残滓
カーテンを開けると空がいつの間にか赤く滲んでいた。ペンを置き体を伸ばす。
日も短くなったなあ、と感慨にふけっていると、リビングから母の呼ぶ声がした。
今日は早めのご飯らしい。
早めに食べて部屋に戻ろうとすると母に呼び止められた。
「玄関のバット邪魔だから部屋に置いてくれない?」
そう言われたので
「わかったー」
と返事をして素直に片付けた。
「夏まではお世話になったなあ」
なんて語りかけても返事はないが、夏の思い出が思い出される。
うちの学校は特別強いってわけでもないが、野球に対する思いは、最後の試合は思い出すと恥ずかしいぐらい泣いてしまうくらいにはあった。特別才能があるわけでもないが、貴重な楽しいものだった。もちろん楽しいだけなわけではなかったが。
それでも今机に向かっていられるのは、あの夏に残したものがないからかもしれない。なんて本当は未練たらたらなのだが。切り替えられない気持ちをなんとかするために部屋の片付けでもしようとすると、ラムネ瓶が出てきた。
「部活帰りによく買ったなあ」
などと懐かしみながらバッグから出てきたテーピングの端っこやビニール袋を捨てた。
机に向かいマメだらけの手でペンを握った。遠くでまだカーン、と金属音が聞こえる。