威勢の良い追剥ぎ(意訳=雑魚)
夜はまだ明け切らぬとはいえ、東の地平が漸う白み始めた頃。
開放された建康府の北門(※1)に、燕順と石仲の姿があった。
「小哥(燕順)、すまなかったね。気が急いてるところを足止めしちゃって」
「いえいえ、こちらこそ丁重なもてなしを頂いて感謝に堪えません」
「しかし、兄さんもまた、年甲斐もなく燥いじゃってまあ…」
燕順を建康府に引き止めた張本人、石平の姿はここにない。
燕順が自分の我儘に付き合ってくれた事がよほど嬉しかったのか、石仲の諌める声などどこ吹く風で、石平はこの2日間、何かと理由を付けては燕順を誘い、ひたすらに飲みまくった。そのせいか、寄る年波に勝てなかったのかはさておき、石平は朝からダウンしている。
寝台で、やれあと1日、いや、せめて自分が見送りに行けるくらいに体調が戻るまでは、と駄々を捏ねる石平を説き伏せ、石仲と私塩の商いを済ませた燕順は、騎上の人となって開門とともに城外へ進み、石仲との別れを惜しむ。
「まあ、あれだけ喜んでもらえれば、出立を遅らせた甲斐もありましたよ」
「はは、そう言ってもらえると嬉しいね」
本来であれば城門を出る際に荷の検品を受けて然るべきであるが、そこは行商を生業として久しい石仲である。
「燕順への餞別」とばかりに、石仲から銀子を渡された衛兵はとっくに誑し込まれていた。
別れ難く去り難く、暫しの間、二人と二騎は共に長江へと向かう。
「二伯(石仲)、見送りはこの辺りで…」
「いや、やっぱり渡しまで送ろう」
「いえ、大伯(石平)も家にお一人で心配ですから…」
結局、燕順の滞在中に石秀は家に戻らなかった。
安道全にも馬麟にも出会う事はなかった。
しかし、燕順に未練はない。
青州に残した三人やこの石仲のように、立て続けに出会う事が縁ならば、こうして機が合わずに出会えないのもまた縁だ。
人の縁とはそういうものだろう。
「そうかい?じゃあ、名残惜しいがここで…」
「ええ。大伯に身体を労るようお伝え下さい」
「ああ、伝えておくよ。小哥もまた会う時まで元気でな」
「ええ。二伯もお元気で。三郎(石秀)さんにも宜しくお伝え下さい」
「全く、アイツときたら…戻ったらきっと伝えておくよ」
馬上から燕順が拱手し、石仲が礼を返す。
北へ向かう燕順の姿が暁闇の中へと溶けていき、蹄の音が聞こえなくなるまで、石仲が踵を返す事はなかった。
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府城を出た燕順は、暁闇の街道をゆったりと長江を目指した。
馬を駆らせる事もできなくはないが、暗がりで脚でも挫かれたら一大事である。
この二頭を乗り継いで青州まで戻らなければならないのだ。徒で戻るとなったら何日掛かるか分からない。
そもそも、あまり早く渡しに着いたところで、日が昇らなければ仕方がない。
私渡(※2)を探して渡る事も考えたが、金を払った挙げ句に江上で襲われでもすれば、それこそ目も当てられない。
【それなら日が出る頃に岸へ着き、王定六という男を訪ねてみんのも良いか。どうせ家も分からん事だし、探してりゃそれなりの頃合いになんだろ。
家が江沿いなら付き合いのある渡しを知ってる可能性もあるし、引き合わせてもらえりゃ渡江の不安もねえ】
馬の背にゆらりゆらりと揺られながら、そんな事を考えていた時だ。
行く手を一つの影が塞いだ。
未だ彼誰の薄暗さ。人相は分からぬものの、抜き身の得物を手にしているのは見て取れる。
どこからどう見ても、道を尋ねられるような状況ではあるまい。
府城から長江まではそれほど距離がないとはいえ、まだ半ばほどといったところであろうか。
城を出た時には、旅人や行商人といった風体の者達も何人か見掛けたが、今は燕順の周囲に人影はない。
完全に油断していた。
今までにもこんな経験は何度となくあるが、その時はそれらしい場所で燕順も確と警戒していた。
まさか、府城からこんな目と鼻の先で、というのが燕順の率直な感想だ。
「行商の旦那よ。ここを通りたければ荷を置いてきな」
残念ながら、やはり道を尋ねたかった訳ではないようだ。
【まあ、コイツ一人…って事ぁねえわな】
燕順は馬上でチラと周囲を確認する。
街道の右手には、ぽつぽつと立木が並ぶ。左手には少し先に大木が一つ。
大木の方はともかく、右手の並木に賊が伏せていれば、すでに網の中の魚だ。
騎乗しているというのが、またよろしくない。
燕順が馬を曳いていたのなら、まず身一つで目前の賊を朴刀で突き倒し、周囲の反応を窺った上で隙を衝いて馬に乗って逃走する、という手もあった。
他に賊が潜んでなければそれで良し、仮に伏せていたとしても、騎乗する前に賊を呼び込めば、意識を燕順に惹きつける事ができる。
騎乗しているからといって、燕順ほどの実力なら目前の賊一人を倒すくらいは造作もない話だが、そこで伏せた賊を呼び込み、下馬する前に取り囲まれてしまうのはさすがにマズい。
『人を射んとせば先ず馬を射よ』(※3)と古人の言葉にある通り、騎乗した状態で敵と対峙すれば、真っ先に狙われるのは馬と相場が決まっているのだ。
燕順にしてみれば、命を落としては元も子もないが、とはいえ連れている二騎は何としても守りたい。
しかし、賊の狙いは人でも馬でもなく荷である。荷を運ぶのにそのまま二騎が使えれば申し分なかろうが、何も荷を運ぶだけなら馬でなくたって荷車で十分だし、最悪、運ぼうと思えば人力でだって運べない事はない。となれば、いっそ「人馬もろとも」が手っ取り早いのは言うまでもない。
馬を駆ってそのまま突っ切るにしても、癪ではあるが来た道を戻るにしても、そこで伏せた賊が横合いから剣なり棒なりを突き出せば、この暗がりで全てを躱すのは難しい。まして街道を外れて馬を駆らせるのは尚、難しい。
少なくとも、正確な賊の数も分からない今はまだ、そんな一か八かの賭けに出る場面ではない。
「何とか囲まれる前に馬を下りれりゃいいが」と燕順が思案していると──
「何してやがる!さっさと馬を下りねえかっ!!」
下りて良いらしい。
相手の底が知れた。
内心の安堵を噯にも出さず、燕順はひらりと地に降り立つと、慌てるでもなく轡を取って賊に語り掛ける。
「馬を繋いでも良いか?」
「…あん?」
右手に並ぶ立木の方は分からない。しかし──
「そこの木陰に居る奴、出て来い」
左の大木の陰に潜む者は、いっそ囮かと疑われるほどに全く気配が隠せていない。燕順から見れば素人も同然である。物の数にも入るまい。
となれば、後は右手の並木の陰にどれほど潜んでいるか、というところだ。
「気配を感じられない」から「潜んでいない」と考えるほど、燕順は不用心でも楽観主義者でもない。無論、潜んでいないに越した事はないのだが。
そこで、あえてどの木に潜んでいても通じる言い回しでカマをかけた。
姿を現せば儲けもの、程度の可能性であろうが、出てこないにせよ僅かでも何がしかの反応があれば、燕順なら気配を察する事ができる。
「出て来いっつってんだろ!」
右手に反応はない。
しかし、左の素人は痺れを切らしたようだ。大木の陰から姿を現し、おどおどと正面の男にすり寄っていく。
「あ、哥哥…」
「てめっ…何、ビビって出て来てんだ!」
「じゃあ、繋がせてもらうぜ?」
燕順は悠然と、しかし、右手への警戒は怠らずに大木へと近付いていく。
気配が消えた大木の陰に、他にも賊が潜んでいやしまいかと用心し、それが杞憂であったと認めてから、馬を繋いで二人と正対した。
「さて、と…で?俺の荷が何だって?」
「ぐ…クソっ、ナメやがって」
主だった男が抜き身の得物を構えている事など一向に構う様子もなく、燕順は無遠慮に間合いを詰めていく。それに合わせて二人がじりじりと後退し、ある程度暴れても馬達に危害が及ばぬ位置まで追い立てたところで、燕順は腰の朴刀をすらりと抜いた。
「孫弟!お前は奴の左手に回れ」
「ええっ!?あ、哥哥は?」
「俺は右手に回る。挟み撃ちだ!」
「あ、ああ、分かった」
向けられた得物が二本になって尚、燕順に慌てた様子は更々なく、正面を向いたまま視線だけを僅かに動かし、左右の二人を見遣る。
【右の野郎はともかく、左はずぶの素人だな。人を斬った事がねえ…どころか、恐らく人に刃を向けた事すらねえわ】
はぁ、と一つ燕順は溜め息を零す。
こんな事に巻き込まれ、運が悪いと嘆くべきか。
或いは、出会った追剥ぎがこの程度で、運が良かったと喜ぶべきか。
──などと、思いながら。
じりじりとした時が過ぎ、右の男が腹を決めて一歩を踏み出したその瞬間、燕順は左へ跳んだ。
「なっ…!!」
「えっ!?あっ…うわっ!!」
勝負は一瞬で決した。
左の男は何が起きたのかも分からぬ内に、燕順の放った朴刀の一閃で得物を弾き飛ばされ、我に返った時には、すでに燕順は背を向けて右の男と対峙していた。
その右の男はといえば、まるで自分の挙動を見透かしたような燕順の動きに虚を突かれ、燕順と正対するまで微動だにもできない有り様である。
この薄闇の中とはいえ、そんな相手に1対1で遅れを取る燕順ではない。
「クソっ、使えねえ弟だ…オラァっ!!」
一片の躊躇もなく再び間合いを詰める燕順に、男が放ったヤケクソ気味の一撃など当たるはずもなく、
「ぐあっ!!」
苦もなく躱した燕順から、逆に朴刀の柄で強烈な一撃を浴び、男はあえなく取り押さえられた。
「痛ってて…クソっ、何なんだテメエは!」
「ん?ただの行商人だが?」
ただの行商人ではないのだがww
「哥哥…」
左の男は弾き飛ばされた得物を拾うのも忘れ、二人の周りでおろおろと情けない声を上げるばかり。
「チッ…何で殺さなかった?」
「別に?ちょっと聞きてえ事があるんだが…いや、その前に」
三人の周囲を白々とした空気が包み、朧気だった左の男の人相も、はっきりと見て取れるほどになった。
若い。鄭天寿と大差ない年格好だろう。
「どうせテメエが、碌に人を斬った事もねえような弟を否応なしに巻き込んだんだろうが…挙げ句の果てに、テメエの落ち度を棚に上げて貶してんじゃねーよ」
「…俺の落ち度だぁ!?」
「はぁ…気付いてすらなかったのかよ」
燕順は呆れながら疎らに並ぶ木立へ視線を促す。
「右の木立に、他にも仲間を潜ませてんのかと警戒してたが、テメエが二手に別れて俺と木立の間に入ったろうが。それでお前ら二人以外に仲間がいねえのが分かったんだよ!」
木立に仲間を潜ませても、飛び出す先に「自分の背」という壁を置くのなら、そもそも潜ませる意味がない。それならいっそ最初から全員で燕順を取り囲む方が、よほど気が利いている。
二人は揃って木立から離れるべきだったのだ。そうして燕順の気を惹き、木立に背を向けさせてこそ、存在しない「三人目」以降の幻影を燕順に意識させる事ができた。
二人との実力差はあまりにも歴然で、たとえどんな経緯を経ていたとしても、燕順が負ける要素など微塵もないのは確かだが、それでもここまで一方的な結末を迎えた最大の要因は、そう動けと指示をした男の失態以外、何物でもない。
「あー、そうかよ…痛っ!!」
己の浅はかさを理解した…かどうかは定かでないが、不貞腐れて悪態をついた男を燕順が一発引っ叩く。
「…っ痛えな、何しやがる!」
「うるせえ!この期に及んでイキがってんじゃねえよ」
燕順は、ふと初めて王英と出会った時を思い出す。
王英も燕順に取り押さえられた時は散々に悪態をつき、反抗的な態度を示していた。
そう考えれば、この男とも気心が知れれば親しく付き合えるかもしれない、と一瞬思った燕順だが、すぐにその考えを改める。
この男は腕前も思慮深さも、王英には遠く及ばない。
何より、この弟が素人も同然なのは明々白々であって、男だってそんな事は百も承知で仕事を手伝わせたはずなのに、それを「使えない」と貶める男の狭量さが燕順は気に入らなかった。
王英が人格に優れているかと問われれば断じて否定する燕順であるが、その王英との比較でさえ時間の無駄と思えるほど、この男の小者っぷりは際立っている。
「ったく…さて、それじゃあ本題だが、お前ら江沿いにある王姓の酒家って知ってるか?」
「ハッ、誰がテメエなんかに…」
「哥哥、あそこでしょ?ホラ、林ん中の──」
「てめっ…何、馬鹿正直に答えてんだ!」
「馬鹿はテメエだろうが。知ってんなら端から答えろよ、面倒臭えな」
石平の話では、江沿いに王姓の酒家は一軒しかないらしい。その上、相手の口から「林の中」と出たのだから、その酒家で間違いないだろう。
「おい、お前ら。命までは取らねえでやるから、ちょっとその酒家まで案内しろ」
「はあ!?何で俺らが…」
「あ、哥哥。折角、助けてくれるって言ってんだから…」
「ったく…弟の方がよっぽど世渡りが上手えじゃねえか。いいか?もし、途中で逃げ出しやがったら、そん時ぁ馬で追い掛けて、後ろから朴刀で突き倒すからな!」
「チッ、うるせえな!案内すりゃあ良いんだろうが、クソっ!!」
恰好の案内人を得た燕順は、二頭の馬を曳き、態度の悪い兄を朴刀で小突きながら、再び長江を目指して北へ向かうのであった。
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朝日も昇り快晴の空の下、三人は北へと進む。
「おい、お前ら姓名は?」
「オイラは孫五だよ」
「チッ、だから何だってお前はそう馬鹿正直なんだ…」
「そう言うお前は、何だってそう性根がひん曲がってやがんだ」
「うるせえ!いいさ、そんなに知りたきゃ教えてやる。聞いて驚くなよ──」
「別に『そんなに』知りてえ訳じゃねえよ」
「聞けよっ!!いいか、泣く子も黙る建康の張旺様とは俺の事だ!」
「へぇ~…」
「テメエが聞いたんだろうが!少しは驚けよっ!!」
「『驚くな』っつったのは何処のどいつだよ、ボケ!」
さすが燕順は王英を手懐けた経験の持ち主である。
旅は道連れとは言うものの、いくら話し相手がこの二人しかいないとはいえ、先ほど自分を襲った事など、まるでなかったかのようだ。
「つーかよ…『泣く子も黙る』なんて、まるで『三國』の張文遠みてえな肩書き背負ってる割にぁ、旅の空でお前の噂なんぞ微塵も聞いた事ぁねえんだがな」
「うるせえな、俺の名が江湖に知れ渡るのはこれからなんだよ!」
「『これから』知れ渡るんなら、俺がお前を知らねえからって苛立ってんじゃねえよ」
「チッ、人の揚げ足いちいち取りやがって…」
「足を取られんのが嫌なら、そもそも足を上げんじゃねえ。『どうぞ取って下さい』と言わんばかりに目の前で足を上げられてんだから、取らねえ方が寧ろ申し訳ねえだろうが」
「申し訳ねえ訳ねえだろうが!」
「あー、そうかよ。まあ、とにかくお前らに陸の仕事が向いてねえのは分かっただろ。コレに懲りたら真っ当な漁師にでもなるんだな」
「ハッ、余計な世話だ!」
「まあまあ、哥哥。行商の旦那の姓名は何と仰るんで?さぞや名のあるお方なんでしょ?」
「ん?俺の姓は燕で…おっ」
そんな他愛もない雑談をする内に、燕順の視線の先には長江が見えてきた。
北から渡った時に使った公設の渡し場がほぼ正面であろうが、右手にやや外れ、確かに林が広がっている。
あれでは雨の中、土地勘のない燕順が立ち寄ろうと思わなかったのも無理はない。
「旦那。お探しの酒家はあの林の中ですよ」
「おお、そうか。すまねえな」
燕順と孫五が右手の林に視線を向けたのは、ほんの僅かな時間だ。しかし、張旺はその隙を見逃さなかった。
なんと孫五を見捨て、一人渡し場の方へ向かって逃げ出したのだ。
燕順が気付いた時には、すでに10m以上は離れていた。
「あ…ンの野郎、何処まで性根が腐ってやがる!」
「あ、あの、旦那。どうか命ばかりは…!」
馬に乗ろうとする燕順を孫五が懸命に引き留め、そうこうしている間にも張旺の背中はみるみる小さくなっていく。
「クソっ、やられた…」
渡しが近付いた事で、疎らながらも人影が見え始めていた。
今からでも馬で追い掛ければ捕らえる事はできようが、張旺が被害者に成りすまして騒ぎ立てれば、あっという間に燕順は立派な追い剥ぎである。
「あのっ、何て言うか…すいません、燕の旦那」
「はぁ…もういいよ。てか、お前もまた何だってあんな奴と連んでんだ?」
「いやぁ、ああ見えて哥哥にもなかなか優しいところがあるんですよ?」
普段どれだけ優しかろうと、今それを見せなきゃ無意味極まりないけどなww
「あんな奴に命預けてたら、将来、碌な死に方しねえぞ?」
「嫌だなぁ旦那。脅かさないで下さいよ…」
「はぁ…まあ、お前が良いって言うんなら、俺がとやかく言う筋合いでもねえけどな」
燕順が馬に跨がり孫五を見下ろす。
「じゃあ、俺は行くぜ。道案内、御苦労さんよ」
「はい、何か…色々と御迷惑をお掛けしました」
「お前らマジでこの仕事向いてねえからな。あの馬鹿にも、足洗って真っ当な生業に就けって、お前からよく言っとけ。じゃあな」
そう言い残し、燕順は孫五と別れて、一人、酒家があるという林を目指した。
※1「開放された~」
当時、一般的に夜間は城の内外の通行を禁止されていたため、元宵節など人出が多い日を除き、夜は城門が閉じられていた。
※2「私渡」
公営の渡しではない、所謂闇商売としての渡し。『水滸伝』にも登場する。当時、実際に横行していたらしく、岸を離れたところで客を襲う事も、ままあったという。
※3「人を射んとせば先ず馬を射よ」
『前出塞(其六)』。原文は『射人先射馬』。訓読は本文の通り。意味は読んで字の如し。唐の詩人・杜甫の『前出塞』九首の内、最も著名とされる其六の第三句。日本ではよく「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」と言われるが、いつごろから「将」だの「欲すれば」だのと変遷していったのか詳細は不明。ちなみに原文は『擒賊先擒王(賊を擒にせば先ず王を擒にせよ)』と続く。




