ドライヤーガン戦士シリーズ②サクラ前編
001
ある日現代日本のある所に魔法のgunがありました。それはドライヤーの形をしてました。目的は「悪者退治」のgunです。ドライヤーガンは『妄執』という悪者を最大、気化する能力があるので、扱い手は慎重に闘わなくてはなりません。それにコードレスで充電式なので、決着は速くつけなければなりません。それは彼女が母親になる前の幼い日の想い出、紀眞サクラ小3の時の話ですから、やがて、その衣装には悪者を退治した免疫が染み込んで、大きな守護力を持つ様になります。そしてその名前から桜の花の守護を受けています。
婚約者でクラスメイトの椛の守護を受けている匕背モミジと、一緒に闘います。
(元々、悪者退治の家系の紀眞の家と匕背の家は微妙な障害を補う許嫁の仲にあり。紀眞の家は聴覚がおかしく、測定出来ない音波?が五月蝿く聞こえる体質。匕背の家は極度の視覚障害の乳児性乱視で。それで補いあう二人なのです)
そう、二人の最後の闘いが終わるまで。
002
時は昭和の日本。私は紀眞サクラ。もうじき小学3年生になります。匕背モミジ君という血族によるクラスメイトのフィアンセが居ます。どうして、こんなに小さいのに、フィアンセが居るのかと言うと、紀眞の家と匕背の家は合同で、昔から悪者退治をして居るからです。特別な遺伝子じゃないと出来ない妄執という悪者退治は、私の代でモミジ君という運命の日、同じ誕生日の匕背の血を得たので、一緒に行動する事になったからです。私に受け継がれたコードレスドライヤーガンは、正しい使い方をすると、ちゃんと妄執という悪者退治が出来ます。でも、其れだけではありません。サクラとモミジは桜と椛の寵愛のもと、桜の満開の花びらは攻撃を手伝ってくれるし、紅葉した椛の葉は防御を手伝ってくれます。此れは過去に無い事例なので、私達は二人で行動できる様に、紀眞と匕背の家は学校に圧力をかけていて、だから仲良くくっついてます。
私のバトルコスチュームはかあ様が作ってくれました。アイドルさながらレースのふりふりフリルは少し照れちゃいます。私は普段は制服かルームウェアで居る地味子さんだからです。
モミジ君のコスチュームは、彼のお母さんが、身体を動かしやすい布で誂えられたPale Blueのタキシードです。彼も少し照れています。
戦闘訓練時の藍色のジャージが落ち着く二人ですが、二人のかあ様を失望させる訳にはいけませんから、初仕事に向けて二人で着用してみたり、取りかえっこしてみたりと、楽しんでます。体型の近い彼は私のコスチュームを着てくれました。私もPale Blueのタキシード着てみました。
二人とも中々お似合いで、くすくすと笑っちゃいました。
そんな二人の妄執初退治の話からします。
003
今は夏至の真っ盛り。ついでにいうなら祝日だ。
今はサクラの家に同居してるサクラとモミジは、サクラのとう様とかあ様が買いだし外出中に、話したいことがあるからと、二人でキッチンで、こそこそ話をしていた。蒸し暑いのに顔を近づけ小さな声で話していた。 二人は自家製のミント水を飲みながら「学校での嫌な出来事」について話し合っていた。
少し不良じみた男子達がメインで、算数の先生に失礼な事をしているのだ。何故か?不衛生と苛めを行ってると想う。授業中にゲラゲラ笑って、大声で喋っているのだ。
「くっさ」「汚ね」真面目に授業を受けたいサクラはモミジに「あれは苛めですよね?」と確認した。穏やかなモミジは「なんで、算数の先生が苛めになってるんだろう?」と核心をつく。でもサクラにはわからない。ミント水をくぴっと飲みながら「何が原因なんだろうね?」中肉中背の整髪したイケメンの先生なのに、女性教師が「好き子苛め」にあう理屈はわかるものの、イケメン教師に好き子苛め?
まさか男子らホモなのかな?とモミジに言うと、「絶対に違うと想う」と激しく否定された。くぴっとミント水で体内を癒すモミジ。絶対にノンケだよと付け加える。「だってサクラの事、羨ましげにみてるんだから」と理由を教えてくれた。普段、二人で居るので、何時の間にそんな事になったのだろう?と想ってたら「トイレの時とか、体育の着替えの時、『仲良すぎ』って警告されたから」何れは婿養子に入る身だから「譲れない」と言ったの事で。私は成る程と『好き子苛めではない』と納得した。モミジはくっとミント水を飲み干すと、新たにミント水を追加した。
004
「なんでだろうね?」というところを堂々巡りしてたら夕方になってしまった。モミジが、この話題を出したのは、ドライヤーガン戦士として、正義を遂行せねばと、想ったからだろう?サクラも『嫌な出来事』と認識していた。
でも、多数の男子達にはむかうのは、怖くないなんて言えない。正直怖い。妄執に憑かれてない人間、しかも子供にドライヤーガンは無いとサクラも想った。
そうこう言ってる内に、とうさまとかあさまが帰宅した。沢山の食材を買ってきた二人にキッチンは譲って二人は階段をのぼった。
モミジの部屋に二人は入る。
「サクラの部屋はジグゾーパズルで足の踏み場がおひとり様だからな」と笑うモミジに「面目ありません」と苦笑いをするサクラだった。
嫌なパルスが両耳を襲うと、何かに没頭しなくては心身が壊れるサクラはジグゾーパズルを夢中に組み立てる。
モミジを頼らないのは、トイレやお風呂や個人の時間の様に、何時でも二人で居れないから。サクラは耳が悪い代わりにモミジと違って目が良いので、好きな野ねずみのイラストのパズルを欲しいなと想っていても、右脳を活性化する為に、ピースが判りづらい主にPale Blueの写真のパズルを選ぶ様にしていた。モミジに代わって私は視力と右脳を鍛えなくてはと想って居るからだ。なら、耳の良いモミジの部屋はCDで溢れてる筈なのだが、モミジは1枚のCDをフルコピ出来るまで聴きたおし、カンコピが出来たら、断捨離しているから、ジグゾーパズルで空きスペースが無いサクラとは、違った。それでも、幼い二人に間違いがあってはいけないからモノトーンのモミジの室内で二人ベットに腰かけるのは、なるべく控えている。
だけど、今回は『緊急事態』だから、二人は危険な仲にならずに話せた。
005
清潔な6畳間、大人のセミダブルくらいのベットに腰をかけて、先程の課題に話題が始まる。「女子はなんで算数の先生を苛めないんだろう?」モミジが言う。わからないので沈黙が場を支配する。「なんでなんだ?」とごろんと横になるモミジにサクラはハッとした。いけない。二人はまだ子供。だから妖しい空気になる前に「トイレ行ってくるね」ミント水を飲みすぎたと言い訳して、ドアに向かって急いでノブを回してから、階段を勢いよく降りきった。「転ぶなよ」と、モミジは身体を起こして声をかけた。
結局、その日はモミジの部屋に戻らず、そのままキッチンで夕飯の支度を手伝うサクラだった。
その事に少し不満げなモミジをスルーしてクリームシチューを食べるサクラ、とうさま、かあさま、モミジだった。クリームシチューはイカの出汁が効いていて、クリームシチューというよりは、イカの煮物スープになっていたが、美味しかったので、問題は無かった。みんなで一緒におかわりをして、完食した。
「ミントが減ってるね」と、かあさまが何気なく話すと、モミジが「サクラと一緒にお茶してたんだ」と悪びれる事もなく明るく爽やかに答えた。「なんでも飲みすぎは毒だよ」と言うかあさまに「熱中症対策も兼ねたんだ」と問題なし発言に、むぎ茶も冷やしてるんだから、そっちも飲む様にとアドバイスされた。「ありがとう。かあさま、そうする」とサクラが微笑むと、モミジの顔が少し赤くなった。
とうさまは「何を話してたんだい?」と聞いてきた。「学校で、別々になった時の報告会だよ」とモミジが笑うのにサクラもあわせた。
「仲良しさんだね。子供なのに、もう良いお婿さんだね」との爆弾発言に、二人は沈黙で答えた。ほっぺただけを、赤くしながら。
006
夕食の席で、ほっぺただけが赤くなった二人は、一緒になった階段を譲り合いながら、昇った。「なんか変な空気だよな?」モミジが言葉を発する。「うん。そうね」と、小さく答えるサクラに、モミジはきっぱり言った。「まだサクラには手をださないから」真剣なまなざしでサクラの両まなこを写す。「うん。そうよね」杞憂に『馬鹿か?私は』とサクラが、くすくす笑う。その笑顔に胸が、動悸が駆け足になるモミジは『大切なモノ』を守りたいから、失いたくないから、何れ恋をして、愛したいから、自戒する。「何があっても、サクラとは、」挙式をあげるまで何もしないから、と伝えたら、サクラのくすくすは『ウケたのか?』やまないから、モミジは少し自信を無くした。サクラは綺麗な顔をしている。チャーミングだ。サクラは幸せそうに笑う。チャーミングだ。だから、歯止めが利かなくなる男に成るんだろうな、自分は、とモミジは、そっと想った。
二人は部屋の前で「おやすみ」を言って別れて、それぞれの時間をすごす。
サクラを落ち着かせたモミジは、『まだその時じゃない』と、何故か?安堵した。
サクラを失望させるまだ実力の無い自分を予想して、怖く、悲しく、寂しくなったからだ。こんな風に小学生のモミジが年寄り染みた性格をしているのは、モミジは匕背の男で、匕背の人間ながら椛を操る能力をもった選ばれしモノだから。悪者退治をする紀眞のサポートが出来る唯一無二の匕背の血を得たから。自覚は、初めて会った時からしている。同じ日に生れたあの時から、乳児期からモミジはサクラを意識していた。
考えすぎになったモミジは『まっいっか』 と宿題にとりかかった。
出遅れたモミジと違いサクラは宿題を終え、眠りにつくまでPale Blueの海と空のジグゾーパズルに没頭していた。
算数の先生が苛めに合ってるか?どうか?の話し合いは尻窄みに終わった今晩だが、どうか若い二人を許して欲しい。まだまだ二人は子供だから。 そして明日へと日付けが駆ける。
007
翌朝、もはやルーティーンとなって居る、学校に一時間くらい歩いて早く登校する予定で、早起きしたサクラとモミジは、かあさまの朝食を味わって、早い時間なのだが、一緒に家を飛び出した。珍しくモミジがなんか眠たげで、ぼぉーとするも、サクラがしっかりしていて、片道一時間の通学路を安全に二人で歩きたおした。危険な交差点や踏み切りや河にかかる橋なども、安全をキビキビ確認して、どんどん歩いた。迷わないずんずん行くスピードに引きずられて、本格的にモミジも覚醒した。
その頃にはモミジの真の覚醒もあったので、リードをモミジに任すサクラだった。
今日はサクラが握ってた手を何時もの様にモミジが握り直す。
モミジが『かっこ悪り』と想いながらも、サクラに礼を言って、二人は目の前の校門をくぐった。 靴箱で上履きに履き替えた二人は仲良く、朝が早すぎて誰も居ない教室に行くべく職員室に鍵を取りに行った。先に来ていた普段は会わない教師に「仲良いね」と二人の事を言われると「将来、自分達結婚しますんで」とモミジ、サクラは嬉しげに微笑む。フリーズした教師を後に二人は教室に向かった。誰も居ない廊下に靴音だけが響く。昨日の気まずさを忘れたかの様に二人は仲良くたワイもない、おしゃべりしながら、窓の外の朝日が綺麗な廊下を歩いた。 教室のドアの鍵を二人で差しこみ開錠する。(これはウェディングケーキ入刀の練習なのだ)窓を全部開けて朝の空気を教室に入れると二人は何時ものルーティーンに勤しんだ。サクラは黒板を余すこと無く綺麗に雑巾がけする。チョークの粉が苦手だからだ。黒板消しも埃が出なくなるまでぱんぱん叩く。
その間モミジは教室の床を雑巾がけして居た。こうして、何時もの綺麗な教室にと戻った。
008
早朝ではなく、しっかりとした日刺しの中、ちらほら学生の姿が見えだした。モミジは席が後ろとサクラの窓際の席と離れているので、サクラの席の前の椅子に反対に座りながら、サクラと昨日の件について悩んでいた。
算数の先生に苛めをしている理由がわからないのだ。シャツアウトは月九のドラマの流行りだし、みすぼらしい所や不衛生な所等は皆無だ。なのに「くっせ」「汚な」なのだ。そのうち不良じみた男子達がそろって教室に入って来たので、モミジとサクラは会話を中断して、軽く居眠りをした。 疲れて居たモミジは最初から深くて質の良い睡眠を満喫して目覚めた。サクラはその此方に俯く後頭部やうなじを見つめていた。『綺麗』とサクラはこっそり想ったりしてみた。そして授業開始のベルが鳴る。蜘蛛の子を散らす勢いで、生徒達は自分の席へと戻った。 勿論、モミジも言うまでもなかった。
担任の先生が来て朝の会が始まった。くだらない連絡事項に、くだらない世間話。サクラは一生懸命聴いていたが、モミジはスルーしながら、算数の教師に対する苛めの事を考えていた。悪者『妄執』以外の苛めの場合、仲の良い他の先生に告口するか?とか、考えていた。ドライヤーガン戦士のでるまくの無い結果の方がみんなに幸いだろう。ドライヤーガンで射たれたら、人間の形を保てないかもしれないのだから。そう、『妄執』とは無関係で自分から相談してくれると良いのだが、弱くみせたくないプライドとか、忙しい仲間に対する遠慮とか、不良じみた男子達の圧力が邪魔をするのかも(怖くてフリーズしてるのかも)な?とモミジは落ち着いて考えていた。担任の教師は役目を終え職員室に戻った。今日は朝から算数の授業だ。何もおこらなかったら良いのだけど、とモミジとサクラは想った。
009
その日、算数の教師はこなかった。理由は知らない。代理の理科の先生が算数の自習の監督をしてくれた。プリントが配られる。教室の真ん中で不良じみた男子達は「くっせめ、ざまぁみいっ」と自習時間、偉ぶっている。それの態度にモミジやサクラは嫌な想いをした。そんな不穏な空気の中、学年で一番美少女の『なりり』(教卓前の座席)が理科の先生に熱心に数学の問題を質問していた。その姿にざわめく不良じみた数名の男子達。中でもサブリーダーが歯ぎしりをしている。あれ、モミジとサクラは気がついた。サブリーダー君、『なりり』が好きなのかな?小学生男子の精神構造で、クラスメイトの女子が好きとかある?
(幼いながらも、悪者退治を生業とする、モミジとサクラは特殊だから、普通の小学生から省くけど)
そう言えば、『なりり』の質問の的は正確で、沢山あった。サクラは不良じみた男子達が怖くて算数の先生に全然質問出来ないのかな?と労ったが、モミジは困惑しながらも丁寧に教えている理科の先生が、焦ってるのを見逃さなかった。確か、この理科の先生は算数の先生の友だちの筈。この自習の成果を喜ばないのは、目くじらをたてる事に飽きた不良じみた男子達のサブリーダー君だけだった。
彼の他の男子達はもう、女子同様、真面目にプリントにとりかかっている。このプリントが出来た生徒は宿題が減るからだ。『なりり』が1番にプリントを終えた。それでも満足しない『なりり』は今度は理科の先生の十八番の理科の授業内容の質問をしだした。サクラは一生懸命プリントにとりかかっているが、モミジは『なりり』の質問の的がドンピシャばかりなのに、何か違和感を感じた。『出来すぎている?』と、その時から彼女にはそう想う様になった。
010
算数の自習の時間内に、宿題のプリントを終えたサクラと違って、モミジは半分も出来てなかったから、宿題にする事にした。休み時間に、サクラがモミジの後ろの方の席に行きとても小さい声で言う「なりりさん、不良じみた男子達が、算数の先生を苛めるから、解らないところ、全然勉強が出来なくって可哀想です」と。それにモミジはとても小さい声で言った。「自分はアレはヤラセだと想う」咄嗟に本音が出た。まだ何の確証も無い事を口開いてしまった。「pardon?」と不思議顔。いやぁ「まだ何の確証もないから忘れて」とモミジ。「なりりさんの勉強熱心さに疑う余地でもあるのですか?」サクラは不満気だ。「だから、サクラにお願いがある」と作戦をサクラの耳に囁いた。「理由は解らないけど、なりりさんの好きな人を探ったらいいのですね?」サクラも耳に囁く。「自分との婚約関係で、恋ばな出来る女子が居なくってという設定にして欲しい」モミジはサクラの次の時間の為に出したノートにメモした。今度から筆談にしようと、仲睦まじい二人を見てきゃーきゃーいう女子達への影響を考えてモミジは締めくくった。『了解です』と右手で合図をするサクラに先ほどの至近距離を想いだし、ほっぺただけ赤くなるモミジだった。『不思議顔』して微笑むサクラにモミジは「至近距離だったから。それとそんな可愛い顔は二人っきりの時だけ」と焼きもちやくからと、オデコも赤くしながらモミジはサクラに言った。気不味いので、サクラの整髪した髪をくしゃくしゃと撫でた。
至近距離を想いだしサクラのほっぺたも赤くなった。チャイムが鳴るまで、二人でそうしていた。じゃあと急いでサクラは窓際の席に戻った。間一髪、国語の先生が教室のドアを開けた。 そして何時もの様に授業は始まり、不良じみた男子達が騒ぐ事もなく、静かに授業は進行し終えた。給食の時間までそれは続いた。学年で一番美少女の『なりり』にサクラは一緒に給食しようと声をかけた。「良いよ」と教卓前の席のなりりは給食を持ってサクラの机の側にやって来た。今日は給食をおきっぱにしたまま、モミジが職員室を覗いて居たから、二人で初めてのランチをするサクラとなりりだった。
011
なりりはサクラと同じくらいのゆっくりしたペースで給食を食べていた。今日はナポリタンスパゲッティの日だから、特に制服を汚さない様に気をつける。そんな中、二人は会話『恋ばな』をしていた。「私はフィアンセに恵まれて居ますけど、何時も一緒だから視野が狭くなりますよね?」 とサクラ。「良いな、私も正面きって公開してるサクラさん達が羨ましい」となりり。「お互い、無い物ねだりだね」と二人で笑った。あっ、モミジに禁止されていたっけと想いながらも、なりりの気持ちをサクラは聴いた。「意中の人居るのですか?」と。
それに半拍おいて、なりりは答えた。「それが禁断の恋なのよね」と羨ましげに言われ、なんとするか?考えていた清いサクラは「先生なの。サクラさんはモミジ君が居るから、絶対に取られないから、特別に教えとく」と泣き笑いの様な表情をなりりはした。「ありがとうございます」罪悪感にサクラは突っ込む事が出来ずにいると「理数系の先生だよ」となりりは、いたずらっ子の様に本当の気持ちをあかす。『算数の先生か?理科の先生か?』と、ぼんやり想うサクラは、なりりに好意を寄せられた。「彼氏が留守の時に、また恋ばなしようね」と食べ終わった『なりり』は給食の食器を、教室の前の食器入れに返却して、教室から出て行った。
それを不良じみた男子達のサブリーダーが後をつけたのにサクラは気がついた。
『あ?そうですね。解ったかもしれないです』と、まだ戻らないフィアンセの事を想うサクラだった。
給食をぼんやりと食べてる、サクラは『算数の先生が不良じみた男子達に苛められてるという事は、なりりさんの本命は算数の先生かもしれませんね』と、ぼんやり給食を食べるサクラだった。
職員室を覗いて居たモミジは、チャイムと共に戻って来た為、今日は給食を一口も、食べれなかった。
012
お昼休み、モミジは職員室を覗いて居た。なんと泣きそうな顔をした、算数の先生を、見つけてしまった。
体調の不具合というよりは、精神不具合に体がつれ回わされているという感じが一瞥しただけで解った。それに話しかける優しい声は理科の先生だった。「宿題のプリントで自習させたから、安心しな」と肩をポンと叩いた。「すまない。忙しいのに」と算数の先生に「何かあったら連絡しろよ」と理科の先生は、理科室準備室に帰ってしまった。
本当に心の底から、嬉しげにしていた算数の先生の笑顔を凍らせた声が「やっほー」という『なりり』のモノだった。それを凝視してる不良じみた男子達のサブリーダーが居るのに、気づいたモミジは理科の先生を探してるふりをして職員室に入って、緊張でフリーズしてるふりをして算数の先生に、なりりに、サブリーダーを観察した。
なりりは「ありがとうセンセ」おかげで、先生といっぱい喋れたよ。他の先生達が、見てないのを良いことに「ご褒美」と言って濃厚なハグをした。サブリーダーの目は、人殺しの目に変わっていった。算数の先生は『困ったお嬢さんだ』と焦っている。「また協力してね」と耳もとで囁くと、なりりは理科の先生の机を愛しげに一瞥して教室に戻っていった。
勿論、モミジとサブリーダーには音声が伝わっていないので、一瞥した机の存在を覚えていたモミジと頭にきて忘れてしまったサブリーダーには、真実はまだ、見えていなかった。「なんだあれ?」とモミジは、頭から離れなかった。いつの間にか昼休みをおおかた使った様だ。給食食べたかったな、と想いながらモミジは先に教室に戻った二人の後を追うかの様に、廊下をダッシュした。そして、残された給食のお盆を教室の後の机よりかは高さのある体操着入れのてっぺんに置いた。
次の休み時間、少し食べようとモミジは想った。
013
次の授業は社会だった。
空腹でお腹がなる、モミジを社会の先生はからかいながらも、楽しく授業を終えた。
勿論、不良じみた男子達が、騒ぐ事は無かった。そうして休み時間に給食を食べていたモミジをわくわくしながら、見てるサクラが居た。
速く伝えたい事がある二人だった。
次の授業も無事に終え、給食を食べ終えたモミジは、家まで待てないから、サクラを屋上に連れ出した。
暑い気温も分厚い雲の影で、少しひんやりした中、二人は柵に腕を乗せて運動場を見ていた。どちらかともなく話そうとしたら爽やかな夕方の風が二人を励ました。
「まずは聴くよ」とモミジが言ってサクラの横顔と、風に流れる髪を見つめた。
「なりりさん算数の先生か理科の先生に片想いをしてるんですって」と他人の恋ばななのに少し赤くなるサクラの話を聴いてモミジは1つの仮説にたどりついた。
『なりりはアノ先生に恋してるんだ』と。
「誰に?」と聴くサクラに、「今日の態度で解った。多分アノ先生だ」と、モミジは興奮した為にサクラに、直答をするのをさけた。好き子苛めではなく、モミジも幼いだけだった。「今日は不良じみた男子達が、騒いでいなかっただろう?」サクラに話すモミジは、涼しい風に吹かれて、気持ち良さげだ。
「つまり、本命は算数の先生に決まり」と、顔を向けるサクラの顔にモミジは指をさした。「でも、でも、でも」と興奮して声がつまったサクラの背中をさするモミジに、サクラは言った。算数の授業の時は悲しそうじゃないですし、理科の先生とはうきうきしながら何十分も独占してましたよね。と、其処でモミジも、そうだなと想ったので、昼休みに見たことをサクラに話した。算数の先生に抱きつく、なりりとそれを見ていたサブリーダーの事を。
そしたら「愛しげに机を見ていたのですよね?」とサクラが指摘して、混乱したモミジは「じゃあ、あのなれなれしさは一体なんなんだ?」と、考え込むモミジに「貴方が好きです」とサクラは不意をついた。驚いたモミジの反応をモミジに見せて「本命にデレデレできるのは仲が進展してからです」と『理科の先生となりりは仲が進展してないから、アウトオブ眼中の算数の先生で、もて余してるのです』とサクラは答えた。
014
はぁ、と息をつく。
サクラの馬鹿。何でいきなりコクるんだよ。とモミジは、屋上の手すりをぎゅっともちながら、調子が狂ったのを、どうしよう?と本気で悩んだ。
でも、解った事はひとつ。
サクラの言う通り『なりりさんの算数の先生へのなれなれしさは好きじゃないから出来るんだ』と、職員室なのに、昼休みで殆ど人が居ないからって、二人で何のこそこそ話してるんだよと、サクラに今コクられた照れをどうしよう?と困ったモミジだった。
「今の告白は、嘘ではないので、新婚旅行の時まで我慢してください」とサクラは、綺麗な顔を、可愛くして、いけしゃあしゃあと宣言した。「そだね」と、モミジは納得して二人で学校の屋上から帰宅する事にした。分厚い雲の上には綺麗な青い空があるのだろうか?あり得ないけど、もしPale Blue色だと良いなと、想いなおして、二人は会話を終え、片道徒歩1時間の道を、二人で手をつないで、歩いて帰宅のとについた。モミジもサクラも二人の手は汗だくだった。
未開発な本命はこんなモノなんだなって二人で恥ずかしい気持ちを笑った。
015
宿題を終えてないモミジを、おいてけぼりに、サクラは、何度目かのドライヤーガンの練習をしに藍色のジャージで可愛くキメて、匕背の色男達と訓練フィールドに向かった。サクラの代からドライヤーガン戦士のドライヤーガンは充電式のモノになったらしい。使用時間が限られるも、サクラは訓練を、怠らなかった。「筋がいい」と匕背の色男達に褒められながら、サクラはドライヤーガンを振り回して、ターゲットのマネキンを何台も何台も倒した。
少し油断したので返り討ちにあったのが幸いして、サクラはたかだか数回という、短期間でドライヤーガンを自在に操れる様になった。「エクセレント」「グレイト」「ワンダーフォー」とベタ褒めする色男達にもなびかず、ただモミジの事を想うサクラは、綺麗で強かった。此れを、あのフリフリの衣装でやるとなると、空気抵抗がとかブツブツ呟くサクラだった。モミジのPale Blueのタキシードでも同じだから、教えてあげなくてはと想う一途なサクラだった。
でも誕生日が別々だったら、出来ない、モミジがサクラの操る桜の花びらの加勢も、出来る事からなるべく、一緒に居たい二人だった。
そんなこんなで……
汗まみれでぐしゃぐしゃだから、家に帰ってすぐにシャワーをあびるサクラにモミジが外から声をかける。「練習キツくなかったか?」「新しい技取得したか?」「タイムは縮んだか?」と、シャワーでくつろいでるのに五月蠅い。はやる気持ちも解らなくもないが、まずはお互いに落ち着きあいたい。サクラは「今裸だから」のひと言で、モミジの質問攻撃をやっつけた。
「ごめん、悪かった、また後で」モミジは自室に戻った。
疲れはて、モミジの質問攻撃をかわしたいサクラは、モミジの腕の中で眠りにつく事を想いついたから、綺麗に身体を洗ってシャワーを終えた。
階段を転ばぬ様に昇るサクラを待ち構えていたモミジは、まんまとサクラの奸計に堕ちた。年より大人びて見えるサクラの湯気の跡が感じられる寝顔がこんなに綺麗で、幼いモミジには色っぽいなんて、想像もしないモミジは、自分に預けられた体温とその重みを受けとめ興奮と安らぎを得た。小学生で良かったと想う。中学生なら粗相してるだろうし、高校生なら体型の変化で籠絡されてるだろうから大切な約束は絶対に守らなければならないから、とモミジはサクラに改めて誓う凛々しい男であった。
その夜、サクラとモミジは、座ったまま眠る事になった。モミジのモノトーンの部屋が初めて暖かみをおぼえた瞬間だった。何時までもこのままで居てねと部屋が、子守唄を語りかけ歌っているかの様な幸せな空間を築いていた。
016
翌朝、サクラはモミジの囲う腕の中で何時もより早い時間に目覚めた。モミジは抱きしめたら壊れてしまうと言わんばかりに、腕をサクラの身体に触れない様に、抱きしめて居た。その『お姫さま対応』に、こっぱずかしくなるサクラ。何とかこの腕の中から抜け出そうと、頭をひねるも、妙案浮かばず、モミジの目覚めを待つこと30分。このままの体勢で『モミジはぬくいです』と幸せそうに顔を、胸にうずめた。そして30分後、サクラの艶やかな髪が、モミジの顔をくすぐり、くしゅんとして目覚めると、彼のお姫さまは大胆にも、モミジの心音を聴くかの様なポーズで、モミジに抱かれていた。気づかった『腕で抱きしめ、苦しめない』というミッションは、達成できた。モミジは腕の中で居る一番大切なサクラを、どう起こすべきか?悩んで、身体をゆすって居たら「おそようございます。フィアンセ殿」と胸に当てていた顔で、見上げ、つぶらな両まなこが、モミジの両まなこをロックオンした。
「起きてたの?」恥ずいなと照れるモミジにサクラは「幸せそうに、眠っているから」起こせませんでした。と微笑んだ。チャーミングなサクラの顔に、モミジの心音ははやった。「そろそろ起きようか?」精一杯の虚勢で、『静まれ心臓』と無駄な足掻きをするモミジ。「もう少しだけ、このままじゃ駄目ですか?」との可愛いサクラに「駄目」トイレに行きたくなったから、とモミジは赤いほっぺたで、抗議した。残念と言わんばかりに腕のホールドをとかれ、サクラはすくっと立ち上がった。パジャマだから良かったモノのとモミジも、すくっと立ち上がり、瞬間見つめあった二人だが、モミジが、顔を反らしトイレへと階段を降りて行った。
017
その日、算数の先生は授業に来た。勇気を振り絞って来た事は誰の目にも明白だった。
だから、不良じみた男子達が苛め倒すのが、何時もより、エスカレートして居た。
どちらかと言うと、大人しく笑っていただけのサブリーダーが積極的に苛めに加担しているのを見て、サクラとモミジ以上に『なりり』が心を痛めて居た。知ってか知らないのか解らない態度で彼等は、苛めを止めないし、教師は、泣き出すことも無かった。
「五月蠅い。静かにして」と秀才ちゃんが『勉学の邪魔するな』と鋭く呟いた。
それで、サブリーダーは「『くっさ』の分際で、昨日職員室で女子と抱き合ってたんだぜ」と、怒りの源を暴露した。震える『なりり』に、気がついたサクラは、挙手して「苦しそうななりりさんを保健室に連れていきます」と言って二人で教室をたった。
『なりり』はサクラに任せ、モミジは苛めの饗宴が、勉強したい女子と教師を苛めたい不良じみた男子達で、拮抗を保った。それを破ったのは、サブリーダーが投げた、生卵だった。算数の先生は涙ぐみながら、授業をほったらかしにして、トイレに髪を洗いに行ってしまった。それで皆、静まった。一方『なりり』とサクラは教諭が居ない保健室のベットで恋ばなをして居た。「私の好きな先生って」「理科の先生なんだな」と、なりりは泣きながらサクラに言った。緊張しないですむ、友人の算数の先生に、とりついで貰おうとしつこくアピールしてたら、昨日、私の想いどおりに理科の先生が算数の自習の監督してくれたよね。だから、想うがままにしてくれたから嬉しくって、職員室でハグしちゃったんだ。と、泣いていた。『なりり』を背なかから、包む様にハグするサクラに、ぎょとしたなりりはサクラに体温を任せた。
なりりは理科の先生に不倫的な感性を持っていると暴露。
そして、苛めのサブリーダーにも、叶わない初恋を、癒すために、甘えて両想いの時もある脆弱な精神を、サクラに話した。
018
『なりり』がサクラだけに秘密を暴露して居た頃、算数の先生はトイレで念入りに髪を洗うと、友人の理科の先生に、手紙を書いて、帰宅してしまった。
それで、モミジは先生も居ない事だからと、保健室にやって来た。
「グル?」と私を騙したの?という『なりり』にモミジは「違うよ。サクラが心配なだけ」と、そつなく答えた。
保健室のベットに座っていた二人は別々の態度をとった。サクラはモミジも座ればと言わんばかりにニコニコしてるのだが、なりりは嫌そうな顔をしていた。保健室の窓を開けて「梅雨だから換気するね」とのモミジに、なりりは少しだけ、緩和した態度になった。涼しい風が入ってきて三人は深呼吸をする。なりりは「今日話した事は、まだ言わないで」と、サクラに釘を指した。「頑張ります。でも」もしもらしたらごめんなさいとサクラは言った。モミジは窓から外を眺めながら、「解った。無理に聞きださない」と、なりりに約束した。したら、なりりが「こっちに来なよ」と言ってサクラと座る位置を変えた。だから、なりり、サクラ、モミジの順でベットに座ることにした。
「算数の先生帰ったよ」サブリーダーに卵を投げつけられて。「泣いていたかもしれない」とモミジは現状を二人に伝えた。「やっぱり私が悪いんだ」と声のトーンを落とすなりりに「サブリーダーが悪いのに、なりりさんは悪くないと想うよ」と、何も知らないモミジは言った。そんな二人に挟まれながらサクラは、どーしよう?という顔をしていて、「あーもぅ」と降参した、なりりが「モミジ君にも話すね」と、ボソボソ言い出した。真ん中のサクラは気まずいまま、なりりが話した。「私、既婚者だけど、理科の先生が好きなの。だから友人の算数の先生に協力してもらって居るんだけど」「算数の先生は私が好きな訳じゃないし、朴念仁だから、安心してスキンシップをとる仲なの」 と。「ふうーん」と驚いた顔をしたモミジを見て「だけど、絶対に報われない恋だから苦しくって」浮気じゃないけど、サブリーダーにも良い顔して「甘えてたんだ」と、言った。「サブリーダーは相思相愛だと想ってるんだね」とモミジに「わからない。まだ理科の先生が本命とバレてない代わりに算数の先生が酷い目にあってるから、そうかもしれないし、遊びと想ってるかもしれない」となりりは言った。
019
なりりが紅いリップを付けてきた日があったけど、その前日、サブリーダーとなりりが少しだけ仲良くなったから、「本命視されてるのかな?」と、なりりは不安そうに言った。「なりりは前日にサブリーダーに何をしたの?」と、珍しくサクラが言ったから、「好きな先生に、報われないから、強く抱きしめて」と、言ったと。
それで、算数の先生に苛めが集中してるんだと、サクラとモミジは解った。「かもしれないだけど」と言うなりりに「紅いリップ似合ってたからな」とサクラが言った。覚えてたの?という顔をなりりはしたから、サクラは「綺麗ななりりさんにモミジがときめくと嫌だな」って想ってたから、とサクラは「ヤキモチやきました。ごめんなさい」となりりとモミジに謝った。
「わりぃ。覚えてない」と返したモミジに、なりりは「良いな。相思相愛のフィアンセか」と、羨ましがった。
ふふと笑うサクラと照れるモミジ。
「で、どうするの?」と照れ隠しをしながらモミジは、なりりに聴いた。したら、辛そうな顔をして「まだ解らない」と寂しそうな顔をした。報われない禁断の恋だけど、算数の先生に作ってもらったチャンスを利用してる時が、一番幸せだからと、なりりは伝えた。「でも、それじゃあ、算数の先生が可哀相だね」とのサクラに「でも、お礼にカッコよくシャツをインしないお洒落を教えてあげたから、女子からは好感度上がってるんじゃないかな?」とのなりりにサクラは「違います。クラスから苛めにあってて、心と身体の病気になって居ると想います。」とサクラは算数の先生が可哀相ですよと、なりりに告げた。「でも、私の報われない恋に比べたら、」と言いかけて黙ったなりりにモミジが「なりりには悪いけどサクラがサブリーダーと濃厚なハグして、翌日、紅いリップを付けてきたら」自分はおかしくなると。責められてると、なりりは「だって、完全に片想いだもん。私だって、好意的な男子からドキドキをあじわいたいよ」と、なりりは呟いた。
それに「なりりの恋しい理科の先生に被害が及んでないけど、なりりが甘えてる算数の先生は苛められて可哀相だ」とモミジは真剣な顔して、吐いた。その気にされてるサブリーダーも可哀相だと。
「もういい」相思相愛のフィアンセ達には私の苦しみが解らないんだ、と呟いて、3人で座っていたベットから立ち上がった。何か言おうとしたサクラは結局何も言えなかった。「忘れて」私の事だからと、なりりは保健室のドアをスライドして出ていった。
020
しんどい『なりり』が保健室から出ていったので、居座る理由もない事から、二人は教室に戻る事にした。『なりり』を追っかけて、一人にしないよりも、ソッと一人にさせてあげる方が良いと二人は判断した。廊下を歩いて居る二人は「苛めより禁断の恋をとるなりりさんだから本当に大丈夫かしら?」とサクラの呟きに「自分は算数の先生に同情する」とモミジは答えた。モミジには『なりり』は自己チューに写るのかもしれない。でも、サクラはそれでも揺るがない恋をしてる、なりりを責めて良いのか?解らなくなった。
多分、本当の恋なのだろう?モミジは『人命救助』の真面目君だから、そういう事を理解出来ないのかもしれない。でも、サクラは、なりりと一緒に、給食を食べながら恋ばなをしたから、なりりの甘えに『否』と突きつけられなかった。
『自由にヒトに恋する事も出来ないなりり』をサクラは 、可哀相に想った。モミジは『妄執』の事を心配して居たのだが。
とり憑くとしたら、誰に『妄執』はとり憑くだろう?
半人前のドライヤーガン戦士の補佐は闘いが近いかもしれないと、桜の時期には遅く、椛の時期には早すぎる、梅雨時の今を呪った。このままじゃあ『算数の先生』か『サブリーダー』にとり憑く可能性が高いと、分析したからだ。
「確か『妄執』のとり憑く条件は『怒り狂う』事で、証しは『白眼になる』事だったよね?」とモミジはサクラに、話しかけた。サクラは不条理な四角関係?にゴールを見いだす事が出来なかった。
だから上の空で廊下を歩いて居た。はぁっとタメ息を吐くと、モミジはサクラの手を、握って教室に向かった。
サクラが遠くに行った様な、気がして怖くて嫌な気持ちになったからだ。
021
教室に二人で戻ると、意外な事に、なりりは教卓の前の自分の席に座っていた。全てを拒絶した様な顔をして眠る様に座っていた。だから二人はソッとする事にした。
別々の席につくと、代わりに不良じみた男子達が話してる事に耳をすますと、算数の先生に次は『どんな苛め』をしようか?と大声で、愉しげに笑っていた。
『苛めなんかヤメロよ・てよ』と言えないモミジとサクラはお互いの自己保身をして居た。
モミジもサクラもどちらも、苛めに合わせたくなかったからだ。『卑怯な正義の味方』だと、しょんぼり落ち込み、悲しくなる二人だった。
ドライヤーガン戦士の訓練を沢山、頑張ろうと想うサクラだった。
誰が『妄執』に憑かれるか?見極めてやろうと想うモミジだった。
小学生の二人は無力な自分達に、落ち込むだけの非生産的な思考になるまいと、現実に抗った。『苛めはしてる子も、知らんぷりしてる子も、苛めをしている』って事を胸に刻み、何とかしなくてはと、焦りもしたのだ。
サクラもモミジも『苛め』をしたくなかったから。
何人かの女子からは、算数の先生、またアンタ達野蛮人から、逃げたじゃない、帰ったじゃない「自習の邪魔をしないで」と不良じみた男子達は冷ややかに告げられたのだが。
その子達は偉いな、凄いなと、想いながらも、二人はお互いの自己保身を止めなかった。
『なりりもそうなのかな?』と、自業自得だけどとサクラは悲しく想った。
理科の先生が苛めにあっても、嬉しい事じゃないですとサクラは少しだけなりりに、同情した。
何も知らない理科の先生が、算数の先生に相談される事は無いのだろうか?と再び同じ考えが巡る。先生達の学校の周知の事実になれば、この苛めは終わるのかもしれないとか。
今回の方が緊張感があるのだが。
022
帰宅する前にモミジとサクラの二人は職員室に行った。
算数の先生の家に、みんなには内緒で、お見舞いに行きたかったからだ。
ドライヤーガン戦士の訓練もある二人は友人の理科の先生にも相談出来ない、孤独な『算数の先生』が『妄執』に憑かれない様にしなくては、見殺したら絶対にダメで後悔したくなかったからだ。
職員室で、先生の住所は個人機密だから教えられないとあしらわれるのだが。
どうすれば良いと二人は頭を抱えた。自分達の気分転換の為に、帰宅途上にあるハーブティーの活かした喫茶店のガラスを覗きこんでいたら、算数の先生が虚ろな顔で冷めただろうハーブティーをじっと持っていた。二人は喫茶店に入る事にした。
「「先生」」と二人は声をかけた。沈黙する微動だにしない算数の先生にモミジは両肩をゆすってみた。先生は気がついた。「どうして此処に?」と先生は不良じみた男子達の使いかもしれないが、自分の生徒だからと、意識を暗転しない努力をしていた。
「「ごめんなさい。苛めを止めさせられなくって」」と、二人は頭を深々とさげた。
先生は「静かに、落ち着いて。ボクのはただの過労っていう事にしてるから、蒸し返さないでくれるかな」と、二人をつっぱねた。 入学したての頃は、あんな素敵な大人になりたいやと言って居た何人かの先生の一人なのに。
今はその影すらなかった。
「自分達は大好きだから、お互いを苛めの的に出来ないから、教室では声をかけられないから、先生がどれだけ苦しんでいるか?この場で教えてください」モミジが言ってサクラも頷いた。「どうして友人の理科の先生にすら内緒にするんですか?」助けてと、同僚や友人にくらい、悲鳴をあげてください。自分達には子供すぎて、どうしたら良いかわかりません。と、潤んだ目で算数の先生の両肩を、ゆさぶるモミジとコクコク頷くサクラだった。はぁーっと息を吐きながら、算数の先生は冷めたハーブティーを一気に飲み干してぼんやりして居た。「「先生?」」と二人で静かに声をかけると、今度はしっかりと返事をくれた。「理科の先生にはボクの初恋の相手と結婚されてるから」弱気な態度を見せたくないと言った。「でもこのままじゃ先生がエスカレートした不良じみた男子達に殺されてしまうかもしれないのですよ」とサクラが吐いた。
それでも先生は「じゃあ、君達が、今ボクの心配をしてくれてる様に、此処で今の様な声をかけて」と小さく笑うだけだった。何を言ったら良いかわからない二人はこの店の常連らしい先生をこの店で、励ます約束をするに止めた。何も出来ないより、まだマシだと、二人は早期解決を諦め先生の我を守りながら、見守っていく事を約束した。
023
此処はドライヤーガン戦士の訓練場。居るのはドライヤーガン戦士のサクラと、補佐のモミジとターゲットのマネキンを操る匕背の色男達。
珍しくサクラがドライヤーガン戦士の訓練に連日通いだした。今日はモミジも藍色のジャージを着てる。
昨日、サクラが一人で行った訓練のレベルが高い事を知って「ここまでとはな」と呟くモミジだった。
モミジはドライヤーガン戦士の補佐なので、サクラが充電のキレたドライヤーガンを渡すと精神的エネルギーも込めて、必死で充電器で充電するのだが、サクラに何度も何度も遅いと怒られた。
自分のレベルを早急に上げなくては焦るモミジ。『訓練は毎日こよう』と想うモミジにサクラが「毎日特訓ですからね」と、同じ想いを分かち合った。此れにバトルコスチュームの空気抵抗がとかブツブツ言い出したモミジに安堵してサクラはドライヤーガンバトルの練習に集中した。
次々と倒されて行く匕背達の操るマネキン達。それでも、サクラは満足しない。
「明日は何分戦闘時間を縮めれるか?考えていきますから」と覚悟してくださいねとサクラは匕背の色男達とモミジに宣言した。「頼もしい」「ビューティフル」と匕背の色男達から、ひゅーひゅーと口笛がとぶ。モミジも「望むところだ」と、意欲を見せてサクラを安心させた。
そして小学生の二人は帰宅の途につき、サクラ、モミジの順番でシャワーを浴びた。
疲れた二人は、宿題を一緒にさっさと片付け沢山、質の良い睡眠を確保して、体力回復を努めた。
翌朝、体力の維持を含めて二人は徒歩通学と教室の清掃というルーティーンをこなした。
だから休み時間は質の良い睡眠を満喫する二人だった。
仲睦まじい二人を、邪魔するヒトは誰も居なかった。
024
今日の算数の先生は、少しだけ良い顔をして居た。学校に圧力をかけれる匕背のモミジと紀眞のサクラの『味方だから』というアプローチがあったからかもしれないが。
二人が学校に圧力をかけれなくても、あのアプローチは効いたのだと、そう想いたい。
元々算数の先生はイケメンだから、その少しの自信のだけで、魅力的な表情を顔に描いていた。不良じみた男子達が苛めを開始する前に女子達から黄色い歓声があがって居た。
おののく不良じみた男子達。
その黄色い歓声をあげてない女子は、サクラとなりりだけだった。
意表を突かれた不良じみた男子達だったが、驚いた為であるが、今日のところは見逃され、明日以降、その苛めは更にエスカレートする雰囲気を醸し出して居た。それにサクラを信じる事が出来なくなった『なりり』は、算数の先生の立場を考えない事を考えて居た。元から、ルックスで好悪を判断しない『なりり』は今日の女子達の態度にヘドを吐いて居たから。胸ポケットに忍ばされたのは、紅いリップクリームだった。
それは、算数の先生にとって、嫌な予感がした。算数の授業を、久しぶりに、無事に終えられた算数の先生は、不良じみた男子達が悔しがるくらい爽やかな笑顔で職員室に戻ると、理科の先生に久しぶりの笑顔を見せて居た。昼休みに『ダイエット』と言って給食をクラス一の食いしん坊にあげて、なりりはトイレの鏡を見ていた。「可愛いなりりはもっと綺麗になあれ」と声に出して、念じながら紅いリップクリームを唇に塗っていた。鏡にあらわれたのは、最高の美少女だった。
なりりはサブリーダーが、なりりを追っかけてるのを確認して、職員室に向かった。イキッタ今日の算数の先生に一泡ふかす為に。
失礼します、と声をかけて、なりりは意中の理科の先生が居るにも関わらず、算数の先生の机の前に来た。
サブリーダーの視線を確と意識して口を開いた。「先生、少し耳を貸してください」他の誰にも聴こえない様に小さく呟いた。嫌な予感にかられた算数の先生は、なりりがしつこいので嫌々耳を傾けると『いい気になるなよ。モテ男』と甘く囁いた。なりりは紅いリップをして居たので、算数の先生は少しだけどきりとした。ただ、サブリーダーの居る角度的に、なりりが算数の先生とキスをしているアングルに見えなくもなかった。満たされない恋ごころを、算数の先生で代用するなりり。理科室に行った理科の先生には「仲の良い先生と生徒の二人」との、なりりの策略どおりの印象を与えただけ、だったのだが、算数の先生は不覚にも少しだけ顔を赤くしてしまった。
それを見て、なりりは算数の先生の胸に身体をうずめる。先生の心音が速くなるのを確認して、なりりは、紅いリップを算数の先生のYシャツにくちづけこぼした。
それをサブリーダーが見ていた。
025
ミッションを終えたなりりは、トイレで、算数の先生のYシャツに、くちづけた為に、歪んだ紅いリップを、水で落としたが、今日は苛々して居た為に印象が暗くなる目つきをして居たので、新たに塗り直した。
不良じみた男子達のサブリーダーの事を意識して。
チャイムと共にあらわれた、なりりは美しかった。クラスのみんなが、息を呑む。『妄執』退治の訓練で、疲れて眠ってるモミジとサクラ以外のみんなは『なりりの好きなヒトは算数の先生で間違いない』と確信した。みんなの『なりり』を褒め称える視線に、女子達から、算数の先生に黄色い歓声があがって居て、苛々して居たなりりの気持ちが少し和らいだ。『算数の先生は、私なりりの理科の先生を想う気持ちを手伝う私だけの道具』とヤキモチ妬いている心を封印して『やっぱ、理科の先生が好き』と想うなりりとも知らずに「なりりみたいな美少女が相手じゃ、叶いっこないね」と大人しい女子達が、ざわざわと、意見を交換して居た。
活発な女子達は「不良じみた男子達に苛められない様にするんだよ」と、なりりに耳打ちした。
「大丈夫。大丈夫。」と、爽やかに笑っていたなりりはサブリーダーの事を意識して「私、アノ先生が好きなんだ」と、恋ばなに聴こえなくもない発言をして居た。
「なんかあったら泣きついておいで」と耳打ちされたなりりは『悪い笑顔を』一瞬で顔の奥にしまった。
そんな事があったのだが、勿論、眠っている、サクラやモミジの知るよしも無い、算数の先生の苛めの新たな展開だった。
だから、ハーブティーの美味しい喫茶店で、算数の先生にあった二人は「先生、今日はカッコ良かったよ」と褒め称えるのに、算数の先生は、「ありがとう」と、照れ笑いをして居た。安心したサクラとモミジは、早々に帰宅した。そして、ドライヤーガン戦士の特訓に戻った。
026
ジャージを着たモミジとサクラの、二人は、訓練を一刻も早く行いたがって居たが、今日は『情報の教育』の日だった。ドライヤーガン戦士の敵『妄執』とは何か?どんな歴史が有るのかを学ぶ日だった。匕背の好々爺が次の様な話をした。
『そらうみ』『もっともすみ』は、学校の歴史で学んだかい。「いいえ」というサクラに「『世界遺産』にも認定されてる生き延びる事だけ考えたら優秀な仏教の開祖だ」と、話始めた。「何故、開祖が『妄執』に関係あるのですか?」とモミジ。
匕背の好々爺は次の様に語った。
「『妄執』はヒトが怒り狂う瞬間に取り付き、鬼の様な化けものみたいな力をふるいヒトを破壊して行く」「中には殺したヒトを喰らう『妄執』も居る」「その仕組みを作ったのが、極悪な開祖達で開いた『恐怖宗教』な訳だ」と、一気にまくしたてた。「『そらうみ』は『とても好感な人物一人だけ』を長い寿命を終えるまで、殴り痛めつける事が出来る独鈷杵という武器を使って、残虐で陰惨な方法で、懲らしめ続けて、人々に「悪者はこの様な酷すぎる目にあわす」という残虐で陰惨な方法で、楽して簡単に人々を導いたんだ」とひと息つく。「どうして悪いヒトが見せしめにあわず、良いヒトが見せしめにあうんですか?」とモミジが聴くと、匕背の好々爺は、次の様に語った。「『とても好感な人物』は『自分が受けた苦しみは絶対にヒトには与えてはいけない』という博愛の精神を幼い頃から狙われて『そらうみ』の宗教で習った、愛する母や父に躾られているから、何もかも耐えてしまうからなんだ」じゃあ「「悪者より開祖を悪く言ったり、泣き言を何一つ言わないから、人びとは開祖が苛めている無抵抗の方が酷すぎる悪者だと、自分はああはならないと反面教師にしてるのですか?」」と二人が震えながら聴いた。「そのとおりだよ」と好々爺は言った。じゃあ『妄執』って何?と聴くと「開祖が『とても好感な人物』を破壊する時に、ヒトである事を忘れ非情になって、破壊する姿が宗教として広まり、その魂が無知なヒトにとり憑く状態なんだ」と好々爺は答えた。
「またもう片方の開祖『もっともすみ』は『自分を追い詰め極限の状態をなん十倍にもふくらませて『鬼としてえらばれた生贄』にも『私が出来たからヲマエもやれ』と強要』するんだ。それを、見せしめにして、恐怖宗教を確立するなんて酷いだろう。」
だから「我々は『妄執』を殲滅しなくてはいけないんだよ」と続けた。
027
『妄執』の授業を終えたサクラとモミジの二人は『信じられない』『凄くヒトでなしすぎます』と恐怖して居た。帰宅する時間もオーバーするくらい、気持ちが悪い二人だった。なんて破壊力の強い宗教なんだと。食べたくない気持ちを、必死で殺して、かあさまの用意した夕飯を食べようとする。でも箸をとったり、置いたりの繰り返しで二人は、夕飯を食べれずに居た。「どうしたの?食べないの?」と聞くかあさまに「頑張って食べるから、待って」とモミジが二人の気持ちを語る。
かあさまは「具合が悪い時は無理しなくて良いのよ」と寂しげに笑い、「もう寝る?」と聞いてきた。
「「お腹すいてるので食べます」」と、サクラとモミジの二人に、「わかったわ」と、言ってキッチンから出ていってしまった。「ごめんなさい」とサクラが涙ぐむも「自分も、そうだから」一人ぼっちみたいな顔するなと励ますモミジ。
『そらうみ』と『もっともすみ』の最低さに、ヘドが出る二人だった。
それでも
ドライヤーガン戦士は平和を守らなくてはいけない。だから、モミジは無理して、おかずをほおばった。
心に傷があるから、本来の美味しさが伝わらず不味くても、栄養を補給しなくてはとモミジは咀嚼する。
サクラはミント水を飲もうと二人分よそう。「ありがとう」と苦し気な顔をしながら、モミジは口の中で咀嚼したモノを無理矢理飲み込んだ。
「おぇ」と吐きそうなモミジに、「『妄執』の中には殺したヒトを食べる輩も居るって言ってましたよね?」と寂しく笑うサクラ。
ミント水をごくりと飲むと、こう続けた。「お腹が空いたから食べる食事と違って、肉体関係のプレイの種類の一つみたいで」気持ち悪くなりました。と、サクラも苦し気に言葉を吐いた。『食人フェチ』と考えてモミジは咀嚼したモノを一気に飲み込んでしまい、咳き込む。「ごめんなさい」と泣き出しそうなサクラにモミジは「二人の中で内緒事は無しだから、気にするな」と何度も咳き込みながらサクラに言った。
028
結局、美味しい、かあさまお手製の夕飯が食べられなかった二人は、フラフラしながら階段を昇って、それぞれの部屋にインした。えづきそうなモミジと、泣き出したサクラは『妄執』の殲滅を心の底から願った。二人ともベットに潜り込む。
モミジは天井の幾何学模様を、目で何度もなぞり、サクラは泣きながら上布団の中に胎児の様に丸まった。
二人は同じ夢を見た。
『妄執』に、とり憑かれたサクラの両目が匕背の好々爺の言うとおり、白く輝きモミジを喰わんばかりにヨダレを垂らして居るという夢。モミジ『喰い殺される』サクラ『喰い殺してしまう』と二人は戦慄した。だけど、サクラはドライヤーガンを、自分の心臓に当てて、自害するという悲しいだけの夢。
モミジが悲鳴をあげるのは、腕の中に抱きしめたのサクラが、死に霧と消え失われたからで。
自分の身に起こる不幸に、ゼイゼイハアハアいう乱れた呼吸の恐怖したサクラと、あとは微動だにせず涙を流す男泣きが止まないモミジだった。
二人は誓う。
『妄執』は何があっても殲滅させ様と。 もちろん、二人とも、この時は、算数の先生やなりりやサブリーダーの事は失念していたのだが。
そうでないと、かあさまやとうさまの様な幸せに溢れた家庭なんか築けない。サクラがモミジを、モミジがサクラを、お互いがお互いを想い、悪夢の夜は朝日の中に消えてった。
一睡も出来なかったモミジとサクラの二人は、昨夜の夕飯を味あわずに頬張り、栄養と免疫力をつけるべく努力して完食した。
そして、昨夜の悪夢の話をどちらとも知れず話して居た。モミジとサクラの二人は、同じ夢を共有した事で、『只の夢で無い可能性』に至り、一時間かける通学を、しっかり両手を握りあい、常にお互いの命を確認しながら、熱い熱のやりとりをして、学校にたどり着いた。
029
モミジとサクラは誰も居ない教室で、いつものルーティーン(黒板と床の拭き掃除)をこなして、終えてサクラの机に集まった。「「眠たい(です)」」悪夢にうなされ、質の悪い睡眠しかとれなかった疲れた二人はサクラの机の上に頭を乗せ「ずーずー」と眠りだした。浅い睡眠しかとれなくても疲れたので、良いねと想ったからだ。
そして教室に生徒が集まり出す。
意味もなく聞こえてくるソレらに、不穏な情報が混じっていて、モミジは眠れず、眠ったフリをして居た。
ソレらを整理すると、『なりりが紅いリップを塗り「算数の先生が好き」とクラス全員に偽証した』との情報にまとまった。「くそっ」と想ったモミジはわざとらしく起きたフリをして会話をして居るクラスメートに質問した。「『なりり』がどうかしたの?」と聴いてみた。
何人かの子の話をまとめると、やはり『なりりが紅いリップを塗り「理科の先生ではなく、算数の先生が好き」とクラスで偽証をした。だからサブリーダーを中心として、不良じみた男子達が、算数の先生に報復する話をしていた』で、あって居た。自分の片想いが禁断で進展しないからって、不良じみた男子達の、算数の先生の苛めを加速させる気か?『なりり』の我が儘に、苛々してモミジは『なりり』を問いつめ様とした。クラスで、みんなの前で晒し者にしてやれば良かったのだが、紳士なモミジには、そんな暴挙にたどりつく筈もなく、その時、サクラはまだ眠っていたから。そんな話は知らないで居た。
それが、あんな嫌な事につながるとは、考えもしないモミジだった。『なりり』は何時も通りに一人で登校した。今日の『なりり』の唇はまだ紅くは無かった。
モミジはサクラを起こさない様に立ちあがり、『なりり』の席の前で仁王立ちした。「ちょっと話があるんだけど」冷やかな声でモミジは『なりり』を屋上に誘った。
030
肝のすわった『なりり』は「何?」と明るく答えた。「此処じゃ不味いから、ちょっと来い」と寝不足で苛々するモミジが『なりり』を誘う。その姿に『フィアンセのサクラちゃんが居るモミジ君まで『なりり』に片想いで、算数の先生に焼きもち?』とおかしな噂が流れるのを知らないモミジだった。
クラスの中が黄色い声でうるさくなり、目覚めたサクラは一人ぼっちにされて居た。
「誰か、モミジの居場所知りませんか?」
焦るサクラに親切そうな子が「『なりり』つれて、どっかに行ったよ」と教えてくれた。
何処に行ったんですか?モミジは、と想うサクラは 、とりあえず屋上に行ってみた。すると、旧校舎の屋上にモミジと『なりり』が居た。大声をあげて呼ぼうとしたサクラを、モミジの動きが止めた。モミジが壊れものでも扱うかの様に慎重に『なりり』の頬を触ったからだ。それは新校舎の屋上に居るサクラには、見てはいけないモノを見てしまった、そんな光景と見えてしまった。モミジと想うサクラにはモミジが『なりり』に土下座してる姿も見えてしまった。それ以上、見ていられなくなったサクラは屋上から、階段をひたすら降り、校舎から出ていってしまった。
体育館の裏にある、見事な枝垂れ葉桜に手を当てて、何かの間違いであります様にと願うサクラ。その想いが力となって枝垂れ桜の幹から枝葉に注がれる。サクラは、狂い咲きした枝垂れ桜の下で、意識を無くし座り込んで居た。一方、モミジは『なりり』がトイレで何かして居るのを待ちながら、チャイムが鳴るなと、悲しげに想った。『なりり』は顔をよく冷やした後、ファンデーションを厚めに塗りたくって居た。「お待たせ」化粧の濃いなりりとモミジは一緒に教室に戻った。
そこでクラスの黄色い声の中にサクラが居ない事を知ったモミジは、「サクラは?」「サクラは何処行った?」と形相で聴くから、「モミジと『なりり』を探しに行ったよ」と親切そうな子が答えた。
「見られちゃったんじゃなぁい?」
『なりり』がモミジに「暴力男子」と囁いた。その姿に黄色い声は比例する。険しい顔のモミジが「黙れ」と一喝した。
クラスは沈黙に満たされた。『なりり』だけは「ばっかじゃないの?」と、ひとりごちた。それを不良じみた男子達が見ていた。
その中にサブリーダーの姿は無かったのだが。
その事に焦るモミジは『算数の先生を後回しに、サクラを探しに』教室を飛び出して行った。
031
モミジは空き教室を片っ端から探して行った。でもサクラは居ない。モミジは旧校舎も運動場もあちこち探してみた。でもサクラは居ない。
体育館に入って染み込まれた汗の臭いを嗅いでいたら、異臭が漂ってきた。
華の香りと汗が混じったかの様だ。
「華?」と夏至を過ぎたばかりの夏めいた梅雨空に、そぐわないあの香りをモミジは受け止めた。そんな馬鹿な?と想うモミジは、それでも、可能性にかけてみた。すると、体育館の裏の枝垂れ桜が狂い咲きをしていた。驚いてマジマジ見ていたモミジは、その根元にサクラが倒れて居るのを見つける事が、出来た。だが、花からは敵意が感じられる。「サクラは渡さない、サクラを返してもらう」宣言したモミジは枝垂れ桜にずんずんと近づき、サクラの元にやって来た。『その目が薄く白んで居る』それを見てモミジはサクラをあつく抱きしめた。すると、反発するかの様に、枝垂れ桜の枝や根がモミジの身体をめった打ちにする。驚く暇もなく、モミジはサクラの覚醒を促した。モミジは「『なりり』とは疚しい事は何一つ無い」「ふざけた性根に怒りが押さえられなかったから」旧校舎の屋上で「彼女をひっぱたいた」とモミジは反省しながら答えた。「ウソ?」サクラの思念が枝垂れ桜の枝や根でモミジを叩き続ける。「本当だ、なんなら『なりり』の顔を良く見てほしい」とモミジは言った。「なりりの腫れた顔はファンデーションで厚塗りさせたから」とモミジが言うので、枝垂れ桜はモミジを攻撃するのを止めた。目覚めたサクラは痛々しいモミジの背中を見て「ごめんなさい私」「本当にごめんなさい」「ごめんなさい。どーしよう」とパニクっていた。
「勝手に『なりり』を怒らなきゃって想ったのは自分だから」サクラは悪くない。一人で突っ走って、ごめんとモミジはサクラに謝ると膝をついて意識を失った。
032
保健医から病院に救急車を呼んでもらおうと、サクラはモミジを枝垂れ桜の根元に置こうとしたのだが、気をうしなったモミジはサクラを離そうとはしない。仕方なくサクラはモミジをひぎずりながら、保健室へと向かった。そうしてお昼休みが過ぎる頃、漸くモミジは病院、サクラは保健室で眠る事になったのだが、倒れた二人は知るよしもなかった。『算数の先生にくだされた、陰湿な苛め』によって、算数の先生がある手紙を書いているのを。 ファンデーションを厚めに塗りたくった『なりり』はバランスが悪いと、紅いリップを塗っていたから。特にサブリーダーを泣き顔で見つめて居たから、不良じみた男子達は算数の先生に報復をした。昨日は自信を得た算数の先生に、それは酷く残酷な仕打ちだったから、算数の先生は『お別れ』の手紙を傷だらけの右手で、傷だらけの頭で、ゆっくりゆっくり書いていた。 『遺書』に見えた。友人の理科の先生が怒鳴りながらも、その無惨な姿に説明を求めたのだが、算数の先生は頑として、話そうとしなかった。腑抜けになった算数の先生を『病院に入れなくては』と想った理科の先生は職員室から救急車を呼んだ。書きかけの手紙をぎゅっと握りしめ算数の先生は救急車に乗せられた。病院へと発進する救急車。それを見て保健医が「今日は何て日だ」と喚くから、理科の先生は保健医と話し、モミジが救急搬送された事と、サクラが保健室で眠っている事を話した。
理科の先生は何か関係が有るかもしれないと、サクラが目覚めるのを待った。
放課後に目覚めたサクラに理科の先生は質問したが「モミジの容態を、安否を確認させてください」と泣き出し、理科の先生はサクラをモミジと算数の先生が運ばれた病院に車で連れて行った。
033
泣きじゃくるサクラにハンドタオルを渡し、理科の先生はサクラを連れてモミジの病室に連れて行った。モミジは痛ましい傷を背中に沢山つけていた。だから包帯でぐるぐるまきにされて居た。意識はあるのだが、鎮痛剤で傷口が治るまで、痛みを麻痺させて居るので、ぼんやりとして居た。サクラは首に両手を回して顔を近づけた。サクラは涙を沢山流しながら「ごめんなさい。ごめんなさい」と泣きじゃくって居た。「大丈夫だ。大丈夫だから。心配かけてごめんな」と伝え伝わると薬の効能で眠り込んでしまった。
サクラは安心すると理科の先生にハンドタオルを返して、今度は理科の先生と一緒に算数の先生の病室に行った。
此方は病人が目覚めては居たのだが、放心して居た。「一体何があったんだ?なんでもいいから兎に角話をしろ」と、少し怒りながらハキハキと言った。サクラが「先生」と言って理科の先生の算数の先生の体に触れようとした手を握りしめてしまう。それに、「何か知って居るのだったら教えて欲しい」との言に「算数の先生の心が壊れるから、算数の先生の許可無しには話せません」と、頑として意志をねじ曲げなかった。
「困ったな」俺はどうすれば良い?と尋ねる理科の先生に「待ってあげてください。算数の先生の心の傷が癒えるまで」と、サクラは頑張った。「命に関わる重大な事でも?」と蚊帳の外に追い出されたから、悔しげに呻く理科の先生に「算数の先生のプライドを壊さないであげてください。どうかお願いします」とサクラは懇願した。「算数の先生が許可したら、何でも俺に言うんだぞ」と、理科の先生は悲しそうな顔をして、算数の先生の放心した姿を大切そうに見やると、サクラを車で送って学校に戻った。
034
モミジと一緒じゃないサクラは、とうさまとかあさまに、モミジの事を話した。
「今からは見舞いに行けないんだな?」と、とうさま。「大丈夫なの?何があったの?」と、かあさま。サクラは今、モミジは鎮痛剤で痛みを麻痺させて眠り込んでしまって居る事。今朝、拭き掃除を終えた学校の教室で居眠りをしてたら、モミジが居なかったので、探しまくっていたら、美少女『なりり』とモミジが二人だけで旧校舎の屋上に居た事。それを屋上から見ていた事。
モミジが大切そうに『なりり』の頬を触ろうとした事を見て『悲しくっておかしくなりそうで』でたらめに走った所に、枝垂れ桜があった事。そこで枝垂れ桜に癒しを求めたら、気を失ってしまった事。気がついたら、白いもやの中、探しに来たモミジが枝垂れ桜の枝や根に叩かれてる事。それがサクラの気持ちの代弁みたいに想えて、最初は『裏切ったのはモミジ』と、想って居たサクラが、やられ続けるモミジを見てる内に段々、モミジは裏切って居ないと信じる事が出来た事。そう想うと視界が薄もやからクリアになって枝垂れ桜が攻撃を止めた事。離してくれないモミジをひぎずりながら保健室に行った事。モミジを救急車に乗せて病院に送ってサクラは保健室で休んで居た事。そしたら『算数の先生が最高潮に苛めにあって』算数の先生も友人の理科の先生に、救急搬送された事。理科の先生がサクラとモミジの異変に気がつき、説明を求めながら、病院に連れて行ってくれた事。痛々しいモミジの無事を確認後、算数の先生にくだされて居た不良じみた男子達による苛めは算数の先生の許可無しに話せない事を了解してもらって、理科の先生に家まで送ってもらった事。を、サクラはとうさまとかあさまに話した。
035
とうさまが「今回の一連の救急搬送は『妄執』絡みなのか?」と聴く。サクラはとうさまとかあさまに、「私が『妄執』に囚われかけました」と視界がもやにかかっている時、おそらく白い目をして居たのでしょうとサクラは話した。
「サクラ、大丈夫?」と、かあさまが両目を間近で『黒い目』と、見た後にサクラの側により、サクラを抱きしめた。「大丈夫です。かあさま、心配かけました、とうさま」と呟くと涙をぽたぽたこぼした。「算数の先生に纏わる苛めに『妄執』が絡んでるかはわかりません」でも、『苛めの程度が酷すぎます』とサクラは両目をこするから充血しながら話した。両目を氷水で冷やしたタオルで癒す。
「ドライヤーガン戦士はつとまりそうかい?」と、とうさま。とうさまとかあさまにサクラは「モミジが入院中に事が起きたら、一人で決着をつけます」と健気な事を言った。「「わかった」」と二人は安心してくれた。
それで、サクラが夕食を食べずに、ベットにくるまると、かあさまと、とうさまが匕背のドライヤーガン戦士の闘いの訓練をしてくれて居る色男達に電話で連絡をいれた。
「匕背の家と紀眞の家の偉いさんに学校に圧力をかけてくれないか?」と頼んでくれた。
これで「算数の先生に纏わる苛めは露骨な苛めが出来なくなった」「『なりり』と不良じみた男子達が苛めの矛先を失って『妄執』にとり憑かれたら、サクラにドライヤーガン戦士として闘ってもらおう」と、とうさまとかあさまは話し合って安堵した。二人はサクラとモミジの強さを知って居るから、普通の親御が判断しない苦痛の道を選んでも『絶対に大丈夫』と、サクラとモミジを応援して居た。 そして、二人は明日、学校を休ませたサクラと一緒にモミジと算数の先生の見舞いに行こうと、仕事を休む計画をたてる、とうさまとサクラのお昼ご飯が居るわと、何を作ったらサクラが食べれるか?レシピ本をチェックするかあさまだった。
036
その晩、サクラは夢を見た。
体育館の裏の枝垂れ桜の根元で、サクラになつっこいヒトの子供の姿の枝垂れ桜の花の精霊が、サクラに聴いて居た。『アレハ、オマエノタイセツナ、モミジカ?』こくりと頷くサクラ。それを見て枝垂れ桜の花の精霊は『ワレハ、ワルイコトヲシタノカ?』「ごめんなさい。私がちゃんとモミジを信じて居たら、あんな怒り狂って『妄執』にとり憑かれた状態に成らなかったのに」と、サクラのかたを持ってくれた花の精霊に謝る。すると『ワルイコトヲシタ。スマナカッタ』と花の精霊が謝った。お詫びにモミジに会わせてやるという花の精霊が力を使って、病院のベットに眠っているモミジの映像をサクラの脳裏に与えた。
鎮痛剤で痛みを麻痺させて居るモミジは、すやすや眠り込んで居た。サクラは『裏切られたと誤解をして、こんな酷い目にあわせたのに』「私を離さないで抱きしめてくれて居た」と、ほっぺが赤くなるサクラだった。
『こんな力を使って、枝垂れ桜の花の精霊さんは疲れないのですか?』サクラは聴いた。
花の精霊は『オワビダカラキニシナクテヨイ。ソノカワリ、マイニチヲショモウスルナレバ、ミジカイジカンニナルガナ』と答えた。 「ありがとうございます。今日だけで良いから、もう少しモミジを見せてください」と頼むサクラ。『ワカッタ。スキナダケミルガヨイ』と花の精霊がふわりと浮かび上がり大きな枝に座って力を行使した。
サクラは悪いとも想わずに、算数の先生のお見舞いの事は、すっかり忘れて居た。
ただただモミジの回復を祈るサクラは代わりばえしないモミジのベットに横たわる姿を、一生懸命、見続けて居た。 鶏がなく頃、サクラは力尽きて眠り込んでしまった。それを大切そうに枝垂れ桜の花の精霊は見守って居た。
037
モミジの姿を脳裏に与えてもらったサクラが疲れて居眠りをしたので、枝垂れ桜の花の精霊は『にこり』と笑い居場所へと帰った。
サクラは幸せそうな寝息をたてて居た。
さっきまで、サクラに見られて居たモミジは時おり痛むのか?苦し気な吐息を漏らすものの、体の内部に達する傷は奇跡的に無く、外傷だけで、すみそうだった。しばらくすると、すやすやと眠り出す。そんな細やかな幸せで満たされて居る二人と違い、算数の先生は悲愴な顔をして居た。『絶対に誰にも取られない様に硬く握りしめ、開く事の無かった手紙』をじっと凝視する。熱い息づかいは、其処しか無かった。『なんで病院に居るのか?』『苛めは発覚したのか?』何もわからないまま、おののく様な悲鳴を、時おりあげながら、算数の先生は人間に恐怖した。
まだ、クラスメイトしか知らない、その『惨たらしい苛め』の事実を知られるのすら怯える、算数の先生だった。『なりり』や不良じみた男子達やモミジやサクラ以外の生徒達に、算数の先生は、心を閉ざしてしまった。特に暴力をふるったわけではない『なりり』の傍若無人の甘えに憤りすら感じたのだが、そこで手紙を持ってない方の握りしめた拳をベットに叩きつける。白一色の病室の中で、『なりり』の紅いリップと同じ色の体液がどくどくとこぼれて染みを作った。ベットシーツに紅い染みが、ぐんぐん広がった。
それは異様な光景だった。
眠れないのか?算数の先生は窓の外の星を見て居た。
どくどくとこぼれ落ちた血液が止まる頃、算数の先生は血にまみれた手のひらをシーツの汚れていない所で拭い、頑なに握りしめたもう片方の手のひらを開けるべく、一本一本指をこじ開けた。それには『皆さん、さようなら』から始まる文章が書きかかれて居た。
038
「「「「「きしょい」」」」」
算数の授業中にその音は色んな角度から聞こえた。算数の先生は声ではない吐息に誰か特定出来ないで、悲しそうな顔をして居たが。
「「「「「くっせぇ」」」」」
その音も色んな角度から聞こえた。
肉声ではないので、誰なのか?特定出来ずに算数の先生は、うすら寒い想いをしていた。前日の授業で、ハキハキと授業出来て、女子達の応援もあった事が嘘の様だ。女子達はみな一様に悲しげな顔をして、うつむいて居る。黒板に向き合うと、出されたシャツとズボンのお尻辺りに、臭い臭いがするびしょびしょにぬれたタオル地の様な物が投げられた。痛かったし、冷たかったし、汚いと算数の先生は思って「誰だ?こんな酷い事するヤツは」と、小さな悲鳴の様な声をふりしぼった。
臭くて冷たくて痛いから、お腹がぐるぐる鳴り出した。優等生の女子が「脱糞するんですか?」「止めておいた方が良いと思いますよ」と言った。すると「「「「「脱糞するんですか?」」」」」吐息が色んな角度から聞こえる。「「「「「止めておいた方が良いですよ」」」」」と、聞こえた瞬間、算数の先生は恐怖で、膝をカックンと座り込んでしまった。
算数の先生はお腹が痛かったし、ぬれて臭いのが嫌で、はぁと息をもらした。 そしたら、顔に卵が投げられた。今日は、ハンカチを変えるのを忘れて居たために、昨日のしわくちゃでバリバリのハンカチをポケットから取り出し、ごしごしと無意味に顔を吹いていたら、そのハンカチにも卵が投げられた。くすくす笑い声が聞こえた。『誰だ?』と思った算数の先生は予想しなかった声の主に戦慄した。『なりり』だった。
途端、殆どの生徒達が、はははははと笑っていた。悔しいが立てない算数の先生は座りながらドアまでずり行き、戸を開けて出る為に、一旦、腕で戸に支えながら立ち上がろうとした。その時、膝にびしょびしょで、臭いタオル地のモノを速い速度でなげつけられ、バランスがとれず、ひっくり返ってしまった。
そして、少しではあるが脱糞と失禁をしてしまった。
039
その後の地獄を忘れてしまうくらい恐怖して居た算数の先生は、今、病室で朝が永遠に来ない事を祈って居た。しらみだす空の色を悲しげに見ながら、生きているのが嫌になった算数の先生は、ぼんやりとではなく、クリアに自殺を考えて居た。
手に出来た傷痕をえぐろうと爪をたて、流血の量を増やした。
悲しかった。流血する。怖かった。流血する。怒りには届かなかった。流血する。眩暈がした算数の先生はベットに倒れこんでシーツを血塗れにした。
手紙は誰にも見つからない様に、屑入れに投げ入れられて居た。
モミジ同様に個室に入れられた算数の先生は人目が無いのをいい事に、『このまま死んでしまえ』と、我が身を呪った。学生が最初の授業を受ける頃の時間帯で、様子を見に来た看護婦に、その惨状を見られて、自殺は失敗して、算数の先生は大量の睡眠薬を打たれた後、四肢が拘束できる、トイレと監視カメラ付きの個室に移動され、止血をされた四肢は『2度と自殺が出来ない様に』拘束されてしまった。その場を誰にも見られたくない算数の先生は、特に理科の先生と化粧のケバい『なりり』を意識して居た。もう、モミジとサクラとのハーブの喫茶店での温かい交流なんか忘れ去ってしまって居た。2度と『目覚めなければ良い』と、悲鳴をあげるかの様に、意識を失った算数の先生だった。
その時、熟睡して居たモミジが目を覚ました。室内には微かに枝垂れ桜の花の香りがして居た。
モミジは痛む背中を、傷の具合を確かめ様として、走る痛みに耐えるのを止めてゆっくりベットの中に潜った。 その日は見舞いの為に、休みをとったサクラととうさまとかあさまのお見舞いがあるまで、傷の治り具合をモミジは、意識して居た。
ぼさっとしてる分には鎮痛剤が効いている。少し無理をすると痛み、動けなくなるくらいだ。と、モミジは思った。
040
サクラは昨夜、長い間モミジを枝垂れ桜の花の精霊に見せてもらって居たので、珍しく何時間も寝坊した。かあさまもとうさまも、ゆったりと朝食を楽しんで居るところに、着替えもしないまま、サクラは突入した。
「今日はモミジのところに会いに行って良いのですよね?」大きな声が出た。「俺も仕事を休んだから」「3人で一緒にお見舞いに行きましょう」と、とうさまとかあさま。
嬉しくなったサクラは、「はーい」と大きな声で返事した。
「きがえてきますね」と階段を楽しそうに上って行った。
サクラは部屋で何を来ていこう?と悩んで居たが、オーバーに言うと『介護』をするのだからと、動きやすい赤色のジャージにした。
階段を楽しそうに降りて、赤色のジャージを着たサクラは元気に朝御飯を食べだした。もう冷めているけど、バター焼きのトーストにハムエッグとアメリカンコーヒーだった。
味が美味しいので、冷めているけどサクラは朝食を楽しめた。
「何時くらいに病院に行く?」と、とうさまがかあさまに聞いたから「「なるべく早めに行きましょう」」と、2人は声を揃えた。
「モミジは果報者だな(笑)」と、とうさまが、インフルエンザにかかって入院した時は、こんなにあたたかくなかったぞと、言って拗ねるも、サクラはモミジの回復した姿を見る事しか考えて居なかった。
「「言うだけ無駄だね」」と、とうさまとかあさまが、呆れるくらい、サクラはモミジの痛みや傷が治って居る事をいつもより随分遅い朝食の席で祈った。サクラから微かに枝垂れ桜の花の香りがして、かあさまが「夕べ何かして居たの?」と聴くと「枝垂れ桜の花の精霊の夢を見ました」と、「モミジの姿をじっと見せてもらっていました」と、サクラは答えた。「流石、ドライヤーガン戦士だね」と、とうさまが嬉しそうに言うから、サクラも「はい」と元気に答えた。
041
サクラと、とうさまとかあさまが、モミジのお見舞いに病院へと車で向かった。かあさまのお手製のお弁当は、サクラも少し手伝って居る。
モミジも大好きなしそのお握りと半熟しらす入り卵焼きを作ったのだ。モミジがどんな顔して食べてくれるか、どきどきするサクラだった。おすそ分けに算数の先生にもお握りを作ってラップして居る。間の悪いことに全ての交差点で赤信号にあたるとうさまの不運がモミジの容態とリンクするとも知らず、サクラはうきうきしていた。かあさまも「赤信号ばっかしね。嫌になっちゃう」と、ぼやいて居たのだが、サクラは気づかなかった。
病室についた一行はモミジのベットの回りに群れた。
モミジは鎮痛剤が効いているのか、すぅすぅ寝息をたてていた。
『もう離れない』と言わんばかりのサクラはおいといて、とうさまとかあさまは、医師の説明を求めた。
程よく、見回りにきた医師に、モミジの具合を聴くとうさまとかあさま。サクラを心配させてはいけないと想った二人は病室の隅で、こそこそと話した。「モミジくんの背中は木で殴られまくったかの様に、傷ついており、鎮痛剤と化膿止めをうってます」「重態なのですか?」と、とうさま。「傷さえ良く完治すれば、問題は無いのですが、夏場の気候は天敵で、傷口から膿が出てくると思います」と医師。「どれぐらいで完治するのですか?」と、かあさまに「最短距離で1ヶ月はかかります」と医師。「「ありがとうございました」」と、とうさまとかあさまがお礼を言うと、医師はぺこりと頭を下げて、病室を出ていってしまった。サクラがモミジをあつい眼差しで見つめながら「速くても1ヶ月ですか?」とサクラに「なんだ聞こえて居たのか?」と、とうさまが優しく微笑んだ 。かあさまは予想外に重態だったので、少し涙して居た。
042
お昼になった。お腹がすいた3人はまだ目覚めないモミジの側で、モミジが目覚めるのを今か今かと待ちながら、お弁当を食べる事にした。
かあさまは冷房が効いてるだろうと水筒に温かいお味噌汁を持ってきて居た。お重に入れたおかずやお握りを3人にわけて、サクラと、とうさまとかあさまは『いただきます』をした。モシャモシャ食べる3人。
朝食の時とは違い重態のモミジを起こさない様に、静かにゆっくりと食べた。サクラはモミジの分をラップで包み、備えつけの冷蔵庫に入れた。温かいお味噌汁が身にしみますとサクラが堪能して居たら、モミジが「ううん」と言いながら目を覚ました。両の瞼をゆっくりと開いた。お弁当を食べて居た3人は気がつかず、モシャモシャ食べて居た。「良い臭いだ」とモミジの声が聞こえた。サクラは「モミジ」と言って食べるのを中断した。鎮痛剤が効いているから痛そうでないモミジは、お弁当を食べたそうな顔をして居た。サクラは冷蔵庫に入れたおかずやらを会話室の電子レンジに温めに行った。ちんと気味の良い音が聞こえると手で温かさをはかり、OKだったので、それらをこぼさない様にモミジの病室に運んだ。 ぼんやりしたモミジはとうさまとかあさまと話して居た。『何で木で叩かれたのか?』とか『傷はどんな具合だ?』とかだった。サクラはモミジが「サクラが『妄執』に囚われかけたから、仲良しになった枝垂れ桜が、攻撃を止めるまで打たれ続けて居た」というサクラの報告と同じ事を言ってるのを聴いて、恥ずかしくて、こそばくって、もじもじしてしまった。『なりり』が酷いから、思わず平手打ちにしたところより後の様をサクラに見られて誤解されたんだと、モミジは笑った。
043
『傷の具合』は背中だけだから見えなくて、わからないと話すモミジにサクラは「お弁当です」と、チンしたおかずやお握りを備えつけのテーブルに、渡した。「ありがとう」嬉しいなと喜ぶモミジに、かあさまは「サクラが作ったのはお握りと卵焼きよ」と、笑って言った。
「へぇ、じゃあ卵焼きから」と箸を持とうとしたが、背中が痛いのだろう、モミジは箸を持とうと何度も何度も努力して居た。見るに耐えかねて、サクラが自分の箸でモミジの卵焼きを摘まむと『あーん』と言わんばかりにモミジの口許に卵焼きを持っていった。『あーん』とモミジはそれを受けとり口に含む。モシャモシャしてから「美味しいよ」と、モミジは満面の笑みを浮かべた。
「はい」とかしこまるサクラに『次をくれ』とモミジは言わんばかりの顔をして居た。
サクラの『あーん』モミジの『あーん』が続いてモミジは卵焼きをぺろりとたいらげた。両人、嬉しそうにお弁当を堪能した。お弁当を食べ終わった、とうさまとかあさまは会話室の自動販売機で、コーヒーが飲みたいからと、二人で会話室に向かった。モミジの病室には、サクラとの二人だけになる。サクラはモミジが卵焼きだけで『満腹』そうにしてるのを確かめると、他のおかずやお握りを冷蔵庫に入れた。急いでお弁当を食べ終えたサクラはモミジが眠ってしまったのに気がついた。病室は冷房が効いてるから良いモノの、サクラはモミジの化膿するかもしれない背中の傷痕を心配した。包帯でぐるぐるになってるモミジの背中は膿でまみれたり、汗だくになって、汗もが出来るかもしれないと、容態の無事を祈った。もしかしたら初めての『妄執』退治は一人っきりでおこなわなくてはならないかもしれない。でも、今のサクラは、それで良いと想って居た。モミジの眠り顔が幸せそうな顔をして居るので、サクラは算数の先生にお握りのおすそ分けに行こうと静かに席をたった。