血は繋がらずとも
「…何がだ?」
新たに出された酒に口を付けながら、燕順が問い掛ける。
「清風鎮には二人の知寨が置かれてるって聞いて納得したっすぅ」
「…?」
「おい、六郎。見て分からんか?納得してんのはお前だけだぞ。俺にも旦那にも分かるように話せ」
店主に促され、王定六は何かを思い出しながら先を続ける。
「清風鎮ってぇ、鎮の中心に衙門(役所)の入った大寨が在ってぇ、んで東西の寨(※1)の敷地にぃ、それぞれ知寨の役宅が在るんじゃないっすかぁ?」
「ああ、そうだが?」
「いやぁ、さっき思い出したんすけどぉ、清風鎮に着いて暫くしてからっすねぇ、ちょっとした騒ぎを見掛けたんすよぉ。で、気になって逃げた破落戸風情の男達を追っかけてったらぁ、東の寨に逃げ込んでったんで良かったなぁと思ってぇ…」
「いや、待て待て六郎。何を言いたいのかさっぱり分からん。順を追って話してくれ」
いくら何でも話を端折り過ぎだ。
コレで全てを理解できるのは、やたらと勘の鋭いどこぞの小娘くらいなもんだろうww
「えっとっすねぇ、騒ぎを起こした男達が東の寨に入ってったんでぇ、近くの人に聞いたら『東西の寨には知寨の役宅が入ってる』って言ってたんすけどぉ、てっきり知寨は一人だと思ってたんでぇ、賊か何かに襲われた時にどっちの寨でも指揮が執れるようにぃ、役宅を両方の寨に置いてんのかと思ってたんすよぉ。で、さっきその騒ぎの事を思い出した時にぃ、そんな輩をのさばらせてるようじゃあ知寨サマも『神箭将軍』サマも何だかなぁ、って思ってたんすけどぉ、帥哥から知寨が二人いてぇ『神箭将軍』サマも武知寨サマの御子息と聞いたんでぇ…」
なるほど、と燕順は膝を打つ。
今の時代、文官の方が武官より地位が高い事は誰もが知っている。
そして東と西であれば、東の方が格が高い事もまた常識である。
一人の知寨が鎮を取り仕切っているのならともかく、二人の知寨それぞれが東西の寨に居を構えるのであれば、より格の高い東の寨に、地位の高い文知寨の役宅が入っているのは、誰でも容易に想像がつく。
詰まるところ──
「そんな不埒な輩が、噂の『神箭将軍』の家中の者でなくて良かった、ってか?」
「そうそう。いくら腕が立つからってぇ、それを笠に着て威張り散らすような奴じゃあ、父さんだって気に入らないっしょ~?」
「そりゃあ、まぁな」
「…あっ、騒ぎと言えばぁ、清風鎮で面白い人達を見掛けたっすよぉ」
ギクリ。
燕順は必死に考えを巡らせるが、鎮で騒ぎを起こしそうな男の顔など一人しか思い浮かばない。
しかし、燕順はまだ一縷の望みを捨てていなかった。
「…『人達』?」
「ええ。二人組でしてねぇ」
もしかして、あの馬鹿とは無関係じゃなかろうか。鄭天寿が側にいれば、そんな目立つような真似はしない筈だ──という燕順の淡い期待は本当に淡かったww
「一人は俺より小柄でぇ、五尺(約150cm)もなかったんじゃないっすかねぇ。もう一人はすらりと背が高くてぇ、色白のイイ男でしたよぉ」
青州に残してきた馬鹿な弟は一人ではなく、二人だったようだ。
さて、その二人をどう紹介したものか、と人知れず悩む燕順であったが、続く王定六の言葉にパッと顔色を変えた。
「何かぁ、連れの女性がさっき言ってた破落戸達に勾引かされそうになったみたいなんすけどぉ、二人でいとも簡単にそいつらを蹴散らしてましたよぉ。見てるこっちも爽快でしたぁ」
「『勾引かされそうに』!?六郎、その話もう少し詳しく教えてくれ!」
「えっ!?え~っとぉ、どうしたんすかぁ、急にそんな怖い顔してぇ?」
「いいからっ!!」
「は、はいっ」
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王定六によれば、清風鎮に着いたのは昼前だったそうだ。
少し早い昼食を摂り、鎮の中を散策。東西の寨にも近くまでは行ったという。
しかし、縁も所縁もなく、また無位無官の者が訪ねたところで追い返されるのがオチだろう、と結局寨を訪ねる事なく引き返した。
散策中に噂の「神箭将軍」と出会えれば儲け物、程度の気持ちで再び鎮を散策していると、中心に近い大きな通りに出たところで、問題の騒ぎに遭遇したのだという。
とある飯屋の前で、髪を左右の鬢の上で軽く束ねた一人の美しい女性が、五人の男達に絡まれていた。
通行人は巻き添えになるのを恐れてか見て見ぬ振りで通り過ぎ、或いは何をするでもなく遠巻きに見守るばかり。
王定六は何とか女性を助けようと思ったものの手に得物はなく、仮に持っていたところで、いかんせん武には自信がない。
自分が返り討ちに遭って恥を掻くのは自業自得なので仕方のないところだが、やられるにしても、せめて女性だけは逃がしてやらなければ、と思案しているところで、飯屋から背の低い男が出て来た。
すぐに騒ぎに気付いて男達に啖呵を切ったものの、背の低い男とて得物を持っている訳でもない。
辺りを見回し、店の暖簾を見つけた背の低い男は「コレだ」とばかりに暖簾に飛び付いた。
≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪
「ところがっすねぇ、暖簾掛けが高かった所為か、飛び上がってどうにか暖簾までは手が届くものの、竿にはどうしても届かないんすよぉ。挙げ句、暖簾にぶら下がっちゃう始末でぇ…プププ」
「六郎、そこら辺の描写はいいんだわ。先に進んでくれ」
「え、えぇ、すいません。それでっすねぇ…」
≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪≫≪
そうこうしている内に店からもう一人、色白な男が出て来た。
背の低い男から事情を聞くと、色白の男は血相を変えて暖簾の竿を手に取り、女性の元へ駆け付ける。
背の低い男も、通り掛かった行商の男から天秤棒を借り受け、色白の男に加勢した。
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「後は、あっという間でしたよぉ。破落戸の中には朴刀を持ってる奴もいたっすけどねぇ。女性を盾にでもすんのかと思ったんすけどぉ、そんな暇もなく二人に伸されちゃいましたぁ」
美しい容姿、髪型、そして何より行動を共にしていたという、背の高い色白の美男子と背の低い男。
王定六が見たというその女性の姓名が、否応なしに燕順の脳裏に浮かぶ。
三人で鎮へ出掛け、たまたま李柳蝉一人が先に店の外へ出たところで狙われたのだろう。
だが、事なきを得たと聞き、燕順はひとまず安堵の溜め息を漏らす。
「何だよお前、だらしねえなぁ。それじゃあ、ただ騒ぎを見てただけじゃねえか。何ならその二人を手伝って、破落戸の一人くらいは倒してこいってんだよ」
「そうは言うけどさぁ、ホントにあっという間だったんだってぇ」
「いや、父御、それはともかく…六郎、その逃げた連中は本当に東の寨へ入ったんだな?」
「それは間違いないっすよぉ。何となく気になって、逃げた男達の後を跟けたっすからぁ」
「って事ぁ、その連中は文知寨の手のモンって事か…お前、それをちゃんと三人に伝えてきたんだろうな?」
「いやぁ、東寨から飯屋の前に戻った時には三人とも居なくなってたしぃ…痛ぁっ!!」
隣で吞気にそう告げた王定六の頭を、店主が思いっきり引っ叩いた。
「この馬鹿野郎がっ!!だからテメエはダメなんだよ!」
「痛ぃっったぁ…父さん、いきなり何すんのさっ!!!?」
「それが分からねえほどお前はアホかっ!!!?文知寨なんて大物の気を惹いちまったとなりゃあ、その娘はこれから先もどんな災難に巻き込まれるか分かったモンじゃねえ。娘の身を守んのに周りが気を配ってやるにしろ、娘が自分で気を付けるにしろ、そりゃ黒幕の正体を知ってるからこその話であって、黒幕がいる事にすら気付いてねえんじゃ、そもそも気を配るもへったくれもねえだろうがっ!!三人が軽く『絡んできた通りすがりの破落戸どもを蹴散らしてやった』くれえに考えてたらどうすんだっ!!」
「だから!俺が戻った時にはもう居なかったって言ってんじゃんっ!!」
「居ねえなら居ねえで、捜してでも知らせてやるくれえの気遣いは出来ねえのか、この馬鹿は…オメエ一人の胸にしまい込んじまったら、クソの役にも立ちゃしねえじゃねえかっ!!ちょっと考えりゃ分かんだろ、そんぐれえの事はっ!!」
「今更そんな事言ったってしょうがないじゃんかっ!!」
卓の向かいで唐突に始まった親子喧嘩。しかし、燕順にはそれを宥める素振りも、気にする素振りもまるでなく、一人考え込んでいる。
【六郎が自信を持って「そうだ」と言うんだ。賊は正しく文知寨の手の者だろう。ではその日、小蝉(李柳蝉)を見掛けたのはただの偶然か?】
燕順は必死に考えを巡らせる。
鄭天寿は、そして鎮の者達は、あの文知寨を何と評していたか、と。
パッと思い浮かんだもので良いものは一つもない。曰く──
腹黒く、金に汚く、強欲で、そして好色。
【恐らく小蝉を知った、そもそもの切っ掛けは偶然だろう。以前に鎮か何処かで文知寨本人が見たのかも知れんし、或いは文知寨に取り入ろうとした何者かが、小蝉の美貌を文知寨に吹き込んだ可能性もある。が、切っ掛けが何だろうと、今はどうでもいい。
いつかこんな事に巻き込まれるんじゃねえかと心配はしてたが、まさか俺が青州を離れてる時に、その「いつか」が訪れるとは。
小蝉の美貌は群を抜いてる。
青州の片田舎なんて狭い世界に限った話じゃねえ。長年、各地を渡り歩いてきたが、未だ小蝉を超える美貌の持ち主には出会った事がねえ】
親子喧嘩は一向に終息の気配を見せないが、その喧騒も今の燕順には全く届いていない。
【その日、小蝉が一人になったのも偶然だろう。しかし、そこを狙って襲ったのは、決して偶然じゃねえ筈だ。
そもそもあの二人が小蝉から目を離す事自体、滅多にねえ。そこをたまたま賊の一人が見掛けたとして、手勢を集める頃にはとっくに二人が側に付いてる。
文知寨が小蝉の事を知らず、単に賊達が文知寨へ媚びる為、勝手に事を起こしたって可能性もまずねえ。
独断で小蝉を勾引かして東寨に連れ込んだところで、命じてもいねえ勾引かしの黒幕に担ぎ上げられた文知寨からは恨まれこそすれ、感謝される筋合いはねえ。小蝉の美貌ならそんな事ぁねえだろうが、万が一、文知寨が小蝉を気に入らねえとなりゃあ、それこそ目も当てられねえ。
どっちにしろ賊の命は風前の灯火も同然で、そんくれえの事ぁ賊にだって分かる筈だ。
狙われてたんだ。
予め文知寨は小蝉に目を付けてた。そして三人が鎮に来たと知り、文知寨の命を受けた賊達が五人揃って付かず離れず機を窺い、偶然、小蝉が一人になったところを襲った。そうとしか考えられん】
燕順が自分なりの結論を導き出した時、親子喧嘩の方もようやく終息を迎えた。
「六郎、頼みがある」
「え?ええ、俺に出来る事なら何なりと──」
「表の馬に乗せてる荷を、府城の石という肉屋に返しといてくれ。俺から理由があって頼まれたと言えば、話は通じる筈だ」
「えっ!?何でまた…」
王定六の言葉を待たず、燕順は慌ただしく手荷物を纏めて店を飛び出し、馬に乗せている荷をほどき始めた。
理由の分からぬ親子は、それをただ呆然と眺めるのみである。
「ちょっ、と、旦那。どうしたんだい、急に…」
「すまん、理由を説明する間も惜しい。『そんな頼みは聞けん』と言うのなら、この荷はあんた達で好きに使ってくれていい」
荷の中身は私塩だ。
こんな代物を持っていたら、帰りの道中に一体どれほど詮議を受け、何度足止めを喰らうか分かったものではない。
それに燕順の足は、この二頭の馬頼みだ。
淮水は清風鎮と建康府の丁度中ほどにあたる。そこまで辿り着いてくれれば、一頭はそこで乗り潰してしまってもいい。
二頭を連れて清風鎮まで戻る事を考えず、乗り潰す前提で道程の半分を一頭ずつに負担させれば、早ければ2日、遅くとも3日あれば清風鎮に着ける。
そのために、余計な荷は無いに越した事はない。
「いや、返すのは構わないっすけどぉ、そのお代はどうするっすかぁ?帥哥だってそれなりの金を払ってこの荷を買ったんでしょう?」
「手間賃だ。お前にやるよ、六郎」
「いやいや…いくら何でも、そんなの受け取れないっすよぉ」
「そう思うなら、別に好きにすればいい」
燕順は知っている。幼い頃から父の側で、また、独り立ちしてからも嫌というほど見てきた。
そうした強欲で貪婪な官吏達は、コレと決めた得物は絶対に逃がさない。いかなる手段を使っても手に入れる。
そして、手に入れた物は絶対に放さない。あらゆる手段をもって死守する。
だからこそその地位を得、その地位に居座り続けていられると言える。
その上に李柳蝉の類い稀なる美貌だ。
傍から見れば「そんなものは所詮、身内の贔屓目だ」と笑われるかもしれないが、それだけは断じてないと、燕順は自信を持って言える。
そんな李柳蝉を好色な文知寨が狙っているとすれば、一度失敗したくらいで諦めはしない事を、燕順は知っているのだ。
「ともかく、俺は一刻も早く青州に戻らなきゃならん」
馬から降ろされた荷をその場に積み上げ、燕順が馬を繋いだ綱を解く。
「旦那、もしかしてだが…話に出てきた三人ってのは旦那の知り合いか?」
「…俺の弟二人と妹だ」
「なっ!?弟妹…」
燕順はきっぱりと断言した。もはや可能性云々を言っている場合ではない。
「お二方。慌ただしい出立となってしまいましたがお許し下さい。機会があれば、またお会いしましょう」
「あのっ、帥哥。俺、こんな事になるなんて…」
王定六は狼狽え、今にも泣き出しそうな面持ちである。
「構わん。寧ろ最後にその話が聞けて良かった」
「帥哥とお三方の御無事をお祈りしていますぅ」
「ああ。そうしてくれ」
「旦那、すまねえな。六郎が気が利かねえばっかりに…」
「いえ、六郎の所為ではありませんよ。では、これで」
燕順は騎上の人となり、馬を駆らせて林を抜け、長江の渡しへと急ぐ。
確かに、王定六が王英なり鄭天寿なりへと賊の正体を知らせなかったのは痛い。知っていれば二人なら、いかようにでも対策を取れただろう。
しかし、賊が文知寨の配下だと突き止めてくれたのも、やはり王定六である。その情報も今の燕順にとっては貴重だ。
そして、それを活かせるか否かは、これからの燕順の帰路に懸かっている。何事もない内に燕順が青州まで戻れなければ、その情報はドブに捨てたも同然だ。
昼時となったためか、渡し場に並ぶ人は多くない。今の燕順にとっては、その決して多くはない人数を待つ時間も惜しい。
傍から見れば、それほど長くはない時間を一刻千秋の思いで待ち焦がれた燕順は、馬達と共に渡し船に乗り込んだ。
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ゆらりゆらりと船に揺られ、船頭が櫂を漕ぐ音を聞きながら、燕順は再びその足が大地を踏みしめる刻を鶴首して待ち侘びる。
【コレだったのか…】
陸は未だ遥か先だ。
【やはり気の所為なんかじゃなかった。
青州を出てからずっと感じてた不安の正体はコレだったんだ。
あの時、頑としてでも大伯(石平)の誘いを振り切って青州に戻るべきだったか…いや、あそこで出立を遅らせなけりゃあ、六郎から清風鎮での話を聞く事ぁなかったし、こうして馬を潰してでも道を急ごうなんて事も考えちゃいなかった。結果的にはそっちの方が青州に着くのは遅くなってたかもしれん】
北岸が徐々に近付く。
【六郎は清風鎮を出て、今日が4日目だと言った。つまり発ったのが3日前、小蝉が賊に襲われたのはその前日だから4日前の事だ。今から馬を飛ばして、鎮に戻るまでに2日、或いは3日か…
二人が散々に賊を打ちのめしてやったなら相手も策を凝らすだろうから、次に何かしらの手を打ってくるまで多少は間が空く筈だ。10日も経たねえ内にまた襲ってくる可能性も無かぁねえが、決して高くもねえ。仮に襲ってきたところで、まだ記憶に新しい内は二人だって無闇に小蝉を一人にはしねえ筈だから…大丈夫、間に合う。大丈夫だ】
北岸が目前に迫る。
【…何故だ。
何故、俺は今こんな所で、こんなにも胸を焼かれ、心を掻き毟られるような思いをしてる。
何故、俺は鄭家村でアイツらの力になってやれてねえんだ。
何故、俺は青州を発った。
商いという名目もあった。新たな出会いもあった。しかし、今ならはっきりと断言出来る。
今回の旅は全く出る必要のねえ旅だった。
どれほど考えても、これだけは納得のいく答えが見つからん…】
馬達と共に燕順は北岸に降り立つ。
その表情に先ほどまでの逡巡や後悔の念はない。
今、燕順の為すべき事は一つ。
『ただ、ひたすらに鄭家村を目指す』
燕順の心にはそれしかない。
「すまんな。お前達には無理を強いる事になる…」
長年、燕順と連れ添ってきた馬達だ。情も湧く。
この旅で一頭は、場合によっては二頭共、道中に捨てていく事になる。
それでも燕順に迷いはない。
「お前達の代わりはあっても…あの三人に代わりはいねえんだ。分かってくれ」
主人の悲壮な決意が伝わったか否か。
一頭は激しく嘶き、一頭は常と変わらず、道端の草を食んでいる。
燕順は草を食む馬を引き寄せ、嘶いた馬の背に乗った。
「ハッ!!」
掛け声と共に、二頭の馬は北を目指し、猛然と街道を駆っていく。
【俺は哥哥だ。哥哥が弟や妹の心配をして何が悪い。
そうだ。あの三人には代わりなんかいねえんだ。
たとえ付き合いが短かろうと、たとえ普段から手を焼かされてようと、いや、たとえどんな理由があったとしても、俺は哥哥としてあの三人を守らなきゃならねえんだ。
たとえ血の繋がりなどなくても──
あの三人は俺の弟妹達なんだ】
※1「東西の寨」
『水滸伝』作中において清風鎮の寨は南北に置かれていますが、あえて東西としています。理由は物語が進めば明らかになる予定です。




