喚することに成った。おそらくキーラは今まで魔力の使用も一般的なレベルでの使用しかしてなかったんだろう。召喚にはそれなりに魔力が使われることを考えると、もう1回で今日は終わりにするというのは正解かもしれない。



 ブォオオン!


「うぉお! 何や!」


 次の召喚の為に準備を始めようとしたとき、1機の飛行ゴーレムが俺たちの上をスレスレで飛んでいく。ちょうどホイスの上を通ったため、驚いたホイスがゴーレムを避けようとして尻もちをついた。


「ははははは。いやいや悪い悪い。高度設定を間違えたみたいだ」


 くっ。こいつ絶対ワザとだろ? ホイスもその雰囲気を感じ取ったようだ。怒りに燃えた顔をその上級生に向ける。


「笑いながら言うことや無いやろ! 当たってたら大事やないか!」

「おいおい、今年のゴレ班はどいつもこいつも上級生に対する口の聞き方を分かってないようだな」

「上級生もクソもあるかっちゅうねん。こんな危険な事して笑うなっちゅう話や! アホか! 上級生ぶる前に、初等院からやり直したほうが良いんちゃうか?」

「なんだと!?」


 ホイスに言われてその上級生達も色めき立つ。だけどホイスは間違ったことを言ってはない。完全に逆ギレじゃないか。まあ、ホイスは言い過ぎかもしれないが。


「そんな第2世代の、しかも気持ち悪いピンクのゴーレムなんて召喚しやがって」


 顔を醜く歪め、飛行班の奴が言い放つ。しかし全然それは関係ないじゃないか。ホイスが半ギレで言い返そうとしたとき。キーラが突然前に出てくる。


「はぁああ??? アンタ何言っちゃってるの??? 私のピンゴレちゃんが気持ち悪いとかさ。ありえないんだけど~!」


 え?


 ……いや、第2世代はともかく、ピンクのゴーレムは何も言えないやってちょっと思っちゃったんだけど……。そこ???


 突然キーラがブチギレたのに、上級生もなんかタジタジになっている。女子には弱い? というより。ギャルに慣れてないって感じなのだろうか。憤慨するキーラは尚も言い放つ。


「ほんとアンタ達どんなセンスしてるの? ピンゴレちゃんが気持ち悪いって??? だからゴーレムやってる奴らって周りから辛気臭いとか言われるんでしょ? どう考えても気持ち悪いのはアンタでしょっ!」


 え?


 ……いや、確かにゴーレムやっているのはガリ勉っぽい人とか、文化班系の人たちだからあんま、ギャルっぽい子と触れ合うイメージは無いんだけど……そんな事言われてるの?


 チラッとホイスの方を見ると、ホイスも口をあんぐりと開けて魂の抜けたような顔をしている。


 更に何かを言おうとしているキーラを俺とホイスが慌てて制止させ、まあまあと宥める。そのまま今日は無理だなと、ホイスと目で合図をする。表情筋をピクピクさせて何も言えないでいる飛行班の奴らを放置して、俺達は体育館を後にした。


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