VRでバレンタインデートがしたかった男達の会話
「そろそろバレンタインデーじゃん」
「そうだな」
「俺の好みって清楚系なお姉さまじゃん」
「いや、それは知らん。」
「ここの司書さんドストライクじゃん」
「…今までの話を聞く限りそうだろうな」
「デートに誘ってみようかと思うんだけど」
「此所はVRゲームの中で、相手はAIだぞ?」
「一夜の夢的な? 仮想の中ぐらいはっちゃけてもいいだろ?」
「…まあ、一度痛い目を見るといいさ」
「よし、じゃあ早速声をかけてみよう!」
「あ、おい」
「司書のお姉さ~ん」
「何か御用でしょうか。」
「明日って暇?」
「業務に関係のない事にはお答えできません。」
「あ、すみません」
「馬鹿め。仕事上がりでも声を掛ければいいんじゃないか?」
「流石、頭いいね! …なんでそんなに笑うんだよ」
「…いや、なんでもない。俺はこの後用事あるから、健闘を祈る」
「おう、明後日の報告を楽しみにしとけよ」
「別に明日でもいいぞ?」
「絶対に成功させて驚かせてやる!」
「お客様、大きな声はお控えください。」
「あ、すみません…」
「結局1日早まったか」
「まさか恋人がいるなんて…しかもデートの約束してた…」
「まあ、他のプレイヤーも騒いでたし、伝わったんだろうな」
「しかも相手は隣接してるペットキーパーの女の子だった」
「…百合か、そうか」
「話しかけたところを丁度見られてめっちゃ睨まれた」
「『この子はあたしのだから近付かないで』って言われて頬染めるの見たら、俺でも勝ち目がないの気付いたよ」
「あぁ、そうだな」
「ということで、俺暇になったから一狩り行こうぜ!」
「それは別ゲームだと思うが…しょうがないから、失恋祝いに付き合ってやろう」
「よっしゃあ! 持つべきものはやっぱり優しい友達だな!」
「そうだな。そんな優しい友達の俺が、いい狩り場を教えてやろう」
「え、マジ? 何処?」
「ニアカロの森」
「は? 待ってそこ今イベントでカップルがわんさかいるじゃんーー」
この男は知らない。相棒がペットキーパーの女の子に告白して『男には興味ありません』と振られたことを…