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ゴーコン!   作者: 逆霧@ファンタジア文庫よりデビューしました。
第1章 ゴーレム班

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17.キーラの理由

 ――やっちまったぁ!!!


 ベッドの上で天井を眺めながら、俺は絶望していた。


 何度も何度も学校の図書室での記憶が頭を回る。確かにゴーレムの話だったけど……あそこでガッツリと語る馬鹿がいるかっ! あの時のパメラは完全に引いてたよな。ああ。終わった。完全に終了した。何も始まる前に終了した。


 くそっ。あれもこれもシュウが悪い……のか?


 ……いや。俺だな。


 はあ……。


 何度も同じような自答を繰り返していると1階から母親に夕食の準備が出来たと呼ばれる。


「ん? どうしたの? リュート」

「え? どうしたって、何が?」

「なんか、人生に絶望したような顔になってるわよ? ゴーレム班に入ってからは少しさっぱりした感じだったのに」

「いや、なんでも無いよ」

「そう?」


 いつもながら母親はなんか気が滅入っている時はすぐに気がつく。でも俺としては親に話せるような話じゃないんだ。突っ込まないでほしいんだ。


 その後何事もなく食事を終えるが。


 その夜は頭を抱えてなかなか寝付けなかった。





「今日もまたひでえ顔してるなあ」


 昼休みに、またPJが突っ込んでくる。俺は適当に答えておいた。

 それを見ていたシュウも意味ありげな顔で聞いてくる。


「で。どうだったんだ?」

「どうって?」

「昨日、パメラと話したんだろ?」


 シュウの一言にPJが色めき立つ。


「な、なんだって! リュート。ホントか?」

「え……と。やっぱシュウの差し金かよ。ダメダメ。舞い上がってやっちまったよ。きっと気持ち悪い男として俺の青春にピリオドを打ってくれたさ」

「そうか? あの後さ、お前の事聞いてきたぞ? どんな人なの? って」

「へ? ……いやいやいやいや。あの状況で印象良くなったとかありえないから」


 もう次に向かうと決めたのにさ。掘り起こさないでくれよ。

 俺は机に頭をのせ、ふう~と深い溜め息をついた。


「そうかなあ。割と良い印象の感じがしたけどなあ。残念。まあまだ高等院生活は始まったばかりだよ。ほら、うちのクラスにも可愛い子はいるんじゃないか?」

「そうそう。リア充のシュウはいつか呪われるけどな。リュート。前を向け! そこに女性がいる限り!」


 ……もう、勝手言いまくってるなあ。


「そうそう。でもさパメラって班長の妹だけあって、他の子とはちょっと違うよな」

「まだパメラさんの話かよ。って、シュウは呼び捨てなの??? やっぱリア充は違うよな」

「いやまあ、そっちの話じゃなくてさ。書いていたレポートの話」

「レポート?」


 昨日の話の通り、シュウ達のグループは飛行ゴーレムを浮遊魔法で飛ぶものとしてレポートを作っていたらしい。それが昨日パメラが借りてきた本を見て、急遽レポートの内容を書き直すことになったという。これで他の班に負けないレポートになりそうだとシュウは嬉しそうに話していた。


 よかった。どうやら俺の名前は出さないでくれたみたいだ。




 授業が終わり、俺はいつものように班室に顔を出す。あれ。今日は1番乗りか。それにしても、ヴィル先輩はもう少し食べた袋をちゃんと片付けてほしいものだ。アレだけ大掃除をしたのに少しゴミが散乱し始めている。俺は片付け始める。


「あれ? まだ誰も居ないの?」


 そこにキーラが入ってきた。キーラはいつもホイスと練習しているイメージがあったが班活には一緒に来るわけじゃないのか。


「うん? ホイスは?」

「そのうち来るんじゃない? クラス違うし良くわかんないよ」

「あ、クラス違うんだ」


 俺がゴミをまとめるのを見て、キーラも手伝ってくれる。そう言えばキーラはなんでゴレ班に入ったんだろう。ゴーコンは人気のある競技ではあるけど、割とゴーコン参加者自体は文化系の真面目そうなというか……ちょっと暗い系の奴らが入ってくるイメージが無いわけじゃない。それに対してキーラはどちらかと言うとギャルっぽいと言うか、遊んでそうな雰囲気の子だ。


「キーラはなんでゴレ班に?」

「え? ん~。正直あまり興味は無かったんだけどねえ。ほら研究者でも無ければゴーレム技師って工事現場で作業ゴーレム扱うようなガテン系のイメージも有るじゃん?」

「ああ、まあそうだね。でも防衛軍とかゴーレム適性有れば色々と選択肢はあるじゃない?」

「それだって汗臭そうじゃん」

「ははは」


 うん。ますますキーラの入班の理由が分からない。


「……まあ、ゴーレムの適性があるって分かった時。親は喜んでいたよ? 中等院時代とかもゴーレム班入ってほしそうだったしね」

「え? ああ。そうだね。将来食いっぱぐれることは無いもんね」


 そう。召喚師の適性があるだけで専門職の資格を持っているような物なのだ。適性が無くても苦労してスキルを習得する人もいる中で、生まれながらに適性を持っているというのはやはり優遇されていると考えても良い。


「でもさあ、なんかイメージ違うじゃん? 私と。本当は班活なんてするつもりも無くてさ、担任に直談判しにいったんだ。班活なんて入らないで遊びたいんだけどって。そしたら、ここは緩いと思うよってゴレ班を勧められてね」


 ううむ。俺と同じような感じなのか? いや全然ちがうな。でも、ホイスと勉強しているのを見ると結構ちゃんとやってるよな。それに、うちの高等院に入ってくるってことは学力だってそれなりにあるんだろうし。


「で、見学に来てみたらさ。班長ちょーかっこいいジャン?」

「え? そこ?」

「うんうん。今年で卒業って残念だけどねえ。よし。ゴレ班でいいやって」

「ははは……」

 

 人それぞれって事だね。初めての召喚でピンク色のゴーレムを召喚した時は驚いたけど。意外とこういう自由な感覚の人が居ると、僕らのようなマニアとは別の視点でいいアイデアが思いついたりするのかもしれないな。

 


 やがて先輩たちやホイスもやってきて、いつもと同じような光景が始まる。俺はなんとなく図書室に行く気にならず、ホイスが必死にキーラに第3世代の術式を覚えさせようとするのをボーっと眺めていた。


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