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アリス学園は大騒ぎ?!

プレゼント

作者: 水崎雪奈

「んー。あれ、もう朝?」

「おはよ、朱梨」


 そう言って起きるのは、宮原(みやはら)朱梨(あかり)。んで、挨拶をしたのは私。佐藤(さとう)リリア。あ、私はハーフではなく日本人。よく間違えられるけど…。


「おはよー。んで、今何時?」

「もうお昼近いかな。…今日が休みで良かったね、朱梨」

「と言うか、もう冬休みだけどね」


 朱梨はそう言って苦笑いする。それにつられて、私も笑みを浮かべた。

 私と朱梨は国立・アリス学園で同年代。何なら、寮が一緒のルームメイト。昨日から学園が冬休みに入ったんだよね。


「それはそうと、少し課題やるか。家帰ってから悲鳴をあげる朱梨が目に浮かぶもの」

「――あ、そうだ!今日何日?」


 課題やらせようとしたら、朱梨にそう聞かれて私は少し困惑した表情を浮かべる。まぁ…家でしっかりやってもらう分には良いんだけど。


「えっと、今日は24日。クリスマスイブね」

「24か。ねえ、リリア。クリスマスプレゼント買いに行こ!んで、明日二人でプレゼント交換するとか」

「…んー、そうだね。課題で泣きつかないって約束してくれるなら、やっても良いよ。帰る日までそんなに時間無いし」


 渋々うなずいて、私は朱梨にそう言った。朱梨は私の言葉にすっごく明るい笑みを浮かべて、「準備してくる!」って言って部屋に戻る。私もその後に着いて行って、二人で準備を進めた。


「ねぇ、朱梨。お昼ご飯、折角だし外で食べる?」

「あ、良いね。おやつはカフェでパフェ食べようよ」

「太るよ?」


 くすっと笑って、私はそう返す。後、仕送りのお金やりくりしないと最後の日とか何も口に出来なくなるし。冗談で言い合ってるだけなんだけど、そんな気がする。


「太らない体質だから、大丈夫!」

「…前にそう言ってケーキ沢山食べて、お医者さんに注意されてなかった?」


 そう。朱梨、自分の誕生日だからって丸いケーキ一個丸々食べたことあるんだよね。それからしばらく暴飲暴食繰り返したし。そのおかげで体重が五㎏増えて、医者からも『食べ過ぎないように』って注意されたんだよね…。

 それからは私の方で健康に良いごはん作ったり、なるべく外食控えたり…。すっごく大変だった。


「大丈夫だってば。それに、小さめのパフェなら問題ないでしょ」


 朱梨はそう言って、手を合わせて上目遣いで頼んでくる。まぁ少しぐらいなら運動すれば問題はないか。


「はぁ…。良いよ。その代わり、きちんと自分で制御しなよ?」

「おっけ。分かった」

「それじゃ行こ。まずは食事処かな、そろそろお昼だし」


 玄関で靴を履き、外に出る。結構風が冷たくて、流石冬って感じ…ん?


「ね、ねぇ朱梨。外、雪降ってるんじゃ…」

「あ、帽子とマフラー付けないと相当寒いよ。というわけで…ほい、これ」


 スルーしてマフラーと帽子を渡してくれる。それを身にまとって、外に出た。

 二階から一階に降りて、寮の先生に軽く説明する。そうしないと外出ちゃいけないんだよね…面倒くさい。説明を終えて、二人で外に出る。

 白い雪が降り始めて、道もうっすらと白くなり始めていた。


「やっぱり雪降ってるね。これ、積もればホワイトクリスマスになるかな」

「え、本当?やったー!明日の朝が楽しみだね、リリア」

「そうかもしれないね。…早く用事を済ませて帰ろ、流石に寒すぎる」


 私はそう言って、歩くスピードを上げる。寮からいつも行く食事処はそこまで遠くないけど、早く行かないと芯から冷え切っちゃう。


「結構寒いね…あ、リリア。今日はラーメン食べてもいい?」

「良いよ…てか、私もラーメン頼む。こんなに寒いんだもん。暖かいものが良いよね」

「だよね。それじゃあ、早く行こ。私お腹空いた」

「朝ごはん食べてないもんね、朱梨は」


 腹ペコだよっていうジェスチャーをする朱梨に、私は正論をぶつける。

 にしても、軽口を叩けるぐらいには仲いいと楽。クラスの人達といるぐらいなら、朱梨と一緒にいた方が心地いいし。…家にいるよりも楽かもしれないな。


ー食事処に到着ー

「あ、あそこだね。お邪魔しまーす」

「お、いらっしゃい。一年ぶりかい?」


 中に入ると、食事処で働くおばさん。ここは確か宿屋も始めたって、クラスの人から聞いた気がする。となると、あのおばさんは“おかみさん”になるのかな。


「それぐらいですかね。朱梨が食事制限をしてたので…」

「若いのに大変だね。って事は、リリア。お前さんがご飯を作っていたのかい?」

「うん。リリアの料理もおいしいんだ。今度おばさんも食べてみたらいいと思うぐらい」


 おばさんの質問に対し、私より先に朱梨が答える。料理についての勉強はしてたからね…人並みに出来るようにはなったでしょ。

 なんでそう言うのかと言うと、極度の料理音痴だったから。食堂とか料理本とか見て料理作って、後は火加減の調節をうまく行えるようになるまでやってたりして、何とか…って感じ。まぁ、それでも食事処のおばさんには負けるとは思うけど。


「ほう。あのリリアが、ねぇ。興味出てきたよ」

「練習すれば上達しますよ…」

「それもそうか。んで、お二人さん。注文は?」


 呆れたような私の口調に対し、おばさんはにこにこと笑みを浮かべて注文を聞いてくる。

 来る前に話した通り、二人で同じラーメンを頼んだ。私はそこに暖かいカフェオレを追加で頼む。すっごく寒いんだよね…本当に。


「了解。少し待ってて、カフェオレ先に淹れてくるから。んで、朱梨の方は飲み物は良いのかい?」

「このお茶で充分」

「おやつにカフェでしっかりと食べる気だね…」


 お茶をすする朱梨に対し、私は小さくため息をつく。

 …お昼前だからか、店内空いてるな。それに外もすごく静か。今日はイブなのに…。


「ねぇ、朱梨。外静かすぎない?」

「んー?お昼近いからじゃないの?あ、おばさんお茶おかわりー」


 呑気におかわり頼む朱梨。お昼近いからこんなに静かなのかな。前までは、お昼近くなると食事処とか喫茶店からにぎやかな声が聞こえてきたんだけど。外が寒いから…ってことにしておくか。


「はいよ。熱いから気をつけな、お二人さん」

「あ、ありがとうございます。…おばさん、いつもこんなに静かなんですか?」

「――今日はいつもより静かだね。雪でも積もったんじゃないかい」

「そうですか…。って、そうじゃん!ホワイトクリスマス・イブか、今日は」


 おばさんにそう言われて、私は道が白くなっていたことを思い出す。そう言えば、雪降ってたなぁ。

 となると、ここまで静かなのもうなずける。と言うか、この時期に雪が降るのか。早いな。毎年、お正月ぐらいにならないと雪降らないのに。


「もう積もり始めたのかな。除雪作業に追われてそう…」

「早く戻ったら、寮の庭の雪かき手伝うことになりそうだね。朱梨、嫌でしょ?」

「もちろん。なるべく時間つぶして帰った方が良い」


 面倒くさい事から逃げたいという事で一致。まぁ、クリスマスプレゼント買うのに時間はかかるだろうし…。帰る時には夕方とかになるかな。なら、今日と明日のご飯の材料の買い出しも済ませちゃうか。

 今日が特別なだけで、夕飯は私が作るからね。何作ろうかなぁ。


「ラーメン二人分。待たせちゃったね」

「いえ、大丈夫です。…朝ごはん食べなかった朱梨も大丈夫そうだし」

「ん?早く食べなよ。伸びるよ、リリア」


 「はいはい」と返して、ラーメンを食べ始める。んーやっぱり冬は温かいものが良いなぁ。夕飯は鍋かな。んで、明日の夕飯はチーズフォンデュ。…うん、そうしよ。

 

「おいしい。おばさんの作るラーメンはやっぱりいいなぁ」

「こってりしてないけど、そこまであっさりし過ぎてないってのが良いよね。食べやすくて、飽きの来ない味だし」


 朱梨の言葉にうんうんと頷く。この味、家で作れたら良いのに…。いや、ここでおばさんが作ってくれるから良いのか。そう、ふと思いながらチャーシューをかじる。

 あ、ちなみにラーメンはしょうゆ味。シンプルながらにすごくおいしくて、具はゆで卵とチャーシューのみ。


「ありがとうね。おいしそうに食べてくれるだけで、私はすごく嬉しいけど。そうだ、お前さんたち。クリスマスのご飯の買い出しに行くかい?」

「プレゼントのついでに買いに行こうかなって思ってますけど…それがどうかしたんですか?」


 おばさんの質問に首を傾げつつ、私はそう答える。すると、おばさんはごそごそと奥の方で何かを探して持ってきた。ん?それって、チラシかな?


「これが配られてね。これを見せると、割引してくれるらしい。商店街みんなで考えたキャンペーンなのかは知らないが、折角だし割引してもらえば良いと思って」


差し出されたチラシを受け取って内容を確認する。鍋の材料なら、八百屋さんで揃えれるかな。…チーズフォンデュの出費が痛い分、材料費が低く抑えれるならありがたいし。


「ありがとうございます。朱梨、夕飯は鍋にするから好きな具材買いに行くか」

「え、本当?んー、どうしようかな」

「とりあえず、食べちゃいな。朱梨食べ終わってるからね」


 食べ終わってるのは気付いてるけど、私もあと少しか。んじゃあ、食べちゃお。


「雪降ってる中お出かけとは、度胸あるね。何をしに外に出たんだい?」

「クリスマスプレゼント買いに来たんだ。明日クリスマスだからって。後は2日間の食事の買い出しかな」


 分かってるね。商店街で大体の物を揃えれそうだし、この店に寄ったのは正解だったかな。でも、クリスマスキャンペーンで半額…スーパーとかに対抗してるのが目に見えるんだけど。客減ったのかね。


「ん、ごちそうさまでした。ふぃー。体ポカポカになったわ」

「外出たくないねぇ」

「――誰が言い出しっぺだっけ。…おばさん、会計」


 ぬくぬくしてる朱梨を立たせて、食事代をそれぞれ払う。カフェオレが意外と安くて、合計六百円ぐらいで済んだ。ラーメン四百円って本当学生の味方って感じ。

 会計を済ませて店を出る。ドアを開けると外は白くて、みんなが除雪作業に追われてるのが見えた。結構積もったなぁ…。まだ降り始めてから二時間も経ってないぐらいなのに。


「この感じだと、明日も雪降るかな。そうだ、朱梨。どこでプレゼント買う?」

「商店街の割引って何回も使える?使えるなら、商店街で買うのありかも?」

「えっとね。…五回分割り引いてくれるっぽい。朱梨、買い出ししてからでもいい?」

「良いよー」


 チラシに付いてるチケットを買い物の時に店の人に見せて、半額の割引。チケットは五枚だから五回分かな。…だよね。

 とりあえず、その可能性にかけて私と朱梨は商店街へ向かった。うぅぅ。すっごく寒い。


ー商店街で買い物ー

「鍋の具材かぁ。肉とねぎと白菜は入れるよね?」

「そりゃあ、もちろん。八百屋から見るか」


 商店街に着いて最初に行ったのは八百屋さん。この前一か月分買いだめしたから、来るのは一か月ぶりかな。


「えっと、ねぎは一本だけでいいし白菜は半分もあればいいでしょう。あ、そうだ朱梨。明日のチーズフォンデュ用に、好きな野菜入れていいよ」

「それじゃあ、じゃがいもとにんじんと…ブロッコリーも入れていい?」

「良いよ。これだけあれば大丈夫かな」


 足りなければ、買い足しに来ればいいや。と思って、会計を済ませに行く。どうやら、チケットは一枚で一回分らしい。それならここでプレゼントも買えそうだな。

 えっと、後は肉だから精肉店か。どこだっけ。


「精肉店って、どこにあったか覚えてる?」

「…仕方ないなぁ。こっちにあった気がするよ」

「ありがと、助かった」


 単純に忘れてただけなのに、朱梨に軽くバカにされた。一か月ぶりでちゃんと覚えている方がおかしい気がするんだけど…。テストもあったのに、本当記憶力良いよね…朱梨は。

 朱梨の案内で精肉店での買い物もサクッと終わる。ちなみに、今回は鶏肉。朱梨のリクエストなんだけど、珍しい気がする。朱梨っていつも豚肉とかなのに…しかも一番脂身の少ない部位選んだし。どうしたんだろう。


「ねぇ、リリア。買い出しはそれで全部?」

「商店街で揃えれるものは一通り。というわけで、チケット三枚余りました」

「やったー!一枚頂戴。プレゼント買いに行ってくるから」


 手に持ったチケットを取ろうとして、ぴょんぴょんジャンプする朱梨に一枚渡す。…身長差のおかげか、届かないんだよね。


「それじゃあ、二十分後に八百屋の前あたりで待ち合わせににしましょ」

「おっけ。行ってくるね」


 集合場所を確認して、朱梨と分かれる。んー、クリスマスプレゼントか。何買えばいいんだろう。

 無難なのは文房具とかアクセサリー類なんだけど、どっかにお店あったっけ。あ、雑貨屋でもいいか。


「これは…マグカップか。冬になると温かい飲み物の方が良いもんね…寮に二人分あるんだけど」


 雑貨屋に入って目についたマグカップを手に取る。柄はシンプルなハートで、色も何種類かあって選べるんだけど。…寮で使ってるのはもう捨てても良いかもしれないな。小学時代から使ってて、もう高校生になるから十年ぐらいか。変え時だな。


「アクセサリー類は何かないかな。半額だと追加で何か買えるのが良いよねぇ」


 そうつぶやきながら、うろうろする。買ったのはアクセサリー系とマグカップのセット。あ、シャーペンの芯買い足しておこっかな。休みで勉強する時に無くなると面倒くさくなるから。

 雑貨屋を出て文房具を売っている店に行く。目的の物だけ買って、八百屋さんに向かった。まだ時間あるかな…って思ったけど、雑貨屋で選ぶのに手間取ったから丁度良い時間。


「あ、朱梨いるじゃん。買えた?」

「うん、もちろん!明日の交換がすっごく楽しみ」

「そっか。それじゃあ、スーパーに行って素早く買い物済ませて帰ろうか」


 八百屋さんの前で待っていた朱梨と合流。結構大荷物になってるけど、何買ったんだろ。わくわく半分、どこか心配になるんだけど…。変なものじゃないよね。

 商店街を抜けて、スーパーへ足早に向かう。商店街は屋根がついていたからよく分からなかったけど、外は吹雪…わお。


「おおー。すごい雪だね」

「前見づらいな…これじゃ。でも、鍋の素ないから行かないと」

「カフェは今日無しだね…明日行かなきゃ」

「行かなきゃなんだ。まぁ、付き合うけど」


 朱梨に対し、私はそう言ってくすっと笑う。そのまま二人で話しながらスーパーに入った。スーパーは暖房が効いているだけあってすごく暖かい。ずっとここにいたいレベル。


「えっと、チーズフォンデュの材料と鍋の素。あ、カフェオレの小さい箱のやつがある」

「好きだね、カフェオレ。あ、コーヒー入れてもいい?」


 食品売り場で、欲しい物を探す。んでも、やっぱりカフェオレは欲しいんだよね…入れるか。

 私はカフェオレが一番好きだけど、朱梨はコーヒーが大好き。まぁ、コーヒーは苦いから飲めないんだけど。


「良いよ。んじゃ、カフェオレも買っちゃえ」

「お菓子も買いたいけど…明後日には帰省だからやめておこ…」

「明日カフェ行くならいいと思うけど。あ、あったあった。味どうする?」


 足を進めて鍋コーナーに着く。シンプルな奴にラーメンでもいいし、カレー味なら(しめ)はご飯だよね。

 こういうのに深いこだわりはないわけだけど、一回で使い切れるタイプがあると二日間違う味が楽しめるからおすすめ。ま、今回は一回分だけで良いんだけど。


「いつものやつで良いんじゃない?鶏肉にしたし。あ、〆のラーメンもいつものやつ?」

「そうするか。それじゃ麺取ってきて…って、もういないし」


 朱梨に麺を頼もうとたんだけど、どうやら取りに行ってくれたらしい。後ついていくか。

 年末年始に関するものが多いのを見ると、あぁ帰省かっていやな気持ちになる。でも、新しい年を迎えようとみんなで準備して飾りつけして年明けって言うのは、良いのかもしれないね。


「はい、ラーメン。後はチーズフォンデュの具材?」

「それは買ったでしょ。チーズフォンデュ本体買わないと、食べれないよ」

「あ、そっか。どこにあるか分かるの?」

「なんとなくね」


 朱梨の質問に私は自信なさげに返す。まぁ、ある場所は見つけれるだろうけど…。作ってあって温めるだけっていう楽なのが良いんだよね。鍋で作っても良いんだけど、面倒くさいから


「お、あったあった」

「へぇ…そんなのあるんだ」

「そう。知ったときに楽だなって思って。朱梨、何か欲しいものある?無いなら会計済ませてきちゃうけど」


 そう聞くと、朱梨は首を横に振った。特に無いなら、ちゃちゃっと会計済ませてきちゃお。並んでないし。


「あ、そう言えば…。朱梨、コーヒー代後で頂戴ね。忘れたは通用しないから」

「――払わずに済むかなって思ったけど、ダメだったかぁ。帰ったら渡すよ」


 会計してもらって、袋に詰める。少ない量ならコーヒーも手ごろな値段で手が出しやすくていいよね。

 匂いは大丈夫なんだけどなぁ…。コーヒーゼリーも食べれないし。ま、カフェオレがおいしいし問題は特にないけど。いや、でも。いつか、ブラックのコーヒー飲めるようになったらかっこいい大人って印象つくかなぁ。


「さて、帰るか。重くない?」

「うん大丈夫」


 大丈夫かなぁ…結構持ってもらったんだけど。


ー帰宅ー

「あ、雪かきしてる。手伝った方が良いのかな」

「どうだろ。でも、先生もいるし帰宅の報告はしてこないと…」

「うっ。そうだよね。はぁ…雪かきはなぁ」


 寮に着いたは良いんだけど、寮に残ってる先生と生徒たちが雪かきをしているのが目に入った。

 私は良いんだけど、朱梨はこういうの苦手。まぁ、やれば仕事早いんだけどやる気が出るまで時間かかるんだよね…。


「先生、帰宅しました」

「お帰り、お二人さん。…荷物片づけてきたら、ゆっくり休みな。寒かったろうから」


 先生はそう言って、にこっと笑いかけてくる。どうやら、やらなくても良いらしい。…荷物片づけて温まって雪かきまだやってるようだったら、手伝いに行こうか…。いや、夕飯作らないと。


「ありがとうございます。それでは失礼します」

「風邪ひかないようにね」

「はい。…行こうか、朱梨」

「う、うん」


 仕事しなくて済んだことに安心すると同時に、優しいことに違和感を感じる。もしかして、一日早いクリスマスプレゼント?

 …なわけないか。


「夕飯作るから、手伝ってね。嫌だって言うなら、雪かきのお手伝いしてもらおうかな」

「あ、そっか。もうそんな時間なんだ」

「そうだね。夕方だと思う。というわけで、好きな方選んで」


 朱梨にそう聞くと、朱梨は少し嫌そうな表情を浮かべる。まぁ、どっち選んでもお手伝いだからなぁ。

 それよりも、冷蔵庫に一通りしまっておかなきゃ。えっと、使うものは鍋の材料だけだからほかの物は全部しまってもいいね。


「んで、どうする?」

「料理の手伝い。作ってもらう代わりに手伝うって前決めたし」

「そっか。それじゃお願いね」


 部屋のストーブを()けて、台所に立つ。ねぎと白菜は一口サイズ。鶏肉は先に片栗粉をうっすらとつけて火で軽くあぶっておく。こうするとおいしくなるって誰かに聞いた。

 その横で、朱梨に鍋の素を入れてお湯を沸かし始めてもらう。ぐつぐついってきたら、一通りぶち込んで煮詰める。んで、完成。おかず少し作っておこう。


「お豆腐はどのタイミングでいれるの?リリア」

「あ、お豆腐は後。…食べる五分前とかで良いかな。温かくなれば食べれるから」

「おっけ。それじゃあ、コンロ出してお皿とか一通り出しとくよ」


 分担作業で着々と夕飯の準備が済んでいく。…今何時だろ。

 そう思って、リビングについてる時計を見に行く。時計の針は五時半を指していた。結構時間……あぁ。色々やってたからか。


「少なめにポテトサラダ。そして、あっさり食べてもらえるようにレタスも少しちぎって…っと。こんなところで良いかな。朱梨ー、鍋にお豆腐入れたから運んでもらえるー?」


 夕飯になるという事で、二人で鍋を囲む。机はこたつだから、ぬくぬくしながら食べれるんだよね。朱梨のお母さんがくれたから、感謝だよ。


「それじゃあ、いただきます」

「いただきまーす」


 私はサラダから食べ、朱梨は鍋の中にある鶏肉から食べ始めた。んー、味付け完璧。ポテトサラダのマヨネーズはハーフのやつ使ってみたけど、塩とかで調節すればカロリー控えめでも満足いく感じになるんだね。なるほど。


「鍋って温まるから良いよね。このまま寝れるし…」

「流石にそれは許せないけど。でも、確かに温まれるよね」

「だよねぇ。あ、明日のクリスマス。早めに起きたいから目覚ましかけてもいい?」


 朱梨にそう聞かれて、私は「良いよ」と答える。きっと準備があるだろうし、私は久々に時間気にせずに寝ようかな。明日の朝ご飯はこれにラーメンおかわりで入れれば食べれるし。

 それから、私たちはのんびりとご飯を食べ終えてお風呂に入った。そして、同じ時間に就寝したのであった…。すやぁ…。


ー翌日。クリスマスー

 ん。まぶしい…。


「あ、もうお昼近くなるのか。…久々にぐっすり寝たなぁ」


 小さく伸びをして、私はベットから降りる。…もう一個のベッドは空で、リビングの方から何か物音が聞こえてきた。そう言えば、朝早く起きるって朱梨が言ってたっけ。

 着替えて、リビングに顔を出す。すると、朱梨がにこっと笑ってきた。


「おはよう、リリア。ぐっすり寝れてすっきりした顔してるね」

「そうかな。んで、朝ごはん食べてもいい?」

「良いよ。あ、朝ごはん食べたら交換会しよ!午後はカフェ行く用事あるんだし」


 朱梨はそう言って、私に鍋の具をよそってくれる。カフェはやっぱり行くんだ…と思いながら、入れてくれた器を受け取って食べる。


「ん、良いけど。カフェは前に行ったところ?それとも、朱梨が新しく見つけたところ?」

「えっとね。新しくできた喫茶店だったかな。クラスの人に、勧められた場所なんだ」

「あー。すっごくおいしいって言ってたところか。…おっけ。今日はそんな予定だね」


 話を聞いて、私はすぐにどこのお店か理解する。学園全体で噂がもちきりだし、ニュースとかで場所も言われてたから。でもそうなると人いっぱいいそう…だけど、そこは腹をくくるしかないかな。気になるし。


「ん、ごちそうさまでした。顔洗ったりしてくるから、そしたらプレゼント交換しよ」

「おっけ。待ってる」


 朱梨に待ってもらって、顔を洗いに行く。冷たい水で目を覚まし歯を磨いて、プレゼントを取りに部屋に戻った。

 えっと…あ、あったあった。これと、後これもそうか。


「お待たせー」


 プレゼントを片手にリビングに戻って、私はこたつに素早くもぐりこんだ。寒すぎる。ストーブついてるのに、めちゃくちゃ寒い…。


「それじゃあ、まず私から。はい、リリア」


 朱梨に渡された袋を開ける。中に入っていたのは…髪留め?あ、ゴムとセットになってる。それにシュシュまで…。


「…朱梨。流石だね」

「えへへ、そうでしょ。リリア髪の毛ストレートで可愛いのに、休みでもシンプルに黒ゴムで(しば)ってるだけじゃん。だから、髪留めだったら使うかなって」


 朱梨に説明されて私は、確かに。と納得する。せっかくだし、髪の毛結ってみようと適当に軽く三つ編み風にしてそれを持ち上げてゴムで縛る。その上からシュシュを付けてっと。

 鏡を持ってきて確認してみると、白っぽいシュシュが良いアクセントになっていた。これ良いな。学校ではつけれないけど、土日はこんな感じにしてもいいかもね。合う服あったっけ…。


「やっぱり似合う…てか、三つ編みなんて出来るんだね」

「まぁね。…それじゃあ、私からはこれを」


 朱梨のプレゼントに満足したから。と、私は朱梨にプレゼントを渡す。


「――ん?これって、マグカップ?それに…鞄とかに付けれそうなペンギンのストラップ…。え、めっちゃうれしいんだけど」


 プレゼントを開けて、朱梨は少し涙目になる。そんなに喜んでもらえるとじっくり悩んで選んだかいがあったかも。

 そう言えば、お揃いでマグカップ買ったんだった。出しておこ。それと、前のマグカップ捨ててもいいかな。


「朱梨。マグカップお揃いにしてみたんだけど…。後、前まで使っていたマグカップは捨ててもいいかな」

「…お揃いなの?!え、素直にうれしい。…あ、マグカップは捨てていいよ。こっち使いたい」


 朱梨にそう言われて、マグカップを出して新しいマグカップを洗う。きっと、飲みたいだろうしね。

 たまにはのんびりするのもいいし。


「ねぇ、朱梨。コーヒー飲む?私カフェオレ飲もうかなって思うんだけど」

「それじゃあ、いただこうかな」


 私の提案に、朱梨はそう返した。

 静かに、コーヒーとカフェオレをそれぞれ淹れる。こういう時は、お互い喋らずに淹れ終わるのを待つんだよね。…っと、こんなもんで良いかな。


「お待たせー」

「ううん」


 あれ、お菓子が出てる。完全に軽食…いや、気にしないでおこ。後でカフェまで走らせれば問題ないし。

 どちらともなくマグカップを手に取り、二人で乾杯した。あの言葉と共に。


「「メリークリスマス!」」

クリスマス過ぎましたが、クリスマスのお話書きました。

日常があふれるのんびりとしたお話になっていれば。と思います。


メリークリスマス!そして、遅れてすみません!m(_ _"m)

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