夢は巡りまた出逢う
エブリスタのイベントに投稿しようとしたら1000文字区切りとかいう死刑宣告を受けたので家に帰って枕を濡らす気分で投稿しています。つまりは供養、俺は無常。いぇい。
久しぶりにオリジナル書きました。感想ください。感想くれたらまた書きに来ます。たぶんおそらくめいびー。そんな感じの短編です。よろしく。
デジャヴ、既視感、未体験の事柄のはずが、過去にどこかで体験したことがあるような、そんな感覚。よく聞く話だと、夢が現実となった正夢が正体だとか。
どっちにしろ、オカルトな話だ。人によってはこの単語を耳にしただけで顔をしかめるかもしれない。
だけど、実際多くの人が経験している、かどうかは知らないけど、俺は経験しているから一蹴できないのが現実だ。
その感覚が最近やけに多いのも、デジャヴという言葉が気にかかる原因だった。気になりすぎて、検索をしてしまうくらいに。まぁ検索といっても、スマホで15秒もあれば事足りる作業なのだけど。
フリック入力で画面に爪が流れる。カタカタと気持ちの良い音が響く。それだけで、検索をする目的を忘れてしまいそうだ。いけない、いけない。
「おはよ清太。なにしてんの?」
『デジャ』まで打ち込んだところで、横やりが入った。正面から妨害されたので、横やりという言葉は少し引っかかるのだけれど。前やり? どちらにせよ、15秒ほどで終わると思った作業は中断されたわけで。
そんなことを考えながら、俺は正面から首を伸ばしてスマホを見ようとする彼女の顔を、さも気だるげに押し返した。
「勝手に人のスマホ見んなよ、晴香。というか、おはようって時間じゃねーだろ」
昼休みももうすぐ終わりという時間だ。
晴香は照れたように笑って、ごめんと言った。
三嶋晴香。淡い栗色の髪を肩まで伸ばし、彫りの浅い日本人らしい顔は、はにかむとこちらが恥ずかしくなるくらい眩しい。晴香は、一度押しのけられたにも関わらず、再び俺の手元のスマホに視線を向けていた。
しょうがないので、画面はそのままで見やすいように机の上にスマホを置いた。
「デジャ──なに? どういう意味?」
「デジャヴって調べようとしたんだよ。最近多いような気がするからさ」
「デジャブって、前に同じようなことがあったような気がする、っていうアレ?」
俺が頷くと、晴香は口を隠して笑い出した。上品だけど、腹が立つ。
「何がおかしいんだよ」
「だって、清太がボケはじめたんじゃないかと思って」
「っせーな。ってあれ、こんな会話、前もしなかったっけ……」
また、デジャヴだ。奇妙な既視感に身体の活動が錆びたように鈍る。
既視感がどこからくるものなのか、記憶を遡る。遡ったところで、答えは出ないのだけれど。それでも、過去の記憶を探ることを止められない。
黙ったままの俺を、晴香は何も言わず待っていた。
「ああ、駄目だ。思い出せない」
たっぷり1分、考え抜いた俺に、晴香は複雑な表情を浮かべていた。
不思議そうな、驚いたような、安堵したような、悲しそうな、数多くの感情を繋ぎ合わせてできた一枚布のような表情。でも決して醜くはない。どちらかと言えば、孤独に苛まれた美しさを表していた。
どうした──?
俺がそう尋ねる前に、彼女は首を横に振った。
まるで、俺が何を言うのか分かっていたように。
同時にチャイムが鳴り響き、身体は元の活動時間を取り戻した。
「あ、次の時間って英語じゃん。課題やってないんだった、じゃねー」
晴香は慌てた様子で席に帰っていった。いつも通りの、眩しいくらいの明るさで。
その明るさが、逆に気になった。さっきの複雑そうな表情との対比が、痛いくらいに脳裏に焼き付いてしまった。普段の晴香では絶対見せない表情、そのはずなのに、なぜか見覚えがある気がした。これもまた、デジャブだろうか。
「まぁ、いっか」
分からないことは、とりあえず飲み込む。熱い物でも、冷たい物でも、苦くても辛くても、そうして生きてきた。良くも悪くも、そういった生き方が身に染みていた俺は、きっと今日の出来事も明日、いや明後日には記憶の海の奥深くに投げ捨ててしまうのだろう。二度と日の目をみない記憶の海底。そこではきっと、見たこともない微生物が日夜捨てられる記憶を首を長くして待っているのかもしれない。なんて、また変な事を考えてしまった。
もしかすると、こんな生き方、考え方が数多のデジャヴを生んでいるのかもしれない。
ようやく答えらしきものに行き着いた俺は満足して英語の教科書を開いた。
あ、俺も課題やってない。
慌てて隣の高橋にノートを借りた。デジャヴはいつの間にか、消えていた。
@@@
いつにないくらい、月が輝いていた。
満月ではない。綺麗な三日月というわけでもない。
ありきたりの、3割くらい欠けた月。日常と変わり映えのない月。何度も見たような、既視感さえ感じることはないくらいの月だった。天体に詳しい人だったら、ちゃんとした名前を知ってるんだろうな。
その月を(3割月?)を寝転がりながら眺めていた。夜の10時、ベッドに入ってもう一時間くらい経っていた。どうにも、眠れる気がしなかった。
俺はその月に、どうしようもなく感動していた。なんて言うと、何を大げさなと笑われるかもしれないが、俺はたぶん、今日の月を忘れないだろうと、確信していた。
ま、本当だかどうか知らないけど。
スマホが短く一回振動した。電気を消した部屋でたった一つ輝く光源に表示されたのは、晴香からのメールだった。
件名は短く『おめでとう』。
普段はSNSで気軽に連絡を取ってくるのに、本当に大切なことを言いたいときは飾り気のないメールを寄越す。小学生の時は手紙だった。
それが晴香なりの真剣さで、優しさだということはよく分かっていた。
少し緊張しながら、メールアプリを開く。いつもと変わらない動作なのに、やっぱりぎこちなくなってしまった。
『一軍強化合宿の参加決定おめでとう。
一年生の中で選ばれるのは毎年一人から二人だって先輩が言ってたから、今日のミーティングで清太の名前が呼ばれた時、あたしの幻聴かと思っちゃった。
清太が選ばれると思ってなかったわけじゃなくて、ずっとあたしが願ってたことだったから。本当に呼ばれた時、信じられなかったんだ。
でも、清太の実力ならきっと呼ばれるとも思ってたよ。矛盾してるかな?
だから、本当におめでとう。
あたしもマネージャーの一人として、合宿に参加するから、頑張ろうね!
P.S. バスの隣の席があたしになっちゃってたけど、先輩が手を回したとかじゃなくて、単純に一年生同士の方が居やすいと思っただけだって。他の先輩にはからかわれるかもしれないけど、ごめんね?』
皮膚全体が嫌に熱くなる。Tシャツは汗で背中に張り付いていた。メールをもう一度、もう一度と計三回読んで、そのたびに、俺は背中に汗を浮かばせた。
三回読んで、それでスマホを置く。
気持ち悪いくらいに、頬が緩んでいた。今の表情は誰にも見せられない。でも、生まれてから一番ってくらいに、幸せを感じていた。
その幸せを5分くらい噛み締めて、スマホのメールアプリを起動する。晴香からのメールをお気に入りに指定して保存する。その後、返信を作成する。
返信の内容は、いつも変わらない。
最初の返信(手紙だったかな?)をこの内容で返したら、清太らしいと、呆れられたのか褒められたのか分からないが、そう晴香に返されたので、以来返信の内容は決まっていた。
『ありがとう。
これからもよろしく』
メールを送って、俺はもう一度月を見た。
やっぱり、この月を忘れることはないだろうと、再度確信し、俺は目を閉じた。
目を閉じて、意識を手放す直前で、ふと感じた。
あれ、前もこんなことなかったっけ。
@@@
五日間に渡る代表合宿も終わり、帰りのバスで揺られると、溜まった疲労が心地よく感じられるから不思議だ。一軍で活躍する先輩に混じって練習することで、得られた課題も多かったし、よい経験となった。隣で静かに寝息をたてる晴香も、初めての合宿ということで色々と大変だったらしい。バスに乗るなり眠ってしまった。
昨日の夜は先輩マネージャーと夜遅くまで話していたので、それが寝不足の直接的な原因みたいだけれど、楽しそうだったので、安心した。
無垢な天使のような寝顔の晴香をジッと見ていると、不思議なことに、彼女はそっと目を覚ました。その瞳の奥に、小さな影が浮かんでいたことを俺は見逃さなかった。
「悪い夢でも見た?」
「──ちがうの。良い夢だよ、あたしにとっては」
そう言いながら、晴香は表情を隠すように手を覆った。
『隠すように』確かにそう感じた。
普通なら、寝ぼけ眼を覚ますために、と感じる筈の動作を、俺は確かに、何かを、暗くて冷たい何かを、晴香が表情の奥に仕舞い込んだように感じたのだ。
「──そっか」
だけど、分かったうえで、俺は追及することができなかった。
俺の態度に、晴香は何も言うことはなかった。ただ、掌で隠した顔の奥から光を失った瞳がこちらを覗いていた。冷たい異物は俺の心を蝕むような恐ろしさを伴っていた。思わず目を逸らしてしまう。
逸らした瞳は、反対の席に座る先輩を映した。先輩の表情は、茜色の夕陽で隠れて見えなかった。だけど、こちらを見ているような気がした。
夕陽でぼやけている先輩の顔。のっぺらぼうのような、不気味さがある。
もしこちらを見ているのなら、きっと先輩からは俺の表情がはっきりと見えるのだろう。先輩の顔をジッと見つめて視線を外さない、さぞ奇妙な後輩に見えると思う。メンチを切っていると思われるかもしれない。それでもやはり、視線を晴香に戻すことはできなかった。
そこで何かを感じた。違和感、ひどくザラザラとした何かが皮膚をなでるような感覚。
なにかがおかしい。どこか、ツギハギだらけの世界に迷い込んだような、奈落に落ちていくような孤独が俺を包んだ。
違和感の原因はなんだろう。
先輩の様子だろうか?
先輩に改めて視線を合わせると、いつの間にか先輩は逆側を向いてしまっていた。その表情をうかがい知ることはできない。
周囲を見渡す。
半分くらいの人が疲労からだろうか、静かに眠りについていた。
残りの半分も、スマホを見ていたり、本を読んでいたりと、何も変わりはない。
変わりはない、はずなのに。
どうして、俺は違和感を持っているのだろう。
どうして俺は、この光景を見たことがあると感じているのだろう。
「清太? どうかした?」
すっかりと目が覚めた様子の晴香は、挙動不審に周囲を見渡す俺をジッと見ていた。
「晴香、なんか変じゃないか?」
すっかりおかしくなってしまったみたいだ。
この感覚を、晴香が理解できるはずないのに。それでも晴香は、真剣に話を聞いてくれた。
「変って? 何が?」
「なんていうか──デジャヴを感じるんだ。前にこれと同じような光景を見たような」
晴香は俺に倣って視線を巡らせた。それから、何かを納得したように、頷いた。
「あれじゃない? 中学2年の時の合宿。あの時もこんな風にみんな寝てたよね──」
「そんなんじゃないって!」
思わず声を荒げてしまった。幸いにも、先輩たちは気に留めてないようだ。
「大声出さないでよ、びっくりするじゃない」
「──ごめん」
気まずさを隠すために、俺は背もたれに強くもたれかかった。ギシリと呻くような音が静まっていた車内でスポットライトを浴びる。観客は誰一人いないのだけれど。こめかみを揉む俺に、晴香は優しく微笑む。
「疲れてるんじゃない?」
「……そうかも」
実際のところ、そこまで疲れてはいないはずだ。午前中は先日までと同じく普通の練習だったけれど、午後からは紅白戦。俺は代打で一度出ただけだ。だから、溜まる疲労なんてものは連日の練習と比べれば微々たるもの。だけど、ありもしない責任のせいにでもしないと、この混沌とした心情を説明することができない。
全身にまとわりつくように浮かび上がった冷や汗が気持ち悪い。パーカーの袖で額を拭う。気分を変えようとバスの前方に視線を向ける。
前方車両もいない、長い直線の一本道。その先には大きな口を広げているトンネルが見えた。出口の光も電光も見えない暗闇。そこが黒一色に染められた壁に見えた。そこに今から入る。トンネルに入るといえばそれだけの行為だけれど、まるでバスごと自分が押しつぶされるようなイメージが拭えなかった。
気分を落ち着かせるための行為が、余計に心拍を乱す結果となった。何をしても裏目に出てしまう気がする。俺は諦めたように、眼を瞑った。同じ闇でも、こっちの闇は見慣れたもので、恐怖とは対岸にあるものだ。ようやく心拍が落ち着き始めた。
落ち着き始めたところで、何かが俺の頭に触れた。そのまま、何かに誘導されるまま柔らかくて暖かいものに倒れ込んだ。
「晴香?」
「疲れてるんでしょ? 膝貸してあげるから寝なよ」
甘い香りが湧き上がってくるようだった。薄目を開けると、すぐに晴香の手が覆った。漏れ出る雰囲気から、バスがトンネルに入ったことが分かった。
「やめろよ、恥ずかしいだろ……」
そう言いながらも、俺には抵抗する気がまったく起きなかった。むしろ、さっきよりも安心するような、暖かい光に落ちていくような、不思議な感覚に包まれていた。
「いいから、誰も見てないよ。誰も。だからほら、眼を瞑って。次に目を開けたら、きっとまたいつも通り、不安なことなんて何もなくなって、明るい未来だけが広がるんだから」
晴香の言っていることが、うまく理解できなかった。ただ抗いようのない温もりとそれに付随する睡魔が足音高く歩み寄ってきていることだけが分かった。
「がっこーに……ついたら……起こして……」
「うん、分かった。おやすみ」
意識が途切れる直前、晴香が何かを言った気がした。何度も聞いた言葉、特別な言葉、忘れてはいけない言葉。それがなんなのか、分からないけれど、そんなのは起きてから聞けば良い話だ。
覚えていればの話だけれど。忘れてしまったら、きっとまたデジャヴが思い出させてくれる。投げやりの思考から逃げるように、俺は暖かい闇に落ちてった。
***
決まりきった感覚で奇声を発する機械を、その女性はただ見つめていた。
それが息子の、壱岐清太の生存を報告する唯一の物であり、その一挙手一投足を見逃しまいと見つめ続けている。女性がその行為を始めて、はや半年となろうか。気が付けば西暦は変わり、季節もまた一変している。最近は雪が積もる街並みを窓から眺め、時の流れを再確認していた。
「今日もいらしていたのですね」
女性に向けられた声が静寂を割いた。平成盾岩病院の病室の一室のことである。声の主は清太の主治医の早瀬幸人だった。主治医、といっても既に清太の容態は安定しており、意識を取り戻すのを待つだけの状態だったので、早瀬が医者として何かすることはなかったのだが。どちらかと言えば、清太の母親である壱岐明恵との会話が、この患者を受け持ったうえでの主たる業務となっていた。
「今日は、眼を覚ます気がしたので」
「そうですか」
早瀬は明恵に理由を尋ねなかった。返ってくる答えはどうせ、夢に息子が現れただの、息子に似た雰囲気の猫が家の前に居ただの、そういうオカルトな話ばかりだからだ。
しかし、明恵はその理由を話し始めた。
「今日は、あの子の誕生日なんです」
「あの子……?」
壱岐清太ではないことは分かっていた。その理由はちょうど一か月ほど前に聞いたからだ。
「あの子、晴香ちゃんです」
その名前に早瀬は聞き覚えがあった。明恵との会話にも出てきたし、何よりメディアの目まぐるしい活躍により、三嶋晴香は若人にとってある種の憧れとなっていたからだ。その力の入れようといえば、普段からテレビも新聞も碌に見ない早瀬がその少女の主な情報を勝手に掴んでしまう程度には力を入れていた。
時は半年ほど前に遡る。
壱岐清太や三嶋晴香の通う高校の野球部、その夏合宿で悲劇が起きた。
合宿帰りのバスが、トンネル崩落事故に巻き込まれたのだ。
トンネルに、それ以上に山そのものに潰されたとも言えるバス内に生存者はいなかった。
ただ一人、壱岐清太を残して。
都市部からそう離れた場所ではなかったので、すぐに救出作業が始まった。ぺしゃんこに潰れたバス内から生命の気配は感じられなかったとは消防隊の言である。血まみれの車内、潰れた肉片、広がる地獄絵図に救出隊は吐き気を催した。
しかしそんな暗闇の中、一か所だけが奇妙な光を孕んでいた。恐る恐る進むと、そこには一人の少女──三嶋晴香とその膝で眠る少年──壱岐清太が居た。
三嶋晴香は壱岐清太を包むように抱きかかえていた。しかし、上部からの圧迫で三嶋晴香は絶命していた。謎の光は、絶命する直前に起動させたと思われる三嶋晴香のスマホだった。
壱岐清太は自己の衝撃で意識を失っていた。しかし、三嶋晴香の身体がクッションとなり怪我一つない五体満足の状態だった。
そこで救助隊が見たのは、地獄の一端で生まれた、奇跡の聖域であった。
優しく微笑む三嶋晴香と、赤子のように眠る壱岐清太。
それだけでも、メディアは『愛する少年を護った少女』なんて具合に騒ぎ立てただろうが、三嶋晴香はそこで終わらなかった。暗闇で二人を照らしたスマホには、元より作成していたのか、途切れ行く意識の中で作成したのかは分からなかったが、膝で眠りにつく壱岐清太に向けての、ラブレターとも取れるメール画面だった。
うっかりその画面を覗いた救助隊員が、感情の波に流されるまま、その文言を一言一句違わずメディアに伝えた。現代における最高の恋愛小説、それも実話とあっては、ネタにしないわけがない。事件から一か月後には事件をまとめた冊子、その次に小説、来月にはドラマ化をするらしい。そういったわけで、若者の間では三嶋晴香という少女は、偶像崇拝にも似た視線を向けられている、らしい。
事件の顛末は今なおエンタメという形で繋がっている。そして、壱岐清太はあの日から眠り続けている。それもなお、世間を刺激するスパイスとなっているのかもしれない。
「あの子は、清太の命の恩人ですから。ここで清太を見ていると、時折あの子も一緒に清太を見てくれている気がして」
そう語る明恵の瞳には、不思議な輝きが宿っていた。まるで深紅の血で染まった地獄の中で孤独に光る画面のような。その光が、今は明恵に宿っているような、そんな気がした。
早瀬はオカルトを信じているわけではない。けれど、この少年の現状に関しては謎が多いのも本当なのだ。身体に異常はなく、脳も問題なし。なぜ起きないのか、という疑問は尽きない。
まるでそう、おとぎ話に出てくる呪いのように。
永遠に眠り続ける少年を見ていると、そういった考えが自然と湧き上がってくる。
それに、いっそのことそう考えた方が楽ではある。今の自分にこれ以上できることはないと、自身を納得させるためにも。
だから、強いて願うならそう、せめて。
せめて、彼が良い夢を見ていますように。