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水滸前伝  作者: 橋邑 鴻
第四回  清風三傑 大いに清風鎮を鬧がせ 武知寨 兵馬を留めて奸佞を除くこと
36/139

そりゃそうなる

「この…馬鹿野郎があっ!!!!」


 鄭家村(ていかそん)の中央、保正の屋敷に響き渡る、天を衝かんばかりの怒声。

 その怒声と共に、鄭天寿は室の端まで殴り飛ばされた。



 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼



 屋敷の門前で苦悩していた鄭天寿と王英は我が目を疑った。

 旅に出て、まだ当分先まで戻るはずのない燕順が、猛然と馬を駆り、目の前に下り立ったのだから無理もない。


 馬も疲れていたが、それ以上に燕順は疲労困憊だった。

 聞けば建康府(けんこうふ)を出て今日が3日目、食事の時間も惜しんで馬を駆らせていたという。馬も二頭を連れて青州(せいしゅう)を出たはずが、乗っている一頭しかいない。


 何がそれほど燕順を青州へと駆り立てたのか、と顔を見合わせて当惑した鄭天寿と王英だったが、それ以上に二人を驚かせたのは「とにかく休息を」と屋敷に招き入れた燕順が、第一声で李柳蝉の安否を尋ねてきた事だ。


 何しろ清風鎮(せいふうちん)での一件は、燕順が青州を発った後の話である。

 二人の中では、そもそも旅先の燕順がその一件を知っている訳がなく、それはつまり燕順が旅を切り上げる理由もなければ、一刻を争って戻る理由も、開口一番に李柳蝉の身を案じる理由もない。仮にそれを知って戻ったのだすれば、誰かがそれこそ一刻を争って馬を駆り、わざわざ燕順の下へ報せを届けたという事になる。そうでなければ時間的な辻褄が合わない。


 無論、二人は王定六の存在など露ほども知る由がないのだから、その驚きももっともではある。

 しかし、今はそれを論じている暇はなく、論じる必要もない。現に燕順はこうして目の前におり、そしてそれを知るかのように振る舞ってもいる。


 鄭天寿と王英が昨日からの経緯を燕順に説明し、そして──


 燕順の怒りが爆発した、という訳だ。


「燕小哥(燕順)。気持ちは分かりますが、まずは落ち着いて下さい」

「あの…何かございましたか?」


 燕順を宥める鄭延恵であったが、あまりの怒声に午前の法要の後、お斎を食べ終え、休息を取っていた僧侶達の中から、若い僧が保正の室まで様子を窺いに来た。


「いや、何、身内の話でお騒がせして申し訳ない。ちょっとした面倒事がありましてな。それと、皆さんには今暫く身体をお休めいただくようお伝え下され」

「はあ…」


 鄭延恵はそそくさと若い僧を追い返す。


「何で小蝉(李柳蝉)から目を離したんだっ!!放っとけば一人で屋敷を抜け出すのは目に見えてただろうがっ!!」


 ヨロヨロと立ち上がり、切れた口の端を右手で拭う鄭天寿は言葉を発する事もなく、血が滲むほど左の拳を握り締め、自らの愚かしさを呪う。


 燕順の怒りの矛先は鄭天寿のみに収まらない。


「テメエもテメエだっ!!鄭郎が忙しいのが分かってて、何で朝から来てやんなかったんだっ!!」

「いやっ、だから…今日は朝から仕事が…」


 後ろめたさからか、燕順を正面から見る事ができずに目を逸らす王英も、すでに左の頬が赤く腫れ上がっている。


「仕事だぁ!?ざけんじゃねえっ!!妹を放っといてまで引き受けなきゃなんねえ仕事ってなぁ何だ!?言ってみろっ!!」

「そうは言ってもっ…哥哥(あにき)も当分戻って来ねえと思ってたし、手持ちもだいぶ心許なくなってきたから…飯だってそう毎日ここで世話になる訳にもいかねえし…」

「それはどういう意味です、王小哥(王英)!?」


 その言葉に眉を吊り上げて反応したのは鄭延恵だ。


「『ここで飯は食えない』とは、何ですかその()(ぐさ)は!?(わし)がこの屋敷で食事を摂る貴方に、一度でも嫌な顔をした事がありましたか!?儂や家の者が、貴方の食事を出し渋った事が、今までにただの一度でもありましたかっ!!!?」

「いやっ、そんな事は…ねえんだけど…」


 鄭延恵にとって鄭天寿は甥である。その甥の義兄弟なのだから、王英もまた甥である。

 この屋敷に住む鄭天寿に食事を与えない事がないのと同様に、住まいは違えど、食事時に王英がいれば遠慮なく、好きなだけ食べさせていた。


 世間に出れば仕事を頼まれて断れない相手もいる。受けた恩は返さなければならないし、義理や付き合いもある。それくらいは鄭延恵だって百も承知だ。


 そんな理由があったとて「せめて今日ぐらいは」と愚痴の一つも零してやりたいぐらいのところへ、よりにもよって不在の理由に、たかが何食かの飯を挙げられたとあっては、無尽蔵と表現できるほどに食事を振る舞ってきた鄭延恵にしてみれば、癇に障って当たり前である。


 もはや鄭延恵は王英に対する蔑むような視線を隠しもしない。


 その気持ちは燕順にも分かる。

 と同時に、そんな王英を見込んで弟とした自分の不明に恥じ入るばかりであるのだが、一方で鄭延恵に対し一人、微かな違和感も覚えていた。


 怒りの熱量が違う。


 付き合いの長さがそのまま怒りの大きさに繋がるとは限らないであろうが、だとしても、思わず手が出てしまった燕順と比べ、鄭延恵は怒りの次元が随分低い。


哥哥(あにき)、説教は後で山ほど聞くよ。今は小蝉を捜そう」

「…分かった。だが、捜す必要はねえ。賊の正体なら分かってる。後は奪い返しに行くだけだ」

「は!?」


 確かに王英の言う通りだ。今は説教や些細な違和感などに(かかずら)っている場合ではない、と燕順は核心を告げた。

 王英のみならず、室にいる全員の視線が燕順に集まる。


「小蝉は鎮(清風鎮)の東寨だ」

「東寨!?それはつまり…」

「正知寨の屋敷です」

「な…んという事だ」


 燕順の返答に鄭延恵は顔色を失い、崩れるように椅子へ腰を落とすと、卓に両肘を付いてそのまま頭を抱え込んでしまった。


「いや、でも哥哥(あにき)…何でそれを…?」

「建康で訪ねた家の息子が旅の途中で偶然、鎮に立ち寄り、お前ら三人が賊に襲われてる場面に出くわしたそうだ。その後、お前らに追い払われた賊が、その足で鎮の東寨に逃げ帰るとこを見たらしい。俺はたまたま息子の土産話でそれを聞き、慌てて帰って──」

「…今、何と仰いましたか!?」


 頭を抱えていた鄭延恵が、まるで幽鬼でも見るかのような表情で燕順を見遣(みや)る。


「…?逃げた賊が東寨に逃げ込んだところを──」

「その前です!『三人が襲われた』!?何です、その話は…?」


 燕順が建康で聞いた王定六の話をそのまま伝えると、鄭延恵の蒼白としていた顔が見る間に紅潮し、険しさを増していく。


「知らん…儂は知らん…聞いてないぞ、そんな話は!王小哥っ!!」

「あっ…いや、小蝉が保正に心配を掛けたくねえから黙っててくれ、って…」


 鄭延恵は話にならんとばかりに、即座に王英を見限る。

 そして、刺すような視線を鄭天寿に向けるや勢いよく立ち上がり、猛然と詰め寄って胸ぐらに掴み掛かった。


「おのれはっっ!!!!そんな事があって尚、柳蝉から目を離したのかっ!!今まで一つ屋根の下、一体おのれは柳蝉の何を見ていた!?あの()の気性は、おのれが一番よく知っているのではなかったのかっ!!!?答えんかっ!!何故、柳蝉から目を離したっ!!!?あの()は…柳蝉は、おのれの可愛い妹ではなかったのか!?おのれの愛しい許嫁ではなかったのか、ええっ!!!?」


 憤怒の形相で激しく鄭天寿を(なじ)る鄭延恵を見ながら、燕順は一人「コレか」と得心した。


 燕順の怒りの源泉が「つい最近、賊に襲われたばかりでありながら」王英と鄭天寿が李柳蝉から目を離し、一人にさせた事であるのに対し、鄭延恵のそれは、単に王英と鄭天寿が李柳蝉から目を離し、一人にさせた事だったのだ。

 怒りの根幹をなす部分が欠落していたのだから、温度差はあって当然である。


 尚も怒りが収まらず、鄭天寿の身体を激しく揺さぶる鄭延恵であったが、返答に窮する鄭天寿に業を煮やし、その身体を思い切り突き飛ばした。


 鄭天寿は抵抗する事なくそのまま床に倒れ込む。ふと、視線を上げれば、側には無言で佇み、自分を見下ろす郭静がいた。


 視線を交わしたのは、ほんの一瞬の事だ。郭静はすぐに視線を上げ、正面を見据える。

 しかし、郭静はその一瞬に、孫娘を危地に追いやった鄭天寿に対する怨嗟、侮蔑、憎悪といった感情を存分に込め、鄭天寿もまたその一瞬に郭静の思いを感じ取り、自らの行為を悔いて自責の念に苛まれる。


「保正、もうその辺で…」


 倒れ込んだ鄭天寿に尚も詰め寄ろうとする鄭延恵を、燕順は引き止めた。


「この二人を責め立てる事は後で出来ます。今は小蝉を取り戻す事を考えましょう」

「おぉ…そうだ、今はこんな馬鹿どもに拘っている場合ではない。燕小哥、私にはもう貴方だけが頼りです。どうか…どうか柳蝉の為にお力をお貸し下さい」

「その前に、保正に伺いたい事がございます」

「…何です?」


 瞑目し、暫し躊躇った後、燕順は鄭延恵に問うた。


「…この村を棄てる覚悟はおありですか?」

「…は?」

「小蝉を取り戻すにはこの村を棄てる覚悟が要ります。その覚悟はおありですか?」

「そ…れは、一体どういう…」


 頭に血が上り、後先を考えられなくなっている鄭延恵に、燕順は噛んで含めるように語る。


 冷静に考えれば、そこに行き着くのはそれほど難しい事ではない。


 相手は腐っても(まち)の長である。正面から「李柳蝉を返せ」と乗り込んで、素直に「はい、そうですか」と認める訳がない。

 となれば、力ずくで門を破り、邪魔立てする者を排除して取り戻す事になる。


 しかし、いくら腕が立つとはいえ、燕順だけではそれも覚束ない。

 特に王英と鄭天寿の力は絶対に必要だ。それに、二人に限らず借りられるのなら村の住人の力も欲しい。力に頼るのなら、人手は多ければ多いほど良いに決まっている。

 だが、正知寨が密かに事を運んでいる以上、傍から見れば、それでは単なる村ぐるみの叛乱だ。


 村の総力を結集しても事が成就する保証はないが、襲われた側にしてみれば結果がどちらに転ぼうとも、いや、そもそも村人の助力などなくとも、保正である鄭延恵が襲撃に関わっている時点で鄭家村は「賊徒の巣窟」であり、住人は「賊の仲間」である。


「しかし、事が上手く進めばこの村の仕業とは──」

「保正。奴らは小蝉がこの村の住人と知って、村の近隣で勾引(かどわ)かしたんですよ?その小蝉を力ずくで奪い返したとなれば、この村以外に何処を疑うと言うんですか」

「だが、そうなれば詮議に来るのは武知寨でしょう?武知寨ならば事情を説明すれば──」

「武知寨には予め全てを伝えます」

「予め!?何故…」


 清風鎮の兵はおよそ1,000と燕順は聞いている。無論、鎮の警邏(けいら)などにも兵が割かれるにせよ、有事にあって東西各寨に配される兵は、最大でもざっと500だ。


 予めこちらの意図を伝えておかなければ、向こうにしてみれば単なる賊徒の襲撃だ。武知寨の立場であれば当然、兵を動かす。

 こちらから乗り込み、数十人で500を相手にするだけでも骨が折れるが、そこへ武に長けた武知寨とその子息が加われば、計画は破綻する。


「確かに武知寨やその子息は義に篤いかもしれません。助力を得られるならそれに越した事はありませんが、(はな)から立場ある彼らの助力を宛てにするのは、いくら何でも虫が好すぎます。しかし、我らが村に戻るまでは…せめて鎮を出るまでは、武知寨に傍観を決め込んでもらわなければなりません。その為には予め武知寨に正知寨の非道を説き、大義が我等にある事を示しておかなければなりません」

「それでもし、武知寨が我らの殲滅に動いたら…?」

「…残念ながら為す術はありません。しかし、だからといって何もせずに乗り込んでは、万に一つも成功の可能性はありません」

「では…では、県や州に訴えて…」

「無駄です。正知寨が(まいない)をバラまけば、それで終わりです。何より、証拠や証人もなく、州や県の者が我らの為に動くとは思えません」

「証人…そう、証人なら小哥にその話を伝えたという者が──」

「その者は今、建康です。今から迎えを出して、その者が来るまでどんなに早くとも6日は掛かります。その間、小蝉が無事でいられると思われますか?」


 どれだけ案を出そうとも、真っ当な手段で李柳蝉を取り戻す可能性は見出だせない。

 それはつまり、李柳蝉の救出に関われば、それ以降、賊として官憲に追われる人生を送る事を意味する。


「付き合いは短くとも小蝉は私の妹です。だから、私は何としても小蝉を助けたい。しかし、同時に私は他所者(よそもの)でもあります。私はこの村の事が好きですし恩もありますが、保正のこの村に対する思い入れとは比べ物にならないでしょう。ですから、他所者の私の一存ではなく、保正のお気持ちを伺いたいのです」


 鄭延恵が単なる村の一住人であったなら、それほど考える事はない。

 しかし、事は単に鄭延恵が保正を退けば、或いは襲撃に加わり生き延びた者達と共に、雲を霞とトンズラしてしまえば済むという話では全くない。


 保正として下す決断は遥かに重く、相当な覚悟が要る。それこそ村の住人全てを巻き添えにするほどの覚悟が。


「…もし、私がこの先の住人の暮らしを思い、お上と敵対するような行為には賛同も加担も出来ないと決めたら…保正としての立場を優先したらどうするのです?」

「伯父さん!?そんな──」

「お前は黙っていろっ!!」


 鄭延恵はすでに見限った甥に対し、視線を向けようともしない。


「…私と王弟(王英)だけで行きます。その時はどういう結末を迎えようと、我らの事は知らぬ存ぜぬで押し通して下されば結構です」

「大哥(燕順)!?」

「鄭郎。言葉は悪いがお前に口を出す資格はない。大人しく保正の考えに従え」

「しかし──」

「黙っておれと言っとろうが、この(うつけ)がっ!!…しかし、二人で事を為し得ますか?」

「力は尽くします、が…御期待には沿えないものとお考え下さい」


 鄭延恵は暫し考え、答えを導き出す。


「小哥。私はあの()を贄に差し出すような真似をしてまで保正の立場にしがみつく気はありません。村の者に協力を強いる事は出来んが、自ら望む者がおれば何人でも連れて行ってくれて構いません。ですから!何としても柳蝉を救い出して下さい。村の事は私が何とかしますから」

「…宜しいのですね?」

「全ての責を負って今日を限りに保正を退く事になろうとも、賊の首魁として村を追われ、宛てもなく国土を彷徨いながら余生を過ごそうとも悔いはありません。もしお上の怒りを解く為に、どうでもこの首が必要となれば、老い先短いこの身の事、進んで差し出してもみせます。ですから、どうか…」


 その言葉に、燕順は鄭延恵の激しい心の狼狽を見て取った。


 燕順が問うているのは、そんな事ではない。どうやら鄭延恵は「村を棄てる」という言葉の意味を履き違えているようだ。少なくとも燕順にはそう見える。

 今、鄭延恵が下した決断によって迎える鄭家村の未来は、残念ながら首を一つ差し出し、まして保正を()げ替えたくらいで何とかできる次元の話ではない。


 更に言葉を尽くしてそれを説明する事もできる。しかし、今はその時間が惜しい。

 何よりも「李柳蝉を救いたい」という気持ちは燕順とて同じなのだ。時間を費やした結果「やはり二人で行ってくれ」と言を翻されてはそれも叶わない。


 僅かな逡巡の後、燕順は「聞くべきは聞いた」と自らを納得させ、軽い嘆息と共に短く「分かりました」とだけ応じた。

 鄭延恵の動揺に乗じた己の性根に苦々しさを覚えながら。


 その傍らで鄭天寿は胸を撫で下ろす。

 まだ何一つ為した訳でもないが、少なくとも蚊帳の外に置かれる事態だけは避けられそうだ、と。


「王弟、鄭郎、では策を練ろう。この計画に『次』はねえんだ。たとえ僅かでも成功の可能性が上がるなら、どんな些細な事も全てやろう。だが、時間もあまりねえぞ。遅くとも閉門までには鎮に入ってなきゃなんねえからな」

「おう!」

「はい!」


 三人が卓の回りで額を集めると、張り詰めていたものが緩んだのか、鄭延恵は椅子に腰を下ろし、大きな溜め息を零した。


「保正、少し休まれては如何ですか?保正のお力を借りる時は、また声を掛けさせてもらいますから」

「ええ…お言葉に甘えて、そうさせていただきます」


 力なく立ち上がり、寝台に向かう鄭延恵を支えようと鄭天寿が手を貸すが、鄭延恵はそれを素気(すげ)なく払い除ける。


「天寿。お前も行くんだろう」

「はい」

「死ぬ気で事にあたれ。何としても柳蝉を連れ戻せ」

「はい」

「もし…考えたくもないが、もし柳蝉を儂の前に連れて帰れんようであれば…お前だけが村へ戻る必要はない。何処へなりとも行け」

「…分かりました」


 鄭延恵はやはり鄭天寿を見る事もなく、冷たくそう言い放つ。


「王小哥、アンタもだ。もし、仕損じるような事があれば、二度と儂の前に姿を見せんでくれ」

「…ああ、分かった」


 鄭天寿と同様に、王英へ視線を向ける事なく鄭延恵は言い放ち、もう一言小さく呟いて寝台に向かった。


「保正。私は一度、村に戻る事をお許し下さい。結果がどうあれ、誰かが保正にお知らせしなければなりません。無論、全てが終わった時に私の命があれば、の話ですが…」

「…そうですな。良い報せをお待ちしています」


 力なくそう言葉を返し、鄭延恵は寝台へと上がる。


 元より体調す崩していたところへ、多大な心労も重なって精魂尽き果てた様子の鄭延恵を慮り、三人は室を出た。


 李柳蝉を救出するため、燕順の提案に従って三人が三様の決意を胸に向かった先は、宛てがわれた室で休息を取る僧侶達の下だった。

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