ドライヤーガン戦士シリーズ②サクラ後編
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理科の先生と前日に訪れた個室の前でサクラは違和感を感じた。
ネームプレートが無い。そして、ヒトの気配が全く無かった。「おかしいです」と呟くサクラは窓口に聞きに行く事にした。昨日の感じじゃ、団体部屋に移動とか、ましてや退院とか絶対に有り得ない状態だったから、『何か不穏な事』でも起きたのか?と心配するサクラだった。熱中症でダウンしない様に、サクラは水分をとって、窓口にたどり着いた。
「〇〇○号室の算数の先生、私は生徒なんですけど、容態が悪化して部屋を移動されたのですか?」と、サクラは聴いた。「〇〇○号室、嗚呼、彼は……」と言いかけた、お喋りそうな受付嬢を「美少女の生徒はダメって言ってたでしょ」と、制した受付嬢が、次の様に言った。「絶対安静です。それに、ご家族じゃない貴女に彼の病状も、今居る病室も案内出来ません」と、きっぱりと言われた。
困ったサクラは「昨日は理科の先生とお見舞い出来たのですが?」と、諦めずに言うと、「本当に、家族の人にしか教えられない重態なので」昨日はそうじゃ無かっただけです。と、冷静沈着に、まくし立てられた。
「これ、お見舞いのお握りです」
せめて、渡してもらえませんか?とサクラに「貴女が作ったの?」と、きびきびとした受付嬢が『美味しそうね』と、表情を弛めながらも、「本当に絶対安静なので、血縁者にしか病状も話せません」とお握りの差し入れも断られた。
仕方がないサクラは、理科の先生に連絡する事にした。公衆電話にテレカを入れて、電話帳で調べたばかりの学校の職員室にコールする。暫く『ツーツーツー』を聞いていると、職員室に電話がつながった。
「昨日、救急搬送された算数の先生の病室に行こうとしたのですが」「血縁者にしか会えない『面会謝絶』になってました」と、理科の先生に伝えてくださいと、サクラは電話を切った。
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集中治療室に潜入も考えたサクラだったが、見つかってモミジのお見舞いすら厳禁にされたらと想い、どうしようと想って居たサクラは体育館の裏の枝垂れ桜の花の精霊の事を思い出した。病院の敷地に観賞用に、桜が植えられてるかもしれないと、サクラは考えたのだ。
とうさまとかあさまに連絡をいれて、敷地を歩き回らなくっちゃと、焦るサクラだった。
モミジが入院して居る病室の階の会話室に向かう。けれども、とうさまとかあさまは、コーヒーブレイクを終えて居た。モミジの病室に向かった、行方不明になって居たサクラを心配して居た、とうさまとかあさまが、「長いトイレだったね」と安堵の笑みを浮かべるも、サクラは先程の算数の先生への対応の話を二人にした。 昨日は居た病室がもぬけの殻になって居た事とか。受付嬢が絶対に血縁者にしか何も話せないと譲らない事とか。敷地に桜の木があれば花の精霊が協力してくれると思い付いた事とかを、とうさまとかあさまに熱心に捲し立てる様に話した。
真剣に聴いて居た二人は、サクラに桜の木がある位置を地図に描いてくれた。「「いってらっしゃい」」とあたたかく送り出してくれた。
サクラは地図を見ながら、およその見当をつき、敷地を桜の木を目指して一心に歩いた。そして十数分が経った頃に、染井吉野の桜の木を見つけた。 幹に手を当てて桜の木と交信をするサクラに、しばらくしてから桜の花の精霊から交信があった。
染井吉野の桜の花の精霊も、体育館の裏の枝垂れ桜の花の精霊の様に、若い子供の様な姿をして居た。
サクラは「今日から、いきなり血縁者にしかお見舞いが出来なくなった算数の先生の容態を見せてほしいのです」と丁寧に頼んだ。染井吉野の桜の花の精霊は「かまわないけど」後悔しても知らないよと答えた。
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染井吉野の桜の花の精霊は、サクラの脳裏に1病室の光景を見せてくれた。それは怖い病室だった。
ゲッソリとコケた頬の算数の先生が新しい病服に着替えさせられていて、両手足を拘束されている。胃液を吐き戻したのだろう?黄ばんだ胸もとに、監視カメラと洋式の便器を見つけた。算数の先生は昨日は、呆けて居たが、今日は神経質な顔をして歯軋りをやめなかった。そこへ、看護スタッフ、おそらく監視カメラを見て居たのだろう、が激しく抵抗する算数の先生に、新しい着替えを乱暴に着替えさせ、清潔にさせた。
算数の先生は看護スタッフを恐ろしいモノでも見るかの様に、びくびくと怯えだした。「大丈夫ですよ。誰も貴方に危害はくわえません」と、看護スタッフの人は明るく陽気な声を振りまいた。おそらく演技だろう。サクラは怖い想いをしながら、続きを一生懸命に見た。
暴れても取れない様に、点滴を付けられ、無理矢理栄養を補給させられる。だから、死ぬ事は無い『地獄』を算数の先生は味わって居るのだろうと、推理したサクラは、がちがち震えだした。暴れるのに疲れた算数の先生は虚ろな顔で全身から力を抜いた状態で、天井から延びてる『床ずれ防止』用の分厚い布にぶらんとして居た。死んだ魚の様な目をして居た。口からは少しのあぶくが沸いて居た。『まだ自分でトイレも出来ないんだろうね?』オキノドクサマ。と、染井吉野の桜の花の精霊は無情にサクラに告げた。
「お風呂にもはいれてないのですよね」と、悲しげに両目をつぶり、顔を下に向けるサクラに、染井吉野の桜の花の精霊は「ホラ、イワンコッチャナイ。モウ、ミルノヤメヨウ」とサクラに提案した。それをふりきってサクラは「算数の先生がちゃんと、トイレが出来るか見させてください」と懇願した。
ハーブの美味しい喫茶店で話して居た時や翌日の算数の授業の態度とはまるで別人だった。それに、ハーブの美味しい喫茶店で、サクラとモミジが話しかける前よりも、人間を怖れて居た。 『一体何があったのですか?』とサクラは凄く心配した。
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そう言えば「アノヒト、キノウナニカ、カイソウシテタヨ」染井吉野の桜の花の精霊が言う。「えっ、何をですか?」とサクラは聴いたが、「ショウガッコウノキョウシツデセイトタチニイジメニアッテタ」みたいなと、染井吉野の桜の花の精霊は教えてくれた。「それは、私の脳裏に写せる?」とサクラに「ゴメン。ヨクオボエテイナイカラデキナイヤ」と花の精霊は答えた。
どうしようと考えるサクラは「色々教えてくれて、ありがとう」と、染井吉野の桜の花の精霊と別れモミジの病室に戻った。とうさまとかあさまはサクラが遅くまで外出してたので、心配して居た。サクラは「昨日はお見舞いが出来た算数の先生が今日からはお見舞いが出来なくなって居たので、先生の様子を探って居ました。」と謝った。「「それは知ってる」」 と、とうさまとかあさま。「私が染井吉野の桜の木の地図を描いたでしょう。忘れたの?」かまさまに、「本当ですね。すっかり忘れて居ました」と答える恥ずかしい気持ちのサクラだった。
目を覚ましたモミジが「算数の先生どうだった?」と聴いたので「心の病にかかって居ました。多分、自殺をはかったから、2度とそんな事が出来ない様に、両手足を拘束されて監視カメラで監視されていました」と、染井吉野の桜の花の精霊に教えてもらった内容をサクラは語った。
「それで遅くなったのか?」と、とうさまが納得した。「あのね」かあさまが言う「昨日、サクラからモミジと算数の先生の事を聴いたから、学校に『苛め』が出来ない様に、圧力をかけてもらったの」だから「「算数の先生を追いつめた真犯人は『妄執』に憑かれると想う」」と、とうさまとかあさまが二人で言った。「モミジには可哀想だけど、サクラ一人で初めての『妄執』狩りを依頼されると想うわ」と、かあさまがサクラとモミジの二人の目を見ながら真剣に語った。「俺は、真犯人は『不良じみた男子達のリーダー』か『サブリーダー』か『なりり』だと想うよ」と、とうさまの言にモミジが「そんなの嫌だ」と、言葉を吐いた。
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興奮するモミジに、とうさまは「お前はサクラの足手まといに成りたいのか?」と厳しくモミジを拒絶した。「そんな言い方しなくっても」と、たしなめるかあさまに「モミジを庇いながら闘うのは、かなりしんどいと想います」とサクラが畳み掛けた。「そんなぁ~」サクラが大好きで堪らないから、一人だけで危険な目に合わしたくない、やるせないモミジに「「「兎に角、病院の外に出たくば、1日も早く傷を完治させる事」」」と、とうさまとかあさまとサクラが言った。モミジは「不甲斐ない不甲斐ないよう」とぽろぽろ泣き出した。
「そんなこと無いです」私を『妄執』から、かばってくれたでしょう。と、サクラはモミジの右手をぎゅっと握った。「じゃあ、モミジのコスチュームを着て闘いますので、一緒でしょう?」と言うサクラにとうさまは「ダメだよサクラ。初めての闘いなのだから、応用戦より基本戦の事を考えなくては」勝てる戦も勝てなくなってしまうよと、反対した。「残念ね」と、かあさまが頷いた。「その代わりモミジに出来る事もあるよ」と、とうさま。「何?」とはやるモミジに「サクラがドライヤーガンで闘うのは見てるよね?なら」「攻めかたでなく、隙を作らない守りかたをサクラに沢山話してあげるとよい」と、とうさまは言った。
「サクラのドライヤーガンの充電係だから」あまり自信がないと、モミジは落胆した。「それでも、モミジのじゅくじゅくに化膿した傷痕を、サクラが常に心配するより、初バトルに不参加の方が、よっぽどマシだと想うよ」と、とうさまは厳しく現実を叩きつけた。
「もういいよ」とベットの上で、窓ぎわに向かい皆に背を向けるモミジ。痛々しい包帯のあとが、ちゃんと見えた。あれを私がヤってしまったのねと、サクラは深く後悔と反省をした。しばらくしてから看護婦さんが「注射の時間ですよ」と化膿止めと鎮痛剤を打ちにやって来た。
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化膿止めと鎮痛剤を打たれたモミジは「そんなの嫌だよぉ~」と言いながら、眠りついてしまった。
時間も時間なので3人は帰宅する事にした。その時、病院にかけつけた理科の先生の『算数の先生と面会が出来ない』と、慌てた姿をすれ違うかの様に、見ずに、サクラ達は帰宅した。
今夜は、かあさまが大変なので夕食はファミレスに行く事にした。
久しぶりの外食に、本当なら心踊る筈なのに、一人が欠けてるだけで、こんなにも寂しく虚ろになるものだとサクラは悲しい想いをした。
とうさまとかあさまはパスタをサクラはグラタンを頼んだ。モミジならハンバーグを頼んだだろうな?と、今側に居ない事に、初めてだったからサクラは泣けた。
美味しい料理をもくもくと、味もしないのに、沈痛に口にはこんだ。
サクラとモミジの落ち込み様を見て、とうさまはペパーミントのハーブティーを追加注文してくれた。
「子供だからアルコールと言うわけにはいかないからな(笑)」と、冷たいペパーミントティーをサクラの頬に当てた。「すみません。ご心配をおかけします」とサクラはうりゅりと涙を溢した。
サクラの涙がやむまで、とうさまはサクラの頬にペパーミントティーを当ててくれた。
かわいたソレを確認してサクラは、さめたペパーミントティーを受けとり、ごくごくと飲み干した。
何時までも泣いててはダメ。だって、サクラは『妄執』と闘うドライヤーガン戦士なのだから。
両手でぱちんと音が鳴るくらい頬を叩いたサクラは闘う事を具体的に考えなければと、匕背の家の色男達とマネキンで闘う練習をする脳に切り替えた。
サクラの両目に覇気が宿ったのを見て、とうさまとかあさまはホッとした。帰りの車の中、サクラは『匕背の家』に寄って欲しいと、とうさまに我が儘を言った。勿論、その我が儘はこころよく了解された。
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匕背の家の色男達と好々爺にモミジの病態を告げて『ドライヤーガン戦士』の今後のあり方を話し合った。まず、モミジがして居た事『ドライヤーガンの充電』『サクラとモミジの二人のディフェンス』が主だった。サクラは『ドライヤーガンで妄執と闘う』以外の動作を練習する為に、匕背の色男達にスパルタな特訓を受けさせてもらった。
匕背の訓練所に移動する皆。
山の中に入った木々と草原をあわせ持つ、そこは素晴らしいフィールドだった。
じっとりとした高い湿度で赤いジャージが肌にべたべたにはりついて、気持ち悪かった。
今日は、その様をとうさまとかあさまも見て居た。
「守りが甘い」と匕背の色男達。それに「きゃーっ」と叫ぶサクラ。
赤いジャージがボロボロになってしまった。「すみません、衣類の着替えを」と頼むサクラに「甘いんだよ。それで『妄執』相手のつもりかよ?」と嘲笑われた。
だから、モミジの力を強く実感したサクラだった。
「お願いします」とサクラは赤いジャージのボロをまとって、ドライヤーガンを繰り出すと共に、充電に勤しむ。「充電に気をとられていて、ガンシューティングの命中と持続がおろそかだ」と、匕背の色男達は、サクラを導いた。好々爺と、とうさまとかあさまは、き然とサクラの闘いぷりを見て居た。まだだ。だけど、慣れたらサクラはモミジ無しでも実戦できるだろうと、好々爺と、とうさまとかあさまは想った。
少しずつ少しずつサクラが前進してるのが、闘いの練習する様から見えてきたからだ。「サクラはのみこみがはやいな」と匕背の好々爺が言い、とうさまとかあさまは頷いた。
その夜は疲労で疲れ放題なサクラは夢を見る事もなく眠りの縁に誘われて居た。良い睡眠をとって居た。
モミジが眠れずに病室で、悲しそうな顔をして居るとも知らずに。
サクラはすやすやと早朝まで眠り込んで居た。
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翌朝、何時もの早朝に起きれたサクラは朝の支度をして、朝食を食べて学校へと向かった。
隣にモミジが居ないのが、変な事に想えた。
交通事故に合わない様に、車の動きには細心の注意をはらった。
一人で教室に着くと、何時ものルーティーンのとおり、黒板を雑巾がけする。綺麗になった黒板に自信を持ちながら、モミジのやってた様に、教室の床を雑巾がけする。二人分のルーティーンを行ったので、いい汗をかいた。その頃には数名のクラスメートが登校して居た。
「おはようサクラさん」「モミジ君の具合はどうだった?」世間話に巻き込まれるサクラだった。
「背中じゅうが木刀で打たれたかの様な傷まみれで」「化膿止めと鎮痛剤をうって、ほとんど眠ってました」と、枝垂れ桜の枝や根がモミジを襲った事と、算数の先生の苛めの事と、ドライヤーガン戦士の初バトルに参戦できない悲しみを泣いていた事は秘密に、ありのまま話した。
「可愛そうね。モミジ君」
「いつ頃治るのかな?」
「サクラさんは、モミジ君がいつも一緒だから寂しいね」とねぎらいの言葉を沢山もらった。
「ところで、知ってる?」『なりり』が算数の先生の事と好きだから、不良じみた男子達に苛めさせて居るって。ってサクラは聴いた。
『なりり』厚化粧して健気ったらないよね、とか女子達は話して居る。
「算数の先生も、モミジと同じときに同じ病院に搬送されてますよ」と、サクラに「あの日サクラさんとモミジ君算数の先生に対する苛め見てないもんね」
「「「そうよね」」」と、女子達が興奮し出すのを優等生が遮った。「昨夜、学校から電話連絡無かった?」『苛め』に関わってはならないってと、優等生は言った。「あった」誰かが答え、女子達はサクラに群れるのを止めて、各々の席に着席して、内申点を落とさない事だけを考えて居た。
モミジは大切にされたけど、算数の先生は可哀想だなと、サクラは想った。 それから、何人もが登校するも、優等生が遮ったら、みんなつるむ事なく自分の席で予習をして居た。不良じみた男子達は、今日は欠席して居た。最後に『なりり』と理科の先生が一緒に教室に入った。
恋しい理科の先生と一緒なのに『なりり』は不満げな顔をして居た。
理科の先生が代行で、朝の会が始まった。「今日は男子達が沢山休んでるな」「何か知ってる人は居ますか?」理科の先生の質問に、誰も反応する生徒はいず、困ったなという顔をして居た。『なりり』は机を凝視して、恋しい理科の先生の声を上の空に聞き流して居た。
『おかしいな』と想ったサクラは、『なりり』でもなく『理科の先生』でもなく『優等生』に話を聴いてみようと、お昼休みにお弁当を一緒に食べないと小さな手紙で誘った。
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「これっきりにしてくれるなら」と、優等生はお弁当の件を了承した。「なんの事ですか?」とサクラはビクビクする内心を隠しながら、優等生に質問した。
「モミジ君とサクラさん、あなた達が教室に居なかった『算数の先生の授業』の様子が知りたいんでしょう?」 『苛め』の話をしてくれるんだと、サクラは話が速いと喜んだ。「そう、私が保健室、モミジが病院に救急搬送された日の」『算数の授業』のクラスの様子が知りたいと、サクラは優等生に伝えた。
「今日は運良く不良じみた男子達が授業をボイコットしてるから、特別にね」と、優等生は辺りを伺った。
優等生とお弁当を一緒に食べる約束をしたサクラは、安心して他の授業を受けた。そしてお昼休みに二人は音楽室に来て居た。防音技術が施された音楽室は、ソレ以外、普通の教室と同じだった。音楽室で優等生と二人きりのサクラは、まず核心をついた。「算数の先生、誰にどんな苛めに合ったのですか?」
優等生が答える。「呼吸音を併せて『きしょい』とか、陰湿な音を多数で発して居た。」
「誰が、呼吸音を放って居たのか、わからないのですか?」問うサクラに優等生は「誰だかわからない様に巧妙に放って居たけど」日頃の行いから、目星はつくんじゃない?と、優等生が答える。「やはり、不良じみた男子達が」とのサクラに「ソレだけじゃないよ」との、優等生が、次の事を教えてくれた。『なりり』が声をあげて笑って居たと。
「『なりり』ったら算数の先生との交際宣言したばかりなのに」
「訳がわかんないよ」と、優等生が答えた。サクラは「誰かは言えないけれど『なりり』の好きな先生は算数の先生じゃありません。本人から聴きました。内緒にする事を前提条件に」とサクラが答えた。ほとんどお弁当を食べて居なかった二人は、慌ててお弁当をつまみ出した。
優等生が「『なりり』何様なんだろうね?」と放つと「算数の先生は道具かシモベ扱いだったのだと、モミジの目撃証言からも想像できます」と、サクラは締めくくった。「ありがとうございます」と礼を言ってお弁当を食べてると「まだあるんだよね」算数の先生に対する苛め、と、優等生は恥ずかしそうに言った。
「臭い水で濡れたタオル地のモノを誰かが、何度か算数の先生のお尻に投げつけて、顔には卵を投げつけたの」それを聴いたサクラは、言いにくそうな先を促した。「私は、私が『先生、脱糞するのは恥ずかしいですよ』って言った」悪い事をしてしまったと、優等生が項垂れる。
「その後、臭くなったから、算数の先生は本当に脱糞したのかもしれない。し、失禁したのかもしれない」ただ「『なりり』がくすくす大きな声で笑って居た」と、優等生が箸を止めて熱弁した。サクラは「誰も『苛め』が怖くない子なんて居ませんよ」と、優等生を慰めた。
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サクラと優等生が、教室に戻ると、不良じみた男子達は登校して居た。
サクラと優等生は目立たない様に、席についた。
不良じみた男子達の真ん中には、『なりり』。不良じみた男子達のサブリーダーが『なりり』のくちびるに紅いリップを『壊れ物を壊さない様に大切にするかの様に』塗りつけて居た。(サクラはいつぞやのモミジと『なりり』とのやり取りを想いだしドギマギした。モミジの重症に真の心を想い、サクラは反省する)
酷すぎた、苛めの現場を、知らないサクラは違和感を覚えた。
「これで不衛生な算数の先生につきまとわれて居た『なりり』は算数の先生から解放されてはれてサブリーダーの彼女だな」と、不良じみた男子達のリーダーが、ゲラゲラ笑って居た。
「『なりり』は相思相愛の俺の彼女だから、もう一人で職員室に行くなよ」とサブリーダーが『なりり』を独り占めにしようとして居た。
無表情の『なりり』は怒って居る様にサクラには見えた。
サクラは『なりり』理科の先生に、自由に恋する、算数の先生をシモベにする、あの関係が、本当は望むところなんじゃないかと想った。
『なりり』が無表情のままくちびるだけを動かして『何か言って』一人で、自分の席へと戻った。
『なりり』のファンデーションで隠されて居た、モミジに打たれた頬の痕は消えていた。
サクラは不良じみた男子達が『苛め』が出来ないフラストレーションで『妄執』に憑かれるのかと想って居たが、無言の『なりり』にも恐ろしい気持ちを隠せなかった。
『恋しい理科の先生』を不良じみた男子達の『苛め』の餌食にしない為に無理をしてるのかもしれない。
だけど算数の先生は可哀想だった。
サクラもモミジも算数の先生に対する『苛め』から算数の先生を守る事は出来て居ない。集団に目をつけられたら、お互いが、もっと酷い目に合わされるかもしれないからだ。
それは『苛め』の黙認でサクラは、悔しいといきおどった。
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だが、『紀眞』『匕背』の圧力が、不良じみた男子達にも及んだ。
その日以来、各々が両親から『苛め』に関わって無いか?執拗に聴かれ『グループ』で動く事も、完全に両親から妨害された。
守らなければ『小学校退学』に処すと、学校の上層部から『お達し』があったからだ。 転校も出来ない様に操作する『紀眞』『匕背』の圧力だった。クラスの空気は、しーんと静まり返った。嵐の前の静けさですねと、サクラは武者震いした。
この静けさが爆発する時、それが、『妄執を打ち消す、ドライヤーガン戦士』サクラのテビュー戦と成るのだから。
サクラはモミジの体温が何処かに残って居ないか?ぎゅっと自分の体を抱き締めた。
モミジの明るい笑顔と爽やかな声を想い出すと、勇気が湧いてくる。離ればなれで居ても二人は一緒なんだなぁって。
だから、お願い、モミジが病院を抜け出しません様にと、居るかもしれない神さまとやらに祈り願った。
サクラは直行でモミジのお見舞いに行き、『すぅすぅ』寝息をたてているモミジを安堵の眼差しで見つめ、理科の先生には悪いが、算数の先生の事は諦めて、匕背の訓練所に向かった。其処で、好々爺と話をする。
『そらうみ』『もっともすみ』の配下の『妄執』と初バトルでまみえるであろう事。サクラの練習して居るドライヤーガンが『妄執』退治に初めて使われるから、もしかしたら、『妄執』に憑かれたヒトを、殺してしまうかも、いや、殺すだろう事を、二人は話し合った。「算数の先生が、まだ生きているのが奇跡です。だから、自分だけでなくモミジの分も真剣に『妄執』を退治してみせます」と、サクラは決意を表明した。
匕背の好々爺は「命を、同族の命を奪うのはプロでも動揺するから」気をつけるのだぞとサクラに言った。
サクラは算数の先生のあった悲惨さを、絶対に許せないから「頑張ります」と告げて、匕背の色男達との、マネキン実地訓練へと挑んだ。
055
森や野原を駆けながらサクラは、ディフェンスやドライヤーガンの充電のコツをつかもうと、がむしゃらに練習バトルして、自信をもつ努力をした。
こちらが弱気だと、相手に余裕が、うまれるから、不利なバトル展開になる。だから、サクラはジャージがボロと化しても、激しい、マネキン攻撃を止めなかった。
何度も、間一髪という場面を迎えるサクラ。でもサクラは負けない。
そしてモミジより遅いながら充電のコツを習得した。仲の良い精霊(サクラの場合はもちろん桜)の力を、借りると、存分上手くいった。
今日は、危ないながらも、初めて、全部のマネキンを倒す事が出来た。
嬉しいサクラは、膝から地面に崩れ落ちた。匕背の色男達がサクラの方に駆け寄ってくる。誰かが、バスタオルを肩にかけてくれた。このままでは、ジャージがボロの為に、帰宅させられないので、1番若い匕背がサクラを家まで運送した。
「お疲れ様」という声を夢見心地でサクラは聞いていた。とうさまが、サクラを受けとると、サクラは居間のソファーベッドに横たわれた。
「サクラは夕飯たべれるかしら?」かあさまが心配気に聞くと、とうさまは「今はゆっくりさせてあげようよ」と、眠って居るサクラの頭を、撫でた。 「それより、モミジが、無茶をしないかが心配だ」と、とうさまが話しだした。「そうね、貴方の若い頃の様に、いきすだまででも、初バトルに参戦するかもね」とかあさまが笑う。「その場合病室の衣類だと不便だろうだから、モミジには、衣装を病室に届けた方が良いかもな」と、提案するとうさまが、眠り込んでいる、サクラの頬を、撫でた。かあさまが「明日、病室を脱け出さないとの約束の上でモミジの衣装を届けてくるわ」と言ってこの会話は終了した。
056
サクラは夢を見て居た。
モミジが病室着のままから、お初の『いきすだま』かもしれない。
サクラのぐちゃぐちゃな記憶の整理というよりは、本物だと判断できた。背景には体育館の裏の枝垂れ桜の花の精霊も参加して居た。
精霊がまずモミジに「ゴメン。ヤリスギタ」と謝った。優しいモミジは「サクラの、心を、守ってくれて、ありがとうな」と精霊を許した。
でもサクラはモミジが病室から抜け出したらどうしよう?と悩んで居た。サクラは今は、ギリギリ限界で闘って居る。だから、傷だらけのモミジが足手まといになると考えた。
躊躇してたら此方が殺されるかもしれない。だからサクラは、モミジにハッキリと言った。絶対に病室から脱け出さない事。「それが出来なければ婚約を解消します」と、サクラは冷たく言い放った。モミジはビクッと体を震わせて何か考えて居たが、決意した様に、サクラへ宣言した。「自分は足手まといの体ですから、病室から抜け出しません。」
その言葉にサクラは安堵するも「でもバトルコスチュームは枕元に置いていたいから、今度病室に来る日に届けてくれ」とサクラに言った。
「絶対に病室から脱け出さないのでしたら、そのリクエストは叶えます」と、サクラは優しげに言った。三者の間に、一瞬ほんわかした空気が流れる。枝垂れ桜の花の精霊は「ワレモ、ゼンリョクデサクラヲタスケルカラ」安心しろと、モミジに言った。モミジは、はぁと嘆息してポロポロと涙を流しだした。
「絶対に『妄執退治』よりも自分の体調を優先する事。」モミジは頬を拭いながら、少し青い顔で、念を、おした。サクラは自分の現状のスペックを考えて『無理』と想いバトル練習に勤しむ事を更に決意した。
「モミジが心配しないぐらい強くなります」と、サクラは宣言した。
そして、優しい夢は終わった。
057
翌朝早朝、シャワーで、汗を流したサクラは、制服に着替えて、階段を下りた。お味噌汁の美味しそうな、臭いに、食慾がそそられる、サクラだった。「かあさま、いただきます」サクラにしては、珍しく挨拶をして、朝食をたいらげた。
「頑張れサクラ」と、かあさまが背を押してくれた。「ありがとう」と
「行ってきます」と、サクラは元気良く家を出た。鞄の中には二人分のコスチュームも入れて。
「モミジ喜んでくれるかな?」
サクラは少しだけ、うきうきして居た。通学路で事故にまきこまれない
様に、念入りにチェックして無事に学校に着くと、職員室に鍵を借りに行き、教室のドアをスライドさせた。黒板を雑巾がけしながら『私は出来る』と意識を高揚させて、綺麗に成った黒板に自信をもつ。床を拭いて居る時も『モミジ』がいなくても私は此処まで出来ると自信に変えた。それでも、クラスメイト達が、登校しだすのに、床を拭いて綺麗にするのが間に合わず『私ではこんなにも間に合わない』と、少しだけ、落ち込むサクラだった。
席について、鞄の中を見る。
モミジのバトルコスチュームを優しく見つめながら触ると、焦った心を落ち着かせ、深呼吸をしてから、鞄のファスナーを閉じた。
なんとか落ち着いたサクラは休息を必要として居たので、そのまま眠り込んだ。朝の会が始まるまで、熟睡して居た。
サクラはクラスメイトが群れないのを確認して『紀眞』『匕背』の力の凄さを感じて意気が高揚した。
誰かを殺さなければならない『妄執』退治。本当は嫌だけど、算数の先生の敵討ちは、ドライヤーガン戦士の自分がとるしかないと、サクラは『苛め』を阻止できなかった事を反省すると共に『正当防衛』かなと自分の気持ちを人殺しからスライドさせた。
058
理科の先生先生が朝の会の代打を、またしてくれて居た。算数の先生は担任じゃないので、友人の理科の先生なりに、何か探ってるのかもと、サクラは推理した。
多分、理科の先生は算数の先生へのお見舞いがまだ出来て居ない筈、ともサクラは推理した。
朝の会の後、理科の先生は『なりり』に、しつこく算数の先生の事を聴いて居た。多分誰かが弾みで、ぽろりと言ってしまったのか?告げ口する子が居たのだろう。『なりり』は紅い顔をしながら、首を左右に、ぶんぶん振ってるだけだった。
嬉しいのか?悲しいのか?わからない『なりり』の胸の内を探るのは、楽では無さそうだった。『なりり』は真剣に理科の先生に恋をしてるし、算数の先生の事をシモベ扱いしてるからだ。そんな二人に割り込むモノが居た。サブリーダーだった。
「先生、ヒトの彼女にいちゃついてるんじゃねーよ」と、怒気もあらわだ。『なりり』の恋心がバレた?と、焦るサクラに、サブリーダーは『なりり』の席の近く教卓近くまで来た。理科の先生は「『なりり』さんは、算数の先生の友人だろう?先生と一緒で」「だから、算数の先生に何か有ったのか?無かったのか?知ってると想って」と、理科の先生はサブリーダーの両目を見た。
「それとも、君が何か知ってるのかな?」と、サブリーダーに追及してきた。「別に何も知らねーよ」「俺は彼女の『なりり』に俺の事だけ考えて居て欲しいだけ」とサブリーダーは偉そうに『なりり』の肩に手を置いた。顔が青くなって居る『なりり』 とも知らずに、サブリーダーは『なりり』に不本意な形で、理科の先生を追っ払おうとした。
「何か知ってるなら、何時でも教えて欲しい」と理科の先生は『お似合いのカップルで』と、笑顔で教室から出て行った。『なりり』が肩に置かれた手をつねると「勝手な事しないでよ」「私、算数の先生も好きなんだから」と怒鳴って、席を立つと、サブリーダーをほったらかしにして、教室から出て行った。
サクラは『なりり』は卑怯なくらいに理科の先生に恋してるのだなと、想って、モミジの事を考えた。
サブリーダーは、呆気にとられて、何も出来ずじまいだった。普通なら教室がざわつくシーンなのだが、『紀眞』『匕背』の箝口令に脅えて誰も何も言わなかった。不良じみた男子達のリーダーが「『なりり』にぎゅっと抱きしめてって言われたんだろう」と、サブリーダーの行動を正当化した。だけど、サブリーダーは青い顔をして自分の席に戻るだけだった。「俺なんか悪い事したかな」ボソっとサブリーダーは、誰に言うでもなく呟いて居た。
059
教室から消えた『なりり』は気になるけれど、算数の先生にあまりにも酷すぎるし、サクラは学生なので、自分の勉強の方を優先させた。
今日も教室の空気は『紀眞』『匕背』の圧力がかかって居るから、みんな、大人して居た。
不良じみた男子達も『何もやる気がでねぇ』という顔で授業を真面目に(と、言うよりはお喋りもせず、静かに)聞き流して居た。
『なりり』は早退したと、後の授業で知った。今朝のやり取りが、むしゃくしゃするサブリーダーは一人で体育館に行き、得意のブレイクダンスを練習して居た。『なりり』の前でカッコ良く決めてやると、『理科の先生とのやりとり』や『なりりの算数の先生に対する態度』に、焦るサブリーダーだった。
もちろんサクラは教室に居るので、その事は知らないのだが。
病欠のモミジと二人をおいてけぼりに、クラスの授業は進んだ。
放課後、サクラは急いで病院に行こうとしたら、理科の先生に捕まった。「一緒にお見舞いに行かないか?」と爽やかに言われ、車の方が速く着くと計算したサクラは、ご一緒する事にした。
理科の先生が運転しながら、サクラにも、こう聴いてくる「算数の先生に関して知って居る事は何かないか?」と、何も知らない友人の顔をして居た。友人の命に関する事なのに、何も知らない理科の先生『可哀相』と想ったサクラは「前前日、ハーブティーの美味しい喫茶店で、落ち込んでいる算数の先生を励ましました」と、話した。「そうなんだよ。生徒にわかるくらいに落ち込んでいるのに、何も話してくれないんだ」と、理科の先生も溜息ごしに言葉を放った。「その時、とても嬉しそうな顔をしてました」だから「私が保健室で倒れて居た。あの日に何かがあったとしても、私は何も知りません」と、サクラは精霊の話を内緒にした。民間人の理科の先生には、信じてもらえそうに無いし、此れは『紀眞』『匕背』の機密だから、可哀相な理科の先生を特別扱いはサクラはしなかった。
そして、理科の先生は算数の先生の親族探しと、サクラはモミジのお見舞いにと、病院で二手に別れた。
060
サクラは明るい顔をして「モミジ、起きてるかな?」と、爽やかに声をかけた。
「ううん」と、ぐずつくモミジに、サクラは「絶対に病室から脱け出さないのでしたら、此れを着衣しても良いのですよ」と、モミジのコスチュームをモミジの病室のテレビの棚の下に置いた。「ううん、眠いよ、サクラ」と、言う自分の声でモミジは「サクラ」と声に出し覚醒した。
「サクラ、それはコスチューム?」「良いのか?」とモミジに、「病室から脱け出さないのでしたら」「着てくださいな」と、笑顔をふりまいた。嬉しそうなモミジに「ところで、傷口はどんな進捗ですか?」とのサクラにモミジはこう答えた。「化膿止めと、鎮痛剤が効いているから、やたら滅多に眠たいよ」と、笑った。今日のモミジは今までのお見舞いと違い特に幸せそうだった。
「サクラに会えたから」と、理由を言うモミジに、サクラは、不謹慎なときめきを覚えた。
「油断したらダメです。」「まだ算数の先生のお見舞いも叶わないし、『妄執』が現れるあと一歩ですし」と、照れで、捲し立てるサクラに、モミジは「今が幸せだ。だから、この幸せを味わいたいし、守りたい」と答えた。赤くなるサクラを「可愛い」って言ってモミジは「此処においで」と、両手を広げた。
サクラは、モミジの胸の中で、抱きしめられる喜びをかみしめながら、うっとりとした。「お邪魔したかな?」と、言う声が聞こえたのは、次の瞬間で、モミジの病室を受付で聞いた理科の先生が二人の抱擁に、呆気にとられて居た。
「「フィアンセですから」」と、二人は軽く笑いあった。
「ところでモミジ君、君は算数の先生の病室について何か知らないかい?」と、焦る理科の先生はモミジへのお見舞いをした後で、本題に、迫った。ただ、モミジは化膿止めと鎮痛剤で、大半眠ってる旨をつげ、「知りません。お役にたてなくて」と謝った。理科の先生は、時間も時間だし、サクラさんを送って行くよと、宣言してモミジを安堵させた。
ただ、そのモミジの病室に入ろうとした『なりり』が、理科の先生と、サクラが親密な顔をして笑いあって居るのを、不穏な顔で見て居た。
サクラは理科の先生の車で一旦家に戻ると、ドライヤーガン戦士の修業の為に、ジャージで匕背の練習場へと、向かった。
061
サクラは何も知らずに匕背の色男達と、ドライヤーガン戦士の稽古をして居た。今日はモミジの意識があったから、モミジのぬくもりを感じとれたから、サクラは、まだまだにしても、良い闘いぶりをみせた。
匕背の色男達が『ひゅー』と口笛を吹く。「此れならサクラ一人に『妄執』退治を任せても大丈夫だろう」と、みなが口々に賛辞した。
サクラは嬉しくなってモミジの事を考えた。退院したら、また一緒に、ドライヤーガン戦士の戦闘訓練を、行える。
そんな、細やかな日常が、大切に想える幸せモノのサクラだった。
生まれた時から、サクラとモミジはずっと二人で居たから、今の離れ離れの状態が、悲しくて、寂しくて、切なくて、やるせない。だから、戦闘訓練の時でも一緒に居たかった。
そんなサクラが成長を遂げてる裏側で『妄執』の脅威は刻一刻と迫っているのだが、まだ何も知らずに居るサクラだった。
サクラは帰宅すると、今まで感じた事が無い様な、身震いを感じた。
家の外から誰かに見張られてる、そんな気がして、ろくにご飯を食べれなかった。『殺気』に似たソレは、とうさまやかあさまにはわからず、サクラだけが『脅威』を感じて居た。モミジが居たなら同じ気持ちの筈だろう?と、サクラは不気味な、ソレの正体を探るべく、窓から家の外を、さりげなく何の気なしに、見つめた。すると『なりり』が、人を殺す人の顔をして、サクラを睨んで居た。サクラは『なりり』の顔を、良く見た。特に両目を熱心に見た。
白くない。『妄執』じゃない事が、わかったサクラは『なりり』に声をかけた。『なりり』は、嫉妬とフラストレーションで貯まった怒りを、恋しい理科の先生と仲良くして居たサクラに、ぶつけるべく、怒鳴ろうとして居た。「算数の先生を自殺に追い込んだ卑怯者は『なりり』さんあなたですね」とサクラは何時もとは全然違う怖い、冷たい声色でソレを放った。「ビッチが、ヒトのコマ利用して、私の理科の先生にも、アンタのモミジにも、どちらにも言い寄りやがって」と、怒鳴って、言葉だけで、呪い殺そうとした。
それに毅然としたサクラは負けずに一喝した。「あなたの恋しい気持ちの我が儘で算数の先生は死にかけたのですよ。それに」「忙しい理科の先生が不眠で苛めを受けた友人の為に、面会を毎日求めて、血縁者じゃないから断られて、そんな事」「わかって算数の先生を利用して居るのですか」サクラは怒った。
柔和なサクラが激昂したので弱虫の『なりり』は、おじつけづいて、「覚えていろ」と、吠えてかけ去ってしまった。あれはヒトの形を逸脱して居ないから、退治してはダメですねと、悔しげにサクラは冷静さを取り戻した。 とうさまとかあさまに『なりり』は『妄執』に、囚われない弱輩者だと、騒ぎを説明した。
062
その晩、サクラは何もせずに、疲れた心身を休めた。そして、明日はバスに乗って学校に行こうと決めた。
ドライヤーガン戦士の初バトルに、なるかもしれないからだ。
深く質の良い睡眠を、満喫して居たサクラをモミジは、病室から覗いて居た。バトルコスチュームを着衣したモミジにもサクラの激昂が、伝わったから、心配したモミジは、サクラの事を知りたいと力を使い、無事に居るだろうか?と、サクラの安全を確かめて居た。
知るすべもないサクラは、すやすやと体力をチャージするべく眠りを、堪能して居た。
翌朝、モミジの残り香に胸をときめかせながらも、サクラはドライヤーガン戦士のバトルコスチュームを、ドライヤーガンと充電器と共に鞄の中にしまった。多分、『なりり』か自称彼氏の不良じみた男子達のサブリーダーが『妄執』に囚われるだろうと、サクラは朝の清々しくない、どんよりとした空気で悟った。
自分のこの手で、ヒトを殺す決意を固めるサクラだった。
朝ごはんを丁寧に食べてサクラは、かあさまに今日がその時かもしれなから、私が必ず勝つ覚悟をしてね。と、真剣な顔で伝えた。かあさまは「サクラがどんな事をしても、愛して居るわ」と、涙混じりの笑顔で、抱きしめてくれた。
まだ眠って居るとうさまにも、挨拶をして、サクラは安全な家を後にした。体力をチャージするべくバスを使う。簡単に学校に着いた。
黒板と床を雑巾がけして一人の時間を体力のチャージにあてる。
ドライヤーガン戦士の初バトルは、放課後が良いな、との望みだけ叶えられるとも知らないサクラだった。
『なりり』と不良じみた男子達のサブリーダーは欠席して居た。
朝の会の時に、理科の先生が居るにも関わらず恋する『なりり』は欠席をして居た。
063
その日の時間は流れる様に速かった。さっき、朝の会だったのが、もう昼休みで後、二時間したら、ドライヤーガン戦士の『妄執』との初バトルになる。そんな風が吹いて居た。サクラは体育館の裏の枝垂れ桜の花の精霊に助力を願おうと歩を進めるに、体育館で誰かが何かをして居るのに気がついた。不良じみた男子達のサブリーダーがブレイクダンスを踊って居た。楽しそうに、悲しそうに、幸せそうに、悲愴な様に、真逆の激しいイメージをサクラは、感じた。『なりり』の事を想って、踊って居るんだと、サクラは『なりり』の優柔不断さとサブリーダーの強引さに頭にきながらも、やるせないブレイクダンスをそっと見終え、体育館の裏の枝垂れ桜の花の精霊に会いに行った。「今日は初めて『妄執』と闘います」だから「あなた達の力を貸してください」サクラは深々と乱れ咲いた枝垂れ桜に、頭を下げて頼んで居た。「ワカッタ。サクラガマケナイヨウニ、ゼンリョクデカセイスル」花の精霊は、サクラを受け入れた。サクラはホッとして、狂い咲きした枝垂れ桜の根もとで、お弁当を食べだした。
それを、病欠の筈の『なりり』が、睨んで居た。『なりり』は紅いリップクリームで塗られたくちびるを、ぎりっと、噛みしめた。紅い糸が、地面に垂れた。その土壌は、悪意で汚された。『なりり』の悪意で。
サクラはお弁当を食べ終わった後、ギリギリまで乱れ咲いた枝垂れ桜の根もとでエネルギーをチャージして居た。チャイムが無情に先の時を告げるまで、サクラは意識を高みへと遊ばせて居た。
教室に戻ったサクラは、優等生が、ガタガタ寒さで震えてるのを見て、決戦が近いと授業は上の空で、聞き流して居た。
そして放課後、何処からともなく現れた『なりり』と不良じみた男子達のサブリーダーに呼び出しを食らうのだが、サクラは人目を気にして、ドライヤーガン戦士のバトルコスチュームに着替えて居たから、二人は少しだけ、その異様さに戸惑った。
そして決戦の場、体育館の裏の枝垂れ桜の目の前へと3人は歩んだ。
064
枝垂れ桜が狂い咲きする体育館の裏で、昭和のアイドルのフリフリな、ドライヤーガン戦士のバトルコスチュームを着たサクラがドライヤーガンをかまえと充電器を持って居た。
『なりり』と、サブリーダーには、わからない事なのだが、桜の花の精霊は、何時でもサクラを庇える様に、構えていた。その事は知らないのだが、『なりり』に命令された、サブリーダーの両目が瞬時に、白濁してゆく。『なりり』の位置からは完全に見えないのだが、サクラの位置からはバッチリ見えた。完全に白濁して居る。それはもう『妄執』として扱うしか無い事を、モミジと一緒に、匕背の好々爺から聞いた、変える事の出来ない事実。だから、サクラはドライヤーガンを正面に構えた。ソレ、かってサブリーダーだった『妄執』は離れた位置にかまえて居たサクラに跳躍した。ざっと蹴りをよけるサクラは、近づき人間であったモノの急所を確実に狙う。
ドライヤーガンは熱を放ったのだが、器用に『妄執』に避けられた。それでも、ブレイクダンスを全力で踊って居た『妄執』は体力不足だと計算して、サクラはドライヤーガンの熱をけちりながら放った。
『なりり』が「武器持ちだなんて卑怯者」とサクラを罵るが、サクラは一瞥だにしなかった。
何度も『妄執』の足裁きや腕っ節を避けるサクラは、汗だにかいて居なかった。それは『妄執』も同じなのだが。 二人の実力は拮抗している様に、見えた。だが、サクラは『妄執』がドンドン力弱くなってゆくのを楽しみに待って居た。『なりり』は「下手くそ、速くメチャクチャにして」と、黒い両目で叫んだ。
サクラは、そろそろ良いかな?って格闘で感じ、『妄執』の首の頸動脈辺りに、ドライヤーガンの熱を大量に浴びさせた。すると『妄執』は動きを止めるのでは無く、その箇所が空気にと蒸発した。『妄執』は、頭と胴体がとれかかった僅かな細い首で、普通に生きて居た。それを見て『なりり』は「きゃぁーっ」と悲鳴をあげて、その場に気絶した。
一方、サクラは充電の計算をミスったと、反省しながら、何度も『妄執』の攻撃を避けながら、同時に充電しようと意識の分散をおこなって居た。『妄執』は、へらりへらりと笑いながら、拳を突きだしてくる。
サクラは『速く速く速く』と充電を焦った。その焦りが命取りとなり、サクラは地面に転がってしまった。
それを組伏す体制で、心臓に一撃を食らわそうとする『妄執』に、桜の花びらが白い両目から入り込み、鼻の穴と口から溢れだした。それでも窒息死しない『妄執』にサクラは、無防備になった心臓に最後の一撃を食らわした。すると、ヒットした熱は『妄執』を蒸発させる事に成功した。そうして『妄執』と化したサブリーダーはこの世から消えてしまったのだが「『なりり』大好きだ」とひと言残して完全に消え失せた。
その言葉にサクラは、ブレイクダンスを切な気に踊って居たサブリーダーが人間だった時を想いだした。
「いやぁっ」とサクラも気絶した。
065
ドライヤーガン戦士の『妄執』との初バトルは無事にサクラの勝ちで終わった。乱れ咲いた枝垂れ桜の花の精霊に、功労があったのだが、サクラは、ドライヤーガンを充電しながら、ディフェンスを担当するモミジ無しで、任務を全うした。
だけど、めそめそと泣きながら、桜の花の精霊に、お礼とお詫びをするサクラだった。
桜の花の精霊は「キミガブジデヨカッタ。マニアッテヨカッタ」
と、サクラの心を写す鏡かの様に、悲しそうに笑った。
『モミジ、怖いよ』と泣きながら、心が呟くサクラに「大丈夫だよ。自分はサクラが、一番大好きだから」心配しないでとモミジの声が、聴こえた。サクラはイキスダマになったコスチュームをまとったモミジの腕の中で、人間であったモノを、殺してしまった恐怖を、全部吐き出した。「怖かった。怖かった。」と
人殺しとサクラは自分を戒めた。
「人間を消滅させた事が一番怖かった」と、えぐえぐ泣き続けた。
モミジは「サクラが無事で良かった」もし、そうじゃなかったら、モミジは『あらゆるモノ』に八つ当りをしたとサクラを本音で慰めた。
本当に本当に何もかもを破壊したとサクラを慰めた。大好きだからと。
そして、サクラに、学校の制服に、着替えて病院に来る様に、指示した。『なりり』は危ないので、証拠隠滅の為に、桜の花の精霊に頼んで、長い間気絶する様に、処置してもらった。桜の花の精霊はサクラの為に、根っこで『なりり』の背中をどついて気絶を長引かせた。
サクラはモミジのイキスダマに支えられながら教室に戻って、制服に着替えて病院に行くべくバスに乗って学校を去った。
サブリーダーの最後もバトルの行く方も、気絶して居て何も知らない『なりり』をひとり学校に残して。
066
サクラはバスを降りて、病院に病室に向かった。
その間サクラは知り合いとは誰とも出会わなかった。
ドアをスライドさせると、モミジがバトルコスチュームを身にまとい、ベットに座って居るのが、見えた。
モミジは、青い顔をして居たので、タキシードのバトルコスチュームを着替える様に、サクラに言われた。サクラが廊下に出て「もう着替えたよ」と、言うモミジの優しい声に、ドアをスライドさせて、病室に再び飛び込んだ。モミジは相変わらず青い顔をして居たが、病室着の方が、楽そうだった。
「ごめんな。初バトル全部任せて」と、モミジがサクラの髪を手ですきながら、大切なモノを守るかの様に何度も何度も同じ言葉をかけた。
サクラはモミジの体温で先ほどまでの惨状を癒し、元気をだそうと、涙は全部、モミジに見せた。
充血した両目を隠す為に、サクラはモミジのサングラスを借りた。
とても名残惜しかったが、サクラは鎮痛剤と化膿止めで休んだモミジの顔を脳裏に焼きつけて、バスで家に帰った。
帰ってきたサクラを、かあさまは、黙って抱きしめてくれた。
サクラは、充血した両目を冷やさなきゃと、包容を止めないかあさまに言った。
「とうさまもかあさまもサクラを愛して居るから、その傷ついた心を、どうか乗り越えて頂戴ね」と、かあさまも泣いていた。「明日、警察沙汰になるね」と不安気なサクラに、警察はドライヤーガン戦士の『妄執』退治を知って居るから、心配しないでと、サクラを慰めた。
サクラは「そっか」と、少し落着き、夕飯は食べず温かいスープだけを飲んで、ベットに横に成りながら、両目の腫れを治す為に、タオルで冷やした。
明日は学校で桜の花の精霊の処置のおかげで『なりり』に、会わなくて済むけど、因縁をつけられたらと、サクラは憂鬱な気持ちで苦しくなった。そうして苦しんで居たら、病院の染井吉野の桜の花の精霊が『可哀想でたまらない算数の先生の敵を、うってくれてありがとう。お礼に、モミジ君の寝顔を脳裏にあげるからフィアンセに癒されて眠りな』と、モミジの可愛い寝顔を、脳裏に投影された。サクラは嘆くのも忘れて、ドキドキしながら、幸せに、眠りについた。
067
その晩は、モミジのリアルな寝顔に(ときおり「サクラ」「好きだ」の音声が混じるから尚更)圧倒されて居て、いかにモミジ不足だったか?気づく事が出来た。
そうしてサクラは、深くて質の良い睡眠をとる事が出来た。
翌朝、鏡で両目の充血がとれて居る事に安堵しながら、明日以降に登校する『なりり』の対処をしないといけないと、サクラは、制服に着替えながら、何処もおかしくないか?鏡でチェックした。染井吉野の桜の花の精霊にお礼を祈って、サクラは、本音なら休みたい学校に向かうべく階段を下りて台所に向かった。
サクラはコーヒーしか飲めなかったが、かあさまにハグされて落ち着いた気持ちで、何時もの様に、時間をかけて徒歩で登校した。
サクラは職員室に鍵を取りに行き、教室で、黒板に雑巾がけ、床も雑巾がけと、何時ものルーティーンに、戻った。その後は、屋上にのぼり、乱れ咲いた枝垂れ桜の花の精霊に、昨日は『ありがとうございます』そして『これからもよろしくお願いします』と、心音を伝えた。
昨日のバトルで痛めた箇所が無い事から、代々、受け継がれてきた、ドライヤーガン戦士のバトルコスチュームはディフェンス能力が高いなと、想うサクラだった。
サクラに傷痕は皆無だった。
警察とドライヤーガン戦士が連携して居る事を、昨日、かあさまに教えてもらったから『警察の協力で、これから行われる犯罪を未明に防いだ』と、サクラは、少し前向きに、とらえる事が出来た。
それから、涼しい風が名残惜しかったが、教室に戻った。
『なりり』は原因不明の怪我の為に、入院して居ると朝の会で、理科の先生がみなに伝えた。不良じみた男子達のサブリーダーの事は、家族から警察に捜索願いが出てるとも、みなに伝えた。
サクラは気になったので、廊下で、職員室に帰る理科の先生に『算数の先生にお見舞いが出来たか?』『様子は回復に向かって居るか?』と、質問した。
理科の先生は、悲しそうに笑うと、『血族しか会わせてもらえないし』『容態は悪いらしくふせられてる』と、知って居る事を教えてくれた。
068
サクラは算数の先生に不良じみた男子達のサブリーダーが居なくなったから、安心して欲しいと、想った。だから「モミジ」に、探りを入れてもらいます。と、理科の先生に伝えた。理科の先生は悲しそうに、それでも「ありがとう」と、答えてくれた。
気がすんだサクラは、教室に戻って、座席についた。
その日は何も楽しい事なぞ無く、授業が粛々と行われていった。サクラは『ドライヤーガン戦士の『妄執』退治は警察のサポート』なんだなあと、ぼんやり考えて、落ち込んだ気持ちを『何も知らなかった』以前の様に、前向きに戻そうと努力した。
不良じみた男子達のリーダーは、右手を失ったかの如く、失意の念にかられて居た。その事が今のサクラの脅威だった。まさか『友情パワー』で、『妄執』化しないですよねと、一抹の不安を感じたサクラだった。
何だか、サブリーダーの行方不明で不良じみた男子達が、浮き足だって居る。サクラは気にしない様に、今日は、昨日の分もとりかえすかの様に、真面目に授業を受けた。
時間は、ゆっくりと流れ、サクラを 苦しめた。
だが、それから何も無く、3ヶ月が過ぎた。
暑すぎる真夏の悪夢を乗り越えて、
椛が綺麗に紅葉して居た。
退院したモミジと、算数の先生と、まだ、退院出来ない『なりり』に、サクラはホッとした。算数の先生は理科の先生に頑として何も話そうとはしなかったが、疲れた理科の先生は、喜びを素直にあらわすだけに、止めた。
そして算数の先生は時折、授業中もぼんやりとして居る事が多くなった。何か大切な事を決断しようと、悩んで居るかの様だった。
職員室に用事がありサクラとモミジが一緒に入室した時、ちらりと見えた算数の先生の机には色んな学校案内のバンフレットが置かれて居た。その事に、サクラもモミジも、気がついて居た。『この学校を止める』のかな?と推理する二人だった。
069
モミジはサクラを前よりも大切にして居た。二人で、校庭の色ずく椛を根もとに座りながら『綺麗だね』と楽しんで居た。モミジが椛がの色ずく葉を誉めると、椛が答えるかの様に、枝葉をゆらして、数枚の椛の葉をモミジに届けるが如く散らした。
「サクラが乱れ咲いた枝垂れ桜の花の精霊や染井吉野の桜の花の精霊に恩恵を承った様に、自分も椛に力を貸して貰いたいな」と、笑って居ると『ワカリマシタ。アナタノネガイヲ、カナエマショウ。コレカラハ、ヨロシクオネガイシマス』と、椛の色ずく葉の精霊が話しかけてきた。
驚くサクラに、驚かないモミジだった。「ありがとう椛さん。これからは仲良くして欲しい」と、丁寧に頭を下げるモミジだった。
後で、サクラが聴いた話によると、匕背の好々爺がサクラを傷つけた事に対して不安がるモミジを落ち着ける為に、教えてくれた方法だとの事だった。モミジのドライヤーガン戦士の訓練は、まだ退院したてなので、イメージトレーニングに止まって居るが、中々筋がよいと好々爺は笑いながら誉めてくれた。サクラは『警察の補佐』と言う意識でないと人殺しをしてしまった事が怖くて、ドライヤーガンを持てなかったから、モミジが、サクラの肩に、手を乗せて安心させる目的で椛の根もとに来たのだった。『妄執』は恐怖仏教の開祖の魂をまるまま宿す『そらうみ』『もっともすみ』の生け贄だから、蜥蜴の尾切りではなく、蜥蜴の脳みそ破壊がしたいサクラとモミジだった。『そらうみ』『もっともすみ』を倒したいと二人は強く願った。それは叶わなくても、サクラとモミジ二人の存在意義にも想えた。
「でも、今だけは色ずく椛の葉を楽しもう」と、サクラにモミジがにこやかに笑いながら言った。「はい」と安堵するサクラはそっとモミジに寄り添った。赤くなる二人。
そんな細やかな幸せを堪能する最近のサクラとモミジの二人だった。
070
異様に『なりり』の入院が長引く頃、不良じみた男子達のリーダーは誰が見ても凄く苛々して居た。 『紀眞』『匕背』からの箝口令は、まだとけて居ない。恐らく、サクラやモミジが卒業しても、ソレはとかれる事は無いだろう。だから『苛め』が出来ず、つるむ事すら出来ない『お山の大将』は気が違えるくらい怒り狂って居た。みなは『内申点』を下げない様に、その我が儘を無視し続けた。
かって不良じみた男子達のリーダーだった男子は、一人で居る事に孤独と絶望を感じて居た。そう、唯一、苛めて居た算数の先生は復活してるわ、不良じみた男子達のサブリーダーは依然として行方不明だわ、『なりり』は入院がながびくわで、尚更苛々して居た。憂さ晴らしにサボッて『なりり』のお見舞いにでも行くかと考えた彼は暇だったので、即実行した。『なりり』も、かって算数の先生やモミジが、入院して居る病院に入院して居たので、リーダーは、バスに乗ってさっさと病院についた。受付で『なりり』は面会謝絶では無い事に、ホッとしながら、お土産も無しに、授業中にお見舞いに 行ったら、さぞかし驚くだろうと、『なりり』の驚く顔を想像して、やっと嫌なたるい空気から開放された不良じみた男子達の元リーダーだった。教えられた個室の病室に行くと『なりり』のフルネームが書かれたプレートが表札に入って居た。安堵する元リーダーは、軽快にノックをして、『なりり』の返事を聴く前に、ドアをスライドさせた。
そして、その表情が強張った。
何故なら『なりり』は病ゆえに、激しく面変わりして居たからだった。頬は骸骨の様に、痩けてチャーミングだったうりざね顔では無く、えら骨が突出して居た。首はお年寄りの様に、痩せてしわしわで、両腕も骨骨として居た。恐らく、寝間着に隠された胸もあばらがせりだして居る事だろう。きっと両足も骨骨してるのだ。その腕には栄養補給の点滴が差し込まれて居た。3ヶ月も経つのに一体何が『なりり』を此処まで、追い詰めたんだ、と元リーダーは、呻いた。
071
『なりり』の瞳には何も写って居なかった。
不良じみた男子達の元リーダーは、呆けながらベットに座る『なりり』の両肩を食い込むくらい掴んで、『なりり』を激しく揺さぶった。
「お前、彼氏を、俺の右腕に何かしたのか?」「答えろよ、おらっ」と罵声を浴びせた。元リーダーにとっては『なりり』は、どんなに美少女でも、所詮自分の右腕の彼女でしか無いからだ。
でも『なりり』は人形の様に、微動だにしない。それが、元リーダーの怒りを加速させた。
「お前、まさかお前の彼氏で、俺の右腕を」「殺したんじゃねーよな」と、怒気を荒く、前後に激しく揺さぶった。すると両目に黒い影が射し『なりり』は「きゃぁー」と防音室で、うるさく悲鳴をあげ続けて居た。毒気を抜かれた元リーダーは、『なりり』が「先生、先生、ねぇっ助けて、先生、先生」と、ブツブツ言い出した。くそぅ『算数の先生』かよ?何処が良いんだ?あんなオジン、彼氏の方が大切じゃないのか?と、憤る、『元不良じみた男子達』のリーダーは『なりり』の首あたりの壁に拳を叩き込んだ。
すると『なりり』は「白い目、真っ白な白い目、口の中には桜の花びらがいっぱい」と、きちがい染みた言葉を放った。「なんだそれは」と、怒鳴っても「言わない。アンタは、私の先生じゃないし」と、ゲラゲラ笑いだした。これは、何かを知ってしまって『狂って』しまったとしか説明がつかなかった。元リーダーが退出しても『なりり』は「特別は、先生、先生、先生、先生」と、ブツブツ言うのを止めなかった。あてがはずれた元リーダーは、算数の先生が、見舞いに来るのを今か今かと、隠れて待って居た。
だけど、待っても待っても『算数の先生』は現れなかった。
腹が煮えくりかえった元不良じみた男子達のリーダーは、ドアの外に唾をはいて病院を出ていった。
どうして算数の先生が面会謝絶で、『なりり』は面会OKなのか、全然わからない元リーダーは、自販機で炭酸飲料を買い、空きすぎた腹を、満たした。
072
算数の先生は、決意した事を、実行しようと悩んで居た。
病院に入院して居た時は、会えないとわかっていても、もしかしたら、今日こそはと、日参して居た友人の理科の先生にも内緒にして居た。
まぁ、『苛め』にあって自殺しかけた事も内緒にして居るのだが。
算数の先生は、色んな学校案内を、こっそり見比べて居た。
自分に合った学校を探して居た。
苛めの張本人が失踪しても、それは変わる事の無い決意だった。
『気持ち悪いくらい残忍な友人の理科の先生に恋する『なりり』とも、本当にもうお別れだ』と、『ざまぁみろ』と、想う算数の先生だった。そして『教育者として相応しくない感情』に、此処に居ては目指す教育者に成れないと、自覚して学校案内のバンフレットを机のキャビネットへとほおりこんだ。
理科の先生だけでなく『苛め』に、全然気がつかない(算数の先生の黙秘が、すざまじかったのだが)鈍感すぎる他の先生達にも、知られたくなかった。
サクラとモミジが学校のバンフレットを目撃して居るとも知らずに。
そんな一人でホッとして居る算数の先生に、職員室に入ってきた野蛮な生徒、元不良じみた男子達のリーダーが表に出ろやと、言って職員室から、椛が綺麗に紅葉して居る人目につかない、スポットに、モミジとサクラの和みの場所とも知らず、連れてこられた。「悪いけど『苛め』の件は学校の偉い方から、絶対禁止令が出てるのを知らないのか?」算数の先生は苛々しながら噛みついた。「『なりり』が会いたがって居る」と、ドスの利いた声で元リーダーは言った。「あんな『悪童』知るもんか」苛々した算数の先生は、まだ、友人の理科の先生をカバって居た。
「なりり、お前に会えなくて狂ってるぜ」と元リーダーも怒りを滲ませながら言った。
それは、激しい支配欲を満たせないから、狂っているのか?それとも、友人の理科の先生に会いたくて、近づきたくて、仲を進展させたくて、狂っているのか?算数の先生は瞬時悩んだ。その表情が元リーダーには隠して居た『なりり』への気持ちが
露見したモノと見えて勘違いした。
「失踪した俺の右腕を返せよ」「『なりり』にきちんと大人の対応して、俺の右腕が帰って来た時に、元のさやに戻れる様に、ケジメつけろや」と元不良じみた男子達のリーダーは吠えた。「ボクは『なりり』さんに全てを狂わせられた。だから、もう彼女の為に、成る事は一歳しない」と、算数の先生がキッパリと断言した。
それに驚いた元リーダーは一瞬我を失った。だけど、右腕が帰って来た時に『なりり』と幸せそうに笑ってる顔が見たかった。
だから、元リーダーは算数の先生に土下座した。それでも自殺をする事で、忌まわしい人間関係から解放されたがって居た自分を知ってる算数の先生は今度こそ負けなかった。「『なりり』にはみなぎる悪意しか持って居ない」そう伝えてくれと、算数の先生は言って、その場を歩き去った。残された元リーダーの目には涙がやどって居た。元不良じみた男子達のリーダーは涙するくらい、怒り狂って居た。
それを見てしまったモミジとサクラは、愕然とした。『両目が白濁しかけて居る』のを間近で見たからだ。
073
サクラとモミジは焦った。
ドライヤーガン戦士の『妄執』退治で出来た心の傷を二人で癒して居たから。まさかまた算数の先生絡みで『妄執』と闘うのかと想うと、嫌気がするサクラだった。モミジは『今度こそサクラを守る』と決意しながら、『なりり』の妻子の居る理科の先生を恋するが故に、算数の先生に対する酷いからくりに、吐き気がした。しかも、今度はサブリーダーでなくて、元リーダーだ。
サブリーダーと共に、『そらうみ』仕込みの人身掌握術という名の快楽『苛め』を取り上げられた悪童のボスは、すざまじいフラストレーションで、人を殺す決意をしなかったら、耐えられない惨めなプライドを粉々にされたのだろう。
サクラとモミジは算数の先生が一番最初に『逃げて新地でやり直す』と選択してくれた事に感謝した。
算数の先生をこれ以上、理科の先生の犠牲にしない方法だと、モミジとサクラは2度目の『妄執』退治に、備える事にした。
土下座の体制で両目を白濁とさせた元不良じみた男子達のリーダーは、両目を黒色に戻すくらいその場に、我を忘れて居た。
モミジとサクラは綺麗にクリーニングした、ドライヤーガン戦士のバトルコスチュームを、体に合わせて『着る』時に備えた。
ドライヤーガンもチャージ満タンで何時でも使える様に、備えた。
ソレを学校に持って行くのを日課とする二人だった。
モミジとサクラは、とうさまとかあさまと匕背の好々爺と色男達にも、ちゃんと話した。とうさまとかあさまと好々爺は「何があっても、愛して居るから」と、告げて、強く抱きしめてくれた。 モミジとサクラは、算数の先生を助けて、邪悪な『なりり』の野望を、失する為に、全力で『妄執と化しかけて居る、元不良じみた男子達のリーダー』を、殺す決意を二人でした。
074
放課後、算数の先生にハーブティーの美味しい喫茶店であった二人は、『誰だか知らない、仏教の開祖の弟子が算数の先生の命を、狙って居るから』学校を転任する計画を速めてくださいと、頭を下げた。
色んな酷い目に合った、算数の先生だから、その言葉は伝わった。
「忠告ありがとう。また救われたな」と、あの好意を、覚えてくれて居た算数の先生は、にこやかに笑って『酷い苛めの楔を断ち切る事』を約束した。顔に安堵する気配が、見えたのだろう。算数の先生は気前よく二人に、ミントティーを、おごってくれた。「「美味しい」」と喜ぶ二人の顔を見て、算数の先生は久しぶりに人間らしい顔で笑った。
喫茶店で算数の先生と別れたサクラとモミジは「一歩前進したね」と、安堵の笑みをもらした。
『妄執』とのバトルが近いから、二人は体力温存の為に、バスを使って通学する事にした。
後は、算数の先生が『なりり』を、見捨てて転任する意志を発表する日がエックスディだと理解し合った。
サクラは2度目の、モミジは初めての『妄執』退治という名の殺人に、怖い気持ちを、守る気持ちに、切り換えた。別々の部屋に寝ている二人は、夢の中でも、一緒に離れずに、居た。二人の武者震いと安堵の念が流れてゆく。「今回は色ずく椛の葉に協力を依頼しよう」と、モミジが言いサクラは「はい」と同意した。
幸い『妄執』になる元不良じみた男子達のリーダーは、あの場所を気に入って居る様だったから、調度良いとモミジとサクラは想った。
椛が美しく萌える明かりと成る下で決戦を覚悟した。
エックスディ以降に、算数の先生をリスペクトしてシャツをアウトする男子生徒が、居るとも知らない四人だった。そう、元不良じみた男子達のリーダーはエックスディには完全に『妄執』化しない事も、誰もが、知らなかった。
椛が美しく色づき萌える。
075
それから1週間後にエックスディは指定された。
サクラもモミジも、バトルコスチュームも、ドライヤーガンも、充電器も、持って居る。
いざバトルとはやる二人に、意外なダークホースが現れた。
幼馴染みの彼女の居る、面立ちは、キツいけれど柔和な性格で、誰とも衝突しないタイプの男子だった。
過去形になってしまった。
「先生、転任は、僕らが卒業するまで待って」と、算数の授業中に発言して、今一番注目されて居る。
彼女に「止めなよ、先生が可哀相でしょう」と言われても「ボクは『苛め』を耐え抜いた先生がカッコ良い英雄の様に思えます」と、キビキビ言った。「もう知らないよ」と言う彼女を無視して、シャツを、ズボンアウトにした。
それで、空気が変わった。
『苛め』をしたくてたまらない不良じみた男子達が元リーダーを伺う。彼は更に怒りを爆発させて居た。
怒り狂い過ぎて、人語になってない言葉を何かを幾つか放つと「絶対に許さねー」と呟いて、算数の授業を、ボイコットしてしまった。
まだ『妄執』には成りきっていない彼の両目は意表を突かれ意識を分散させられたからか?
少しだけ白くなるに止められた。
モミジとサクラは『どうなる?』と決意を持ち越されに成った。
元、不良じみた男子達は『紀眞』『匕背』に禁止されて居るのに、算数の授業中にざわついた。
もう、算数の先生はターゲット視されて居ない代わりに、算数の先生をリスペクトした男子が、ひそひそ話のネタになった。「内申点落ちるよ」「それに小学中退にされるよ」と、優等生が言ったが、衝撃が大きすぎたのか?ざわざわ、ざわめ居て居た。
誰も『俺も真似しよっと』なんて、明るい声を上げるモノもなく、ただただ、異形視して居た。
それが『苛め』という蜜を取り上げられた悪童達のフラストレーションが爆発して、その授業以降『苛め』の様な雰囲気のクラスに戻った。
『不良じみた男子達全員が『妄執』になるの?』とサクラは危惧したが、実際は彼女の人徳のお陰で陰湿なヤツラ以外は一旦静まり返った。
次の休み時間に呼び出しをくらうもリスペクト君は全部スルーした。
当たり前の事なのに『脱糞のシモベは失禁かな?』と苛立ちを荒々しくぶつけるヤツラにモミジとサクラは、どうしたら良いのか?
わからなかった。わからなくなってしまった。小学生なのだから仕方が無い。だけどリスペクト君『苛め』の包囲網は、着実に構築されていった。誰かがリスペクト君の進行を妨害するかの如く、足を引っかけられて、頭から転ぶ。痛そうだけど、リスペクト君は、算数の先生の様に、耐えた。彼女は「だからシャツインして」と大きな声で聞こえる様に、言ったが、リスペクト君は「嫌だ」と突っぱねた。「私、別れないから、絶対に別れないからね」という言葉にも屈せず、リスペクト君は、堂々として居た。だから、楽しい『苛めTIMES』が始まった。
女子も『超ムカつく』と、一人だけの良い子ちゃん面に無視をする様に、なった。彼女さん以外は全員。
それでも、算数の先生を慕うリスペクト君はもよおしたので、トイレに行った。それが陰惨な『苛め』と、なった。次の授業が始まっても、彼は教室に戻ってこなかった。
休み時間に心配の彼女さんが懸命に探したら、教室と同じフロアーの、男子トイレで失禁して居た。
かなり凹んで居たが、彼女さんと一緒に運動服に着替え、制服のズボンを水洗いして干して居た。
リスペクト君は算数の先生の様に、誰にも誰にヤられたか、話そうとはしなかった。そんな中、元不良じみた男子達のリーダーが教室に帰ってきた。
『期待する』グズ男子や『逃げたと相手にしない』グズ男子達が、久しぶりの『苛め』というイベントを、楽しんで居た。リーダーは「気にくわねぇ」とドスをきかした。
リスペクト君は、流石に少し怯えて居た。それでも算数の先生を見習うリスペクト君がリーダーにも、うってつけのサンドバッグに見えたのだろう。放課後、彼女さんが、意識をして居ない一瞬をついてリスペクト君は何処かに連れ去られて居た。
彼女さんは「絶対に言うな」との、言いつけをやぶり帰宅しようとして居た算数の先生に、事の始終を暴露した。算数の先生は青い顔をして、彼女さんと一緒にリスペクト君を、探しまくった。
076
その時、モミジとサクラは、誰が、リスペクト君をひどい目に合わせて居るか?見たわけじゃないので推理して居た。防音施設が整っている、音楽室でこそこそ話し合って居た。
「不良じみた男子達の元リーダーは、今回サボタージュしたしな」とモミジに「うん。算数の先生の転任にリーダーが『妄執』になるのだとして」「リスペクト君の『苛め』フラストレーションの生贄には誰が『妄執』に成るんだろう?」とサクラとモミジは話し合って居た。
その時、モミジが萌える椛の異変を感じた。「行ってみよう」と、二人はバトルコスチューム等を持って、萌える椛の元へと走った。
其処には傷まみれのリスペクト君と、どうやって、ツレられたのか?激しく面変りした『なりり』が座って居た。モミジが紅葉して萌える椛に感謝の念を伝えたが、犯人が衰弱した『なりり』とも想えない為に、犯人が登場するのを隠れてサクラと見て居た。
不良じみた男子達が、連なって椛の元へとやってくる。そうして、近づいた彼らは事の歪さに気がついた。
まだ、算数の先生と彼女さんは知らない。『なりり』だ。寝たきり病人面してやがる。失踪事件と何か関係があるのか?等と、ざわざわ話して居る。でも、コテンパンにされた、リスペクト君や狂った『なりり』という異様な光景を、見てるだけで、大抵の男子達は、目を覚ました。
「誰か救急車呼べよ」とか「小学中退は誰なんだ。俺は違うぞ」とか、五月蠅い。モミジは、サクラが居るから、二人で、意識を消して風景に溶け込んだ。その時「小学中退が怖いか?俺に逆らう方が怖いか?言ってみ」と、リーダーが姿を現した。
「俺達は別に」と何人も萎縮する中「ヤツはどうでも良いけど」『なりり』は病院からだしちゃダメだろうと、何人かが『なりり』の保護を、意見する。「お前ら誰も病院に見舞いに行かなかっただろう?だから」「俺がお前らに現実を見せる為に、『なりり』に見学してもらってた」と、不良じみた男子達の元リーダーは、本物のリーダー面して居た。
そこへ、算数の先生と、彼女さんが、現れる。「救急車、救急車」と、慌てる算数の先生に、彼女さんは「誰がこんな酷い目に合わせた」と、怒りを振り絞り大きな声で言った。予想もしない事だが「俺だ」と名告る悪は誰も居なかった。算数の先生は彼女さんの手をひいて職員室に向かった。救急車を呼ぶ為に。
彼女さんは怒り泣きわめいて居た。
077
サクラとモミジは『なりり』とリスペクト君が、救急搬送されるのを、見て居た。サクラは『なりり』のお見舞いに行った事がなかったので、『あんなに凄い病状』と、は想いもよらず、ドライヤーガン戦士の傷痕の1つとして数えるしかなかった。
モミジも驚いて居たが、二人は、椛が伝えたリスペクト君の悲惨な状態を忘れるくらい『なりり』の病状に畏れいって居た。
算数の先生が『なりり』彼女さんが『リスペクト君』の救急車に乗って何時もの病院に搬送された。
その間不良じみた男子達のリーダーは「『なりり』は右腕に相応しい」「算数の先生も今度という今度は」「無能さを思い知っただろう」と、可笑しそうにゲラゲラ笑って居た。
「それだけの為に『なりり』を酷い目に合わせたんだな」誰かが怒鳴った。「お前らみたいに、見舞いにも行かなかったヤツラに『なりり』の何がわかる?」そうだそうだと、言わんばかりのヤツラにリーダーは、先制攻撃をした。それでも『ここまでとは』と、想って居た男子達が、「勝手に小学中退になれば良い」と怒気をぶつけて「行こう、みんな」と、リーダーを残して男子達は立ち去った。元・不良じみた、男子達のリーダーは「小学中退、ウソだろ。でも受けてやるぜ」と、ガハガハと笑って居た。虚しそうに聞こえたのは、モミジもサクラも一緒だった。パトカーのサイレン音が聞こえた。「誰かが、チクりやがったな」と、吠える元不良じみた子のリーダー。その裏切りに彼の怒りは沸騰した。
「許さねぇ、どいつもこいつも進学の話ばっかで、全然わかり会えねぇ。右腕みたいに、優秀なヤツじゃねーから別に良いけど」と嘯く。
だけどパトカーが止まり警察官が捕まえに来たら、元リーダーは、暴れ出した。その目を不乱に見続ける、ドライヤーガン戦士達は、パトカーのサイレンが聞こえ出した時に、バトルコスチュームに着替えて居た。
いずれ真っ白に輝く両目『妄執』に備えて。
078
警察官が吹っ飛ばされた後に残る、元不良じみた男子達のリーダーは、冷酷な白い眼で、ヒトとしての自我を完全に売り払って居た。
みなが裏切り、仲間が居ないから。サクラはそう想った。
モミジが倒れた警察官にドライヤーガン戦士です。此処は危険なので、任せてください。と、伝えサクラを見た。サクラは元リーダーと、正面きって向き合って居た。
「許さないヒトに仇なす『妄執』」と、きっぱりと言い放った。
『妄執』は「許せない。みな裏切りやがって」とブツブツ言って居た。
「当たり前だろう」とモミジは、サクラのディフェンスを担当するべく、素早く動いた。その速度に負けないくらい速いスピードでサクラが跳躍する。元リーダーの脳天に、ドライヤーガンの威力を放出しようとして避けられた。ならばと、反対側に回って、お尻の孔に、ドライヤーガンの熱量を浴びせる。今度は成功した。でも元リーダーはサクラのスカートをめくり、サクラの体をブンブン振り回した。吹っ飛ばされた、サクラを落ち着いてキャッチする、モミジ。「大丈夫だよ」とモミジはサクラに言った。サクラは次こそは心臓を狙うと宣言して、危険も顧みずに、元リーダーと接近戦で、向き合った。「ヤれる」と放つサクラにモミジが「危ないサクラ」と悲鳴を挙げた。遅かったらサクラの脳天は、両の振りかぶった拳で叩き割られて居た。モミジが、充電器じゃ、間に合わないと判断して、椛の精霊に、力を借りる話を、瞬時に、取りつけた。椛の紅葉した葉がサクラの体を追い抜いて、元リーダーの体を包む。此で、モミジのディフェンス能力と合わせ技で、元リーダーの攻撃は全て鏡の様に、はねかえされ、元リーダーを襲い苦しめた。その間充電を行うサクラは、次の一撃で元リーダーを仕留めるべくドライヤーガンの調整をした。仕組みが解った元リーダーは、攻撃を一旦止めた。それで、モミジと椛の精霊が出来る事が無くなった。すかさず、元リーダーに飛び込むサクラに、モミジと椛の葉の精霊が防御膜を造る。
そうして、心臓めがけてサクラは、ドライヤーガンのトリガーをひいた。
079
モミジの、紅葉して萌える椛の葉の精霊の協力が無かったら、互角に、傷ついて居たかもしれない。
蒸発した元不良じみた男子達のリーダーの消滅と同時にサクラの体があらわになった。
かなりやり合った筈だが、サクラには傷1つとしてついていなかった。
苦しかったけれど、一人じゃないから闘いに勝事が出来た。
遠巻きに見て居た警察官が「お勤めご苦労様です」と言って職員室に、辻褄合わせの為に、向かった。
「サクラが無事で良かった」モミジが笑いながら、椛の葉の精霊に丁寧にお礼を言うと、サクラの周りに、まとわりついた。モミジのタキシード形バトルコスチュームは汚れて居たけれど、サクラのバトルコスチュームは汚れすら無かった。初めてのバトルの時の様な『人間を殺してしまった罪悪感』にさい悩まされる事は微塵も無かった。だって、モミジの綺麗なバトルコスチュームに汚れが、付いてるのだから。すなわち、もしかしたら、ヤらなければ、モミジがヤられて居たかもしれないから。サクラを無心に守るギリギリのモミジと精霊を見て居たら、元気な勝ちどきを向かえたいと想ったから。それで元不良じみた男子達のリーダーは「なんで俺だけ裏切られるんだよ」と泣きわめいて居たが、罪悪感は微塵も無かった。
サクラとモミジは制服に着替えて、大切なバトルコスチュームを丁寧に畳んで鞄の中に入れた。
風が蒸発した元リーダーの浴びた、熱すぎる熱量を、冷ますかの様に、涼しげに吹きさらした。
モミジとサクラは、バスに乗って、とうさまとかあさまが、待つ家に、帰った。汚れたモミジからシャワーを浴びて体を清めると、サクラが続いた。シャワーで体を清めたサクラは、かあさまが、腕によりをかけた夕飯を、今度は食べれそうと椅子についた。かあさまは何も聞かなかったが、モミジは、とうさまの為に、かあさまにいろいろ話して居た。
「良かったわねサクラ」と微笑む、かあさまも二人と一緒で、幸せそうだった。モミジのお陰で、今回からサクラは『妄執』退治のトラウマ『人殺し』から解放された。『妄執』なんて無ければ一番良いのだが、サクラは『妄執』退治をする事に対しての前向きな自信を、取り戻した。
080
サクラはモミジとモミジのモノトーンの部屋で部屋着に着替えて、くつろいで居た。今回の『妄執』事件は、みなが『苛めをするなんて、卑怯ものめ』と言って居たから、終幕するだろう。リスペクト君はもう、苛めに合わないと想う。男子達の気持ちが速く伝わって、算数の先生の転任前には、この場合には、終わりよければ全て良しになる(それが許せない時もあると知っている二人だから)といいなと、笑うモミジとサクラの二人だった。
モミジが頼むから今日だけは、モミジのベットで一緒に眠る事にした。二人は激しく疲れて居たので、深い質の良い睡眠を手にいれて、その夜を幸せに微睡んだ。翌朝、寝坊した二人は仲良くバスで通学した。
家を出る際に、起きれないから、無理して起きて居たとうさまに二人は交互にあついハグをされた。
その事を笑いながらサクラはモミジが「これからもよろしくフィアンセ殿」と、スペシャルな笑顔を見せたから、胸のドキドキが加速した。
黒板を雑巾がけするサクラは、床を雑巾がけするモミジとシンクロを、楽しんだ。二人で行うと速く終わるので、昼休みに紅葉して萌える椛の精霊に、もう一度挨拶をしに行こうと約束をした。そして二人が僅かな眠りに落ちる前に、サクラは枝垂れ桜の花の精霊や染井吉野の桜の花の精霊の事も「忘れてはいけませんね」と幸せに笑って居た。
そんな二人を女子達は「癒されますわ」と、言ってあたたかく見守って居た。やがて、大半の男子達が登校すると、昨日の事を知らない女子達に簡単に説明して『苛め』は一生しないから「小学中退しねーぞ」と、みなで笑って居た。
理科の先生の朝礼で、リスペクト君も『なりり』も無事に入院して居るとの報告があった。『苛め』をしたヒトは反省文を書いて朝の会で読みあげなさいと、言われたから「うへぇっ」と吐息する男子達が、大変だ。忙しいぞと活性化して居た。
それを見ながら、もう『苛め』は起きないと、安堵するサクラとモミジだった。
081
算数の先生を見送る時が来た。
みなで送りたかったのだが、算数の先生もヒトの子だから我慢出来ない事もあり、理科の先生とサクラとモミジとリスペクト君の彼女と優等生だけの見送りになった。だけど、算数の先生が我慢してみなを受け入れても無いのに、ましてや『なりり』の取り巻きが、多いクラスだから、きっと此で良いのだと算数の先生を見送る事が出来る数名は事を、荒げない、この方法に満足した。
『なりり』にザマーミロって、生徒から伝えといてと、算数の先生は、ちゃめっ気を見せた。
理科の先生ははてなマークを飛ばして居たが。
理科の先生は住む場所が安定したら、飲みに行こうと、アルコールを誘ったが、算数の先生は「サクラ君にモミジ君の行きつけの店ならOK」と、自分を大切にする事を、学んだから、調子の狂う理科の先生だった。そして、算数の先生は言った。「俺は養護教諭になるんだ」と、嬉しそうに、笑ってお別れを、済ました。算数の先生だった大人の男性は、電車の指定席に、座ると、ガラス越しに、見える数名に、手をふった。見えなくなるまで、数名のみなは手をふり続けて居た。
リスペクト君の彼女さんは、リスペクト君へと算数の先生が宛た算数の教科書やノートを、ぎゅっと、抱きしめて居た。彼女さんは、本当に、心配してるんだねと、伝わった。
寂しくなったのか?理科の先生は、ほろりと涙を伝わしたが、モミジは「理科の先生は絶対に『なりり』と一人で会ったら、ダメですよ」と、大切な事を告げた。本当の理由は、知らない理科の先生は大人なので、「了解」と爽やかに笑った。
「此でしばらくは、奥さんとお子さんにかかりっきりですね」と、サクラも『なりり』に一人で会うなと、暗に匂わした。
082
元不良じみた男子達のリーダーは、家出とされて居て、親御さんですら、誰ももう、関心をもつ事など、無かった。こうしてサクラとモミジの心配事は次々に解消していった。
開祖『そらうみ』『もっともすみ』の手下達にも、ドライヤーガン戦士の正当防衛を、邪魔する者など居なかった。
『なりり』は相変わらず入院して居るが、リスペクト君は割と速めに、退院出来た。彼女さんは嬉しそうに、算数の先生の抜けた穴を埋める努力が、とてもほほえましかった。
リスペクト君は算数の先生の教科書とノートを、大切にするあまりに、テストでとても良い点をとった。
もうリスペクト君へ『苛め』をした数名は反省文を入院して居る時に、病室で音読したから、リスペクト君は普通の学生生活を送って居た。
そしてもう一度『なりり』の事だが、サクラにストーカー行為をして居た事を被害届に出して、万一退院しても、サクラもモミジも苛められない様に、対処した。
でも、相変わらず理科の先生に恋してる以外の反応は、もう無かった。
こうして最高潮に能力をふるえる、ドライヤーガン戦士としてデビューしたサクラとモミジの小学三年生の時は無事に幕を閉じた。
そして、月日が流れて、サクラも、高校生になり、速く子供を欲しいという願いを叶える為サクラとモミジの二人は学生結婚をした。
そして子供の名前を『紀眞アキラ』にする事にした。
真っ裸の二人は、時間をかけて、大切に、何度も何度も、丁寧に、繰返し、愛しあった。モミジとサクラは、長い時間、あかさんが出来る愛を育みあった。
ただ大変な秘密が二点あった。
それは、サクラとモミジが異母兄弟である事と、サクラに残された日々が少ないという、なんとも、愛する二人には不幸の連打だった。
先の件はサクラが妊娠して数ヵ月が経った後に知らされた事実なので、それを知る二人だけの人物のモミジの父親はモミジ以外には、勘違いによる重大な過ちを言わなかった。
サクラも知らない、重大な秘密に、モミジは心を蝕まれ、一人に成る事が多くなった。
愛するサクラとアキラを否定するのが現代日本の法律だったからだ。
そして、モミジとサクラの誕生日に「永遠に君だけを愛す」との一筆を残して、モミジは『紀眞』『匕背』から行方をくらました。
アキラをサクラから取りあげない為にはこうするより他は無いと、想うモミジだったからだ。
だが、それは、妊娠中毒症が、酷く激しい、サクラのあづかり知らぬ、ところでの話だった。
ドライヤーガンバトルで、闘う度に、『妄執が離れた瞬間のヒトの言葉を胸に抱いていた為に』持病を、発症し、持病で先逝く事を知った、サクラは、モミジを一人にしたくなかったから、速く子供が欲しいと、モミジに迫ったのが真相であった。
すれ違う二人の人生を二人は正しく知ることも無かった。
サクラは、戒名を『咲蔵』に、して欲しいと遺言した。
サクラとモミジの二人とも亡くした
、とうさまとかあさまは、孫の面倒が、悲しすぎて出来ない為に、孫のアキラは、かあさまの姉夫婦に養女にだされる。
そして生まれた二人のアキラは本当の孫の様に育てられる事になる。
こうして、紀眞サクラと匕背モミジの物語は、おわるのだが、最も強いドライヤーガン戦士、紀眞アキラの物語へとつながってゆく。
そして、アイドルユニットで、働く事を、夢を手にしようと努力する、匕背のヒロシが幼い頃、生まれた、紀眞アキラのいいなづけと、なるのであった。
この物語は最後にして純血ゆえ最強のドライヤーガン戦士の話に続く。
083
紀眞アキラは婚約者の匕背ヒロシの目覚めを、匕背の息のかかった絶対安静の病室である仏門の開祖『そらうみ』『もっともすみ』の直々の、後継者による『妄執』と、闘う為のドライヤーガン戦士のマネキンで、バトル相手をしてくれる匕背の兄と二人で見守って居た。
一度良かれと旅をした桜の花がまだ咲いている、北海道で『妄執』に、憑かれかけて、何とかふりきり、ドライヤーガン戦士アキラのサポートをしてくれる生霊になって居たのだが、本体が死んでしまわない様に、最近は体の中から、出てこない方法で、目覚めを信じた。
最後の敵を倒せたアキラと匕背兄は一緒に外食をして居た。
その時、匕背の息のかかったヒロシの入院して居る、病院から、緊急の電話があった。「ヒロシの目覚めが近い」と。
そして、病室についた二人が見守る中、ついに、匕背ヒロシは、永遠と想われた眠りから目を覚ました。
そのヒロシが最初に見たのが愛しい婚約者のアキラだった。
「おはよう」とヒロシは声を出そうとして失敗する。アキラは「大丈夫たい」と、ばーちゃんの声色を真似て、失敗にヒロシが怯えない様に、おどけてみせた。ヒロシはウケたので、あははははと笑い声をあげた。それがヒロシの目覚めの一声だった。紀眞ヒロシとなって、アイドルユニットを引退したヒロシは、その事に嘆く事なくアキラとの触れ合いを求めた。
アキラはヒロシを、独占したかったから、アイドルユニットを引退させる事になった顛末に罪悪感を感じて居た。でも、匕背兄が言うとおり、ヒロシはアキラだけにより愛される人生を選択した。だから紀眞ヒロシで、上等だった。
その事を速くアキラに伝えようと、目覚めたての紀眞ヒロシは、口を開いた。「永遠に君だけを愛す」と。
安堵したサクラ(戒名、咲蔵)の幽霊は、永久に成仏した。
了
あとがき
この「美少女戦士サクラ」は「闘う美少女戦士アキラ」の前日譚です。「アキラ」→「サクラ」の順番で、読むと1番おもしろい筈です。
執筆開始日21.06.21.から
執筆終了日21.07.13.の短期間で、最後はもう無理矢理書き上げました。だからプロットの方が綺麗という下手くそさに、それでも完結出来きて、嬉しく想って居ます。
悪者に、完結出来なかったら素材にしなと、怒り狂って居たので、著作権を無事に、行使出来る姿に書けて、嬉しいです。
来年は、新作は書かずに、私の成り済まし詐欺犯に「保健室」と、大量に違法アクセスされてる「アキラ」とぐちゃぐちゃの「サクラ」の2作を推敲して角川つばさ文庫大賞に、ダブルエントリーします。
「アキラ」を今年推敲してエントリーしない訳は、コロナのワクチン接種2度目数週間後に、被害届をだしにゆく予定だからです。
今年中には行けると想います。
「アキラ」「サクラ」が見苦しくてご迷惑をおかけします。
すみません。
同時に、コロナワクチンの副反応をおそれてるので「サクラ」は今年はこのままエントリーします。
此でドライヤーガン戦士のバトルは終了ですが、匕背ヒロシがたまに、何処かで、顔を覗かして、居るかもしれません。出会えるのを楽しみにしていてください。 それでは。
2021年6月21日宝希☆/無空★
天敵みよし某に「タカラ」が壊す「サクラ」という脅迫プロットを聞かされ「潰される」と思ったので「タカラ」「キヨラ」も作ることに成りました。流石は陰陽道家のワテ。設定を同時進行で作っています。だからドライヤーガン戦士シリーズは①アキラ~④キヨラ迄続きます。のんびり書くか、プロライターに頼むかはまだ決めてません。ドライヤーガン戦士シリーズLOVEな作家さんいらっしゃいましたら、気軽に声をかけてください。また贖罪したい作家さんでもOKです。
ではでは、私は設定頑張りますね。
なろうでは「集英社小説大賞3」を目指してます。カクヨムでは「ビーンズ」もありと教えられました。知らんかった。
21.09.05.宝希☆(/無空★)