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10.大掃除

「ちょっと班長!」


 ホイスが再び抗議をする。ホイスの話をケーニヒは静かに聞いていたがやがて諭すように話し始めた。


「ホイス。入班のキッカケなんて何だって良いんだよ。お前はゴーレムは楽しいって知っているだろ?」

「それは、そうやけど」

「だったらどんなキッカケで入ろうとも、ゴーレムの楽しさを、魅力を味あわせてやって沼に嵌めてやる位の気持ちで良いじゃないか。リュートだってきっと抜け出せなくなるんじゃないか?」

「こないやつに、ゴーレムの面白さが解るやろか」

「ふふふ。何よりも彼は僕が声をかけたんだ。きっとホイスの世代に成っても頼もしい仲間になると思うよ」

「……まあ、班長が言うなら従いますよ。せやけど俺は何も教えへんですよ。こいつにゴーレムの基本を教えるので精一杯やから」


 そう言いながら、ホイスは俺達のやり取りを唖然と見ていた隣の女生徒を指す。その子はなんだか困ったような顔で、苦笑いを浮かべていた。



「あれ? 新入班員?」


 今度は2人の班員が班室に入ってきた。1人は女性で、確かオリエンテーションの時にマイクでボソボソ喋っていた人だ。もうひとりも多分あの時に居た人だろう。少し小太りの男だった。


「お、全員揃ったね。じゃあ簡単に自己紹介をしようか」


 ケーニヒは先程のゴタゴタも気にせずにマイペースで話を進めていく。


 まずはケーニヒ。ゴレ班の班長だ。今のゴレ班の召喚師と担当していると名乗った。そして椅子で本を読んでいた男がマルク。この2人が3年生だ。それから2年が女性の方がローサで、男はヴィルと名乗った。


「まあ、ローサは普段社長って呼ばれてるから、そう呼んでいいから」

「ちょっと班長。やめてよ」

「社長? ですか?」

「なんでも無いのよ。忘れなさい」

「は、はい」


 1年は、ブローヴァ訛りの奴はホイス。そしてもう1人の女性はキーラと名乗った。

 ホイスは中等院時代はかなりの強豪校でゴーレムをやっていたようで、俺がいれば未来のゴレ班は明るいんじゃ。と妙に強気で居る。

 キーラはなんとなくゴーレムをやるタイプの雰囲気ではない。制服のスカートも他の子と比べて短くしてる感じだし、ボタンも第2ボタンまで開いていてネクタイがユルユルになっている。そう。どちらかと言うとギャルっぽいと言うか、学校帰りに街で流行りのスィーツとか食べてそうな感じといえばいいのか。ただ、話を聞いているとどうやら召喚師の適性があるらしい。だが本人は全くゴーレムに興味がなかったのか、まるで知識が無いという。

 もしかしたらホイスがゴリ押しでゴレ班に連れ込んだのかもしれない。それでも特にやりたい事も無かったようで、まあやってみると言った感じのようだ。


 そして、俺も自己紹介を促される。


「1年2組の、リュートです……」


「……」

「それだけ?」

「ゴーレムの経験は?」


 え? だって先輩たちもそんな色々喋ってなかったでしょ? 俺は突然の突っ込みにしどろもどろになる。


「先輩たち、そんな奴ええやないすか。俺は今日もキーラを鍛えないとあかんのや、自己紹介はそのくらいにしときましょ」


 ホイスの一言で俺は救われたが。同じ班員になるホイスの態度に俺は先行きの暗さを感じてしまう。


 紹介が終わると、先輩たちは普段座る場所などが決まっているようで各々班室の中でくつろぎ始める。マルク先輩も、さっきまで読んでいた……漫画を開き読み始めていた。


 えっと……。何か班の活動のようなものは無いのだろうか。見ればホイスがキーラにゴーレムの基礎理論を再び教え始めてはいるが。他の先輩たちは皆勝手に何かをやっている。ヴィルは持っていたコンビニの袋からパンを取り出し食べ始め。社長……ローサはノート型のマジコンを開きブツブツと何かをつぶやいている。


 俺はどうして良いか分からずに、ケーニヒの方を見る。


 え?


 ケーニヒが大きな袋を持ち出して何やらゴミを拾い出していた。


「先輩? 何を……」

「ん? いや。せっかく新入班員が入ってきてくれたからね、班室の掃除でもしようと」

「あ、僕も手伝います」


 俺は慌ててケーニヒの掃除を手伝い始める。ゴミ箱もへったくれも無いようで班室の床には食べ物の袋や、良くわからないものが大量に転がっている。

 先輩の隣でゴミを拾いながら俺はそっと尋ねた。


「そう言えば、例の……教えてもらえるんですよね?」


 そう。ゴレ班に入った理由の1つでもある、エライサ式の謎だ。ずっと頭から離れないでいたんだ。俺の顔を見たケーニヒはちょっとイタズラでもしているかのように笑い答える。


「ああ、もちろんだよ。だけど入学して一ヶ月は自由に辞めて他に移動できる仮入班の期間だからね。教えられるのはそれが終わってからだね」

「え? まだ教えてもらえないですか?」

「ふふふ。ゴーレムは逃げないよ」

「は、はぁ」


 こうして班活終了時間まで、俺はケーニヒとひたすら班室の掃除をすることになった。






「そう言えば、ゴレ班には行ったの?」


 次の日、昼飯を食べながらシュウが聞いてくる。


「ああ、一応行ってきたよ」

「おお、それでどうだった?」

「うーん。まだなんとも……昨日はひたすら班室の掃除をしてただけだし」

「掃除?」

「なんか、班室が荒れ放題でね。まだ班の活動がよくわからないんだよね。飛行班はどんな感じなの?」

「うーん。かなり体育会系ってやつかな」

「結構厳しいの?」

「そうだねえ。色々術式理論の課題を出されてるよ。それの成績でグループ分けされる感じかなあ」

「それは大変だ」

「うん、でも好きなことだからね。召喚師の適性有るわけじゃないから、理論武装しないと」

「そっか」


 PJは、PJで生徒会に顔を出して来たと言っていたが。「なんか皆堅くてねえ」なんて言ってる。それでもまだ初顔合わせでお互い打ち解ければ変わるんじゃないか? とシュウがフォローをしていた。




 その日の班活もひたすらケーニヒ先輩と班室の掃除をした。


 細かいゴミはある程度昨日のうちに纏めたので、ゴミ袋に入れて班室棟のゴミ捨て場に持っていく。


「おいおい。ゴレ班の班室はゴミしか無いのか?」


 ケーニヒ先輩が纏めているゴミを、俺がごみ捨て場まで必死にピストン運搬をしていると、それを見ていたらしい上級生が声を掛けてくる。どうも嫌な感じだ。

 振り返ると、どこかで見たこと有る男とその取り巻きっぽい男子生徒が2人、ニヤニヤしながらこっちを見ていた。


 ん? この人オリエンテーションでゴレ班にヤジを飛ばしていたやつじゃないか?


 上級生の顔に思い当たった俺は、あの時に嫌な思いが蘇る。無視を決め込み黙ってゴミを運ぶ。


「チッ。なに無視してるんだよ。お前1年坊だろ?」


 こういう手合は無視をされることが許せないらしい。とりあえず挨拶でもして……。


「こんばんわ……」

「ふん。ゴレ班は先輩に対する礼儀も教えないのか?」

「昨日入ったばかりですから」

「口答えするんじゃねえよっ!」


 うわ。面倒くさい。ひとまず俺はゴミ捨て場にゴミを捨てると早足で班室を目指す。


「ふん。また辛気くせえのばっかり入ったな」

「……」


 俺は後ろを振り返らずに班室に戻った。

 と言っても……まだゴミ捨て場に持っていくゴミ袋はある。嫌だなあ。


今日はこのくらいかな。

それにしても……このタイトルじゃ誰も食いつかないw

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