日向と太陽
⑥ 日向と太陽
父のことについては話し合ったが咲が「ほっとけばいい」と言った
「どうせ いなかったのも同じ人だったのよ それに両親がいなくなったら
施設に入れられてしまうかもしれないわ、私達未成年だし・・・」
金銭面では問題なかったし学費もあった
それに咲は中学三年生、私は高校3年になっていた
エスカレーター式といっても問題を起こせば進学できなくなってしまう
それから咲の機嫌がいい よく笑うようになったし喜怒哀楽を表に出す
ようになった
父と私の怒鳴りあいから逃れたせいなのか
そのことを聞くと
「私 怒っているおねいさんより笑っているおねいさんのほうが好きだわ」
と言った
私も今まで毎日怒鳴りあって疲れていた咲にもストレスになっていたにちがいない
謝ると 「怒ってばっかしいると細胞が死ぬらしいわよ 美容に良くないし
怖い顔になってしまうわ」と言って笑った
私達はなにか重たかった煙が 家の中を漂っていたものが
消え失せるのを感じた ただしこのことは絶対の秘密だった
それからしばらくして私には 新しい彼ができたし 咲はよく勉強し
驚いたことに ジョギングまで始めた
新しい彼は太陽と言う名前でその名のまま明るくスポーツに堪能でボクシング
部に入っていた
家に連れて帰ったとき
「日向と太陽でぴったりね」と笑って見せたが今なら本当は強い警戒心を
もって彼を眺めていたのがわかる
恋愛の初めは正常な思考がなくなる
できるだけ長く一緒にいたくて 彼を家に泊めたとき咲が言った
「いい加減にしないと両親がいないことがばれるわ」
ジョギングから帰ってきた咲が言った
その時、部屋から彼が出てきて咲に手をあげたが咲は無視して部屋に入って
しまった 怪訝な顔をした彼に
「なんでもないわ」私は取り繕うとしたが、彼は別のことに気を取られている
様だった そして言った
「彼女怪我でもしてるの」
「なんで」私が訪ねると 「血の匂いがした」と言った
今考えるとなんで気遣なかったのかおかしい
ジョギングに出かけると言って咲が闇を切り裂いて走っていくとき
強い怒りの感情派を発していた
おもいつめた顔 細まってきらきらする瞳
でも全身の力を振り絞りつつ何気ない風を装っていた